Fate/eternal rising [another saga]   作:Gヘッド

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はい!Gヘッドです!

さぁ、今回はちょっと強引にしてしまいましたが、そのおかげで次話はバトルになりそうです。それに、あと数話でセイバーちゃんの真名が……。


その感情が聖杯戦争をスクロールする

 やばいやばいやばいやばいやばい。

 

 とにかくやばい‼︎

 

 今日、アーチャーが俺たちの答えを聞きに来る日だとばかり思っていたから忘れていた。来週、テストある!二学期の期末試験が来週から始まるんじゃん。聖杯戦争のせいで忘れていた。

 

 試験期間一週間前から宿題が出されている。が、しかし宿題なんてもちろんやってるわけがない。宿題?やるわけないじゃん。んなめんどいの。

 

「おい!月城!宿題をやれ!」

 

 数学担任の白葉(しらば)先生が俺にすごく強く怒る。まぁ、確かにさ、クラスの中で宿題をやってないのは俺だけだけどさ……。

 

 また、職員室で言われるのは勘弁である。他の先生にも俺が宿題をやっていないということがばれてしまう。それは後々面倒くさくなりそうで嫌だ。

 

 ……別に宿題なんて……。

 

 そうだよ!宿題なんて!

 

「おい、月城、何を考えている?」

 

「やだなぁ〜、そんな悪しきことなんて微塵も考えておりませ〜ん」

 

「そうか、なら……」

 

 白葉は自分の机からプリントを十枚ほど取って俺に渡す。で、俺はそのプリントを受け取ってしまう。

 

「よし、じゃぁ、お前、これをやれ」

 

「……は?」

 

「プリント全部ちゃんと解いてこい」

 

 白葉がそう言うので、俺はプリントをパラパラと見てみた。そしたら、なんと驚くべきことに、めちゃくちゃ難しいではないか。それに、答えが入っていない!

 

「その、先生?お、お答えはどちらにあるんでしょうか?」

 

「は?答えなどいらん。私が採点してやる。これは試験の範囲だ。今日中に、放課後を使って仕上げろ。わかったな?」

 

「……ウィッス」

 

 

 

 

 

 ということで、今現在、教室で軟禁状態にあっている。数学の教科書を広げ、ページの少ない方にペンケースを置く。シャーペンと消しゴムを出してはいるのだが、どうも勉強できない。というより、したくない。

 

 俺は窓の外をぼぉっと眺めていた。一人きりの教室、シャーペンをクルクルと回しながら、物思いにふける。セイバーには話しかけないでくれ、そう言った。勉強をする気はないが、椅子には座っていた。

 

 数式の文字列を見て、吐きそうになる。何で、こんなことをするのか。人生で、これが必要なのか?そう思えてしまう。そう思ってしまい、やってもいい意味がないと考えてしまう。大学に行く進学するための道具でしかないのに、何で勉強をしないといけないのか。素朴な疑問である。

 

 勉強がしたくない、する気がないというよりも、する気が起きないのである。ましてや、いい大学に入った方が人生幸せかとも思う時がある。それ以前に、いい大学って何なのかがわからない。

 

 わからないから、先が見えないから俺は勉強できない。多分、これは屁理屈(へりくつ)と言われてしまえば、そうなるかもしれない。けど、そう感じてしまう。こんな年で、何で人生を決めさせられなきゃいけないのか。反抗心の塊、それがこの年の特徴なのかもしれない。

 

 俺が時計の秒針の回りを見ていたら、ドアがガラガラと開いた。そこにいたのは雪方(ゆきかた)である。雪方は重そうな荷物を持っていた。

 

 俺と雪方は目があった瞬間、二人で「あっ」と声を上げてしまった。そう、これにはいろいろな事情があるのである。

 

「重そうだな、持とうか?」

 

「いや、大丈夫……。これぐらい持てる……」

 

 彼女は頑張って重そうな荷物を教卓の上に置く。彼女は荷物を置くと、チラッと俺の方を見た。

 

「なんだよ……」

 

「いや……その……何でもない」

 

 俺は彼女のことをじいっと見つめる。が、彼女は俺と目を合わせようとしない。嫌われてしまったのだろうか?

 

 彼女は荷物の中から学級日誌を取り出した。そういえば、今日は彼女が日直である。

 

「なぁ、俺のこと、避けてる?」

 

「い、いや……そんなこと、無い……から」

 

 雪方はそう言うけれども、俺には思い当たる(ふし)がある。だから、少しだけ彼女に対して俺は敏感なのである。

 

「……本当に?」

 

「う、うん……」

 

 でも、彼女は俺と目を合わそうとしてくれない。それどころか、顔も上げようとしない。これは、多分全面的な拒否、拒絶だろう。

 

 俺は静かに勉強をしようと思った。感じる罪悪感を勉強へのやる気に変換しようとする。無心だったけど、彼女が来てからシャーペンが動いた。

 

 人が無心である時、無心ではない。常に下心満載の動物である。罪悪感から逃げようという下心によってシャーペンが動いているのである。

 

 が、やっぱりそんなに頭の出来が良くない俺にはわからない問題がいくつか出てくる。白葉にわからないと言えば、自分で考えろと追い返されるだろう。

 

 雪方を見た。そしたら、雪方は俺の方を見ていた。俺が彼女に視線を向けた瞬間、何事もなかったかのように視線をそらす。

 

「おい、どうした?」

 

「いや、べ、別に……何にもない」

 

「まぁ、いいや。それよりさ、これ、教えてくんね?わかんないんだよ」

 

 俺は雪方に問題を見せる。成績優秀な雪方ならこんな問題、簡単に解いてしまうだろう。

 

 雪方は俺のお願いに、首を縦に振った。彼女の長い後ろ髪が少し揺れる。ゆっくりと近づいてきて、俺の前の席に座った。俺と雪方は机を挟むように座る。夕方の日の光が机の上に()し込む。

 

 頬杖(ほおづえ)をついていた俺と雪方との顔の距離は自然と近い。ある感情が湧くことを察する二人は、何もなかったかのように顔を背け合う。

 

 俺はセイバーの過去を知っているが、セイバーは俺の過去を隅々まで詳しくは知らない。過去に俺がどんなことにあったのか、それを俺は詳しく教えてないからこの時間のことなんて理解できない。理解できないからこそ、彼女には辛い。

 

 ある感情を知らぬ者はその感情をどうすればいいのかを知らない。ましてや、それが何なのかも知らない。ただ、胸を焼き焦がす何か熱いもの、そうとしか感じないだろう。知らないその感情が関係をこじらせ全てを壊す。その先にあるのは何であろうか?

 

 —————人は、その感情を—と呼ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雪方は教えるのが上手かった。何にもわからない俺でも勉強がスラスラと解けた。白葉から出されていたプリントは全て終わった。

 

 白葉にプリントを出しに行くと、白葉は少しだけ驚いていた。が、俺の後ろに雪方がいるのを見ると、合点がいくようで、笑いながらもため息を吐いた。

 

 けど、やっぱり俺に勉強を教えるのは時間がかかった。もう六時半である。校内には下校の時刻だと言うアナウンスが放送されている。もう冬だから、空は暗い。少しばかりだが、星が見える。

 

 学校を出て少し経った。

 

 暗い中街灯が照らす下に、自転車のチェーンの音が聞こえる。自転車を押す俺の後ろには雪方がいる。お互い並ばず、一歩離れて歩いていた。

 

「ごめん、帰るの引き止めて」

 

「いやいや、そんな謝られるほどじゃないよ。ほら、来週テストだし、いい見直しになったよ」

 

「そうは言ってもさ……その……ごめん」

 

 その言葉っきり、俺たちはあまり喋らない。別に喋りたくないわけじゃない。ただ、少し照れくさい。過去には色々なことがあるから、だから、それを思い出すと照れくさくなる。

 

 でも、やっぱりその雰囲気が嫌だから、何か話そうと話そうと話題を探る。

 

「そのさ、なんか、この頃いいことあった?」

 

「……いや、ないよ。ヨウは?」

 

「俺か?俺は……ない……かな。……あっ、いや、一個だけあるわ」

 

「えっ?」

 

「仲間に、会えた」

 

「仲間?」

 

 俺は雪方に笑顔を見せた。すると、彼女は少し悲しい顔をする。その顔がなぜそうなったのか俺にはわからなかった。ただ、その時の彼女は少しだけ様子がおかしいのである。下を向き、歯を食いしばり、手を握りしめて、何かを堪えているように見えた。

 

「ヨウはさ、間違ってるよ……そんなの……」

 

「……えっ?どうしたんだよ」

 

 雪方は俺から急に離れようとする。その時、俺は彼女の手を引き止めた。どうしたのだと問いながら。その手の甲のあるものを見てしまった。

 

 見てしまったのだ。

 

「危ない!ヨウ‼︎避けて‼︎」

 

 セイバーの声が聞こえた。大声である。その焦ったような声は俺をとっさに動かした。雪方を握る手を緩め、俺は後ろに回避行動をとる。

 

 上から影のようなものが見えた。セイバーは俺の目の前で実体化する。俺はその現実をとっさに理解できてしまった。

 

 —————雪方の手の甲にある令呪を見て。

 

 黒い影はセイバーに向かって大きく何かを振り回した。セイバーは剣でその攻撃を受ける。しかし、その影がふり回すものが大きい。だから、彼女は弾かれてしまう。

 

 それでも、身の動きはサーヴァントである。吹き飛ばされたと思えば、軽やかな身のこなしでまたすぐに体勢を立て直し、剣を構える。

 

 街灯の光の下に来た影の姿がはっきりと見えた。金髪で目つきが悪くて、まるで原作のギルガメッシュみたいな顔をしてやがる‼︎

 

 そのギルガメッシュみたいな顔の奴はトンファーを握っている。が、トンファーと言っても、短くて細い棒ではない。一メートルよりも少し大きくて、めちゃくちゃ図太い棒。丸太を半分で割ったような感じで、もう棒というよりもすごく大きい木片。その木片を全力で振ったから、地面には大きな凹み(へこみ)ができていた。

 

 雪方はギルガメッシュ似の男にこう言った。

 

「ライダー、ヨウは、ヨウは殺さないで……お願いだから」

 

 


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