注意:アニメオリジナルカードが何枚か登場します。
具体的には《
そして遊矢の《ペンデュラム・クライマックス》。
遊矢の方は「多分こんな感じの効果じゃないかなー」っていう予想。
《魔界劇団》は流石に情報少なすぎて無理なんで、沢渡さんには申し訳ないがワンキルされてもらうZE!
「
蒼き闇を徘徊する猫よ。紫の毒持つ蝶よ。月の引力により渦巻きて新たな力と生まれ変わらん!
――融合召喚! 現れ出でよ、月明かりに舞い踊る美しき野獣! 《
《
星7/闇属性/獣戦士族/攻 2400/守 2000
セレナのフィールドに融合モンスターが召喚される。
三日月を模した仮面で素顔を隠し、二刀の短剣を手繰る舞姫。
「来たな、融合召喚……! だが攻撃力はわずか2400! 俺のビッグ・スターには届かないぜ!」
「さあ、どうだろうな。私は更に
これにより《
《
星4/闇属性/獣戦士族/攻 1600/守 1200
「ブルー・キャットの効果発動。このカードの特殊召喚に成功したとき、自分の場の《月光》モンスター一体の攻撃力を、ターン終了時まで二倍にする。私がキャット・ダンサーを選択!」
《
攻 2400 → 攻 4800
「更にキャット・ダンサーの効果発動。このカード以外の《月光》モンスターをリリースすることで、キャット・ダンサーは全てのモンスターに二回ずつ攻撃できる」
「なぁにぃ!?」
「バトル! 《
沢渡シンゴ
LP:4000 → LP:1700
「まだだ! キャット・ダンサーの効果により、ビッグ・スターは一回目のバトルでは破壊されない!
そして二回目のバトル! キャット・ダンサーで攻撃!!」
沢渡シンゴ
LP:1700 → LP:0
「うわぁぁ――――!!!?」
モンスターが破壊されると同時、沢渡は爆風に吹っ飛ばされた。
怒涛の展開。まさに瞬殺。有言実行。
全くの無傷であった沢渡のライフを、セレナは一ターンのみで削りきった。
「よし、終わったぞ」
「あ……ああ」
遊矢の顔が引き攣る。
実力差はそこまで圧倒的ではない。互いが全力を尽くせば――それでもセレナが勝つかもしれないが――そこそこいい勝負になったかもしれない。
だが如何せん間が悪かった。
沢渡はセレナを舐めていた。故に遊び心を持たせ、最善と言えるプレイをしなかった。セレナはその隙を全力で攻めた。
その結果がワンターンキルだっただけである。
「――成程。これは中々厄介だな」
「遊星。それはどういう意味で言ってんだ?」
「……想像に任せる。ともかく、タッグデュエルといこう」
遊星と牛尾はデュエルディスクを装着し、デッキを装填する。
「そういうわけだ。お前は大人しく下がってろ」
「クソッ……まあいい、そういう約束だからな。いいか、俺達は言わばスタンダード次元の代表だ。無様な格好を晒したら承知しねえからな」
「ワンターンキルは無様ではないのか?」
「あれは油断しただけだ! 次は俺が勝つ!」
「どうだろうな。かろうじてペンデュラムを使えるだけのお前が私に勝てるとは思えないがな」
「あーもう、ストップストップ! いいから行くぞセレナ。沢渡は零羅を頼むよ」
「ッ――ああ、分かったよ」
二人は渋々と離れ、セレナは遊矢の元に、沢渡は零羅を傍において観戦する。
仲が悪い……わけではないのだろう、きっと。“喧嘩するほど仲がいい”なんて言葉もあるのだから。
――そう信じて不安を誤魔化す遊矢であった。
「ルールは“タッグフォース”ルールだ。遊星、いいか?」
「ああ」
タッグフォースルールとはその名の通り、タッグデュエル専用のルールのことだ。
フィールド、墓地、除外されたカード、そして
「ということは、パートナーのカードを自分も使えるのか。……ともかく、頑張ろうセレナ」
「言われるまでもない」
「……牛尾、一つ提案がある」
「あん?」
遊星は二人に聞こえないよう、牛尾に耳打ちする。
怪訝そうな顔をしていた牛尾だったが、遊星の提案を聞いた途端、納得顔で頷いた。
「――……成程な。ちょいとおせっかいな気もするが、面白いことになりそうだ」
「だろう?」
「……何をこそこそとしている。早く始めるぞ」
「あー悪い悪い。そんじゃあ――始めるぜ!」
四人の
◆
「
ライフは共有して4000ポイント。
プレイヤーのターンは交互に回ってくるため、
ライフをコストとするカードも然り。この“タッグフォース”ルールのデュエルは、より高度なタッグプレイを要求されるのだ。
「さて、勝手ばかりで申し訳ないんだが、先行はこちらがもらう。はるばる別の次元からやって来たお客様には厚ーいおもてなしをしなくちゃな」
「好きにしろ。むしろ私としては好都合だ」
牛尾の挑発をセレナはバッサリ切り捨てる。
そして挑発には挑発。セレナは明らかに年上である牛尾に対して、この上なく不敵に笑う。
「シンクロ次元と言うからには、お前達はシンクロが得意なんだろう? だったらこのターンで見せてみろ」
「ほう、言うね。その態度、いつぞやの誰かさんを思い出すぜ。なあ遊星」
「…………」
遊星は露骨に黙りこくり、無表情で睨む。
――“早くしろ”と。
「ハハッ、無言か。まあいい。お嬢さんのお望み通り、一ターン目から本場のシンクロ召喚を拝ませてやるぜ。俺のターン!
俺は《ゴブリンドバーグ》を召喚!」
《ゴブリンドバーグ》
星4/地属性/戦士族/攻1400/守 0
「《ゴブリンドバーグ》のモンスター効果発動。このカードの召喚に成功した時、手札からレベル4以下のモンスターを召喚できる。
ここで俺はチューナーモンスター《トラパート》を特殊召喚!」
《トラパート》
チューナー
星2/闇属性/戦士族/攻 600/守 600
「俺はレベル4の《ゴブリンドバーグ》に、レベル2の《トラパート》をチューニング!
――シンクロ召喚! であえ、《ゴヨウ・ガーディアン》!」
《ゴヨウ・ガーディアン》
星6/地属性/戦士族/攻2800/守2000
一ターン目にして、牛尾のフィールドにシンクロモンスターが召喚された。
かつてのセキュリティの象徴。紐付きの十手を振り回し、権力を振りかざすポリスモンスター。
「攻撃力2800のシンクロモンスターか」
「ああそうさ。そこらのモンスターじゃ越えられねえ権力の壁よ。お前さんの融合モンスターも然りだ。さて、残りの俺のターンだが、カードを一枚伏せてターンエンド」
「――よく言った。ならばその壁、一足で踏み超えてやろう。私のターン!」
セレナのターンが回り、カードをドローする。
ドローしたカードは――《
「その顔からすると、早速キーカードを引いたらしいな」
「まあな。今度はこちらの番だ。お前達に融合の力を見せてやろう。
私は
――ニヤリ、と。
セレナが《融合》を使った瞬間、牛尾は不気味に笑った。
「かかったな! セレナ、お前さんの《融合》にチェーンして、俺はこの
「何っ――!?」
セレナの
「このカードは《封魔の呪印》。手札の
「なっ――デュエル中だと……!?」
「そう。つまり、これでお前は完全に《融合》を封じられた」
「……くっ」
「オイ、何やってんだ! とんでもない醜態晒してんじゃねえ!」
「っ――うるさい!」
沢渡のブーイング。
しかし、全くもって彼の言う通りだ。セレナは何も言い返せない。
「さあどうするよ。このままターンエンドか?」
「……くそ。私は、モンスターを守備表示で召喚」
セレナはモンスターを裏守備表示でセットする。
だが、通常召喚できるモンスターの守備力などたかが知れている。
彼女を守る盾は、あまりにも薄い。
「ターンエンドだ」
「……さて。次は俺のターンか」
牛尾が下がり、ターンプレイヤーである遊星が前に出た。
セレナは警戒する。
彼女は先程のDVD……ジャック・アトラスのデュエルを途中から見ていた。戦士を自称する彼女からしても、あの男の腕は確かだった。
――そしてこの男は、ジャック・アトラスの仲間だと言う。
あの男より強いかは分からない。だが、少なくとも弱いはずがない。
「ドロー。俺は《シンクロン・キャリアー》を召喚!」
《シンクロン・キャリアー》
星2/地属性/機械族/攻 0/守1000
「《シンクロン・キャリアー》の効果発動! 俺は通常召喚に加えてもう一度、《シンクロン》と名のつくモンスターを召喚できる。
これにより、《ジャンク・シンクロン》を召喚!」
《ジャンク・シンクロン》
チューナー
星3/闇属性/戦士族/攻1300/守 500
「《ジャンク・シンクロン》の効果発動! 墓地からレベル2以下のモンスターの効果を無効にし、守備表示で特殊召喚することができる!
牛尾の《トラパート》を特殊召喚!」
《トラパート》
チューナー
星2/闇属性/戦士族/攻 600/守 600
「チューナーモンスター……やはり来るか!」
「俺はレベル2、《シンクロン・キャリアー》に、レベル3の《ジャンク・シンクロン》をチューニング!
集いし星が、新たな力を呼び起こす! 光射す道となれ!
――シンクロ召喚! 切り拓け、《ジャンク・ウォリアー》!」
《ジャンク・ウォリアー》
星5/闇属性/戦士族/攻2300/守1300
牛尾の《ゴヨウ・ガーディアン》に並び、また新たなシンクロモンスターが召喚された。
紫のアーマーと加速ブースター。右腕には巨大なナックルが装着されている。
「《ジャンク・ウォリアー》の効果発動! このモンスターのシンクロ召喚に成功した時、自分の場のレベル2以下のモンスターの攻撃力分アップする!
――“パワー・オブ・フェローズ”!」
《ジャンク・ウォリアー》
攻 2300 → 攻 2900
「バトルだ! まずは《ゴヨウ・ガーディアン》で、裏守備モンスターを攻撃!
――“ゴヨウ・ラリアット”!」
守備表示モンスターは――《
投擲された十手がモンスターを粉砕する。
そして、それだけでは終わらない。《ゴヨウ・ガーディアン》は十手を巧みに使い、ブルー・キャットは縛り上げる。
「なにっ――これは……!?」
「これぞ《ゴヨウ・ガーディアン》のモンスター効果よ! 戦闘で相手モンスターを破壊し墓地に送った時、そのモンスターを俺達のフィールドに守備表示で特殊召喚できる」
《
星4/闇属性/獣戦士族/攻 1600/守 1200
牛尾の解説と共に《ゴヨウ・ガーディアン》がブルー・キャットを引っ張り上げ、フィールドに特殊召喚された。
コントロール奪取。これこそがポリスモンスター最大の特徴。
「まだバトルフェイズは終わっていない。《ジャンク・ウォリアー》、ダイレクトアタック!
――“スクラップ・フィスト”!」
「ぐうっ――!!」
《ジャンク・ウォリアー》の巨大な拳を受け、セレナは大きく後ずさりする。
セレナ・遊矢
LP:4000 → LP:1100
「くっ……!」
セレナは歯噛みする。
牛尾・遊星の場には、彼らのエースであろうモンスターが一体ずつ。
そしてチューナーの《トラパート》と、セレナのモンスター《
「セレナ。これはタッグデュエルだ」
「……分かっている。次は私のターンではない。遊矢のターンだ」
「違う、そうじゃない。……やはり、君は分かっていないようだな」
「……なんだと?」
「俺の仲間の一人は、タッグデュエルの世界大会にも何度か出場していてな。そいつがよくこう言っている。
“パートナーを信じない者に勝利はない”、と」
「……何が言いたい」
「それは自分で考えるんだ。もし見つけられなければ、悪いが君達に勝機はない。
……カードを二枚伏せて、ターンエンド」
フィールドに二枚の
これで牛尾・遊星のフィールドは万全。対して、セレナ・遊矢のフィールドには一枚もカードがない。
状況は絶望的。されど――
されど、これを覆してこそエンターテイメント。
「セレナ、無事か?」
「…………」
「浮かない顔だな」
「……まあな」
「そっか。じゃあ、とりあえず今は休んでくれ。舞台は俺が温めておくから」
「? 何をする気だ」
「決まってるだろ」
そう言って、遊矢は満面の笑顔を浮かべる。
そして――
「レディース、エーン、ジェントルメーン!!」
――唐突に、声を張り上げた。
「あ? なんだぁ?」
その唐突さに牛尾は素に戻り、間抜けな声で呟いた。
遊星、パートナーであるセレナでさえも目を丸くして遊矢を見ている。
「本日はワタクシ榊遊矢と、その弟子セレナのエンタメタッグデュエルにお越しいただき、誠にありがとうございます!」
「弟子になった覚えはない」
セレナはきっぱり否定するが、遊矢は気にせず続ける。
「さて。早速ですが、まずはフィールドを確認しましょう! 牛尾・遊星タッグのフィールドには、強力なシンクロモンスターが二体! しかもセレナのモンスターは無実にも関わらず、悪い警察官に捕まってしまいました! ですがご安心あれ! このエンタメデュエリスト“榊遊矢”が、この逆境を見事引っくり返してみせましょう!」
「……言いたい放題だな。あんにゃろう」
毒づく牛尾。だが、その顔は笑っている。
「では参ります。ワタシのターン!」
長い長い前口上のあと、ようやく遊矢がドローした。
遊矢は引いたカードともう一枚を手札から選択し、相手に見えるように掲げる。
「ワタシは、スケール4の《
二枚のカードが置かれた瞬間、遊矢のディスクに“PENDURAM”の文字が表示された。
セットされた《
「この召喚法……沢渡もさっき使っていたな。遊矢も使えるのか」
「左様でございます! 我々のペンデュラムゾーンには、スケール4のトランプ・ウィッチと、スケール8の《相生の魔術師》。これにより、レベル5から7のモンスターが同時に召喚可能となります!」
「揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け光のアーク!
――ペンデュラム召喚! 来い、ワタシのモンスター達!」
遊矢が手を振り上げた瞬間、天空の孔からモンスターが出現する。
「まずは、《
《
星5/地属性/獣族/攻1600/守 900
「続いて、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!」
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》
星7/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
召喚されたのは二体。
一体は、胸部がドラム状になっているゴリラのエンタメイト。
もう一体は世にも珍しい、緑と赤のオッドアイを持つドラゴン。
――ペンデュラム召喚。上級モンスターを同時に召喚する、榊遊矢の十八番。
「この二体が第一幕の主役となります! さあ、バトルと参りましょう!
まずは《
《トラパート》が破壊されるが、表示形式は守備。遊星にダメージはない。
「次はオッドアイズ! 《ジャンク・ウォリアー》に攻撃!」
「何っ――? だが、攻撃力はこちらが上」
「その通り! しかしここで、ドラミング・コングのモンスター効果が発動します!
自分のモンスターが相手モンスターとバトルする時、その力強いリズムによって、攻撃力を600ポイントアップさせるのです!
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》
攻 2500 → 攻 3100
「行け、オッドアイズ! その二色の眼で捉えた全てを焼き払え!
――“螺旋のストライク・バースト”!」
オッドアイズのブレス攻撃が、強化された《ジャンク・ウォリアー》を焼き尽くす。
その炎はモンスターだけでなく、プレイヤーにまで効果が及ぶ。
「オッドアイズの効果発動! モンスターとの戦闘で与えるダメージを二倍にする!
――“リアクション・フォース”!」
牛尾・遊星
LP:4000 → LP:3600
「っ……、やるな」
「まだまだこれからですよ! ワタシは更に速攻魔法《ペンデュラム・クライマックス》を発動! 自分の場のペンデュラムモンスター一体をリリースし、同じレベルの相手の墓地のモンスターを、このターン戦闘を行ったペンデュラムモンスターに装備します!
ワタシは《
オッドアイズの攻撃力は《ジャンク・ウォリアー》の攻撃力の半分アップし、このターン、二度目の攻撃が可能となります!」
「何――!」
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》
攻 3100 → 攻 4250
「さあオッドアイズ、二度目のバトルです! 《ゴヨウ・ガーディアン》を攻撃!
――“螺旋のストライク・バースト”!!」
二度目のブレスが、今度は《ゴヨウ・ガーディアン》を粉砕する。
オッドアイズの攻撃力は4250。その差――1450。
「オッドアイズの効果により、与えるダメージは二倍!
――“リアクション・フォース”!」
牛尾・遊星
LP:3600 → LP:800
「ぐぁっ――!」
「無事かぁ、遊星」
「っ――ああ。……しかし、予想以上にやるな」
オッドアイズの怒涛の連続攻撃により、状況は一気に逆転した。
――だが、それだけでは勝てない。
ライフは僅か800。それでも、牛尾と遊星は微塵も焦ってはいなかった。
これはタッグデュエル。一人で頑張るにしても限界がある。パートナーを引きずったまま勝つことなど不可能。
つまり、言い換えれば――
「――あとは、セレナ次第だな」
「あ? どういうこった。確かにヤバイっちゃヤバイが、このままなら行けるだろ」
「さあな、今にわかるさ。一つだけ確実に言えるのは、次が牛尾の最後のターンということだ」
「……分かんねえな。はっきり言えよ遊星。お前、何企んでる?」
「そんな言い方はよせ。俺はただ、あの二人の絆を信じているだけだ」
「絆……ねえ」
牛尾は遊矢とセレナの方を見やる。
「……流石だな、遊矢」
「お褒めに預かり光栄でございます、姫」
「遊矢―― ふ ざ け て い る の か ?」
「……へっ? あ、いや、違うぞ。今のはただのエンタメっていうか、ちょっとしたお芝居っていうか……だから、頼むから落ち着いて。暴力反対」
「なら早くしろ。まだお前のターンだ」
「あ、ああ。ええと、俺、いやワタシは、カードを一枚伏せる!」
セレナに脅され、慌てて遊矢はターンを終了させる。
牛尾はそのやりとりを眺め――思わず、頬が緩んだ。
「ワタシはターンエンド。これにて第一幕は終了にございます」
仰々しく一礼し、遊矢のターンが終了。これにて一巡。
遊星と交代し、今度は牛尾が前に出る。
「さて、と。これでようやく俺のターンが来たわけだが……随分と派手にやってくれたじゃねえか、オイ」
「それはそれは。お気に召して頂けたでしょうか?」
「正直驚いた。が、少しばかり詰めが甘かったな。ドラミング・コングの効果はバトルフェイズ終了時に消え、《ペンデュラム・クライマックス》はターン終了時に消える。
つまり、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の攻撃力は元に戻り、《ジャンク・ウォリアー》もまたこっちの墓地に帰ってくる」
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》
攻4250 → 攻2500
「そうですね。ですが、貴方のフィールドにはセレナのモンスターが一体のみ。こちらの優勢は変わりませんよ?」
「――だといいよな。
じゃあ行くぜ、俺のターン。遊星、この
「好きにしろ」
「よし来た。
牛尾は伏せられたカード――遊星が伏せたカードを使用する。
「
俺は《ゴヨウ・ガーディアン》を選択。しかし、シンクロモンスターは手札にいかずエクストラデッキに戻る。
さらに永続
《トラパート》
チューナー
星2/闇属性/戦士族/攻 600/守 600
「レベル4の《
――シンクロ召喚! もう一度来い、《ゴヨウ・ガーディアン》!」
《ゴヨウ・ガーディアン》
星6/地属性/戦士族/攻2800/守2000
「そんな、また!?」
「へっ、それじゃあバトルといくぜ。《ゴヨウ・ガーディアン》で、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を攻撃!
――“ゴヨウ・ラリアット”!」
セレナ・遊矢
LP1100 → LP800
「ぐっ――!」
「そして《ゴヨウ・ガーディアン》の効果発動! そのドラゴンは頂くぜぇ!」
「っ……ところが、そうはいきません! オッドアイズはペンデュラムモンスター。ペンデュラムモンスターはフィールドで破壊された場合、墓地には行かずエクストラデッキに戻ります!」
「おっとそうか。じゃあ効果は使えねえな。俺はカードを一枚伏せて、ターンを終了するぜ。
――分かってるよな? 次は融合の嬢ちゃんのターンだ」
「っ……分かっている」
――そう。ここが境目だ。
セレナの手札は五枚。枚数だけを考えれば十分逆転は可能だろう。
だが《封魔の呪印》の効果により《融合》は使えない。融合召喚が主戦力である彼女にとって、これほど厳しい状況はない。
「私のターン!」
カードを引く。
おそらく、これが彼女にとって最後のドロー。
「なっ――……!」
セレナはドローしたカードを確認する。
引いたのは――二枚目の《融合》だった。
言うまでもなく、彼女のデッキのキーカードである。
「どうやらお望みのカードは来なかったらしいな。いや、もしかすると逆か? 《融合》でも引いちまったのか?」
「っ――!」
セレナは射殺すように牛尾を睨みつけるが、当人は涼しい顔でそれを流す。
牛尾は自分の勝利を確信している。
事実、《融合》を封じられた
「ハッ、分かり易いヤツだ。となると、これで俺達の勝ちは決まりだな」
「いーや、それはどうかな!」
「!」
自信満々の声にセレナは驚く。
代わりに答えたのは遊矢。
険しい顔のセレナとは裏腹に、遊矢はどこまでも明るく、牛尾の勝利を否定する。
「ほう。この状況を挽回できると?」
「できるさ。俺とセレナならできる。確かに貴方は強い。多分、一体一じゃ勝つのは難しいと思う。けど、これはタッグデュエルだ」
「だったら勝てるとでも言いてえのか」
「勿論! さ、セレナ!」
「……はぁ。全く」
溜息をついたあと、セレナは遊矢を睨む。
しかし、表情はどことなく柔らかい。
「……
「ん?」
「
訝しげにしつつ、セレナは遊矢のカードを確認する。
「――!」
その瞬間、理解した。
タッグデュエルの意味を。遊矢の想いを。
そして、不動遊星という男の狙いを。
「……そうか。そういうことか」
合点がいった。そう言わんばかりにセレナは頷く。
「セレナ?」
「ああ、いや。もう大丈夫だ」
「……そっか。よかった。
それでは、シンクロ次元の皆様にご覧頂きましょう! 我々師弟のコンビネーションを!」
「だから違うと……――いや……まあ、いい。では、第二幕を上げるとしよう」
セレナの表情に笑顔が戻る。
ただしそれは、この上なく不敵な笑み。彼女らしい挑発的な笑顔だ。
「第二幕か。大きく出たな。今度は何を見せてくれるんだ?」
「今にわかるさ。まずは下準備からだ。
私は
セレナが示したのは《融合》のカード。
《封魔の呪印》によって使えないため、運用としては間違っていない。
しかし、融合次元の
誰も気づいていなくとも、これには大きな意味がある。
「まずいな牛尾。どうやら本気になったらしい」
「らしいな……にしても、やけに嬉しそうだな」
「気のせいだ」
「手札に戻すのは《
――速攻魔法発動! 《ペンデュラム・ターン》!」
「ペンデュラムだと? オイ、まさかそのカードは……」
「そうだ。これは前のターンに遊矢が残した
私は《
そしてフィールドのカードが減ったことで、《相生の魔術師》のスケールは8に戻る!」
宙に浮くトランプ・ウィッチと《相生の魔術師》が示す数値が変動する。
セッティングされたスケールは1と8。
「これでレベル2から7のモンスターが同時に召喚可能!
――ペンデュラム召喚! 来い、私のモンスター達!」
《
星4/闇属性/獣戦士族/攻 1600/守 1200
《
星3/闇属性/獣戦士族/攻 1000/守 1000
月夜に舞う獣が二体、天空のアークより姿を現した。
どちらも低級モンスター。一体では大した力を持たない。
彼女のモンスターは、融合召喚により真価を発揮する。
「……こいつは驚いたぜ。まさかペンデュラム召喚とはな」
「安心しろ、お楽しみはこれからだ。
ここで私は、《
「なにぃ!?」
《封魔の呪印》はあくまで《融合》という
「私が融合するのは、《
蒼き闇を徘徊する猫よ。紫の毒持つ蝶よ。月の引力により渦巻きて新たな力と生まれ変わらん!
――融合召喚! 現れ出でよ、月明かりに舞い踊る美しき野獣! 《
《
星7/闇属性/獣戦士族/攻 2400/守 2000
「ちっ、出やがったな猫娘」
「バトルだ! キャット・ダンサーで《ゴヨウ・ガーディアン》を攻撃!」
「血迷ったか! キャット・ダンサーの攻撃力はたったの2400! 《ゴヨウ・ガーディアン》の方が攻撃力は上だ!」
「始めに言ったはずだ。その程度の壁、一足で超えてみせると!
私は速攻魔法《決闘融合-バトル・フュージョン》を発動! この効果によりダメージステップ終了時まで、キャット・ダンサーの攻撃力は《ゴヨウ・ガーディアン》の攻撃力分アップする!」
《
攻 2400 → 攻 5200
「攻撃力、5200だとォ!?」
「これにて終幕だ。行け、キャット・ダンサー!
――“フル・ムーン・クラスター”!!」
「うおぉぉぁぁ――――!!」
キャット・ダンサーの攻撃が決まり二人のライフが底をつく。
一歩下がっていた遊星はその様子を――セレナが牛尾を打ち負かす光景を、満足げに眺めていた。
牛尾・遊星
LP:800 → LP:0
◆
「私は、弟子になった覚えはない」
「ご、ごめん、他に案が思い浮かばなくて……けど、いいエンタメだっただろ?」
「どこがだ。私は戦士だぞ。お前の謳うエンタメなど知らないし興味もない」
「う……ごめん」
がっくりと遊矢は項垂れる。
実際先程のデュエルは、エンタメとしては不安定だった。
……素人を舞台に上げ、その上で活躍させる。
余程上手く魅せなければ客は満足しないし、失敗する可能性も十分あったのだから。
……けれど。
一つだけ、確かなことがある。
「――ただ」
「?」
「ただ……まあ、その……」
ぼそり、と。
誰にも聞こえないほど小さな声で、セレナは呟いた。
「お前とのデュエルも、悪くはなかった」
少女もまた、魅せられてしまったのだ。
この榊遊矢というエンタメの使者に。
――という感じで、「狂犬」が「番犬」になったりとか。
え、しない? ……デスヨネー。