Fate/eternal rising [another saga] 作:Gヘッド
今回からバトル始まりますね。
今夜は下弦の月。その光は明るく幻想的だが、どこか暗く寂しいものである。
十二時半、テレビを見ていた。爺ちゃんは早く寝ろと言っていたが、その爺ちゃんが寝てしまえば怖いもんはない。居間で横になりながらテレビを見ている。テレビでは
俺の家には蔵がある。庭の端っこにちょこんと建っている小さな蔵。爺ちゃんからは近づくなと小さい頃から言われていた。でも、なぜだかはわからない。なぜ近づいたらダメなのかがわからない。理由を尋ねても、爺ちゃんはまだ早いの一言で俺を一蹴する。
理由を教えてもらうことがない。それは教育上一番やっちゃいけないことだと俺は考える。多分、知ってしまうと苦悩するから言わないのだろう。それでも、子供は、辛い現実を知ることにより、もっと強く、そして
俺がポ◯キーを寝そべりながら食ってたら事件は起きた。
いきなりバンッと何かが爆発してガラガラと倒壊する音が聞こえた。その音は結構近い場所からだと俺は感じる。庭であろう。俺は現場に行こうか、爺ちゃんを起こしに行こうか迷ったが、現場に行くことにした。だって、爺ちゃんを叩き起こしたら絶対に明日は機嫌悪くなる。
—————でも、後々になってわかる。明日の心配なんてしている暇はない。今、生きる事こそが精一杯だと。
俺は庭に出た。町の外れに住む人が全然いないから地価がめちゃくちゃ安い大きな庭。だからこそ庭がこんなにも広いのだ。町外れに住んでいる人の特権である。
そんな大きな庭に一人の男が立っていた。その男は倒壊した蔵を見ているのである。家の中の光に男は照らされ、白い髪が晩秋の風に揺らされている。蔵は原形をとどめていない。もう、木材とコンクリートの破片になってしまっており、もう
俺はその光景を見た瞬間、頭が真っ白になってしまった。謎の行動をしている男を見かけ、不法侵入されているということに驚きを隠せないでいる。俺は頭が真っ白になっていた時、つい口がこう動いてしまった。
「お、お前。な、何をやっているんだよ。誰だ?お前は」
男は俺の声を聞くと俺をギョロッと見た。俺はその時、腰を抜かしてしまったのである。怖かった。あまりにも怖かった。殺されるんじゃないかってぐらい怖かった。そいつの目は鋭い針のように俺の心を突き刺し、彼から感じられる殺意が俺の身の毛をよだたせる。
俺はそいつと目を合わせた瞬間、人生で一番ヤバいって思ってしまう。そして、俺は恐怖した。
死が間近に感じてしまったのである。
男は俺を目にすると、「やれやれ」と言いながら俺の方に近づいてきた。
一歩、一歩と男が近づくごとに、俺の頭の中はこんがらがってくる。
何なの?誰なの?何をしに来たの?何をするの?蔵は何で破壊されたの?破壊したのは誰なの?何で蔵を漁りだしたの?何で近づいているの?何でこんなにも怖いの?何で俺は
俺の頭の中には疑問がたくさん浮かんでいた。足が動かない。動けと思っても怖くて動きやしない。頭だけがぐるぐるとこんがらがりながらも動いてた。
男は近づきながら俺にこう語りかけた。
「お前は不運だな。俺はお前を殺さなきゃいけなくなった。すまないな」
俺はその言葉を聞いていたが、理解していなかった。出来なかったのである。いきなり殺すなんて言われて、理解など出来るはずもない。ただ、鵜呑みに出来ない今の目の前の現状をゆっくりと細く噛み砕きながら飲み込んでいく。それでも、時間が必要である。
「お前は見てはいけないものを見てしまったんだ。まぁ、人生不幸がつきものだ。それは俺も経験をしている。だから、お前の気持ちはよくわかる。だから、お前のさっきの問いに答えてやるぐらいのことはしてやろう。我が名はアーチャー。聖杯戦争の被害を縮小するために探し物をしている。まぁ、今答えられるのはそれだけだ。あとは、あっちの世でお前にあったら色々教えてやるよ」
俺が彼の言葉を理解する間も無く、アーチャーと名乗る男は俺にそう言った。でも、その言葉も全然理解出来ない。
彼は
今まで何がなんだかわからなかった。頭の中が疑問符で埋め尽くされていた。けど、ある言葉が俺の頭の中に浮かんでいた疑問符を掃除機のように全て吸い込んでいく。
『—————俺は殺される』
殺される。そしたら何もかも終わりだ。考えていても意味がない。『なぜ?』よりも『どうすれば?』を考えて、実行しなければならなかった。そうしなければ、俺は死ぬだろう。
クロスボウを向けられたこと自体にまず疑問符をつけることはできた。けど、しなかった。
まずは俺の目の前にいるこの男から逃げなければならない。俺は冷静に考えた。
男がクロスボウの引き金に指をかける。俺は床に手をついて、膝を曲げた。男が引き金をちょっと引く。その時、俺はクロスボウを
クロスボウの矢は俺に当たらず、地面へと突き刺さる。俺は男のクロスボウを叩いたらすぐに立ち、全力で回り込んだ。そして、人生の今までの中で一番といえるほど、右足に力を込める。
俺の母さんは魔術師だった。だから、俺はほんの少しだけ魔術を使える。まぁ、使えるといっても『解析』と『強化』だけ。だけど、今はそんな使える使えないを考えている暇などなかった。とにかく、この場から逃げなければならなかったのだ。
だから、俺は力をためた右足に魔術の『強化』の付与を付ける。
「—————我・
俺は全力で男を蹴った。
のはず……だった……。
けど、なぜか痛みは俺の方にあった。
俺の右足に蹴れた感触がない。
俺の腹に相手の足がめり込んでいた。
蹴られたのは俺である。
男は顔の表情を一切変えない。人を
「ほう、魔術を使えるか。だが、魔術なら俺も使える。お前だけだと思うなよ」
男が俺を蹴り飛ばした方向は
俺は手の届くところにあった木片を男に向かって投げるが、男はそれを簡単にかわす。
男はまた俺にクロスボウを向けた。
「次こそは終わりだ。まぁ、自分の蔵と一緒に死んでくれ」
男が俺に向けたクロスボウの矢はギラリと光る。狙うは俺の心臓であろう。
俺は内心諦めていた。ヤバイと思いながらも、この状況を打破できないと思っていた。
けど、死にたくない。その思いが強かった。
俺は願った。
死にたくない。
男がクロスボウの引き金に指をかける。
死にたくない。死にたくない。
男が引き金をちょっと引く。
死にたくない。死にたくない。死にたくない。
男が引き金を引く。
死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。
矢が俺に向かって飛び出した。
死にたくない。
その時である。俺は
「—————あなたはまだ生きたいか?」
女性の声。とても優しく、
その声に俺はこう答えた。
「生きたい」と—————。
男が放ったクロスボウの矢が俺の心臓に向かって飛んでくる。
俺は目をつぶった。
—————ああ、死ぬんだ。
何かが
俺の体に痛みはなかったし、死んでもいなかった。
俺は生きていた。
俺はゆっくりと目を開けた。すると、俺の目の前には金色の鎧を着た女性が立っている。その女性の手にあるのは剣であった。
女はクロスボウを持った男にこう聞いた。
「私のマスターはあなたですか?」
そう聞かれた男は少し笑った。
「私か?私ではない。私はお前と同じ
女はそれを聞くと、俺の方を向いた。
「では、あなたが私のマスターですか?」
俺はその言葉に何も答えられなかった。ただ、俺の右手には赤い3本の線が浮かんでいるのであった。
その時、俺は聖杯に手を伸ばすことになったのである。
特に大きな望みもないまま、俺は聖杯戦争の舞台に降り立った。