フリーデュエル回の何が難しいって、デュエルに至るまでのキャラ同士の絡みだよ。特に今回は「ムクロ VS セレナ」って事前に決めて書き始めたから余計に難しかった。もし《魔界劇団》がOCG化してたらキャラに押されて「ムクロ VS 沢渡」になってた。
……そういえば、《
※《
※2016.02.16.文章・台詞修正。
バトル・シティと化したこの街でのデュエルは全て映像として記録され、開催中は各高層ビルに設置されたスクリーンによって常に放送されている。これはライバル達の勇姿、あるいは自身の醜態を曝け出すことで、参加者達の競争心・闘争心を煽るためである。
『行け、《ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》! 《
『ぐあぁぁぁ――!!!』
高層ビルに設置された巨大スクリーンに、とあるデュエルの決着シーンが放送された。
映っているDホイールが四台であることから、どうやらタッグ・デュエルであるらしい。しかもその片方はクロウ・ホーガンとシンジ・ウェーバーによるタッグ。本人の実力もさる事ながら、そのコンビネーションは世界で通用するレベルである。
――その二人が撃破された。その結果は、参加者達の間に瞬く間に広がっていった。
「ほーう。あのクロウ・ホーガンとシンジ・ウェーバーがねぇ……」
対戦相手は榊遊矢と柊柚子。柊柚子は無名だが、榊遊矢はエキシビション・マッチでジャック・アトラスと対戦した
このデュエルで注目すべき点は、勝者二人のコンビネーション。そして、新しく追加された
もし、このデュエルが一対一だったら?
そもそも、ライディング・デュエルではなかったとしたら?
――どれか一つでもあれば、きっと違う結果になっていた。
「ま、だとしてもだ。俺の目指すデュエルは変わらねえ」
黒いDホイールに跨り、男は思う。
榊遊矢と柊柚子。
クロウ・ホーガンとシンジ・ウェーバー。
どちらもコンビネーションはかなりのものだ。一人ではできない戦略がとれる、それこそがタッグの魅力。専用のリーグが存在するのも分かる。
だが――。
だがその男から見れば、両者には圧倒的に欠けているものがあった。
それはコンビネーションでも
他人にとっては違っていても、その男にとってはデュエルそのものと言える要素。
曰く――
「疾さが足りねえ」
◆
「順調に勝ち上がったみたいだな。流石、舞網チャンピオンシップでこの俺様に勝っただけはあるぜ」
スクリーンの映像を見て沢渡シンゴは呟いた。親友の勝利が素直に嬉しいのだろう。
実際のところ親友だと思っているのは彼のみの一方通行なのだが、それでも、沢渡シンゴが榊遊矢を親友だと思うこと自体が進歩だ。
――自分も負けてはいられない。映像として記録されるなら尚更のこと。
沢渡の目には、そんな覚悟とやる気に満ちていた。
「私達もうかうかしてられないな」
「おう、セレナ。何処行ってたんだ? もう遊矢の試合は終わったぜ?」
「Dホイールを点検してもらっていた。それで、結果は?」
「遊矢達が勝った。ま、結構ギリギリだったけどな」
「そうか」
そう、一言。セレナは興味なさそうに呟き、自分のデッキを点検する。
「……おいおい、どうしたんだよ。あの遊矢がシンクロ次元のスターに勝ったんだぜ? つまり、同じランサーズの俺達も同じくらい強いってことだ。もうちょっと喜んだらどうなんだ?」
「勝ったと言っても、所詮はタッグ・デュエルだろう」
「ん? 引っかかる物言いだな。お前、タッグ・デュエル嫌いなのかよ?」
「あぁ、いや、そういうわけではない。
……ただ、なんというか。タッグで勝てたとしても、勝った気にならないんだ」
「あ? なんでだよ。どんな形でも、勝ちは勝ちだろう」
「いや、それは違うな。覚えているか? 私と遊矢がタッグを組み、不動遊星とデュエルしたことを」
「ああ」
二人は以前不動遊星、そしてセキュリティの牛尾哲とタッグ・デュエルを行ったことを思い出していた。
あの時は、牛尾がセレナの動き――融合――を封じたが、遊矢のサポートを受け、なんとか二人に勝利することができたのだ。
「あれは本当に危なかったな。あのデュエルがあるまで正直、この次元を舐めてたぜ。しっかし、本当に良かったぜ。シンクロ次元相手のランサーズ初デュエルが、おっさん相手に完全敗北じゃなくてよ」
「……だからお前は未熟なんだ」
「なんだとぅ!?」
「それからの生活を思い出してみろ。
――ジャック・アトラスが不動遊星のガレージを訪れ、遊矢がフレンドシップ・カップのエキシビション・マッチに参加することになっただろう?」
「ああ。それで俺達も参加することになって――こうして、Dホイールを用意してもらったんだろ」
沢渡は自分のDホイール、そしてヘルメットを手に取る。
これらは遊矢の赤いDホイール同様、ガレージの倉庫で余っていたものを引っ張り出し、チューニングされたものだ。型式は少し古いらしいが、そんなことは沢渡の知ったことではない。
青いDホイールにヘルメット。そして黄色のライディングスーツ。沢渡はその色合いに惚れ込み、すこぶる気に入っていた。カードほど愛着があるわけではないが、Dホイールに乗るならこれでなければ駄目だ、と。
「不動遊星、だったな。見た目通り中々いい仕事をするぜ。そのうちスタンダード次元にも来てもらって、俺様がスターになるための手伝いをさせたいくらいだ」
「見た目通りか……それはどうだろうな。あの男はまだ、何か隠しているように感じた」
スターの下りを全力でスルーし、セレナは以前から感じていた違和感を打ち明けた。
――“本当にあれは全力だったのか?”
一言で表現するならそういうことだ。現にあの後、フレンドシップカップが開催されるまで訓練として手合わせしたが、遊矢、沢渡、セレナは一度勝利できていないのだ。
「考えすぎだと思うけどな。それで、要するに何が言いたいんだ? 不動遊星は強いって言いたいのか?」
「そうじゃない。タッグで勝てたからと言って、シングルでも勝てるとは限らないということだ。私達はランサーズ、融合次元と戦うための組織だ。オベリスク・フォース相手ならタッグ・デュエルもあるだろうが、幹部級の相手となるとまずありえない。私達は一対一で不動遊星やクロウ・ホーガン、そしてジャック・アトラスとも互角以上に戦えねばならん」
「確かにそうだな。特にタッグ・デュエルは、互いの相性がよっぽど良くなきゃ続かねえ」
「そう、それもネックだ。私もアカデミア時代に何度か経験したが、誰もついては来れなかった。遊矢とのデュエルもまぐれだったようだしな」
「お、分かってくれるか。俺も色んな奴とタッグを組んできたが、どいつもこいつも根性の無え奴らでなぁ。俺のスピードが速すぎるだの、もっと速度落とせだの、文句ばっかりだぜ。
ま、あいつらの気持ちも分かるけどなぁ! そらそうよ! 俺のスピードについてこれるやつなんざ誰もいねえからなぁ! ヒャーハッハッハ!!」
「……」
沢渡とセレナは、いつの間にか接近していたその男を見た。
髑髏を模したヘルメット、その下にはサングラス。炎のような橙の髪。そして奇妙なテンション。
言うなれば暴走族。近寄ってはいけないタイプの人間だった。
……二人はDホイールに搭乗する。運転はできないが、オートパイロットモードにすればとりあえず走ることはできる。
「ちょっと待てぇ! 無言で逃げようとすんじゃねえ!」
「……なら聞くが、お前は誰だ?」
「俺様は炎上ムクロ。今大会最強のダークホースにして、最速のDホイーラーよ」
「……はぁ」
セレナは二度、大きくため息を吐いた。自信過剰な点は隣のやつとよく似ている。
「そんじゃ、次はお前だな」
「何がだ」
「決まってんだろ、名前だ名前。俺様が名乗ったんだから、相応に名乗り返すのが筋ってもんだろう? おっと、ついでにそっちのもな」
「……セレナだ」
「沢渡シンゴ。今大会最強のダークホースにして、最高のエンターテイナー、それがこの俺だ」
「……ほーう」
ため息混じりにセレナ、自信満々に沢渡が自己紹介した。
その心意気に通じるものがあったらしく、ムクロは沢渡を吟味する。
しかしやがておもむろに、残念そうに首を振った。
「駄目だなお前は。この炎上ムクロ様の初戦には相応しくねえ」
「なんだと!? てめえ、舐めるのもいい加減に――っ」
「だが見込みはあるぜお前」
「な、見込み……!?」
「ああ。まだまだ初心者で全然駄目だが……そうだな。予選を勝ち抜くことができりゃ、その頃にはそこそこのDホイーラーになれるだろーぜ」
「……ほう。どうやら人を見る目はあるらしいな。けどよく分かったな、俺が初心者だって」
「仕草を見りゃ分かる。Dホイールにさえ慣れてない初心者だってな。ま、要は経験だ経験。もうしばらく慣れてから相手してやるよ。
んでそっちは――悪くねえな。ライディング・デュエルはともかく、実力は確かと見える」
「私とデュエルがしたいのか」
「ま、そういうことだな。自慢じゃねえがこの炎上ムクロは有名なんでね。どいつもこいつも相手してくれなくて困ってたんだ。けどアンタならどうだ? 俺様の挑戦、受けてくれるよなぁ?」
「……なるほど。この大会の参加者が避けるほどの
「そいつはちょっと違え。俺はただの
「? Dホイーラーとは、ライディング・デュエルをする
「そいつは俺とデュエルすりゃ分かる。で、どうなんだ。やるのか、やらないのか」
「……いいだろう。お前の挑戦、受けてやる」
少し悩んだ末、セレナは返事を返した。
シンクロ次元で数日暮らして、彼女には分かったことがある。それは、この次元の平均的な
ならば、相手にとって不足はない。
「おいおいおい、ちょっと待て! 俺とのデュエルはどうすんだよ!」
「まあそこで待ってな。せっかくだ、この炎上ムクロ様のデュエルを特等席で拝ませてやるぜ」
「もう勝った気でいるとは、随分と舐められたものだな」
「舐めてるつもりはねえさ。負けるつもりもねえがな」
「フン。ならばこの私が、貴様のその長い鼻をへし折ってやろう」
セレナとムクロは各々のデッキをセットし、ヘルメットを被る。
沢渡は不満げにしつつもコースから離れ、近くに設置された専用の休憩所へ入っていった。
「初心者だろうが手加減はしねえ。いいな?」
「当然だ」
両者は共にスタート体勢に入る。フィールド魔法《スピード・ワールド・ネオ》が展開され、カウントが開始された。
この大会におけるデュエルは全て記録される。ならば既にこの時点で、何らかの方法で記録が始まっていることだろう。
無言のままスタートまでの数秒が流れた。
――カウントゼロ。
紫と黒。二台のDホイールは一斉にスタートを切った。
『ライディング・デュエル、アクセラレーション!』
◆
「ヒャッハァァ――――!!! 遅い遅い、全っ然遅いぜぇ!」
「な!?」
一斉にスタートを切ったにも関わらず、ムクロのDホイールはあっという間に先頭を取った。
セレナのDホイールもまた遊矢、沢渡のものと同様だ。ある程度のスピードはあるものの、オートパイロット時に転倒しないこと、事故に遭った時搭乗者を守ることに重点を置いている。対してムクロのDホイールはとにかくスピード。最高速度と、そこに到達するまでの加速度が尋常ではない。
そして、それを操る彼もまた人間離れしていた。後続のセレナとぶっちぎりで第一コーナーを取り、デュエルが開始される。
「くっ……全く、とんだ暴走マシンだな!」
「ハッハー! 褒めても何にも出ねえぜ! 行くぜ、俺様の先行!」
ムクロ
LP:4000
SPC:0 → SPC:1
セレナ
LP:4000
SPC:0 → SPC:1
「俺は《ピラミッド・タートル》を攻撃表示で召喚!」
《ピラミッド・タートル》
星4/地属性/アンデット族/攻1200/守1400
「カードを三枚伏せて、ターンエンドだ!」
「私のターン!」
ムクロ
LP:4000
SPC:1 → SPC:2
セレナ
LP:4000
SPC:1 → SPC:2
「私は――」
「おっと待ったァ! 永続
こいつは互いのスタンバイフェイズ時、俺の
「
ムクロ
LP:4000
SPC:2 → SPC:3
これまで見たことのない戦術に、セレナは一瞬だけ戸惑った。ライディング・デュエルにおいて
そもそも《スピード・ワールド・ネオ》を展開している時点で
「……まあいい。貴様がどんな戦術で来ようと、私は私のやり方で勝つだけだ。私は《
《
星4/闇属性/獣戦士族/攻1600/守1200
「バトルだ! ブルー・キャットで《ピラミッド・タートル》を攻撃!」
「
《ピラミッド・タートル》
攻1200 → 攻 0
「自ら攻撃力をゼロにするだと……?」
ブルーキャットの繰り出した蹴りが《ピラミッド・タートル》に決まり、破壊される。
本来ならダメージは400。しかし攻撃力がゼロになったことで、ムクロのライフは1600も削られた。
ムクロ
LP:4000 → LP:2400
SPC:3
――そして、それこそが彼の狙いでもあった。
ライディング・デュエルのスタイルは、Dホイーラーの性格によって大きく二種類に分けられる。ライフを温存し
炎上ムクロは紛れもなく後者。それも、後者の中で最も分かりやすい例だった。
「
ムクロ
LP:2400
SPC:3 → SPC:8
「ライフを犠牲に
「更に、《アルケミー・サイクル》の効果発動! 攻撃力がゼロになったモンスターが戦闘で破壊され墓地に送られた時、カードを一枚ドローする!
更に更にィ! 《ピラミッド・タートル》の効果発動! 戦闘で破壊された時、守備力2000以下のアンデッド族をデッキから特殊召喚できる! 俺は、《スカル・フレイム》を特殊召喚!」
《スカル・フレイム》
星8/炎属性/アンデット族/攻2600/守2000
「攻撃力2600……!」
《ピラミッド・タートル》最大の特徴は、条件に合うモンスターならば最上級モンスターでも特殊召喚可能なことだ。
ムクロの場に召喚されたのは攻撃力2600、炎のマントを纏う骸骨のモンスター。セレナのデッキでは、《融合》を使わなければ越えられないモンスターである。
しかし、それを想定していないセレナではない。
「さあどうしたァ! デュエルはまだこれからだぜ!」
「言われるまでもない! 私はカードを二枚伏せて、ターンエンド!」
「俺のターン! 《フルスロットル》の効果によりこのスタンバイフェイズ、俺の
ムクロ
LP:2400
SPC:8 → SPC:9 → SPC:10
セレナ
LP:4000
SPC:2 → SPC:3
ムクロの
弾丸の如き己の疾さに、ムクロは興奮と快感を覚える。これこそがライディング・デュエル。通常のデュエルでは決して味わえない迫力と戦略だ。
「ヒャッハー! 見ろ、このスピードを! これこそがライディング・デュエルの真骨頂だぜぇ!」
「またそれか。まだ三ターン目だが、ここまで来るとワンパターンと言わざるを得ない。貴様は他の戦術を知らないのか?」
「知らねーな! いいか、よく聞けルーキー!
俺様のデュエルは! 常に!! この、スピードの中にある!!!」
「っ……暑苦しいやつだな。戦術を一つしか持たない
「そいつはどーだろーなぁ?」
「なんだと?」
「確かにアンタの言うことは一理ある。だが生憎と、俺はそこまで器用じゃなくてな。多くを修めるより、一つを極める方が性に合ってるのさ。そして、極限まで極めた一芸は、時にあらゆる芸を凌駕する」
「御託はいい。そこまで言うのならば、このデュエルで証明して見せろ!」
「ハッ、ごもっともだ! だったら行くぜ、バトル! 《スカル・フレイム》で《
「単調な攻撃だな。
私はブルーキャットを破壊し、デッキから二体目を手札に加える!」
「何? だが、これでアンタの場はがら空きだぜ!」
「いいや。ここで、ブルー・キャットの効果発動! フィールドのこのモンスターが効果で破壊された時、デッキから《ムーンライト》モンスターを特殊召喚する! これにより、三体目のブルー・キャットを召喚!」
《
星4/闇属性/獣戦士族/攻1600/守1200
「ブルー・キャットの効果は戦闘で破壊された場合でも発動する。攻撃したければするがいい!」
「上等だぜ、バトル続行ォ! 行け、《スカル・フレイム》!」
ブルー・キャットが火炎に焼かれ、破壊される。
「この瞬間、ブルー・キャットの効果発動! 私はデッキから《
《
星4/闇属性/獣戦士族/攻1800/守 600
「蒼い猫の次は紅い狐か。まあいい、好きなだけ呼びな。新たにカードを二枚伏せて、ターンエンド!」
「私のターン!」
ムクロ
LP:2400
SPC:10 → SPC:12
セレナ
LP:4000
SPC:3 → SPC:4
「……来たか」
セレナはドローしたカードを確認し、ほくそ笑む。
《融合》。彼女のデッキのキーとなる
「よほどいいカードを引いたらしいな。感情が顔に出てるぜ」
「ああ、その通りだ。スピードのみに頼ったのが貴様の敗因だ。このデュエルは貰ったぞ!
私は
セレナ
LP:4000
SPC:4 → SPC:2
「これにより私は、《ムーンライト》モンスター二体を融合する!」
「甘い、いや遅いぜ!
ムクロ
LP:2400
SPC:12 → SPC:9
「これは――」
「《
しかぁし! サモン・クローズの真の力はそこじゃねえ! このターン相手は如何なる方法でも、モンスターを特殊召喚することはできない!」
「如何なる方法でも、だと……!」
「そうだ。よって《融合》は不発。アンタの
「……くっ」
セレナは悔しげにムクロを睨む。
彼女のフィールドにある《
それが、彼女のこのターンでの必勝パターンだった。
「だが、まだ手は残っている!
《
セレナ
LP:4000
SPC:2 → SPC:1
《
攻1800 → 攻2800
「バトルだ! クリムゾン・フォックスで《スカル・フレイム》を攻撃!」
「そうはいかねぇ! 永続
「な!?」
その
ブースターは火を噴き、ムクロは更に、更に加速する。
「《スピード・ブースター》の効果! 相手より
縮まった距離が再び開く。クリムゾン・フォックスの攻撃は《スカル・フレイム》まで届くことはなかった。そして《スピード・ブースター》がある限り、その差が開くことはあれ、縮まることはないだろう。
「おのれ……私はモンスターをセット。ターンエンドだ!」
《
攻2800 → 攻1800
「行くぜぇ、俺のターン!」
ムクロ
LP:2400
SPC:11
セレナ
LP:4000
SPC:2
「《
「何!?」
セレナ
LP:4000
SPC:2 → SPC:0
セレナのDホイールが急激に減速する。これにてカウンターはゼロ。これで次のターン、セレナは通常の
「まだ終わっちゃいねえ! 永続
装着されたロケットブースターから小型のロケットが複数発射された。数は十一。ロケットの群れはセレナの元に着弾し、計1100のダメージが与えられる。
セレナ
LP:4000 → LP:2900
SPC:0
「ぐっ……くそ」
「そして俺は、《
ムクロ
LP:2400
SPC:11 → SPC:5
「《スカル・フレイム》の効果を発動! 一ターンに一度、手札から《バーニング・スカルヘッド》を特殊召喚できる! 来い《バーニング・スカルヘッド》!」
《バーニング・スカルヘッド》
星3/炎属性/アンデット族/攻1000/守 800
「《バーニング・スカルヘッド》は手札から特殊召喚した時、相手に1000ポイントのダメージを与える!」
セレナ
LP:2900 → LP:1900
SPC:0
「この……!」
「《スカル・フレイム》の効果を使用したターン、俺はバトルフェイズを行うことができない。カードを一枚伏せてターンエンド!」
「私のターン!」
ムクロ
LP:2400
SPC:7
セレナ
LP:1900
SPC:1
「っ――!」
互いのライフと
ムクロのフィールドには上級モンスターこそいるが、大した攻撃は行っていない。にも関わらず、ライフはいつの間にか逆転されている。加えてセレナのスピードは未だ1。これでは
「そらそら、さっきまでの威勢はどうした。俺様を倒すんじゃなかったか?」
「うるさい! 待っていろ、今すぐその口を黙らせてやる!
私はセットしたモンスターを反転召喚! 現れろ、《
《
星4/闇属性/獣戦士族/攻1600/守1200
「そして、手札から《
私は……ブルー・キャットを選択!」
《
攻1600 → 攻2600
「相打ちさせることで新しいモンスターを召喚しようってか。だが俺様の場には、攻撃を無効にする《スピード・ブースター》がある。そんなもんじゃ、このスピードにはついてこれねえぜ!」
「それがどうした! バトル! ブルー・キャットで《スカル・フレイム》を攻撃!」
「《スピード・ブースター》発動! 攻撃を一度だけ無効にする!」
ブースターが再び火を噴き、ブルー・キャットとの距離が離される。攻撃は届かず中断。セレナのバトルフェイズは終了する――かのように思われた。
「《
「あぁん!? そいつの攻撃力は1800だ! 《スカル・フレイム》には届かねぇ!」
「永続
「何ィ!?」
《
攻1800 → 攻2600
クリムゾン・フォックスの額に角が生え強化され、決死の攻撃により《スカル・フレイム》と相打った。
その采配にムクロは感心した。《幻獣の角》は、装備したモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時、カードを一枚ドローする効果を持つ。つまり、強化されたクリムゾン・フォックスで《バーニング・スカルヘッド》を攻撃していれば、カードを一枚ドローすることができたのだ。
しかしセレナはそれをせず、《スカル・フレイム》に攻撃し相打ちさせた。彼女は《スカル・フレイム》のもう一つの効果を見抜いていたのである。
《スカル・フレイム》はドローフェイズ時、通常のドローを行う代わりに墓地の《バーニング・スカルヘッド》を手札に加える事ができる。もし今の攻撃が《スカル・フレイム》ではなく《バーニング・スカルヘッド》に向いていれば、セレナは一枚ドローすることができ――次のターン、《スピード・ブースター》とのコンボで敗北していたのだ。
「どうだ。これでお前のエースは破壊した。私の反撃はここからだ!」
「本当にそう思ってるのか?」
「……どういう意味だ」
「気づいてるだろ? この俺様が……いや、俺達がこの程度じゃないってことをよ」
「……フン。私はこれで、ターンエンドだ!」
「俺のターン!」
ムクロ
LP:2400
SPC:9
セレナ
LP:1900
SPC:2
「行くぜ! まずは《スピード・ブースター》、効果発動!」
セレナ
LP:1900 → LP:1200
SPC:2
「くっ……またそのカードか――!」
「更にこのモンスターは、墓地の《スカル・フレイム》を除外することで手札から特殊召喚できる!
いざカモーン! 《スピード・キング☆スカル・フレイム》!」
《スピード・キング☆スカル・フレイム》
星10/風属性/アンデット族/攻2600/守2000
「新たな上級モンスターだと……!」
炎を纏う、骸骨のケンタウロス。
疾さの王を自称するスカル・フレイムは、紅のマントを羽織り、ムクロと共にスピードの世界を駆け抜ける。
「《バーニング・スカルヘッド》を攻撃表示に変更。
そしてバトル! 《スピード・キング☆スカル・フレイム》、《
セレナ
LP:1200 → LP:200
SPC:2
「おのれ――」
ブルー・キャットが戦闘で破壊され、セレナのライフは800を切った。《スピード・ワールド・ネオ》下では、相手のライフを800削りきるのは容易だ。今こそムクロの手札はゼロだが、次のターンで《
強力なモンスターではなく、特殊な召喚法でもない。ただの、純粋なスピードによって負けるのだ。
「ブルー・キャットの効果発動! 私はデッキから、二体目のクリムゾン・フォックスを特殊召喚!」
《
星4/闇属性/獣戦士族/攻1800/守 600
「攻撃力はこちらが上。これで残りのモンスターは攻撃できまい!」
「へっ、首の皮一枚繋がったか。《バーニング・スカルヘッド》の効果発動。フィールドのこのモンスターを除外して、除外された《スカル・フレイム》を墓地に戻す。
俺様はこれでターンエンド!」
「私のターン!」
ムクロ
LP:2400
SPC:11
セレナ
LP:200
SPC:3
「――これは」
セレナは逆転のカードを引き当てた。
ムクロの
だが、それでいい。彼女が引き当てたのは、追いつけないからこそ発動できる《
「……手札から《
そして
セレナ
LP:200
SPC:3 → SPC:1
「手札の《
現れ出でよ! 月明かりに舞い踊る美しき野獣! 《
《
星7/闇属性/獣戦士族/攻2400/守2000
三日月を模した仮面。胸元にはアクセサリ。両手には二刀の短剣。
ムクロの妨害はない。ここまで来てやっと、セレナのエースモンスターが召喚されたのだ。
「融合素材となったクリムゾン・フォックスの効果発動! このモンスターがカード効果で墓地に送られた時、相手モンスター一体の攻撃力をゼロにする! 私は《スピード・キング☆スカル・フレイム》を選択!」
《スピード・キング☆スカル・フレイム》
攻2600 → 攻 0
「なるほどなぁ! だが何度も言うように、俺には《スピード・ブースター》がある! こいつを忘れてもらっちゃ困るぜ!」
「忘れたつもりはないさ。このカードで、貴様のスピードを奪う! 《
「にゃにぃぃ!? そのカードはぁぁ!!?」
「このカードは
セレナの発動したカードから突風が吹き荒れ、互いのバックを破壊する。セレナのフィールドに
「――なーんてな」
しかし、ムクロの余裕は崩れない。
《
……フォーチュン・カップで行われた試合。対戦相手は不動遊星。序盤はムクロが押していたが、最後はこのカードによって逆転され、敗北した。
ならば、その対策をしていないはずがない。
「以前、そのカードには煮え湯を飲まされたんでな。同じ戦術でやられる炎上ムクロ様じゃねえ!
カウンター
「なんだとっ!?」
「これによりギャップ・ストームは無効、そして除外される!」
ムクロの
万策は尽きた。セレナのフィールドにはキャット・ダンサーのみ。サポートできるカードはない。そしてこのターンの終了時、《
「……私は、これでターンエンド」
《スピード・キング☆スカル・フレイム》
攻 0 → 攻2600
「俺のターン!」
ムクロ
LP:2400
SPC:12 MAX
セレナ
LP:200
SPC:2
「最後までデュエルを続けるその気力、褒めてやるぜ!
こいつで終わりだ。《スピード・ワールド・ネオ》、効果発動!
ムクロ
LP:2400
SPC:12 MAX → SPC:8
セレナ
LP:200 → LP:0
SPC:2
「っ……ここ、までか」
Dホイールから放たれた電撃を受け、僅かに残ったセレナのライフは霧散した。
ブシュ、と音を立てて空気が漏れ、Dホイールが停止する。
――何もできなかった。
潜在能力は高い。だが、経験がそれに追いついていない。
フィールドに残された《
ムクロのデッキ、スピード☆アクセルとか言わせたくせにロックバーンにしちゃったなぁ。
ま、まあ、スピードワールド自体がロック風味の効果だし、仕方ないよネ。そもそもビートバーンにするとライフ4000なんてあっという間に削れちゃうしネ。