Fate/eternal rising [another saga]   作:Gヘッド

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はい!Gヘッドです。

自己紹介の所に、今までサーヴァントたちが殺した人数もプラスしておきました。


狂者

 小さい頃、初めて鈴鹿に会った時、鈴鹿は泣いていた。初対面なのに彼女は俺の前でボロボロと大粒の涙を流した。その涙は俺の体をすり抜けて心に入ってきた。

 

 幼い俺もそれでもらい泣きした。なんか分かんないけど、悲しくなったんだ。幼い頃だから感情のコントロールが下手っていうのもあるけど、それ以前に何処か懐かしいものが感じられたような気がする。

 

 その場に第三者がいたなら物凄い奇妙な光景である。小さな男の子と幽霊の女性が会ってすぐに泣き出しているのである。

 

 鈴鹿は幽霊だけど、俺には、彼女が人間の女性と変わらない、いやそれ以上の存在のような気がする。幽霊だから体はない。けれど彼女に抱かれた時にすごく恋しい温かさがあった。体には触っていない。けれど彼女の心に触れた。

 

 今思えば、彼女があの時何で泣いていたのかが疑問に思う。いきなりばったりと会って、彼女は涙を流し始めたのだから。

 

 それが鈴鹿と最初に出会った時の記憶であり、今覚えている中では一番古い記憶。

 

 彼女に会ってから、俺は神零山に寄るのが日課となってしまった。別に鈴鹿のことが好きなわけではない。ただ、彼女が俺を抱きしめた時のあの涙が未だに俺の心に残っているから。

 

「負けて何になる?」

 

 その言葉、鈴鹿が俺を抱き締めて、泣きながら呟いた言葉だった。彼女らしくない言葉がその時俺の心の中に落ちてきて、心の中に芽生えた。ふと鈴鹿の心の中からの一言が俺の中で生きている。

 

 

 

 

 セイバーは俺のやる気のない言葉に(かつ)を入れようとした。どうしても、俺と剣を交えたいらしい。その思いは目に見える。けど、俺はそれに(こた)えない。

 

「ヨウは『戦う』という事を知らないからそういうことが言えるんです」

 

 セイバーの言葉は本当に痛い言葉であった。俺は『戦う』という事を知らない。俺が知っているのは『戦う者の後ろにいる者』であり、当事者になったことはない。

 

「じゃぁ、お前は『戦う』って事を知ってんのか?」

 

「ええ、知っていますよ。少なくともヨウよりかは」

 

 セイバーは英霊の一人。だとしても、戦ったことのない英霊だってこの世にはたくんいる。セイバーは戦ったことがあると言った。けれど、もしかしたらセイバーは戦ったことはないのかもしれない。

 

  『真実』はいつも当事者の知らないところで決まるから。

 

  『真実』とは(おのれ)だ。己を見るのは辛いけど、それでも己を見る。それこそが本当の『戦う』ことだと思ってる。

 

「セイバー、お前は自分のことをどう思うよ?お前は己を見たことがあるのか?」

 

 俺は見たことがある。

 

 自分は『足を一歩踏み出せていない』。それが己だと思っている。足を一歩踏み出す勇気なく、一人ぼっちになってしまった者と思っている。一歩踏み出す恐怖に打ち勝てない。それが俺だと理解している。

 

 お前はどうなんだ?セイバー。

 

 俺はセイバーを鼻で笑っていた。どうせ己を知らぬ愚か者とばかり思っていた。けど、本当の愚か者はどちらなのか、思い知らされた。

 

「わ、私は……、知っています、自分を……」

 

 セイバーの返答は少し遅かった。歯で唇を噛み締めて、何かを(こら)えているかのような目をする。下を向き、俺から顔をそらす。持っていた剣はガタガタと揺れた。

 

 目の前にいる彼女のその姿が俺には意外でならなかった。ただ、正論をポンポンと並べているだけかと思っていた。

 

 けど、違った。

 

 彼女にも苦しいことはあるんだって思った。辛い思いが喉奥から爆発しそうなのに、それをぐっと耐えて飲み込んでいる。胸が張り裂けんばかりの苦しみを彼女は抱き続けているのかもしれない。

 

 辛いのは俺だけだと思ってた。けど、彼女も辛いことがあり、それを知らずに俺は全てを知った気でいた。そんな自分を今、少しだけ恥じる。

 

 小さい頃、両親がいないということを受け入れることができなかった俺の姿にセイバーは似ている。誰にも言わず、ただ喉の奥にしまいこんで何も言わない。けれど、心の中はドス黒い何かで飽和状態なのである。

 

「ごめん、言い過ぎた」

 

 俺は心の底からそう思った。そう思ったからセイバーにあわせる顔がないと思ってしまい、俺は後ろを向く。

 

 くそ、俺らしくない……。

 

 口喧嘩で負けるなんて久しぶりである。

 

 何となく、セイバーを昔の自分と見てしまったから、責めるのをためらった。半分懐かしく思い、半分同情してしまった。

 

 俺は自分の胸に手を置き、こう呟いた。

 

「クールに行こう、俺」

 

 静かな独り言は心の中に少しだけ余裕をもたせた。パンパンに破裂しそうな心の中に隙間を作った。心が破裂しないように。

 

 人の心はみんなパンパンに膨れ上がっている。色々なことを思い、色々なことを感じて、人の心というものは出来上がってゆく。だから、人の心は常に破裂寸前。そんな心にポッカリと隙間を作ったら、俺の心は小さくなる。

 

 胸が苦しくなった。また自分で自分に暗示をかけていることが恥ずかしい。ポッカリと空いた隙間が俺を悲しくする。

 

 心の隙間を埋めるものは何かないのか?と心が騒いでいる。心は破裂寸前まで膨れ上がることを望んでいる。

 

 でも、もう俺の心を埋めるものなんてない。いや、元々ないのかもしれない。辛いな、何にもないって……。

 

 突然鈴鹿は何かを察知したようで、鋭い眼光で辺りをざっと見回す。背に背負った剣の柄を握り、いつでも敵を切れる体勢である。

 

「誰かいるな。誰だ?姿を現せ」

 

 その声に俺とセイバーも辺りを警戒する。でも、素人の俺が辺りを警戒したところで人の気配を感じることはできやしない。感じるのは寒い冬の冷気である。

 

 木の後ろから人が出てきた。アーチャーである。アーチャーは両手を頭の高さまで上げて笑っている。

 

「ハッハ、ばれたか。ばれないと思ったんだがな」

 

「ッ⁉︎アーチャー?なぜ貴方がそこにいる?」

 

「ああ、何となく最弱コンビがどんな感じでやってるか見に来ただけだ」

 

 挑発であろうか、彼は俺たちのことを『最弱コンビ』と呼んだ。別にそれに対して怒りはないが、俺たちが最弱ということについては意外の一言である。

 

「そういえばお前ら喧嘩してたな。邪魔だったか?」

 

「いや、全然」

 

 俺がそう言うとアーチャーはポケットの中から写真を一枚ペラリと出した。そして、その写真を俺の足元に投げる。俺はその写真を見た。そこに写っていたのは人の腕である。胴体から引き裂かれた一本の腕が写真に写っている。その腕の手の甲には令呪が刻まれていた。でも、その令呪は血に濡れて見分けがつきにくい。

 

 アーチャーは俺にその写真を見せると、今度は手紙を俺に渡した。その手紙は手書きである。綺麗な字であった。多分、この字は書道とかそういう(たぐい)のことをやっている人の字。

 

 その手紙に書かれていた内容を要約してしまえばこうである。

 

『聖杯戦争を手っ取り早く終わらせるために手を貸してほしい』

 

 アーチャーが俺に渡した手紙の最後にはこう書かれていた。『私は望みなんかいらない』と。その言葉を少し疑った。望みがないのに聖杯戦争に参戦する意味があるのかと。

 

「すまないな。突然だが、俺のマスターはお前らと手を組む事を望んでいるんだ」

 

「手を組む?アーチャー、貴方の言っていることはおかしい。昨日はいきなり私たちのことを殺そうとしていたじゃないですか」

 

 セイバーの言っていることはもっともである。アーチャーはいきなり俺たちを殺そうとした。そして、一日経って、(てのひら)返して手を組もうとしても信用できやしない。

 

「ああ、あれは俺の勝手な判断だ。元々はセイバーが召喚される前に魔法陣を潰せと言われていたんだが、召喚されてしまった。だから、俺のマスターにバレないようにお前らを殺そうとしたんだ。まぁ、マスターの近くにいないから魔力供給はないし、ロクに戦えもしないから逃げたんだがな」

 

「じゃぁ、今回の判断はお前じゃなくてマスターの判断だと?」

 

「ああ、そうだ。俺はどことも組みたくはなかったんだが、マスターはこの聖杯戦争を早く終わらせたいらしくてな。だから、こうしてここに来た」

 

 このアーチャーの説明。聖杯戦争のことを何も知らない俺は簡単に飲み込んでしまったが、セイバーと鈴鹿は何かが気に食わないような顔をしている。

 

「アーチャーと言ったな?お前が言っていることで少し気になることがあるのだが……」

 

「ああ、特に差し(つか)えなければ聞くが、お前は誰だ?サーヴァントか?」

 

「いいや、私はサーヴァントなんかじゃない。ただの幽霊だ」

 

 鈴鹿はそう言うと少し顔を変えた。険しく、少しだけ辛そうな顔になった。

 

「お前のマスターはなぜ魔法陣の場所が分かったのだ?魔法陣の場所を特定するのは難しいと思うが。聖杯戦争のサーヴァントの魔法陣なんか相手にバレたくもないから特に見つかりにくいところに作成する。それに、この街の中からピンポイントに見つける事ができる魔術師など世界でも数えられるくらいしかいないはず」

 

 アーチャーは鈴鹿の鋭い洞察力には驚いているようである。しかし、何かを疑問に思ったのか、アーチャーは腰の後ろにつけているクロスボウを鈴鹿に向け放った。

 

 でも、鈴鹿はその攻撃に反応し、背負った三本の剣のうちの一本を瞬時に選びそれを引き抜いた。そして引き抜きながらアーチャーの放った矢を叩き落とした。鈴鹿の引き抜いた刀は鈍い金属光沢を放っている。

 

 その姿をアーチャーは見極めるかのように真剣な目で見ていた。そしてアーチャーは鈴鹿のことをこう言った。

 

「紛らわしいのはお前だな」

 

 そう言われた鈴鹿もアーチャーのことをジロッと見る。今まで見たことないほど殺気立った目つきである。

 

 場の空気が凍りつく。殺意がそこに渦巻いていた。けど、アーチャーは鋭い目つきをしながらも笑っていた。なぜ笑っていたのかは正直、今回の聖杯戦争のことを何も知らない俺は分からなかった。けど、アーチャーの笑みは彼を幸福そうに見せていた。

 

「ああ、その殺意ある目、好きだぞ。死闘って感じがする……」

 

 アーチャーはニタニタと笑う。その不気味さが(おぞ)ましい。鈴鹿は剣を(さや)に収める。そしてこう言った。

 

「鬼め」

 

 鬼が武器を納める。けど、俺とセイバーは警戒を解くことはできなかった。

 

 獣が獲物を見るような視線であった。

 

 だが、俺はそんな顔をするアーチャーの顔が一瞬、何か他の顔に見えた。

 




じゃぁ、今回はアーチャーさんで。

アーチャー

身長:185センチ

体重:75キロ

???に召喚されたアーチャーのサーヴァント。

人と関わりを持とうとしないタイプの人。だから、あまり人と話はしないし、気に入った人以外はみんな見下す。また、物にもあまり興味を示さない人で、言ってしまえば冷たい人。

強い人が好きで、強い人と対戦することを望む。そのため、今回の聖杯戦争への望みは専らサーヴァントとの死闘であり、それ以外は特に興味ない。

マスターがいつも自分の陣地から離れようとしないため、偵察はほぼ一人。あと、マスターは結構慎重な人なので、早く戦闘をしたいと思うアーチャーとはあまり合わない様子。でも、マスターの情報量はハンパないし、魔術師としても長けているので裏切りの可能性は今の所なし。

真名は???

宝具は???

今まで殺した人数は何万人もの人。

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