※アニメ産オリカあり↓
《シンクロ・ヘイロー》
自分フィールド上に存在するシンクロモンスター1体が
戦闘によって相手モンスターを破壊できなかった場合に発動できる。
そのシンクロモンスター1体の攻撃力を倍にし、
このターンのバトルフェイズ中にもう1度だけ攻撃する事ができる。
「やるな、ムクロのやつ」
不動遊星は休憩所で飲み物を片手に、スクリーンを見つめていた。
映されていたのは炎上ムクロとセレナのデュエル。
一見するとムクロが
しかし、遊星が何より注目したのはムクロの疾さである。
――シンクロ召喚。
未来を切り開き、新時代を築く神秘の力。使い方次第で善にも悪にも染まる可能性の結晶。
それはかつてのダークシグナー、そして何より不動遊星自身が物語っている。
炎上ムクロは既に不動遊星の真後ろにいる。あと一つ、どんな些細なことでもいい。きっかけさえあれば、彼は不動遊星と同じ境地に辿り着く。
「……俺ものんびりしてられないな」
遊星は空になった容器を捨て、休憩所を出て行く。
バトル・シティは数日に渡って開催される。一日に決められたノルマ――すなわち、一日一定以上の勝率を上げれば、積極的にデュエルをする必要はない。
それでも遊星は、自分のDホイールの元へ向かった。彼の目的はジャック・アトラスとのデュエル。そこまで行くには、参加者を全員蹴落とし、優勝しなければならない。そして何よりも、遊星はじっとしていられなかった。
とりあえず、と遊星は自分のDホイールを点検する。
彼のDホイールは、DホイールであってDホイールではない。デュエルで発生するエネルギーを間近で観測するため、通常の機能に加えてモーメント観測装置を初めとした諸々の研究機器が搭載されている。
走る研究室と言い換えてもいい。遊星のDホイールは、ムクロのDホイールとは別の意味でモンスターマシンなのである。
「おい」
「?」
そんな彼に声をかける男がいた。
上半身は青、下半身は白のライディングスーツ。顔は半分以上が青いヘルメットで隠されており、唯一口元だけが晒されていた。
「お前、不動遊星だよな?」
「ああ……アンタは?」
「なら話は早い。オレとのデュエル、受けてくれるよな?」
「――――」
遊星の質問を聞かず、男は自分に都合のいいように話を進める。
だが、バトル・シティとは得てしてそういうものだ。こういった人の話を聞かないガラの悪い連中だって何人も参加している。そういった連中を警戒して、あちこちにセキュリティが設置されているのだ。
「黙ってないで何とか言ったらどうだ、英雄サマ。それとも、仲間の力がなきゃ戦えない腰抜けだったか?」
「……そう焦るな。デュエルの申し込みなら受けてやる」
「ああ、そうだ。そうこなくちゃな。そうでなきゃ、わざわざこんなところまで出向いた意味がない」
男は口元を邪悪に歪ませ、自身のDホイールに搭乗する。
遊星も彼に習い、赤いDホイールに跨る。デッキをセットした瞬間オートシャッフルが起動し、四十枚のカードが並べ替えられた。
『――デュエルモードオン。オートパイロット、スタンバイ』
「これで準備完了。行くぞ不動遊星。あまりがっかりさせないでくれよ?」
「……デュエルの前に、一つ聞きたいことがある。そのDホイール、どこのものだ?」
「……どこだっていいだろ」
「なら言い当ててやる。俺の見たところ、そのDホイールはアンタの自作。旧式の物を大幅に改良したものだ。違うか?」
「うるせえな。こういうのは他の連中に任せてあるんだよ。俺が知るわけないだろう。
……あーそうか。スタート前につまらねえ質問して注意を逸らそうってか? 随分せこい手を使うんだな、こっちの英雄サマは」
「……気に障ったのなら謝る。すまなかった」
「まあいいってことよ。さっさと始めるぞ」
両者が位置につき、カウントが始まる。
しかし遊星はコースの先ではなく、スタート体勢に入った男の方を見ていた。
――違和感。この男からは、底知れぬ違和感を感じる。
彼の中のアラートが鳴り響く。
まるで、次元が異なる存在と相対しているかのような――
「余所見とは余裕だな! ライディング・デュエル……!」
「「アクセラレーション!」」
カウントゼロ。一瞬遅れて遊星も続く。
それでもなお、遊星は男から目を離さない。
Dホイールの性能はそこまで高くない。榊遊矢達に贈った機体の方がまだ高性能だろう。
肝心のライディングテクニックもまた、どこか不慣れな印象を受けた。
その気になれば追い抜ける。それでも、ここは様子を見るべきだと遊星は判断した。
◆
「行くぞ、オレの先行!」
男
LP:4000
SPC:1
遊星
LP:4000
SPC:1
「オレは《疾走の暗黒騎士ガイア》を召喚!」
男の隣に暗黒の騎兵が召喚される。
両手には螺旋を描くように尖った槍。騎兵はスピードに乗り、男と並走する。
《疾走の暗黒騎士ガイア》
星7/光属性/戦士族/攻2300/守2100
《疾走の暗黒騎士ガイア》
攻2300 → 攻1900
「《疾走の暗黒騎士ガイア》は、攻撃力を1900にすることでリリースなしで召喚できる。オレはこれでターンエンド!」
「俺のターン!」
男
LP:4000
SPC:2
遊星
LP:4000
SPC:2
「俺は《シンクロン・キャリアー》を召喚!」
《シンクロン・キャリアー》
星2/地属性/機械族/攻 0/守1000
遊星が召喚したのは、攻撃力0の弱小モンスターだった。小さな橙色の人型マシンで、背中には小型のクレーンがある。どう見ても戦闘型のモンスターではない。
「攻撃力0のモンスターだと……! 舐めているのか、不動遊星!」
「《シンクロン・キャリアー》がモンスターゾーンに存在するとき、通常召喚に加えてもう一度、《シンクロン》とつくモンスターを召喚できる。
この効果により、チューナーモンスター《ジャンク・シンクロン》を召喚!」
《ジャンク・シンクロン》
星3/闇属性/戦士族/攻1300/守 500
続いて召喚されたのは、背中にエンジンを背負った小さな機体。カラーリングは《シンクロン・キャリアー》と同じく橙。首元には白いマフラーが巻かれている。
「レベル2の《シンクロン・キャリアー》に、レベル3の《ジャンク・シンクロン》をチューニング!
集いし星が、新たな力を呼び起こす! 光射す道となれ!
――シンクロ召喚! いでよ、《ジャンク・ウォリアー》!」
《ジャンク・ウォリアー》
星5/闇属性/戦士族/攻2300/守1300
現れたのは瓦礫の戦士。
紫の機体で、背中にはスラスター。首元には《ジャンク・シンクロン》同様に長く白いマフラーが巻かれている。
「バトル! 《ジャンク・ウォリアー》で、《疾走の暗黒騎士ガイア》を攻撃! “スクラップ・フィスト”!」
スラスターが火を噴き、マフラーがたなびく。右の巨大な拳が唸りを上げ、騎兵を粉砕した。
攻撃表示のモンスターが戦闘破壊されたことでダメージが発生。数値はごく僅かだが、このデュエルは遊星が先制した。
男
LP:4000 → LP:3600
SPC:2
「フン……そうこなくてはな」
「カードを二枚伏せて、ターンエンド」
「オレのターン!」
男
LP:3600
SPC:3
遊星
LP:4000
SPC:3
「オレは
来い、《疾風の暗黒騎士ガイア》!」
《疾風の暗黒騎士ガイア》
星7/闇属性/戦士族/攻2300/守2100
男は先ほどと殆ど同じモンスターを召喚した。
違う点といえば能力と攻撃力くらいか。外見をパッと見ただけでは、どちらがどちらか見分けがつかないだろう。
「二体目の暗黒騎士……」
「バトルだ! 《ジャンク・ウォリアー》を攻撃!」
攻撃を命じられ、ガイアは瓦礫の戦士へと立ち向かう。
攻撃力は互角。ガイアは拳を、《ジャンク・ウォリアー》は刺突を受け、粉々になったガラス片のように散っていった。
「オレはこれで、ターンエンド!」
「……俺のターン!」
男
LP:3600
SPC:4
遊星
LP:4000
SPC:4
デュエル開始から既に四ターンが経過。にも関わらず、男はそこまで大きな動きを見せていない。
遊星は男に疑いの視線を向ける。プレイングだけを見ればライディング・デュエルの初心者そのものではあるが――
「……手札のモンスターカードを一枚墓地に送り、《クイック・シンクロン》を特殊召喚!」
《クイック・シンクロン》
星5/風属性/機械族/攻 700/守1400
テンガロンハットと赤いマント。両手には拳銃が一丁ずつ。西部劇に登場するガンマンのような出で立ちだ。
このモンスターもまたチューナー。強力なモンスターを召喚するための布石である。
「さらに、墓地に送った《ボルト・ヘッジホッグ》の効果発動! 自分の場にチューナーモンスターが存在するとき、墓地から特殊召喚することができる!」
《ボルト・ヘッジホッグ》
星2/地属性/機械族/攻 800/守 800
「そして、《チューニング・サポーター》を召喚!」
《チューニング・サポーター》
星1/光属性/機械族/攻 100/守 300
巨大なネジが背中から針のごとく生えた鼠。
フライパンを目深に被り、さらにマフラーで目元を隠した小さなマシン。
どちらも単体では役に立たない小型モンスターである。しかしここに来て、今更男はモンスターを罵倒しない。
弱小モンスターを結束させ、強力なモンスターを召喚する。それが不動遊星の戦い方と知ったからだ。
「チューナーにレベル1のモンスター。レベル6、いや8か……!」
「《チューニング・サポーター》はシンクロ召喚の素材になる時、レベル2のモンスターとして扱うことができる。そして《クイック・シンクロン》は、《シンクロン》とつくチューナーの代わりになることができる。
レベル2扱いの《チューニング・サポーター》に、レベル5の《クイック・シンクロン》をチューニング!
集いし想いが、ここに新たな力となる! 光射す道となれ!
――シンクロ召喚! 燃え上がれ、《ニトロ・ウォリアー》!」
《ニトロ・ウォリアー》
星7/炎属性/戦士族/攻2800/守1800
第二の
「っ――!」
「《チューニング・サポーター》がシンクロ素材となったことにより、カードを一枚ドロー!」
「……ほう。流石は不動遊星。一ターンでここまでやるとはな」
モンスター達の攻撃力の合計は3600。全ての直接攻撃が決まれば遊星の勝利である。
しかし、このターンで終わらないと遊星は確信しており――男もまた、対策を用意していた。
「さあどうする! 攻撃するなら今しかないぞ!」
「……いいだろう、誘いに乗ってやる!
バトル! 行け、《ニトロ・ウォリアー》! “ダイナマイト・ナックル”!」
《ニトロ・ウォリアー》のブースターが火を噴き、拳は威力と速度を備えて男を狙う。
――その拳を、男は余裕の表情で迎え撃つ。
「
相手の攻撃表示モンスターを全て破壊し、その攻撃力の合計の半分のダメージを互いに受ける!」
「何っ!」
バリアの炎により遊星のモンスターは全滅し、プレイヤーに飛び火する。
否、飛び火なんて軽いものではない。爆発じみた火炎放射が二人を襲う。
「ぐぁ――!!」
男
LP:3600 → LP:1800
SPC:4
遊星
LP:4000 → LP:2200
SPC:4
「っ……自らダメージも厭わないとは。ターンエンドだ」
「オレのターン!」
男
LP:1800
SPC:5
遊星
LP:2200
SPC:5
ドローフェイズ。男はドローしたカードを確認し、うすら笑いを浮かべた。
――ツイている。これで、一応の目的は達成できる。
「
男
LP:1800 → LP:1300
SPC:5 → SPC:3
「そして、レベル4となった《獄炎のカース・オブ・ドラゴン》を通常召喚!」
《獄炎のカース・オブ・ドラゴン》
星5 → 星4
/闇属性/ドラゴン族/攻2000/守1500
「さらに
《疾走の暗黒騎士ガイア》
星7/光属性/戦士族/攻2300/守2100
「この組み合わせは……まさか」
呪われし竜と暗黒の騎兵が並ぶ。
この二体は、とある召喚法を知っている者の間ではあまりにも有名――もはや常識の域にあった。
遊星の脳裏に、ある言葉が浮かぶ。
……“アカデミア”。
遊星からすれば、男の戦い方はあまりにも不自然だった。魔法の使用が制限されるライディング・デュエルにおいて、融合モンスターをメインとするDホイーラーは殆どいない。
もしいるとすれば、精々個人の趣味・嗜好や、場を盛り上げるためのパフォーマンスくらい。もしくは、融合召喚を誇りに持つ
「《獄炎のカース・オブ・ドラゴン》は、自分フィールドのモンスターのみを融合素材とする時、《融合》のカードなしで融合召喚ができる。
オレは《獄炎のカース・オブ・ドラゴン》と、《疾走の暗黒騎士ガイア》を融合!
呪われし煉獄の竜よ。地を駆ける暗黒騎士よ。螺旋の渦で一つとなりて、新たなる力と生まれ変わらん!
――融合召喚! 天を駆けよ、《天翔の竜騎士ガイア》!」
《天翔の竜騎士ガイア》
星7/風属性/ドラゴン族/攻2600/守2100
呪われた竜を駆る
機械達は一斉に告げる。目の前の竜騎士は、これまで一度も観測したことがない未知の存在だと。
「《天翔の竜騎士ガイア》は特殊召喚した時、デッキから永続魔法《
バトルだ! 《天翔の竜騎士ガイア》で、不動遊星にダイレクトアタック!」
「手札から《速攻のかかし》の効果発動! このカードを墓地に送ることで、相手のダイレクトアタックを無効にし、バトルフェイズを終了させる!」
槍の刺突が案山子に防がれ、竜騎士は自軍へと戻っていった。
バトルフェイズは終了しているため、男は追撃できない。そもそも、そのためのカードがない。
「チッ……仕留め損なったか」
「油断したなDホイーラー。いや……オベリスク・フォース!」
「!」
既に予感は確信に変わっていた。遊星は、対戦相手である男の素性を追求する。
「その反応。どうやら図星のようだな」
「……知っていたのか。オレ達のことを」
「ああ。初めからそうだろうと思っていた」
「ならどうして、このデュエルを受けた?」
「決まっている。俺はこの街の人間だ。怪しい人間はセキュリティに通報しないとな」
「……通報、ねえ」
くく、と男は肩で笑う。
男は最初からオベリスク・フォースであることを一貫していた。シンクロ次元侵略への第一歩、それこそが自分であると。
――にも関わらず、何もかもが見破られている。そのことに笑いが溢れてしまったのだ。
「いいだろう、やれるものならやってみろ。オレはこれでターンエンド!」
「俺のターン!」
男
LP:1300
SPC:4
遊星
LP:2200
SPC:6
「
来い、《ジャンク・ウォリアー》!」
《ジャンク・ウォリアー》
星5/闇属性/戦士族/攻2300/守1300
「この効果で特殊召喚したモンスターはレベルが一つ下がり、守備力は0となる!」
《ジャンク・ウォリアー》
星5 → 星4
守1300 → 守 0
「そしてチューナーモンスター《ブライ・シンクロン》を召喚!」
《ブライ・シンクロン》
星4/地属性/機械族/攻1500/守1100
「レベル4となった《ジャンク・ウォリアー》に、レベル4の《ブライ・シンクロン》をチューニング!
集いし願いが、新たに輝く星となる。光射す道となれ!
――シンクロ召喚! 飛翔せよ、《スターダスト・ドラゴン》!」
《スターダスト・ドラゴン》
星8/風属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
煌く粒子を撒き散らし、白銀の竜は飛翔する。
この瞬間、不動遊星のエースモンスターがこのバトル・シティにて初めて召喚された。
「これが《スターダスト・ドラゴン》……噂に違わぬ、といったところか。だが攻撃力は2500。竜騎士ガイアには届かない!」
「《ブライ・シンクロン》を素材としたシンクロモンスターは、ターン終了時まで攻撃力が600アップする!」
《スターダスト・ドラゴン》
攻2500 → 攻3100
「バトル! 飛翔せよ、《スターダスト・ドラゴン》! “シューティング・ソニック”!」
風圧のブレスが、星屑を撒き散らしながら竜騎士へと迫る。
《スターダスト・ドラゴン》が不動遊星のエースならば、男のエースは《天翔の竜騎士ガイア》。既にフィールドには、竜騎士をサポートする
「永続
男
LP:1300 → LP:700
SPC:4
竜騎士の周囲をバリアが覆う。ブレスは竜騎士を貫いたが、なんとか破壊は免れたらしい。
「っ――これで耐え切った。《ブライ・シンクロン》の効果はこのターンの終了時まで。次のターン、オレの竜騎士ガイアが、お前のスターダストを倒す!」
「それはどうかな」
「何? ……っ!
そうか、その
男は遊星の場に残された最後の一枚を見る。一番最初のターンにセットされ、温存されていた
「
《スターダスト・ドラゴン》
攻3100 → 攻6200
「攻撃力、6200だと!?」
「行け、《スターダスト・ドラゴン》! もう一度《天翔の竜騎士ガイア》を攻撃! “シューティング・ソニック”!」
男
LP:700 → LP: 0
SPC:4
◆
「ぐぁ――……っ!」
ライフが尽きた瞬間、男のDホイールは強制停止する。
勝者は不動遊星。彼はまた一つ、この大会で勝ち星を上げた。
「っ……流石は、不動遊星。オレもここまでか」
オベリスク・フォースの
「待て」
その前に遊星は引き返し、男に声をかける。
デュエルの最中から、彼の中ではある疑問が渦巻いていた。
「なんだ。敗者はただ去るのみだ。これ以上恥をかかせるな」
「その前に確認したいことがある。お前は、本当にオベリスク・フォースなのか?」
「正確には
「……お前の目的はなんだったんだ」
「シンクロ次元の侵略。一応はそう命じられている」
「俺が知りたいのはそんなことじゃない。俺は、他でもない
「さあね。よく言うだろ? 死人に口なしってな。つっても、死んじゃあいないが。
ま、伝えたいことは伝えた。あとは自分で考えろ、英雄サマ」
最後に意味深な言葉を残して、オベリスク・フォースを名乗った男はDホイールごと消えていった。
後には何も残らない。対戦相手そのものが消えてしまった以上、遊星の勝利はノーカウントになってしまう可能性が高いだろう。
「……自分で考えろ、か」
不動遊星はこの短い時間で、男の真意を見抜いていた。
オベリスク・フォースのことは遊矢から聞いている。彼らの目的は他次元への侵略。この街もまた、いずれは狙われる運命にあると。
だが、それにしてはあの男はあからさますぎた。本当に侵略したいのなら住人に紛れ込み、機を見てトップを討てばいいだけのこと。わざわざ分かりやすい格好で主張する意味はないのだ。
これらから導き出される答えは一つ。
彼は知らせてくれたのだ。
近いうちにオベリスク・フォースが侵略に来ること。さらにその侵略は、何かを隠すための措置――ただのフェイクに過ぎないということを。
情報整理。
融合次元はオベリスク・フォースというあからさまに目立つ組織を盾にして、秘密裏に何かの計画を進めている。
そしてその情報は案外筒抜けになっており、内部に裏切り者が存在する――
「……一人で考えていても始まらない。牛尾を探すか」