Fate/eternal rising [another saga]   作:Gヘッド

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はい!Gヘッドです!

えー、もしかしたら7月はもう更新できないかもしれません。が、できるかもしれません。分かりません。



時は無慈悲に通り過ぎて

 ファミレスを出て道路を渡りユニ◯ロに来たセイバーとアサシン。セイバーとアサシンは店内に入る。セイバーは大量の衣服の数に目を奪われる。セイバーの生きていた時代は衣服の大量生産ができなかった時代なのだろうか。時代の変化をつくづくと感じるセイバーは少し寂しく思ってしまった。

 

「時が変わるとは少し寂しいものです。ヨウは『人の心は変わらない』と言っていたが、現代人はこの衣服の量を見ても何も感じない。やはり、物のありがたみを分かっていないようです……」

 

 アサシンはセイバーの背中をポンっと押した。

 

「入口のど真ん中に突っ立ってないで奥へ進むよ。そんなにいちいち感動しない。そんなんに驚くより他の物に驚いた方がよっぽどましよ。ほら、外を見てみなさいな。あの車にでも驚いてなさい」

 

 セイバーはアサシンの言われた通り、道路を見てみた。道路には車が何台もある。

 

「あれは車と言うのですか。でも、あれのどこに驚くのか私には分からないのですが……」

 

「ええっ!あれが驚かないの?私はすごく驚いたんだけど……何?それともあなた車ができた時代に生まれた?」

 

「生まれたもなにも、あれは元々世界にあるのはずですが……。もしや、アサシン。あなたは馬を見たことがないのですか?」

 

「……え?何で馬が出てくるの?」

 

「なぜ?だってあれは馬車ではないのですか?」

 

 その言葉はアサシンの度肝を抜いた。車を馬車と考えるのは現代人では想定もつかない。が、車という概念がまずない時代ではありうるかもしれない。

 

(えっ?セイバーちゃん本気で言ってるの?……かなりの重症よ……)

 

 アサシンはセイバーが嘘を言っているのだと疑う。しかし、セイバーは純粋な目でアサシンを見る。その目は嘘をついている目ではない。つまり、本気で車は馬車であると信じているのだ。

 

 時と文化の違いは怖いものである。同じ人なのにここまで考え方が違うかとアサシンは学ぶ。

 

「あのね、セイバー。あれは馬車などではないの」

 

「……え?何を言っているのですか?馬車でないわけがないじゃないですか。馬車じゃなかったらどうやって荷物を運ぶと思っているのですか?」

 

 純粋な答えと純粋な問い。アサシンは否定する自分が少し大人気ないと思った。でも、セイバーの勘違い度は異常である。さすがに徹底して直さねばならない。

 

「あれは鉄の塊よ」

 

「鉄の塊?じゃぁなんで動いているのですか?」

 

 そりゃ、そうである。過去の人にしてみたらひとりでに動く鉄の塊なんかあるはずがない。少なくとも、魔術を使わないで勝手に物が動くことなんてない。ボタン一つで動くなんて誰も思わない。

 

 時は魔術を衰退させ、科学を発展させた。まるで科学が魔術を吸い込むかのように。現代人は魔術の恩恵を知らない。けれど、これだけは言える。科学も元は魔術の一つであった。

 

 その科学の変わりように過去から来たサーヴァントは驚くであろう。大地は同じであっても、時が変われば別世界。

 

 アサシンは『車』という物をセイバーに教えてあげる。でも、セイバーは全然分からない。分からないというよりも、素直に飲み込むことができないのだ。そんなわけがなかろうって思ってしまう。だから彼女の中にはクエスチョンしか浮かばない。アサシンが言っている言葉が別の言語に聞こえてくるはずである。

 

 自分が知らない世界。知っているはずなのに知らなかったら、人は受け入れるよりも否定する。

 

 セイバーはアサシンの話を聞いていると少し悲しい顔をした。自分が知っている世界はどこにあるのだろうか。自分はこの世界の迷子なんじゃないだろうかと思ってしまうだろう。

 

 その思いは心にがっぽりとした穴を開ける。

 

「ここまで変わるのですね……時というものはなんと無慈悲なのでしょう……」

 

 もう深い深い穴が開いている。元々あった穴に連結するかのようにーーー。

 

 でも、その時の穴を(ふさ)ぐことができる者がいる。

 

「大丈夫よ、私も初めはそうだった。まぁ、そこまでバカな答えは出せなかったけど」

 

 アサシンはニコッと笑った。その笑みは何かを共有するかのように笑う。そんなアサシンにつられてセイバーも笑う。過去から来た者として一緒に笑う。

 

 同じ戸惑いも二人で持てば少しは勇気も生まれるものだ。敵であるのにどこか仲間のようにも感じてしまう。それは辛いことである。どうせ最終的に闘わなければならないのは二人とも知っているから。

 

 敵でもあり味方でもある。そんなのは何もない虚言である。味方であると思いたいから思っているだけ。無慈悲なのは時だけでない。世界すべてが無慈悲に目の前を通る。彼女の愛が無慈悲に潰れているように。

 

 アサシンはセイバーの背中を押した。

 

「ほら、服買わないと」

 

「そうですね。で、でも……」

 

 セイバーはいきなり大きな壁にぶち当たる。まず、どこへ行けばいいのか。何を買えばいいのか。何が必要なのか。

 

「あの、アサシン。どれを買えば良いのですか?」

 

「ん〜、とりあえず一式全部。シャツとかボトムとか靴下、下着かな?あっ、でも下着は専門店の方がいいかも」

 

「別に専門店でなくてもいいかと……。誰にも見せないわけですし……」

 

「何言ってるの。どうせセイバーちゃんのマスターに見せるんでしょ?」

 

 アサシンが少しイジるとセイバーはすぐに顔を赤くする。

 

「なっ、何でいきなりヨウが出てくるのですか?ま、まずなぜ私がヨウに下着を見せるのですか?私とヨウはあくまでマスターとサーヴァントとの関係であり、それ以上はない‼︎」

 

「本当に?」

 

「本当です!」

 

「じゃぁ、何で顔が赤いの?」

 

「こ、これは別にヨウが好きだとかいう話ではありません!というより、ヨ、ヨウを好きになるわけがありません!マスターとして未熟で、敵と闘う度胸もない。マスターとしても人としても尊敬できません!」

 

「でも同じ剣を扱う者としては?どうせ気づいているんでしょう?彼、剣を扱ったことがあることぐらい」

 

「ま、まぁ、気づいてはいます。確かに、バーサーカーと対峙(たいじ)している時、ヨウの剣技のキレはとても素晴らしいものでした。常人ならたとえ剣を持っていたとしても、バーサーカーの一撃に耐えることはできない。それを彼は受け流していた。あれは剣を扱う者です」

 

 二人とも気づいていた。ヨウは剣士として天才であることに気づいている。お遊び程度でしか剣術を習ったことのないヨウがバーサーカーの攻撃を受け流すのは、ヨウが天才であるからとしか言いようがない。

 

 特に、同じ者だからこそ分かる事というのもある。セイバーは彼が剣を振った時にはもう気づいただろう。同じ者であると。

 

「で、ヨウくんのこと好きなの?」

 

「好きではありません!」

 

 セイバーはまた顔を真っ赤にする。そんな姿を見たアサシンはウズウズとしてしまう。

 

「ねぇ、セイバーちゃんって処女?」

 

「なっ⁉︎い、いきなり、何を、き、聞いてくるのですかッ⁉︎」

 

 アサシンの読み通り、セイバーは今までで一番の動揺を見せる。そんな姿を見せると、見せられたアサシンの行動もエスカレートになってしまう。

 

 その後、セイバーは散々可愛(かわい)がられた。

 

 




アサシンの紹介は次回で。

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