Fate/eternal rising [another saga]   作:Gヘッド

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はい!Gヘッドです!

まぁ、大体、第一ルートの話の進みの大まかな内容は決まりましたね。まさか、あいつがラスボスだとは……。


仲間だと思えるから

 セイバーの長い長い昔話が終わったけれど、正直途中から寝てた。うん。完璧にセイバーが誰だかわかんないや。

 

 ……まぁ、いっか。

 

「だから、私はこの聖杯にある望みがあるのです。もう、分かりますよね?」

 

「ん?あ、ああ。うん。そうだね。わかるわかる。あれだろ?あー、うん。まぁ、色々」

 

「……ヨウ?聞いて……」

「聞いてるわけねぇじゃん」

 

 セイバーはその一言にすごく怒る。言葉はちゃんと選んでから言わないといけないということを感じる。ほんのちょっとだけ。

 

 セイバーは古びた剣(グラム)の刃をちらつかせた。殺意に満ちた目をしている。

 

「今、この剣の恐ろしさをヨウの身に刻んでやろうかと思いましたよ」

 

「いやん♡刻まれるぅ〜」

 

 堪忍袋の緒(かんにんぶくろのお)が切れる音が(じか)に聞こえてしまった。ブチッって。やばい。人ってこんなにも怒ると怖いんだね。

 

「はぁ、まぁ、あなたの性格は別に分かってますし、予想の範疇です。一応聞きます。寝てましたか?」

 

「そりゃ、さすがに寝るわ。昔話とか子守唄にしか聞こえない」

 

 セイバーはそんな俺の返答に頭を悩ませる。が、やはりそれも彼女の予想通りだったようである。

 

「ちなみに、ヨウはどこまで私の話を聞いていました?」

 

「結構聞いてるつもりだぞ。確か……龍を倒したところぐらいまでだな」

 

「あっ、意外と聞いてましたね……なら、もう分かるんじゃないんですか?」

 

「何が?」

 

「真名ですよ。私の」

 

「いや、すまん。全くもってわからん」

 

 またその言葉にセイバーはまたブチギレる。今の時代にはネットワークという便利なものがあると最近知ったセイバーは、俺にネットで調べろと()かす。一応、言われた通り、ネットで今までの話の要点を打ち込んで探してみた。

 

「ジークフリート……。お前、ジークフリートか?」

 

 その時の俺は何か変なことを言ったであろうか。セイバーはそのジークフリートという言葉を聞くと、また顔を赤くして怒るのである。

 

「ジークフリート?違いますよ!それは私ではない、別の誰かです‼︎少なくとも、私はジークフリートなんて言う名前じゃありません‼︎なんで、みんな間違えるんですか?コンプレックスなんですよ!私の!」

 

 いや、そんなの知らないから!ってか、どんだけそのことについて気に病んでんだよ。何?そんなに嫌なの?過去にそれでイジメられた?

 

 ……いや、イジメられるも何もないか。だって、友達なんて誰一人いないし、ましてや、あまり人とも会わなかったんだよな。

 

「あの、ヨウ。さっさと調べてくれませんか?あと、その(あわ)れむような目はやめてください」

 

「……なぁ、俺、友達になってやろうか?悩みは俺に打ち明けてもいいんだぞ」

 

「さっさとしてください‼︎」

 

 今日はセイバーがよく怒る。なぜだろうか?

 

「もしや、生理か?……いや、お前男だしな……」

 

「そ、そんなことありませんよ!わ、私は、立派な女の子で……その、せ、生理ぐらい……ふ、普通に……って何言わせるんですか‼︎」

 

 セイバーは俺のことをバンバンと容赦なく叩いてくる。待って、今の俺は悪くない。うん。絶対にそうだ。

 

「それより、早くしてくださいよ」

 

「いや、それなんだけどさ。調べたよ。けど、ネットには載ってねえんだよ」

 

 それを聞いたセイバーは少し驚く。まぁ、無理もない。聖杯戦争では英霊が召喚される。もちろん、英霊と言われるから、その英霊には一人一人の物語がある。けれど、それが昔の話であるほど、また語りで現世まである話だと、今の時代のものとは大きく変わっている場合もある。多分、セイバーはその内の一人だ。今現在の彼女の物語と本当の物語は違うのである。

 

「で、わかんねぇから教えてよ」

 

「まぁ、そうなると、流石にしょうがないです。……私の名前はシグルドです」

 

「え?ジグルド?」

 

「『ジ』ではありません!『シ』です!」

 

「『死』⁉︎俺に死ねと言うのか?」

 

「そ、そんなこと言ってません!」

 

「ひどい……、俺はどうせ使い捨てなんだろ?使えなくなったら他のマスターに乗り換えるんだろ?」

 

「そんなことしませーん‼︎」

 

 とまぁ、セイバーをいじるのはこの頃の俺の日課となりつつあるわけだが、一旦それは置いといて。

 

「で、どうせ過去を話しておしまいってわけじゃねーだろ?そんなバカみたいに無駄なことはしない」

 

「ええ、そうです。私は、やり直したいんです」

 

「それは、人生をか?」

 

「はい。そうです。今度は王とかにならなくてもいい。英雄などにならなくてもいい。男でも女でもいい。だから、せめて普通に、大きな偽りのない人生を過ごしたいのです」

 

 そう言いながらもセイバーは何処か別の場所を見ているような気がした。もちろん、それが彼女の望みなんだろう。でも、その望みは本当に望みとして価値があるのだろうか。

 

「なぁ、それってさ、今のことじゃね?」

 

「いや、こういうのじゃないんです。確かに、今、私はまた生まれてきたといっても過言ではない。けれど、私は人としてここにいるのではなく、英雄という存在でここにいる。殺し合いなんて……したくもありません」

 

 それは俺も同じである。俺だって、殺し合いなんてしないで普通に人生を生きてゆくつもりだった。特に変わったことのない普通の平凡な暮らし、それだけで十分なのである。高望みはしない。それが俺のスタイルだ。高望みして、高いところに登った後、そこから足を踏み外して奈落の底に落ちるのは勘弁である。だから、聖杯には何も望まない。過去はやり直したいし、両親に真実を聞きたい。でも、それで俺に、そして誰かに迷惑はかけたくない。

 

 一言で言えば、めんどくさいから。

 

 でも、俺もセイバーも元は一緒なのである。本当の親をあまり知らず、親への不信感。そこが俺とセイバーの一番大きな共通点。ただ、そこからセイバーはその親を望む。仮の親であったとしてもだ。それに対して俺は親を望まない。

 

「どうして、違うんだろうな……」

 

 この聖杯戦争で、サーヴァントを召喚する時には触媒というものが必要らしい。この前、セイギに聞いた。俺はセイバーを知らずのうちに召喚してしまったわけだけど、それでも触媒というものがあるらしい。もしかしたら、俺とセイバーの繋がりは『親への不信感』ではないのだろうか。

 

 けど、それでも道は(たが)えた。同じところから出発したのにどうしてこうも彼女は俺と違うのだろうか。その時の俺にはまだわからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 セイバーは立てそうもないのに、なのに彼女は立とうとしている。その姿を見た雪方もライダーも怖気付(おじけっ)く。それほどまでに彼女の姿は恐ろしく、(みにく)く見えた。聖杯の望みを叶えるという言葉に誘われる彼女は、周りが何も見えていないではないか。

 

 だから、もう見るのが辛くなった。涙を流しながらも、それでも勝とうとするその気持ちが俺には理解できないのである。

 

「セイバー、もう諦めてろ」

 

「イヤ……ッです、何で、何で……可能性があ……るのに、手を伸ばしちゃいけないんですか……‼︎」

 

 彼女は苦しく、痛いのに、目に涙を浮かばせているのにそれでも立ち上がろうとするのだ。

 

 彼女と俺の違い、それは周りの人がいたかいないかの違いなのである。俺は両親がいなくなってしまっても、爺ちゃんがいたし、セイギがいた。それに鈴鹿もいた。だから、俺は今に満足している。けれど、彼女はその男以外に誰もいなかったのだ。だから、その男を疑ってしまった瞬間、もう彼女は一人ぼっちなのである。

 

 一人だから、一人だから彼女は誰かを必要とするのである。隣に居続ける誰かを……。

 

 そんな彼女を見ていて俺は心動かされた。もしかしたら、俺も彼女のようになっていたのかもしれない。そしたら俺は今頃どうなっていただろうか?だから、彼女を可哀想だと思い、守ってあげたい。そう心から思えたのである。

 

「別に、諦めろって言ったわけじゃない。ただ、お前は一人じゃないんだ。一人で頑張るな。頑張るなら、二人で一人分頑張ろーぜ。そっちの方が楽じゃん?」

 

 誰もいないセイバーは一人で寂しかったんだろう。一人は寂しいよな。でも、一人が二人集まりゃ、一人ぼっちじゃなくなるさ。

 

 だからもう悲しそうな顔は見せるなよ。頑張るなよ。もう、一人で泣くことはないんだから。

 

「少し休んでろよ、な?」

 

 俺だって、腐っても男の(はし)くれだ。後ろに女の子いる時は、死守すんのが男の役目だろ。

 

「月城陽香、我が背にいる愛すべき友を守るべく、我(やいば)向けん!」

 

 聖杯に望みなんて何もないさ。あるとすれば、セイバーが納得のいく人生をもう一度だけ過ごすことができればそれでいい。

 

 俺はレイピアをライダーに向ける。

 

 俺はセイバーと昔の俺を重ね合わせる。誰も信じることのできなかった自分に信じる事のできる人ができた時、見ていた世界がガラリと変わる。だから、俺はセイバーにそうあってほしい。どうせ、自分なんか生きている意味がないとか思っているんだろうけど、その考えを間違いにしてやる。

 

 今、彼女は生きている。だから、もう悲しい思いはしてほしくない。俺がみんなに手を差し伸べられたように、彼女にも手を差し伸ばす。

 

「めんどくさいけどさ、守りたいもんは誰にでもあんのよ。ドゥー ユー アンダスターンド?」


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