Fate/eternal rising [another saga]   作:Gヘッド

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もうすぐで、バトル回が来そう。


VSライダー
互いに知って……


 今日、アーチャーが俺たちの決断を聞きに来る。誘いに乗るか、()るか。でも、まだ俺とセイバーは決めかねていた。

 

 昼休み、俺は屋上にいた。誰もいないことを確認して、ドアの鍵を閉めて、俺はセイバーを実体化させる。セイバーは実体化すると、まず周囲に誰もいないことを確認した。

 

 セイバーは俺の方を見た。けど、前までの目つきではない。何処か穏やかな、そしで何処か自分と同じ目を持っている。

 

 俺たち二人が仲直りをしてから、俺もセイバーも互いへの感情の向け方が以前と違うものになった。昨日、俺とセイバーの二人で話し合った。それは聖杯戦争に参加してしまった俺たちが生き残るために一番大切なこと。

 

『自分を相手に伝える』ことである。

 

 それは、言ってしまえば、俺もセイバーも思い出したくもない辛い過去を思い出さなければならないことであった。けど、二人の選択はこうだった。

 

『過去を踏みしめてこそ、今を向くことができる』

 

 だから、今の俺はセイバーの全てを知っているし、セイバーも俺の過去を知っている。互いを知る。それは多分、悪い選択じゃないと思う。互いを知るからこそ、この聖杯戦争を二人で頑張れる。そう思う。

 

 俺は自分で作った弁当を二つ持ってきている。一つは自分用。で、もう一つは……。

 

「ほい、セイバーの分」

 

「えっ?私はいいですよ。別に食べなくても魔力供給さえあれば……」

 

「いや、一応作ってきちゃったから。ほい」

 

 俺はセイバーの手にポンッと置く。で、俺は自分の弁当の包みを膝の上で開いて食べる。フタを開ける。今日はハンバーグ弁当。現代のメシを食ったことのないセイバーでも食べられるだろうと思ってこの弁当にした。

 

 箸でハンバーグを小さく分けて、その一個を口へと入れる。

 

 ……うん。美味い。お弁当だから冷めちゃうと思って柔らかめにしておいてよかったぜ。少し濃い目の味付けにしてるから、ご飯がよく合う。これぞ、ご飯がすすむってやつですな。

 

 俺は恐る恐るセイバーの方を見る。「マズイ!」なんて言われたらどうしようと内心ビクビクしながら彼女を見た。

 

 彼女はお弁当の包みを広げて、フタも開けている。が、足元には箸が落ちていた。

 

「え?どうやって食ってる?」

 

 彼女はお弁当の中に手を突っ込んで食べている。見てみれば右手はハンバーグソースでベチョベチョ。で、白米には一切手をつけていない。

 

「ああ‼︎そうだったぁぁぁぁ!こいつ……。……チッ‼︎」

 

 俺が舌打ちをつくと、セイバーは俺の顔色を(うかが)う。よく見てみると、唇にもべっとりと茶色いハンバーグソースが付いているではないか。しかも、服を汚している。結局、その服を選択するのは俺である。ハンバーグソースはガチで落ちにくい。しかも、今ここは学校である。さすがにセイバーに服を脱いでとなると、そりゃまた別の問題が発生してくる。時間が経てば経つほどハンバーグソースは落ちにくくなる。けど、どうしようもできない。

 

 イライライライライライライライラ。

 

 このイライラをセイバーに向けたいところだが、これはセイバーのせいではない(と思いたい)。文化の違い、そして時代の違いを考慮していなかった俺の責任である。箸ではなく、スプーンとフォーク。白米ではなく、パン。その他諸々(もろもろ)

 

 そう、これは彼女が臨機応変に対応すればよかった(全て俺の責任であるはずだ)と思いたい。俺は悪くない(俺が悪いんだ)。そう心の中で念を押した。

 

「わかった。セイバー。口を開けろ」

 

「何かいやらしい事でもするのですか?」

 

「お前、俺をどう見ている?」

 

「おっ……」

「そろそろ諦めろ」

 

 とにかく、これ以上セイバーの相手をしているのも面倒なので、俺の小分けにしたハンバーグを一個、彼女の口の中に入れる。

 

「…………」

 

「…………」

 

「いや、いつまで口開けてんだよ。さっさと閉じて味わえ」

 

 この頃、セイバーは頭のネジが何本か抜けている人だと気付いた。最初、俺をアーチャーから助けてくれた印象が強いのであろうか。彼女は堅い人ではあるが、なんでも出来る人なんだなと思っていた。

 

 そう、思っているだけでおしまいである。本当は結構天然である。イカとタコ・塩と片栗粉を間違え、洗濯物を干せと言えば地面にペラって置いておくし、自分の剣も間違えるし。

 

 セイバーの方を見る。セイバーは幸福そうな顔をしている。

 

「おーい、セイバー」

 

「ウフフッ……」

 

「おい、セイバー」

 

「グフフフ……」

 

「セイバー……」

 

「ウフッ‼︎」

 

「セイバー‼︎」

 

「ハァァイッ⁉︎え、な、な、何ですか?」

 

「いや、話聞いてないから」

 

 セイバーは少し肩を狭くする。その姿を見ると、なんか自分がセイバーをいじめているように思えてしまう。というより、なんか少しだけ張り合いがない。それが物足りなく感じてしまう。

 

「それよりさ、どうする?」

 

「アーチャーとの件ですか?」

 

 俺は縦に首を振る。セイバーはアーチャーの提案には反対である。しかし、やはり手を組むということはメリットもある。だから、セイバーはそれほど強く反対しているというわけではない。

 

「やっぱりアーチャーは私たちの命を狙ってきました。それは一度であったとしても、狙われたことは事実。私は、そのような人を信用はできない」

 

「そうなんだよ……。そうなんだけどさぁ……、手を組んだらアーチャーたちから攻撃されないわけじゃん?」

 

「いや、そうとは限りません。裏切るという可能性もあります」

 

 セイバーは少し暗鬱(あんうつ)になる。それは無理もない、そう今なら思えた。俺とは少し似ている、だから、彼女の気持ちが分かる。

 

「人って、己のためならば……誰でも裏切れます。そんなものなんです……」

 

 場が少しだけ暗くなる。もちろん、そんなつもりはないんだろう。それに、そうなってしまっても仕方がない。二人とも互いのことを知っているから、相手に気を配ってしまう。気を配ってしまうからこそ、好き勝手言おうとは思わない。

 

「よ、ヨウは……、ヨウはおかしいと思いませんか?アーチャーのことについて」

 

「まぁ、思う。思うぞ、あいつは多分強い。なら、俺たちみたいな弱小と組んでも意味ない。なら、なぜアーチャーのマスターは俺たちと手を組もうとしたのか。そして、アーチャーのマスターは誰なのか……。それが、多分知らないといけないことなんだ……」

 

 俺とセイバーが話していたら、鍵を閉めた屋上のドアを誰かが叩いた。俺はセイバーを霊体化させ、そぉっとドアの鍵を開けた。そこにいたのはセイギである。

 

「やっぱりヨウ、ここにいたんだ」

 

「ああ、そうだけど……何?」

 

「いや、ヨウとセイバーの様子を見に来た」

 

「別に大丈夫だよ。上手くやってる」

 

「そう。それは良かった」

 

 セイギは屋上に出ると、緑色の金網(フェンス)に手をかけて、外を見る。そよ風が金網を抜けて、心地よい具合に体を()でる。

 

「ヨウ、ここ好きだね」

 

「まぁな」

 

「見渡せるから?」

 

「さぁ、何でだろうね。人が全然来ないからじゃない?」

 

「あはは、まぁ離れの棟だし人は来ないかもね」

 

 セイギは俺の弁当に入ってる食べ物を食べようとした。が、残念ながらハンバーグはもう食べ終わっている。それを知ると、少しだけ機嫌を損ねる。

 

「えぇ、食べられないの?」

 

「いや、俺のせいじゃないだろ、ここに来るのが遅いお前が悪い」

 

「えぇ〜」

 

「飯は食ったんだろ?」

 

「うん」

 

 じゃぁ、人から食い物を取ろうとするなよ。なんで、俺から食い物を取ろうとするんだよ。食い物の恨みは恐ろしいんだからな。

 

「そういえばさ、お前って師匠さんがこの前顔見せたんだろ?」

 

「うん。そうだよ。何年間も音信不通だったから、僕の目の前に現れた時は驚いちゃった」

 

「今、その人っている?話したいことがあるんだけどさ」

 

 俺は前回の聖杯戦争のことが聞きたかった。なら、前回の聖杯戦争に参加していたらしいセイギの師匠に聞けば、俺の親のことが少しならわかるかもしれない。そう思っていた。

 

 けど、セイギの顔は難しい顔であった。

 

「う〜ん。それがさ、また師匠、どっかに消えちゃったらしいんだ」

 

「また、消えたのか?」

 

「うん。勝手にまた目の前から消えた。そんな人じゃないんだけどね」

 

 セイギは頭をぽりぽりとかく。少し悔しそうに、その顔を笑みで補おうとしている。その笑みは少しだけ、見る人を切なくする。

 

 セイギは教室の方に戻ると言いだした。

 

「あと、言っておくけど、盗み聞きはよくないよ」

 

「え?」

 

 俺はその言葉の意味がよく分からずにいた。もちろん、それは俺に対して言った言葉ではない。でも、セイギの顔は聖杯戦争の時の顔であった。それが、何かやばいと俺を思わせた。

 

 


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