※アニメ産オリカあり↓
《ジェスター・クィーン》
星2/闇属性/魔法使い族/攻800/守800
(1).このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、自分の魔法&罠カードゾーンに存在するカードを全て破壊する。
(2).自分フィールド上にこのカード以外のモンスターが存在しない場合、このカードは自分の魔法&罠カードゾーンに存在するカードの数だけ、1度のバトルフェイズ中に攻撃する事ができる。
《隠し通路》
永続魔法
相手フィールド上に表側表示で存在する攻撃力が一番低いモンスターよりも攻撃力の低い自分フィールド上に存在するレベル2以下の魔法使い族モンスターは相手プレイヤーに直接攻撃する事ができる。
2016.03.05.デュエル修正。《スピリットバリア》《安全地帯》《ツインツイスター》を別のカードに変更。
2016.03.10.《ミスティック・バイパー》を《ミスティック・パイパー》に修正。
夜。バトル・シティの一日目が終了し、参加者達が各々休息を取っている頃。ジャック・アトラス、イェーガー、そして赤馬零児は、とある一室でデュエルの記録を見返していた。
『行け、《スターダスト・ドラゴン》! もう一度《天翔の竜騎士ガイア》を攻撃! “シューティング・ソニック”!』
再生されていたのは、不動遊星と謎の男のデュエル。フィールドには白銀の竜《スターダスト・ドラゴン》と、呪われた竜を駆る騎士《天翔の竜騎士ガイア》。最後の一撃が《天翔の竜騎士ガイア》に直撃し、プレイヤーのライフが削られる。
そして決着。デュエルは遊星の勝利で幕を閉じた。
……何も知らない人間からすれば、ごく普通のデュエルにしか見えなかっただろう。
「今、遊星が戦っていた連中がオベリスク・フォースか?」
「はい、その通りです」
零児は眼鏡を直し、ジャックへと向き直る。
「彼らこそがオベリスク・フォース。融合次元の尖兵、そして我々ランサーズの戦うべき相手です」
「戦うべき相手か。だが、奴等の目的は侵略なのだろう? これでは気づいてくれと言っているようなものだ」
「敢えて自分達の姿を晒すことで印象に残し、恐怖に怯える弱者を狩る。それが彼らなりの侵略なのです」
「…………」
オベリスク・フォースは他次元への侵略を“狩り”と認識している。そのことを知っているからこそ、零児は彼らの派手な格好に違和感を感じなかった――感じることができなかった。“相手に恐怖を植え付ける”ためと考えれば、彼らの青い服装は都合がいいからだ。
対して融合次元に疎い遊星、そしてジャックもまた気づくことができた。彼らが行っているのはただの侵略ではない。彼らはまだ、何かを隠していると。
「この映像を見る限り、オベリスク・フォースは不動遊星に撃退されたように思えますが」
「いいえ。おそらくは違います、イェーガー市長。これはあくまで前哨戦。彼らとの戦いはじき始まるでしょう。至急大会を中止し、住民を避難させることを提案します」
「中止、ですか……おや、ジャック?」
ジャックは立ち上がり、窓の方へと歩を進める。
窓には中の光を漏らさぬようブラインドが降りている。それを豪快に引き上げ、外を睨む。
ネオ童実野シティは眠らない。たとえ真夜中であっても、必ずどこかには人工の光がある。
――光があれば闇だってある。その奥に蠢く人影を、ジャックは捉えた。
「どうしたのです、ジャック」
「第二波だ」
「!」
ジャックはデュエルディスクを装着し外へ向かう。彼の呟きを聞いた零児も続いた。
「へ? あっ、ちょっと!?」
突然走り出した二人に、イェーガーは訳も分からずついていく。
エレベーターを使わず、階段を数段飛ばして一気に飛び降りる。一瞬遅れて零児が続き、イェーガーは息も絶え絶えになりながら追いかける。
そうして三人が建物の外へ出た瞬間――
「お二人共! 一体どうしたのです……か?」
――既に、彼らは囲まれていた。
素顔を隠す仮面と、軍服のような青い制服。剣を象ったデュエルディスク。
数は三。男達は獲物を見つけたハイエナのように、ニタニタと笑っている。
「ヒィィィィ!! こ、これは、もしや……」
「オベリスク・フォース……既にここまで来ていたとは」
「フン、ちょうどいい。奴等の腕を測る絶好の機会だ」
ジャックもまたデュエルディスクを展開し、一歩前へ出た。
「貴様等の目的は分かっている! シンクロ次元を侵略したいのならば、まずはこのジャック・アトラスを倒してみろ!」
「いいだろう。だが」
オベリスク・フォースの一人が卑しく笑った後、三人はそれぞれ相手の前へと移動する。
一人はジャック。一人は零児。そして最後は……イェーガー。
「ヒィィィィ!! こっちに来ましたぁぁぁ!!」
「まずは一人ずつだ。自分の相手を倒した者が、他の連中のデュエルに加勢する」
「構わん。イェーガー、貴様デュエルはできるな?」
「へ? まあ一応……はっ! いえ、できません全く!」
「ならば耐えろ。こっちの雑魚を片付けた後、貴様に加勢してやる。
――行くぞ、オベリスク・フォース!」
「「
掛け声を合図に、ジャックとオベリスク・フォースのデュエルが開始される。
加勢するとは言ったものの、それが叶うのは、ジャックが決着をつけるまでイェーガーが負けなければの話だ。
「およよ、おろろろ……」
「落ち着いてください、イェーガー市長」
「へ?」
「問題はありません。私もこちらを片付けた後、貴方に加勢します。同盟相手を失うことは避けたいですからね」
そう言った後、零児もまたデュエルディスクを展開し、オベリスク・フォースと相対する。
イェーガーは心の奥底で思う。どちらか二対一で戦ってくれてもいいんじゃないのかと。それが駄目ならせめてタッグをと。
「おい、いつまで余所見してるつもりだ」
「ヒッ! 申し訳ありません!」
どこまでも弱腰のイェーガーを見て、オベリスク・フォースは勝気に笑う。
勿論これは初めから仕組まれたこと。ジャック・アトラス、そして赤馬零児が強いことは遠目に見ただけでも分かる。
そして同様に、イェーガーが三人の中で最も弱いことも。オベリスク・フォースはイェーガーを真っ先に仕留めた後、三対二に持ち込むつもりなのだ。
「こいつは勝負が見えたな。一息に仕留めてやるよ、ピエロ野郎」
「……はぁ。やれやれ」
「あん?」
イェーガーはどこからともなく自分のデュエルディスク、デッキを取り出し、腕に装着した。
態度が豹変したイェーガーを見て、オベリスク・フォースは眉を潜める。
彼は市長であり道化師。滑稽な格好、言動、行動で相手を楽しませ、惑わすのがイェーガーという男だ。
「仕方がありませんね。
……よろしい。では僭越ながら、この私が相手をしてさしあげます。我々のネオ童実野シティに危害を加えようというであれば容赦はしません。覚悟はよろしいですね、オベリスク・フォース」
「強がっても無駄だ。貴様如きでは、俺達オベリスク・フォースは止められない」
「ヒッヒッヒッヒ……人を見かけを判断するのはよくないですよ」
「フン、ほざいてろ。シンクロ次元侵略の肩慣らしだ」
「「
◆
イェーガー
LP:4000
オベリスク・フォース
LP:4000
「先行はもらう! 俺は
古の魂受け継がれし、機械仕掛けの猟犬達よ。 群れなして混じりあい、新たなる力と共に生まれ変わらん!
――融合召喚! 現れろ、レベル5! 《
《
星5/地属性/機械族/攻1400/守1000
オベリスク・フォースの十八番・融合召喚にて、機械仕掛けの猟犬が召喚される。
頭は二つ。飢えた牙に乾いた眼光。猟犬は目の前のピエロを獲物と認識した。
「ほう。お得意の融合召喚ですか。情報通りですね」
「情報だと?」
「おっと。失礼、口が滑りました。それで、貴方のターンは終了ですか?」
「フン。カードを一枚伏せて、ターンエンドだ」
一枚の
《
「では参ります。ドロー」
――しかし、それが分からないイェーガーではない。
彼は戦士ではなく道化師。道化師は道化師らしく、高笑いで煽る。
「ヒッヒッヒ。私はカードを三枚伏せて、ターンエンドです」
「なんだと……?」
「申し訳ありません。どうやら手札がよろしくない様子。一体もモンスターを召喚できませんでした」
「ふざけた真似を……ならば、その前に息の根を止めてやる。
俺のターン! 俺は《
《
星4/地属性/機械族/攻1300/守1300
猟犬に続き召喚されたのは機械の兵士。殲滅に特化させるためか、右腕は銃となっている。
「なるほど。オベリスク・フォースは数ある融合召喚の中でも、とりわけ《
「その通り。《
さらに俺は永続魔法《一族の結束》を発動。墓地のモンスターの種族が一種類のみの場合、その種族のモンスターの攻撃力を800アップさせる。俺の墓地には機械族の《
《
攻1400 → 攻2200
《
攻1300 → 攻2100
「これで攻撃力の合計は4300。どんな
「それはそれは。では、バトルフェイズ前に
永続
「何……!」
イェーガー
LP:4000 → LP:3000
「おやおや、私のライフが減ってしまいましたね。ここで攻撃を通してしまえば私の負けです」
「っ……!」
「どうしました? 何を躊躇う必要があるのです。その二体でダイレクトアタックを宣言すれば、貴方の勝ちなのですよ?」
「貴様……どこまでも舐めた真似を……!」
だが、オベリスク・フォースは最後の一歩を踏み出せずにいた。
《
このタイミングで《スキルドレイン》を使用したということは、セットされた二枚のうちどれかは攻撃反応系の
「俺はこれで、ターンエンド!」
……そう判断したオベリスク・フォースは、ターンエンドを宣言した。
「ヒッヒッヒッヒッヒ! やはり楽しいですね、デュエルというものは。童心に返るとはまさにこのこと」
「楽しい、だと?」
「気づきませんか? 前のターン、貴方がダイレクトアタックを宣言していれば、私は負けていたのですよ」
「なんだと……!」
「その証拠をお見せしましょう。
私のターン。まずは一枚目。永続
そして、二枚目の
「くっ――!」
《スキルドレイン》が消滅したことで、《
しかしこれではっきりした。オベリスク・フォースはイェーガーを警戒するあまり、勝機を逃したのだ。
「やれやれ。オベリスク・フォースは強敵だと聞いていましたが、どうやら大したことはないようですね」
「いい加減にしろピエロ! 早くターンを進めたらどうだ!」
「ヒッヒ、言われずともそうさせていただきます。《マジック・プランター》の効果により、カードを二枚ドロー。
そして私は、手札から《ジェスター・コンフィ》を攻撃表示で特殊召喚します」
《ジェスター・コンフィ》
星1/闇属性/魔法使い族/攻 0/守 0
玉乗りをこなす奇っ怪なピエロが召喚される。攻撃力は0、レベルは1。オベリスク・フォースから見れば、ただの弱小モンスターである。
「《ジェスター・コンフィ》はその効果により、手札から攻撃表示で特殊召喚することができます。もっとも、攻撃力は0ですがね」
「貴様――!」
「ホホ。見えます、見えますよ、貴方の心の動きが。さて、本当のショーはここからです。
私は更に、《ミスティック・パイパー》を攻撃表示で召喚」
《ミスティック・パイパー》
星1/光属性/魔法使い族/攻 0/守 0
「《ミスティック・パイパー》の効果発動。このモンスターをリリースすることで、私はカードを一枚ドロー。そしてドローしたカードをお互い確認し、それがレベル1のモンスターだった場合、更にもう一枚ドローします」
イェーガーのフィールドから《ミスティック・パイパー》が消え、カードをドローする。
ドローしたのはレベル1のモンスター。《ジェスター・コンフィ》が玉乗りならば、こちらはジャグリングのピエロだ。
「私が引いたのは《ジェスター・ロード》。よって、もう一枚カードをドローします」
「っ――!」
これにて手札は六枚。何が来てもおかしくない枚数であるが、イェーガーは全く別の戦略を取る。
「新たに
「また
融合、シンクロ、エクシーズ、そしてペンデュラム。どんな
だが、イェーガーは王道を取らない。奇想天外なプレイングで相手を乱すのが道化師なりの戦い方なのだ。
「ヒッヒッヒ。さあ、貴方のターンですよ。全力で踊ってご覧なさい」
「……いいだろう、ならば踊ってやる。その結果、貴様がどうなっても知らんがな!
俺のターン! このままバトルだ!」
「お待ちを。バトルフェイズ前に
「何……!?」
「どうしましたか? 踊るのではなかったのですか?」
「ッ――小癪な」
オベリスク・フォースは悔しげに舌打ちした。
これが唯一の穴。《
「俺はカードを一枚伏せて、ターンエンド」
「おや、残念ですね。ではこのターンのエンドフェイズ、《ジェスター・コンフィ》の効果が発動します。
自身の効果で特殊召喚された《ジェスター・コンフィ》と、相手フィールドのモンスター一体を手札に戻します。その悪趣味な猟犬にはご退場願いましょう」
「おのれ……!」
「まだ貴方のターンは終わっていませんよ。ターン終了前に、私は永続
今、フィールドには《
「なんだと――!?」
イェーガーの
これにて、互いの場にモンスターはいない。ライフはオベリスク・フォースの方が上。それでも、デュエルを支配しているのは紛れもなくイェーガーだった。
「さて、次は私のターンですね。ドロー。
これにて手札は四枚。《底なし流砂》は自分のスタンバイフェイズ時に手札が四枚以下の場合、自らを破壊してしまいます。
しかし――ここで永続
そして私は、先ほど手札に加えた《ジェスター・ロード》を召喚します」
《ジェスター・ロード》
星1/闇属性/魔法使い族/攻 0/守 0
「また、攻撃力0のモンスター……!」
「デュエル前に申し上げたはずですよ? 人を見かけで判断するのはよくない、とね。
《ジェスター・ロード》はフィールドに他のモンスターが存在しない場合、互いの
私のフィールドには四枚。貴方のフィールドには三枚。よって攻撃力は1000×7アップします」
《ジェスター・ロード》
攻 0 → 攻7000
《ジェスター・ロード》は合計七つの玉を巧みにジャグリングする。玉一つで1000ポイントの攻撃力があるらしい。
だが恐るるに足らず。オベリスク・フォースは《ジェスター・ロード》の弱点を見抜いていた。
《ジェスター・ロード》の攻撃力は確かに高い。だがそれは、あくまで他にモンスターがいなければの話。雑魚モンスターがどちらかのフィールドに一体でもいれば、攻撃力は0に戻る。
「では、バトルと参りましょう! 覚悟なさい!」
「永続
《
星3/地属性/機械族/攻 1000/守 1000
「これにより、《ジェスター・ロード》の攻撃力は0に戻り、《一族の結束》の効果でハウンドドッグの攻撃力は800アップする!」
《ジェスター・ロード》
攻7000 → 攻 0
《
攻1000 → 攻1800
「なるほど。モンスターを増やすことで攻撃力を下げてきましたか。ですが、やはり甘い。隅々まで教育が行き届いていないようですね」
「この状況でよくそこまで言えるな。雑魚モンスターに成り下がった《ジェスター・ロード》では、我々の《
「不愉快ですね。私を小馬鹿にしたことではなく、貴方のような人間がそのカードを使っていることが」
「どういう意味だ」
「貴方が知る必要はありません。ただ一つ言えることは、貴方に次のターンはないということです。
もうお分かりですね? 私はこれにより《ジェスター・コンフィ》を墓地へ。そして、貴方の《
「何っ――!」
イェーガーが発動した
これで《
そうなる前に――と、オベリスク・フォースはセットした
「ならば
これにより、《ジェスター・ロード》を破壊!」
「なんですと!?」
《ジェスター・ロード》に爆弾付きの首輪が装着され、爆発した。
直後に《サンダー・ブレイク》の雷が《
「フン、残念だったなピエロ」
「くっ、ぬぬぬ……いいでしょう。勝負はまだまだこれからのようです。とことん付き合って差し上げますよ。私はこれで、ターンエンドです!」
「俺のターン。
そして、
《
星3/地属性/機械族/攻1000/守1000
《
星4/地属性/機械族/攻1300/守1300
オベリスク・フォース
LP:4000 → LP:1000
オベリスク・フォースのフィールドに三体のモンスターが並び立つ。
《サモンリミッター》は一ターンに三回以上の召喚を封じる永続
「またそのモンスターですか。ライフを支払ってまで召喚するとは、よほど飼われるのが好きなご様子」
「知ったような口を利くなよピエロ。飼われるのが好きだと?
――違う。俺達は飼われなきゃ生きていけない。そういう世界に生まれ、育ってきた。いや、育てられてきたんだ」
オベリスク・フォースは力の限り拳を握り締め、歯噛みした。
その様子にイェーガーは目を奪われる。
――怒りだ。
素顔は仮面で隠されているが、イェーガーは確かに彼から怒りを感じたのだ。
「《ソウル・チャージ》を発動したターンはバトルフェイズが行えない。カードを一枚伏せてターンエンド」
「……このターンの終了時、《底なし流砂》の効果が発動。《
流砂に呑まれ、《
――融合次元の闇。イェーガーはその一端を垣間見た。
――ならばやることは一つ。彼らを倒すのではない。止めるのだ。
「私のターン! 私は、《ジェスター・クィーン》を召喚!」
《ジェスター・クィーン》
星2/闇属性/魔法使い族/攻800/守800
「《ジェスター・クィーン》を召喚した時、自分の
さらに永続魔法《隠し通路》を発動。自分のモンスターの攻撃力が相手モンスターの最も攻撃力が低いモンスターよりも低い場合、そのモンスターはダイレクトアタックが可能となります。
そして《ジェスター・クィーン》は、自分の場の
「なんだと――つまり……!」
「私の場には永続
「させるか!
「このタイミングでデッキの枚数を削ると? そんなことに何の意味があるのです?」
「違うな。デッキの枚数を削るんじゃない。デッキからモンスターを墓地に送るんだ」
オベリスク・フォースの男はデッキの上から五枚めくり、墓地に送る。彼の目的はとあるモンスターを墓地に送ること。それができれば、このターンを凌ぐことができる。
「――フン。来たぞ、望みのカードが」
「ええい、それがどうしたというのです! 行け、《ジェスター・クィーン》!」
「俺が墓地に送ったのは、《超電磁タートル》! このモンスターを墓地から除外することで、バトルフェイズを終了させる!」
「何っ!?」
《超電磁タートル》が立ちふさがり、《ジェスター・クィーン》の攻撃が遮られた。どうやら相手のオベリスク・フォースは、よほどの強運の持ち主だったらしい。
「この土壇場でそのカードを墓地に送るとは……中々の強かさです。カードを一枚伏せて、ターンを終了します」
「俺のターン! 俺は、三体目の《
《
星3/地属性/機械族/攻1000/守1000
「なんと――!」
「ハウンドドッグの効果発動! 相手フィールドにモンスターが存在する時、600ポイントのダメージを与えることができる!
俺の場にハウンドドッグは三体。よって、合計1800のダメージだ!」
イェーガー
LP:3000 → LP:1200
三発の火炎弾がイェーガーを撃ち抜き、ライフを削る。
そして、この程度では終わらない。これらは融合次元のモンスター。当然、融合召喚に関連する能力も持っている。
「《
俺は、フィールドの《
古の魂受け継がれし、機械仕掛けの猟犬達よ。 群れなして混じりあい、新たなる力と共に生まれ変わらん!
――融合召喚! 現れよ、レベル7! 《
《
星7/地属性/機械族/攻1800/守1000
三体の猟犬が混じり合い、一つとなって降臨した。
機械仕掛けの三つ首の猟犬。これこそが彼らに与えられた切り札である。
「《
そこそこ楽しめたがここまでだ、妖怪ピエロ」
「……それは、どうでしょうかね」
「なんだと? まだ抗うというのか」
「はて、抗う? 何をおっしゃいますやら。このデュエルは徹頭徹尾、私が上だったではありませんか」
「知ったことか。結果が全てだ。事実、貴様はここで負ける。潔くカードとなれ」
「お断りですね。こう見えても忙しい身でして。カードになってサボれるほど暇ではないのです。
従って、ここは素直に勝たせてもらいます。貴方達を解放してやれるほど、私は優れた人間ではありませんので。
――速攻魔法発動! 《融合解除》!」
「何!?」
イェーガーの切り札が発動する。
《融合解除》。融合モンスターの融合を解除し、分離させる
「馬鹿な、そのカードは!」
「相手が融合次元の
《融合解除》の効果により、その猟犬には退場していただきます!」
「な……に――!」
せっかく召喚した《
《融合解除》は、フィールドの融合モンスターをエクストラデッキに戻し、素材となったモンスターを墓地から召喚してもいい、というものだ。
――してもいい、ということは、しなくてもいい、ということでもある。
「そんな……馬鹿な――!」
「これで貴方のカードは尽きました。私の勝利は決まりましたね」
「くっ……だがこのターンのエンドフェイズ、貴様の永続
《ジェスター・クィーン》が流砂に呑まれ、破壊される。これでまた互いの場からモンスターが消えたのだ。
「互いの残りライフは僅か。ですが、次は私のターンです。ここで攻撃力1000以上のモンスターを引けば、私の勝ちですね」
「ありえんな。見たところ、貴様のデッキの殆どは弱小モンスター。条件を満たさなければ、攻撃力1000のモンスターすら用意できまい!」
「それは次のターンではっきりします。
どうです? ゾクゾクしませんか? デッキの上のこの一枚で、貴方の人生が大きく変わるかもしれませんよ?」
「黙れ。知ったような口を利くなと言ったはずだ」
「おっと、これは申し訳ありません。
――では、参ります。私のターン!」
イェーガーのドローしたカードはレベル1、攻撃力も0の弱小モンスターだった。
しかし。条件は、既に整っている。
「このスタンバイフェイズ、手札が四枚以下なため《底なし流砂》は破壊されます!
そして、《ジェスター・ロード》を攻撃表示で召喚!」
《ジェスター・ロード》
星1/闇属性/魔法使い族/攻 0/守 0
「二体目の《ジェスター・ロード》だと!?」
「《ジェスター・ロード》の効果発動! 互いの
《ジェスター・ロード》
攻 0 → 攻2000
「そんな……馬鹿な――」
「これで終わりです! 《ジェスター・ロード》、相手プレイヤーにダイレクトアタック!」
オベリスク・フォース
LP:1000 → LP:0
「ぐあ――……!」
三つの火球を受け、ライフは0となる。
これにて決着。イェーガーはジャック、零児の手を借りることなく、撃退に成功したのだった。
◆
「話が違うではありませんかジャック! 終わったら助けてくれるという話はどこへ行ったのです!?」
「俺のデュエルが終わった頃、ちょうどお前はオベリスク・フォースを気持ちよさそうに煽っていたのでな。あの時のお前の気持ちは俺にも分かる。邪魔しては悪いと思い、涙を飲んで引いたのだ。むしろ、余計な水を差さなかったこの俺に感謝してほしいくらいだ」
「そういう問題ではないのです。二人、いえ三人でかかれば、もっと早く勝てたはずです!」
「過ぎたことだ。過程はどうあれ、最終的には勝ったのだから問題ないだろう。それより今はもっと、他に話すべきことがあるだろう」
「おっと、そういえばそうでした」
こほん、とイェーガーは咳払いし、ジャックと零児に向き直る。
話すべきこととは他でもない。明日からのフレンドシップ・カップについてだ。
現在は“バトル・シティ”の期間中。ネオ童実野シティ全域が舞台であり観客席。そんな中にオベリスク・フォースが攻め込んでくれば、街は混沌と化してしまう。
「どうすべきでしょうかね。零児さん、貴方はどう思いますか?」
「先ほども述べましたが、オベリスク・フォースは“侵略”を“狩り”と考えています。事が起こるとすれば、二日目のバトル・シティが開催される明朝。それまでに対策を討つべきです」
「なるほど……対策ですか。彼らが参加者以外の一般人を狙う可能性は?」
「彼らが何を“標的”とするかで変わりますが……可能性としては十分ありえますね。
ところで、イェーガー市長。セキュリティの実力はどれほどのものでしょうか。貴方よりも上なのですか?」
「いいえ、そうとも限りません。勿論、私より強い
「そうですか。では、セキュリティの力を均等に分散させ、各拠点の防衛に当ててはどうでしょう? そこに住民達を避難させるのです」
「それは……いいえ、不可能ですね。住民達はオベリスク・フォースのことも、エクシーズ次元とやらのことも知りません。我々が知らせても信じてはもらえないでしょう。
……誰か一人でも犠牲者が出てくれれば、話は通じるのですがね」
「イェーガー!」
ジャックは声を荒らげ、イェーガーを睨む。
このネオ童実野シティは彼の故郷。住民は全て、彼にとって大切なファンなのだ。たとえ一人だとしても、犠牲者を出すことはジャックが許さないだろう。
「勿論冗談です。そう睨まないでください」
「だとしても、言っていいことと悪いことがある」
「失礼しました。しかしこれは事実です。分かりやすい犠牲者を出さなければ、住民全員を避難させるなど到底不可能です」
「何を寝ぼけたことを言っている。大会は続行だ。中止などありえん」
「な――……」
ジャックのその言葉に、二人は耳を疑った。
オベリスク・フォースの妨害を受けてなお、大会を続ける。この男はそう言ったのだ。
彼の意見は、住民の守ることを最優先に考えていた二人には考えつかないことだった。
「……ジャック・アトラス。このまま大会を続行すれば、関係のない住民に危害が及ぶ。貴方はそれが分かっているのですか?」
「知らん。住民の避難など知ったことではない。俺は、デュエルで奴等を引き付けろと言ったのだ」
「……どういうことです?」
「オベリスク・フォースに少しでも
それでも弱者に群がる雑魚共は、この俺自らが蹴散らしてくれる」
「なるほど。つまりはこういうことですね。
バトル・シティを時刻通り開催し、観客達を大きな会場に避難させる。いいえ、避難ではなく引き寄せる。巨大スクリーンを大量に設置し、サービスを充実させ、大会の熱気を数箇所に閉じ込める。
そして、それらの門をジャック・アトラスとセキュリティが守る、と」
「セキュリティは邪魔だがな。俺はもう休むぞ。明日からはつまらんデュエルの連続になりそうだからな」
「いえ、待ってください」
自室へ帰ろうとしたジャックを、零児は呼び止めた。
「なんだ。まだ用があるのか」
「貴方一人にオベリスク・フォースの相手を任せるのは忍びない。
ですので、我々が助力します。こういう事態に備えて、我々ランサーズは結成されたのですから」
「フン……勝手にしろ」
興味なさげに返事をして、ジャックは今度こそ自分の部屋へ戻っていった。
「相変わらずですねジャックは。ともあれ、一先ずは彼の案で行きますか。そうそう、ハイウェイにもセキュリティを配置しなくては」
オベリスク・フォースのデッキがワンキルに特化しすぎてて、デュエル構成がかなり大変だった。
イェーガーも負けず劣らず大変だった。
その結果がこのガバガバデュエルさ!