Fate/eternal rising [another saga] 作:Gヘッド
ライダーの一撃を退けた。ライダーは数歩後ろに下がって、雪方と並ぶ。雪方はスタンガンを構えて魔力を蓄えている。けど、魔力を蓄える時間はゆっくりとしていた。バーサーカーのマスターの少年は紙の
多分、あの技は魔術の基本的な超初歩技術である『強化』。その強化を極めた、それが彼女の技である。
が、やはり雪方の技をまともに食らってしまうと、セイバーみたいになってしまう。いや、セイバーは彼女の忍耐的強さあって痺れるだけで済んでいるが、本当だったら死んでる。あれはもう雷だ。
俺は地面に這いつくばっているセイバーを見た。セイバーはまだ身体中が痺れているみたいで、立てない。頑張って立とうとしているけど、体に力が入らない。四肢が彼女の言うことに従おうとしないのに、彼女の頑張る姿がそこにあった。
「おい、セイバー。少し休んでろ。今は無理だ。ライダーは俺がやる。だから、見てろ」
俺はセイバーに背を向けた。すると、セイバーは
「ア◾︎◾︎アァ◾︎ヴヴヴ◾︎◾︎◾︎◾︎グガァァァ◾︎◾︎‼︎」
セイバーはまだ痺れて全然動かないはずの腕を地面に垂直に立てて、顔を真っ赤にして、血眼のような目をして、立ち上がろうとしている。彼女は涙を目に浮かべながらも、コンクリートの道路を握りしめて、膝を立てようと剣を握っている。その姿、まるで命をかけているかのように、いや、それ以上の何か大きな
セイバーのその行動は異常としか言いようがなかった。その行動には雪方も、ライダーも目を疑う。普通、こうなってしまったら、死を認めるのにそれでも彼女は諦めない。諦めないからこそ、彼女は血を、涙を流し、苦しみ、悲しみ、
「グア◾︎◾︎◾︎ヴヴアァア◾︎ァアヴ◾︎◾︎ァ◾︎ァァ‼︎」
ここでリタイアしても、次の聖杯戦争を待てばいい。なのに、彼女は呻き
(なぁ、セイバー。お前の望みって、お前をそんな姿にさせるほどのものなのかよ。お前、おかしいよ)
俺とセイバーは仲直りをした次の日。夜の零時のことであった。爺ちゃんも寝て、その日は面白い深夜番組もやってないから早く寝ようとベットの上に寝っ転がった。携帯でみんなと連絡をとって、いざ寝ようという時に、セイバーは実体化した。
「おいおい、今、実体化すんなよ。約束だろ?爺ちゃんが家にいる時は実体化しないって」
「いや、そうなんですけど……その……私、ヨウ、あなたに話さなければならないことがあるのです」
セイバーは真剣な表情で俺の前に現れる。俺はそんなセイバーを茶化したが、セイバーはそんな俺を白い目で見る。その様子から、彼女はガチの大事なことを話そうとしていることを察した。
セイバーは床に正座している。だから、俺も床にあぐらをかく。あくまで俺はサーヴァントを人として見ようと考えていた。対等な立場で、対等な目線で見ようと決心していた。
「で、俺に用って何だ?」
「その、望み……についてです」
望み。ほぼ全員のマスター、サーヴァントが望みを叶えたいがために聖杯戦争に参加する。巻き込まれてしまった俺には今の所、聖杯に叶えて欲しい望みなんてない。けれど、セイバーは自ら聖杯戦争に参加することを決心してここにいるわけだ。つまり、彼女は望みがある。そう考えてもよい。
「この先、何があってもわからない。もしかしたら、今日、襲われて殺されるかもしれない。だから、今、ここで腹を割って話し合ったほうがいい。そう思うのです」
セイバーは素直に俺に願い出た。手を下につけて、頭を下げた。どこの人でも、願い出る時は自分を低く見せるために頭を下げるのだ。そう思ってしまった。
「やだね」
俺はセイバーにそう言った。セイバーはなんでなのかと反論した。
なんでなのか。別に、互いに自らの望みを話し合い、本当の自分を腹を割って語る。それもいいかもしれない。いや、多分それは聖杯戦争で生き残るために一番大事なことなのかもしれない。
「でも、セイバー。俺はこの聖杯戦争に望んで参戦したわけじゃないし、望みもない。だから、お前が話しても俺がお前に話すことなんて何にもない」
俺はあくまで対等であることを願う。サーヴァントは使役する式神みたいなものでもなければ、奴隷でもない。元々、人であったけど、人じゃないっていう考え方にも賛成できない。
サーヴァントも人である。笑い、泣き、苦しみ、楽しみ、怒り、驚嘆し、そして今を生きている。彼女たちは自分で脚を持っていて、自分で歩ける。それは、人であり、それ以外の何者でもない。
「何で、お前が頭を下げんだ。自分で選ぶのはいいけれど、俺といる時だけは頭を上げろ。対等でいろ」
セイバーは頭を上げた。そして、笑いかけた。
「私は、あなたがマスターで良かったのかもしれません。人を殺すために剣を振ってはこなかった。だから、人殺しのために磨かれた剣技ではないので、この聖杯戦争では最弱のサーヴァント。そう呼ばれても仕方がない。そんな私は、言ってしまえばお荷物でしかない。普通、そんなサーヴァントは盾としてしか使えないでしょう。でも、あなたは、そんな私に対等でいろと言うのです。ありがとう」
「……媚びへつらうなよ」
「…………」
「…………」
「照れてますか?」
「照れてねぇよ!」
あぁ、もう何でだろうか。いつもセイギとか雪方とかなら言い返せるのに、セイバーにそんなこと言われると言い返すことができん。普段そんなこと言われないから、なんか恥ずかしい。
「ま、まぁ、ともかく、望みだ。望み。俺の望みはもう知ってるだろ?」
「ええ、知ってるも何も、
「いや、あるぞ。俺にも望み」
「えっ⁉︎でも、さっき、望みがないって言ったじゃないですか!」
「いや、あれはないようで、あるんだよ」
「意味わかりませんよ!」
セイバーはプンスカプンスカ怒っている。と言っても、別に本気で怒ってるわけじゃない。からかわれていることにムスッとしているけど、別に喧嘩ってほどじゃない。ただ、段々とセイバーは『人と話す』ってことを覚えつつある。今までそっけない返答しかなかった。多分、それは過去に関係があるはずだと思う。
セイバーは三つの剣と黄金の鎧、青銅の兜を取り出した。そして、それを俺の目の前に置いた。三つの剣はレイピアと短剣、そして古びた大きな剣。多分、この大きな剣はグラディウスソードか、それに近いタイプのやつだと思う。
セイバーは少しだけ嫌そうな顔をした。何かを思い出してしまったのだろう。それは彼女にとっての悲しい、悲惨な出来事。だと思う。
けど、英雄なんて大体の人は英雄なんて言われながらも結局死んでしまうか、悲しい思いをするのである。いい話だけの英雄なんて百文字で語れるくらいの英雄
つまり、言ってしまえば彼女は何か辛いことがあった。そう言えるわけだ。
「辛かったら話さなくてもいい。別に今じゃなくてもいい。気持ちを落ち着かせろ」
「……でも、それじゃ、ダメなんです」
「ん?ダメ?何でだ?」
俺がそう聞くと、セイバーは自分の胸ぐらを掴む。いや、それは彼女の心を掴んでいた。
「その、心が苦しくなるんです。何ででしょうか」
「いや、俺にお前のこと聞かれても分からねぇよ。まぁ、どうせアレだろ?喋りたいっていう思いだろ?ほら、あるじゃん。自分の方が優越な立場に立ってる時、なんか言いふらしたいよな。けど、そういう時って、本当は自分の方が下なんだよな」
「いや、そういう事じゃないんです」
「じゃぁ、どういう事だよ」
「……わかりません」
セイバーに謝られた俺は頭を抱える。単語力に
「まぁ、とにかく、そんなことを考えていたってキリがありません」
そりゃ、単語力ゼロのお前の言葉なんて聞いてたら矛盾してしまうわ。
「では、話します。私の過去を————
————
そんな感じで始めんのかい‼︎