Fate/eternal rising [another saga] 作:Gヘッド
セイバーに俺の考えを提案してみる。セイバーはその考えを少し疑った。
「本当にうまくいきますか?」
「いや、別にうまくいくって確証はない。けどさ、もしここでやらなかったら、俺たちが死んでしまうかもしれねーんだぞ。やるなら、早めに手を打ってくに越したこたねぇよ」
セイバーは「はぁ」とため息をついた。そして、俺の案に乗った。
「乗りましょう、その賭けに。でも、もし失敗したら……」
「失敗したことは考えるな。まず、成功率を上げる方法を取れ」
俺はレイピアを握る。俺はまた雪方に向かって剣を振る。ライダーは俺に攻撃しようと間合いを一気に詰める。俺はわざと木のトンファーの方に身体を移動させる。
木のトンファーの攻撃を待っているかのように。
予想通り、木のトンファーを俺に降ってきた。大振りで、俺を潰すような力。
でも、その敵の行動を誘導させていたなら別の話である。
「セイバー!今だ!」
俺の掛け声と同時に、セイバーはライダーとの間合いを一気に詰め、逆に俺はライダーとの間合いを広げた。セイバーはライダーの死角から近づき、短剣を振るう。ライダーは自分の身に危険が及ぶと思い、身体を雨水の水圧の鎧でガードした。
が、しかしこれも計算の内。別にライダーを倒すことを狙っているわけじゃない。狙っているのは……。
ドサァ……。
木屑がまた地面に落ちる音が聞こえた。セイバーはライダーの残りの一つである木のトンファーを切り刻んだのである。
そう、俺の案通りにうまくいっている。
ライダーは雨を降らすために多くの魔力を必要としているはず。しかも、その魔力供給源は雪方である。つまり、ライダーにとって雪方がやられることはあってはならないのである。だから、雪方に攻撃をしようとすると、ライダーはその攻撃を阻止していた。それは彼の雨を降らせるという能力を使うことができなくなってしまうからである。
俺は逆にそこを突いた。俺が雪方を攻撃しようとすれば、ライダーは俺に攻撃を仕掛けてくる。しかし、セイバーが死角から近づけば彼の木のトンファーを壊せるのじゃないかと。
もちろん、命を奪えばいいのではという考えもある。けど、相手はサーヴァント。しかも、サーヴァントの基本的身体能力に、雨天時の時の身体能力補正もかかり、簡単には殺せないだろう。いや、殺せないだけならいい方である。一番高い可能性は反撃を受けることである。それは一番避けたい。
まぁ、とにかく、今、一番いい方法はライダーの木のトンファーを破壊すること。そうすれば、彼は水のトンファーで戦うことを余儀なくされる。
そして、ライダーは俺の予想通りに木のトンファーが破壊されると、彼は能力を使って水のトンファーを作り上げた。
ここまではいい。ここまでならできることである。
ライダーは俺の方を見て、何かを察したようである。ライダーは水のトンファーを元の雨水へと戻し、ポケットからナイフを取り出した。
(ゲッ、ナイフ?マジかよ……)
ライダーのポケットの中にナイフが混じっているのは予想外であった。ライダーは何か緊急事態用にナイフを隠しておいたのだ。
「言っておくけど、サーヴァントは自分の武器しか持たないわけじゃない。現代の武器だって使えたら使うよ」
刃渡り10センチほどのバタフライナイフ。カッコよくイケメンに刃を出した。その時点でわかることがある。
こいつ、バタフライナイフ使い慣れているな。
多分、生前ナイフを使っていたか、この世に召喚されてから習得したか。俺の予想だと後者の方。だって、刃の出し方がプロっぽかった。バタフライナイフは俺でも扱えない。ちょっと難しい。というより、刃が当たりそうで怖い。
まさか、収納タイプのナイフを隠し持っていたとは。予想外であり、まさかの事態である。そしたら、俺がトドメをさせないじゃないか。
…………。
俺はセイバーの方を見た。
「なぁ、セイバー」
「何ですか?まさか、さっきライダーが出したナイフのせいで、さっきの案が潰れたと言いたいのですか?怒りますよ?」
「いや、違うんだ。そのさ……お前、サーヴァント倒せる?」
「……えっ?」
「いや、そのさ、お前、サーヴァントを倒せるかなぁって思ってさ……」
「サーヴァントを……倒す……」
「ああ、そうだ。サーヴァントを倒してほしいんだ。お前の剣で。できるだろ?」
サーヴァントを倒す。それはつまり、剣でサーヴァントを斬る、または刺すということである。サーヴァントを殺す。そうも言いかえることができる。
セイバーの望みを叶えるため。彼女は自らの望みを叶えたい。そう思っている。だから、彼女は望みのために、気持ちを押しつぶした。
「……ええ、できますよ。人を斬ることなんて—————たやすいことです」
彼女が押しつぶした気持ちは何なのであろうか。
—————本当の彼女の望みは何なのか。まだ、誰も知らない。そして、彼女もまだ気づいちゃいない。
俺はセイバーの言うことを信じた。セイバーは雪方に攻撃を仕掛ける。ライダーはセイバーを止めるために、水でできた障壁を二人の間に張る。高水圧の壁は、下手に触ると体が削がれるほどだった。セイバーは水の障壁を剣で突破しようとするが、斬れるわけがない。だって、水だもん。
俺はそんなセイバーをバカだなって思いながらライダーに攻撃を仕掛ける。ライダーは俺の足元の水で、水の鉄砲を俺に放つ。もちろん、あの指で放つ水鉄砲などではない。ガチの鉄砲の速さで俺を狙ってくる。
「俺を殺さないんじゃないの?」
「殺さない程度に倒すだけさ」
なんか、全然手を抜いてくれないライダーが段々と酷い人に思えてきた。目と手に魔力を集め、何とかギリギリで銃弾の速さかそれ以上の速さの水の弾丸を剣で弾く。
見えなくはない。けど、速すぎる。弾丸を弾くことだけで精一杯で、他に手が回らない。近づいたらナイフで応戦、離れたら水鉄砲。
クソッ‼︎
これ以上、この水の弾丸の対処をするのは無理だと感じた俺はセイバーの方に向かう。そして、水の壁に苦戦しているセイバーに向かってこう叫んだ。
「宝具で、全身を覆え!セイバー」
セイバーは俺の言われた通り、ランクD相当の宝具、『黄金の鎧』とランクC相当の宝具、『恐れ戦く海神の兜』で全身を防具系の宝具で覆う。セイバーの体が安全だと知った上で、俺はセイバーの後ろに来た。
「……えっ?まさか……」
「おう、その重さで乗っかったら死なない程度に気絶するでしょ」
俺はセイバーの背中に足をつけて、足に魔力を注いで、思いっきり蹴飛ばした。水の障壁越しの、向こう側にいる雪方めがけて。方向は合っているはずである。障壁を通して、ぼやけた彼女の姿が映し出されている。
俺には確信があった。
大丈夫。宝具なんだから、水の水圧ぐらいじゃ負けないでしょ。
「ギャァァァァッ‼︎当たる!」
「よし、セイバー!突っ込め!」
俺の超荒技で、セイバーが障壁をぶち抜ける。
「おっ、障壁通り抜けたようで」
セイバーは俺にめちゃくちゃ怒る。
「何してんですか!死ぬかもしれなかったんですよ?」
「大丈夫大丈夫。全身、宝具で覆ってるから」
「もしものことがあったらどうするんですか?」
「そん時はそん時だ」
「もうッ‼︎今度という今度は許しませんからね‼︎」
俺とセイバーが戦闘中であるのにもかかわらず楽しくお話しをしている。それは相手への侮辱行為。そりゃ、相手も怒って攻撃してくる。
ライダーはまた水のトンファーを作り上げ、俺を上から下に叩きつける。俺はそれを横に転がって交わす。ライダーが叩きつけたところは、へこんでる。ガチで、そんな攻撃には当たりたくない。っていうより、俺のこと、殺すつもりできてない?
俺はライダーを前にして、一旦深呼吸した。気持ちを落ち着かせる。ライダーとの一対一、セイバーが雪方を倒してくれるまで耐えれば俺たちの勝ちである。
そう、安心していた。けど、違った。安心できる状況ではなかった。セイバーの声が聞こえた。俺は障壁の方を向いた。
「ヨウ!こちらにはライダーのマスターいませんよ!」
「は?どう言うことだ?だって、俺は雪方のいる方にお前を蹴ったぞ。しかも、水の障壁がある中で。あいつがこっちに来れるわけがない‼︎」
ナゼだ?ナゼ、雪方がセイバーの方にいない?俺はちゃんと、セイバーを雪方の方へ蹴り飛ばしたはずなのに。そうだ。俺はちゃんと雪方があっちにいると認識して、俺はセイバーを蹴ったんだ。
……。
……認識した?
「まさか⁉︎」
俺はライダーの方を向いた。すると、そこにいたのはライダーだけでなく、雪方もいるのである。
「まさか、俺たちを騙したと?」
「騙したつもりはないよ。ただ、君たちが勝手に障壁の向こう側にいると思い込んだだけだよ。別にナデシコは障壁の向こう側にいたわけじゃない」
「水で映し出した幻影か?」
「ああ、そうさ。水の障壁はダミーだよ。水の障壁があるから、彼女はぼやけて見えると思うだろう?だから、ぼやけて見えても、偽者なんて思わなかった。そうだろう?」
悔しいけど、言い返す言葉がない。
……策にはまったのは俺たちである。
†数分後†
セイバーは水の障壁に囲まれてしまい、そこから出るのに苦戦中。俺は戦闘中である。
どうも、やばい気しかしないのである。セイバーが水の障壁に囲まれてしまった。彼女が自ら出るのは時間の問題である。
絶対絶命の大ピンチ。
しかし、ピンチとはチャンスでもある。
相手の隙を突く。
俺はとにかくライダーの攻撃を受け流す。受け流して、受け流して、受け流して。まともにやりあっても勝てない。勝てる戦いを、死んでしまっては元も子もない。
そして、俺はわざと雪方に背中を見せた。そしたら、雪方は俺に電撃を放つのである。その電撃は俺をかすめて、後ろの方へと飛んで行く。
俺はわざと雪方の技に当たりに行った。少し試したいことがあったのである。そして、彼女の電撃を浴びて、俺は『コレだ‼︎』そう思い込んだ。
いける。未来を知らない若者は心を強くした。
彼はこの先知らない。この先に何かが起こることを。