Fate/eternal rising [another saga]   作:Gヘッド

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はい!Gヘッドです!

今回で、長い長い説明文が終わります。もちろん、今回、真名が……。

あと、文字数の関係で最後のところは少しだけ強引かもしれません。


嘘か真か、全てを疑い全てを信じよ《後編》

 女の子は龍を殺すために旅に出ました。龍を殺し、財宝を奪うためです。女の子はその龍が住むという洞窟へと向かいました。

 

 しかし、なぜ男は龍を殺せと言い出したのでしょうか。だってそんな財宝を龍が持っているなんて普通知らないはずです。だって、そんな物があると知ってしまったら、強者共はみんな寄ってたかってその財宝を取りに来ることでしょう。でも、財宝は取られていない。あまりにも龍が強いのでしょうか。そしたら、女の子を龍の所には行かせません。そんなことは愛している女の子を殺しているようなものです。

 

 

 ───────本当に愛していれば。

 

 

 女の子は龍の住むという洞窟に着きました。女の子は恐る恐る中へと足を踏み入れます。不安定な岩場で足元を見て前へと進みました。静かな洞窟の中で息を殺して、ゆっくりと前へ進みました。

 

 すると、彼女はふと胸がぎゅっと苦しくなりました。右手で胸を抑えたのですが、胸の鼓動はますます高鳴ります。苦しく、その胸の高鳴りは嫌なことの予兆のように思えてきました。

 

 風の音が聞こえ、小鳥の鳴き声も、葉が他の葉と擦れ合う音も聞こえてきました。しかし、それらの音とは違う胸の高鳴りは彼女の心を強く揺らします。

 

 しかし、ここまで来たのです。今さら引き返すわけにはいきませんでした。彼女はそう思い、胸の苦しさを無視して先に進もうとしました。

 

 その時です。奥の方から音が聞こえてきたのです。風の音とは違い、鼻息のような音でした。音は洞窟の岩にあたり反射して色々な方向から聞こえてきます。

 

 女の子は物音を立てないように、そっと先に進みました、抜き足差し足で辺りを警戒しながら息をひそめます。

 

 少し進むと、そこには青空が見える吹き抜けがありました。そこから空気が通っているのです。上を見上げれば木が生い茂っていて、まるで森の中にある大きな穴に落ちたような気分でした。

 

 女の子は空を見た時、ホッとしました。気が(ゆる)んだのです。その時でした。

 

「貴様!何者だ‼︎」

 

 後ろで大声がしたので、女の子は驚きました。が、すぐに後ろを向き臨戦体勢をとりました。

 

 そこにいたのは龍でした。蛇のように細長い龍が、女の子を睨みつけているのです。巨大であり、50メートルぐらい、いやそれ以上の図体。それほど大きく、恐ろしい体でした。牙が剥き出していて、大きな鱗を持っています。

 

 女の子の手は震えておりました。古びた剣をその龍に向けていましたが、多分襲われても彼女は剣を一振りもできないでしょう。しょうがないことです。見た目恐ろしい龍に剣を向けて、立ち向かおうとしているのですから。

 

 龍はその姿を見て(あざけ)笑いました。今まで何人もの強者たちが龍を殺しに来ました。その強者たちは散りはしたものの、怯えたりなどは一切しませんでした。それは腹をくくった身であったから。しかし、彼女はその覚悟が足りませんでした。その覚悟を龍は馬鹿にしたのです。

 

「なぜ、ここへ来た?」

 

「私は、父のためにここへ来ました」

 

「ほう、父のためと……」

 

「はい。父が望んでいるのです。この私が王になるために」

 

 龍はまた笑いました。女の子の言っていることがたわいもないただの夢物語だと思ったからです。仮に、父がそう願っていたとしてもなれるわけがない。王とはそんなに簡単になれるものではないので、無理な夢だ。そう思ったのです。

 

 でも、夢が現実となる時もあります。

 

 女の子は自分が先代の王の子を継いでいると言いました。そして、自分のことを育ててくれた父親の名前を言いました。父親の名前を言うと、その龍は血相を変えたのです。

 

「お前、本当か?その話、本当なのか?」

 

 龍はまるで嬉しいかのように涙を流しました。女の子にはそれがまったく持って意味がわかりませんでした。いきなり父のことを聞くと泣き出した龍。それを誰が普通に受け入れられるでしょうか。

 

 龍は彼女を横目で見て、一旦洞窟のさらに奥深くに入っていって、そしてすぐさま戻ってきた。その龍は女の子の前に大量の財宝を差し出しました。

 

「おい、お主一つ交渉をしないか?」

 

「交渉?」

 

「ああ、そうだ。もしこの交渉を受けるなら財宝は何でも全て持っていってよい。だが、もし交渉を断るなら……」

 

 龍は尖った牙を見せつけます。剣をまともに振れない女の子にとってこれは一択しかありませんでした。

 

「わ、分かった。交渉は受けよう、でも交渉とは何なのだ?」

 

「私を殺せ」

 

「え?今、何と……」

 

「もう一度言ってやる。私を殺せ。その剣で私を刺せ」

 

 その言葉を聞いた時、女の子は一体何がなんなのかがわかりませんでした。だって、何で龍は私を殺さずに、自分を殺せと言うのでしょうか。それが全然わかりませんでした。

 

 女の子は自分が生きるために、父のためだと思い古びた剣を力強く握ります。いつもの狩りのように剣で獲物を切りつければいいだけのことです。そう自分で暗示をかけました。動物は自らが生きるために殺し慣れているとそう思いながら。

 

 そして、彼女は剣を天高く上げ、その剣を振り下ろしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

永劫の赫怒(グラム)‼︎異の世の刃創(ドレーパ・ドレーカ)‼︎‼︎」

 

 彼女がそう叫ぶと同時に龍は彼女にこう(つぶや)きました。

 

「ああ、やっと私も死ねる。ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女は振り下ろしました、魔剣を。

 

 しかし、何故でしょうか。龍の死の姿が笑って見えたのは。龍は幸せそうな笑顔で斬られたのです。

 

 龍は倒れました。それでもまだ息はしておりました。苦しそうで、喉の傷から吸った空気がピューと音を立てて出ておらます。女の子はその悲惨な姿に怖気(おじけ)づいてしまいました。

 

 龍は苦しく、女の子に(かす)かな声でこう言うのです。

 

「ああ、苦しい。早く、私の心臓を突き刺し殺してはくれないか」

 

 まだ二十歳にもなっていない女の子にはその龍の凄惨(せいさん)な姿は衝撃的であったでしょう。自分が振った剣がこれほどの強さを秘めていたと知り、驚いたことでしょう。しかし、女の子はその剣を凄いとは思いませんでした。たった一振りでここまで(むご)たらしい切り傷を与えるこの剣が恐ろしいと思えたのです。

 

 女の子はその剣を握る力がありませんでした。剣は地面へと落下し、龍は早く殺してくれと(もだ)えながらその言葉を()うばかり、女の子はその龍の姿を見て、もう一思(ひとおも)いに殺してあげよう。そう思いました。

 

 彼女は古びた剣でなく、短い剣を龍の胸に突き刺しました。その瞬間、龍の苦しみ悶える声は聞こえなくなりました。ただ、風が洞窟をかける音しか聞こえませんで差た。

 

 胸の突き刺さった部分から勢いよく大量の血が噴き出して、その血が彼女の口の中に入ってしまったのてます、

 

 龍が地に大きな音を立てながら倒れました。女の子の手は血濡(ちぬ)れていて、その血は彼女の手から一生拭えないものとなりました。

 

 女の子は恐ろしく思えてきました。だから、財宝を取れるだけ取って、洞窟からすぐに逃げ出してきたのです。荷台に財宝を乗せて、そこから逃げ出しました。殺した、その事実に変わりがないことが彼女には恐ろしいことでした。

 

 彼女の胸の中では龍を殺すその映像が何度も何度も流れました。帰る時、ずっとその映像が頭の中から離れず恐怖に怯えておりました。

 

 いつもなら狩りで動物を殺していました。だから普通だと思っていたのです。自分でもできると思っていたのです。けれど、龍が人のようだった。人であるように、悲しみ、喜び、苦しみ、楽になるために死んでゆく。人というものを龍から教わったような気がしました。それほどまでに彼女の中から龍は消えなかったのです。

 

 彼女は龍から得た財宝の中から金色の指輪を見つけました。その指輪は人を魅了するかのように、美しい指輪でした。彼女は気を紛らわすために、その指輪をつけて、気が滅入(めい)る度にその指輪を見て元気を出しました、

 

 その指輪が彼女の全てを破滅へと(いざな)う運命の輪だとも知らずに—————

 

 洞窟から家に帰るまであと数日という時、彼女はある異変に気付きました。何処からか声が聞こえるのです。それは自分を笑うような声。そして、聞いたことのない声なのに、聞いたことのあるような声でした

 

 その声の正体は鳥でした。女の子は龍の血を口の中から取り入れてしまったので、その龍の力が彼女に宿り、彼女は鳥の言葉を理解できるようになってしまっていたのです。彼女は鳥を見ました、鳥は木の枝に居座っております。鳥は彼女のことを知っていたようです。彼女の父親は養父であることも、龍を殺したことも。

 

「お前は不幸な子だ。かわいそうに」

 

 鳥は彼女にそう言いました、彼女はその意味がわかりませんでした。だから、鳥は彼女にその意味がわかるように説明しました。

 

「お前の父親は嘘つきだ。お前に本当のことを話してはいない」

 

「それはどういうことですか?」

 

「お前の父親はその龍と兄弟なんだよ。黄金に目がくらみ二人で自分たちの父親を殺したのさ」

 

「えっ⁉︎」

 

「いいや、それだけじゃない。お前の父親と龍は黄金を得たものの、龍がその黄金を独り占めにしたのさ」

 

 その事実は彼女を失意のどん底まで叩き落としました。しかし、鳥の言ったことはまぎれもない事実でした。女の子の父親の名はレギン。龍の名はファーブニルと言います。その二人は昔、親の持つ金に目がくらみ親を殺したことがあります。しかし、ファーブニルはレギンのことを考えずに金を独占してしまい、龍の姿になってしまいました。

 

 その時、彼女の疑心の心が目覚めたのです。もしかしたら、この財宝は私を王にするためではないのかもと彼女は思い始めてしまいました。

 

 彼女はその鳥から父親の本当のことを聞いた後、記憶がないのです。ただ、目の前の思いもよらない最悪の事態で、頭が真っ白になっておりました。

 

 ただ、父親を信じたいという気持ちと、父親を信じることができないという気持ちが交錯しているのです。

 

 目の前が真っ白になっておりました。それでも、前へと歩こうとしていました…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気がつくともう彼女は家に着いていました。しかし、まだ彼女は気持ちが晴れておりません。

 

(もしかしたら、この財宝を独り占めにするのかも……、いいや、そんなことはないはず)

 

 それでも彼女は不安でした。だから、彼女はまず家の裏に財宝を乗せた荷車を置いて、自分一人だけで父親に会いに行きました。父親は彼女を見ると、無事帰ってきて嬉しいと言いました。その言葉を聞いて彼女はすごく嬉しく思いました。

 

 だから、彼女は大丈夫だと思ってしまったのです。そして、浅はかな考えだけで父親に財宝を見せてしまったのです。彼女の指にはめられた指輪がギラリと光ります。

 

 すると、父親はどうでしょうか。

 

 なんと、父親はその黄金の山に魅入られるように財宝へと近づいてゆくのです。父親はその財宝を女の子のために使うつもりでした。が、しかし、父親である男は心に決めたその思いが目の前の黄金により揺れてしまったのです。

 

 本当だったら、その財宝の半分は彼に行くはずでした。長年、その悔しさを我慢していたが、今半分どころかほぼ全部が目の前にあるのです。

 

 男は愛する娘の前でその金に囚われている姿を見せてしまったのです。それは、男にとっての失態でした。

 

 それに、疑っていた女の子はそのことに対して過敏(かびん)になっておりました。そのため、女の子は逆上(ぎゃくじょう)してしまったのです。

 

 自分が怖い思いをしてまで、この財宝を得たのです。それは父親である男を信頼していたから。なのに、男は信頼を裏切りました。それに、十数年間も彼女を騙していたのです。王の血を継ぐ者であったこと、龍は彼の兄弟であること、そして彼女が王を継ぐという計画が嘘であったこと。

 

 今まで、女の子と男が暮らしてきた時間全てが、女の子には(むな)しく感じられるものとなってしまった。裏切られたという事実を痛切に感じました。今までの全てが、嘘であったと知った時、彼女の怒りはもう限界を越えておりました。

 

「ど、どうしたんだ?」

 

「どうしたんだじゃない!私はあなたを信じていた!信じていた、なのに、あなたが言うこと全てが嘘だった!何故だ?」

 

「いや、これは嘘じゃない!ほら、お前はもうすぐで王になれる」

 

「王なんてどうだっていい!私はあなたが好きだから、あなたが喜ぶようにと思っていただけだ!なのに、あなたは、あなたは……」

 

 その時です。彼女の腰についていた古びた剣が光りだしました。(まばゆ)い光を出しながら、徐々(じょじょ)に光が強くなるのです。龍に剣撃を与えた時よりも強く光り出します、

 

 その剣は『怒り』の剣であり、怒りによりその剣の真価が発揮されるのというものてました。しかし、怒りとは無尽蔵な人の感情の一つ。つまり、怒りが尽きることはなく、怒りはどこまでも大きくなるものですり

 つまり、人が怒れば怒るほどその剣は強くなり、その限界は無いということ。

 

 そして、彼女は今までの人生の全てを否定されたのです。

 

 

 

 

 

 

 剣が彼女に問います。

 

『—————その怒りはいかほどか』

 

 

 

 

 

 

 彼女は大声を出しながら泣きました。(かせ)が外れたように泣き出したのです。

 

 しかし、それは嬉しくて泣いたわけでもないし、悲しくて泣いたわけでもありません。

 

 怒りや恨みの涙でした。

 

 彼女の思いは強すぎました。その強すぎる思いは剣を暴走させたのです。剣は彼女にこう語りかけました。

 

 

 

 

 

 

 

『面白い!今までの誰よりも面白い!良かろう!我、永劫の赫怒(グラム)の担い手はお前だ‼︎シグルド—————‼︎』

 

 その魔剣が女の子を担い手と選びました。その瞬間、辺り一面が光に包まれてしまいました。

 

 そして、光が消えた後、森はズッタズッタに斬られていました。魔剣の暴走により、男も女の子も無数の剣による切り傷を受けておりました。

 

 そのまま、二人はピクリとも動きませんでした。もう、彼らは息絶えておりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 意識が朦朧(もうろう)とする中、誰かが彼女にこう囁きました。

 

「汝、願いはあるか?」

 

 女の子はその声に(すが)るように言いました。

 

「ええ、あります」

 

 人生をやり直すために彼女はその聖杯というものに渇望しましたり

 

 そしてその声に導かれるまま彼女は歩き出しました。そして、歩き出したその先にいたのは—————。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたが私のマスターか?」

 

 

 

 

 —————これはシグルドという女の子の悲しい英雄譚である。

 


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