……ごめんやっぱ続かない。とりあえず途中だったものを仕上げただけ。いつぞや書きなぐったメモとは思いっきり違うけど許せ。
※《
※デュエル内容修正。主にライフ計算と降魔弓のハマ。大したミスじゃなくてよかった……。ハマの修正に従って演出も若干変更しました。
初陣! エンタメ・タッグ爆誕!
「……やっぱり凄い。この人達、全員がフレンドシップ・カップの参加者なのね」
熱気に塗れた人混みの中で、柊柚子は呟いた。
ライディング・デュエル用のコースには色とりどりのD・ホイールがずらっと並び、D・ホイーラー達はというと、バトル・シティ開幕までの時間を各々自由に過ごしていた。
といっても全く緩やかな雰囲気ではなく、ガラの悪そうな連中があちこちでメンチを切っている。
「なんとなく分かってはいたけど、舞網チャンピオン・シップとは別物ね。全体的にピリピリしてる……?」
「そうだな。もしかしたらライディング・デュエルとアクション・デュエルの違いが、こういうところにも出てるのかもな」
遊矢は自分のD・ホイールを触りながら、軽くイメージする。
デュエルで皆を笑顔にする。言葉にすると簡単に聞こえるが、実際は尋常ならざる難易度だ。強いだけでは達成できない。勝つだけでは達成できない。
いやそもそも、この次元の
何しろ遊矢自身、ライディング・デュエルは初心者だ。同じような参加者は数多くいるが、この大会にはジャックとの対戦目当てで参加したベテランD・ホイーラーも紛れ込んでいる。
「ライディング・デュエル……か」
対して柚子は、桃色のD・ホイールを不安そうに撫でた。彼女にはライディング・デュエルの経験が一切ない。この次元に迷い込んでからは遊矢そっくりの人物“ユーゴ”と行動を共にしていたが、彼女自身がライディング・デュエルをすることはなかった。遊矢と違って柚子は、ぶっつけ本番でやるしかないのだ。
ならばと、遊矢は柚子の手を握って提案した。
「柚子。最初のデュエルは俺と一緒にやらないか? その方が経験も積めるし、緊張も少しは誤魔化せるだろ?」
「一緒に? 私と遊矢が?」
「ああ。名付けて、“タッグ・ライディング・エンタメ・デュエル”だ! ……あれ、ちょっと長いかな?」
「でも、遊矢だってまだ経験浅いでしょ? 私がいたら足手まといに……」
「その時はその時さ。一定以上の成績を出せば勝ち上がれるんだから、一回くらいは負けても大丈夫だよ」
「そうなの? でもこの大会、タッグ・デュエルなんてできるのかな」
「その点は心配いらねーぞ。この大会は比較的自由度が高いからな。タッグは勿論、変則バトル・ロイヤルだってできる」
柚子の問いに答えたのは別の男だった。
黒いヘルメットを脇に抱え、茶色のライディングスーツ。顔にはイタズラでもされたのか、文字のような、あるいは模様のようなラインがこれでもとか刻まれている。
二人は知っていた。それは“マーカー”と呼ばれる印であり、犯罪者の刻印であることを。不動遊星にもマーカーはあったが、ここまでひどくはなかった。一体何をしたらここまでマーカーまみれになるのかは、この次元の人間でも分からない。
柚子は警戒心をむき出しにして、遊矢の後ろに下がった。
「遊矢、この人……」
「大丈夫だ、柚子」
「え?」
ただ、遊矢は知っていた。
ガレージに飾ってあった一枚の写真。それに不動遊星、ジャック・アトラスと共に写っていた人物であると。
「えっと……もしかして、不動遊星さんと知り合いの方ですか?」
「おお、よく分かったな! 俺は
名前は……榊遊矢だったな。となると、もしかして後ろのが柊柚子か?」
「え? 柚子のこと、知ってるんですか?」
「まあな。事のあらましは遊星から聞いてるぜ。随分と大変だったらしいが……ま、再会できてよかったじゃねえか」
「はい。遊星さんには色々とお世話になりっぱなしです」
「らしいな。ならお礼は、そのD・ホイールとデッキで払ってもらおうか」
「……デュエル、ですか?」
「ああ。折角だ、二人まとめて相手してやるよ」
「え――っ」
通常、デュエルは一対一か二対二で行われる。それはライディング、アクションを問わず同様である。
だからこそ、クロウの発言は二人を驚かせるものだった。一対二では、どうしてもアドバンテージに差が出来てしまう。バトル・ロイヤル形式でもタッグ・フォース形式でも、一人の方が圧倒的に不利なのだ。
「本当にいいんですか?」
「お前ら、どっちもライディング・デュエルは初心者だろ? だったら問題はねえさ。このクロウ様に任せとけ」
「――いいわけないだろ。何言ってんだお前は」
また一人、クロウの後ろから人が駆けつけた。
長身の男だった。寒色系のライディング・スーツを着込み、脇には黄土色のヘルメットを抱えている。
「シンジ。お前もこのエリアに来てたのか」
「偶然だと思うけどな。で、クロウ。お前いきなり浮気か? 一戦目は俺とやるって言ってただろ」
「悪ぃ。けど、エキシビションであんな試合見せられちゃ、今のうちにやるしかねえと思ってな」
「だとしても一対二は無理だ。ルールブック読んでねえのかよ」
「前回の時はできただろ? 乱入にバトル・ロイヤル、なんでもありだったじゃねえか」
「そのシステムだと、徒党を組んで乱入を繰り返せば相手にターンを回さず勝ててしまうからな。それで問題になって、今回は禁止になったんだよ。できるのは通常のライディング・デュエルと、“タッグ・フォース”ルールのデュエルだけ。どうしてもやりたいなら、その辺のセキュリティに申請して許可を貰わないとな」
「はぁ!? マジかよ……どうせ申請なんかしたとこで、許可なんて貰えねえだろうしなぁ」
「……えっと」
クロウとシンジの会話について行けず、遊矢と柚子は沈黙する。
どちらも成り行きで参加することになったため、詳しいルールまでは把握していなかったようだ。
「遊矢、どうする? 一対二は無理だって」
「そうだったのか……じゃあ、仕方ないな」
遊矢は腹を括り、クロウとシンジに向き合った。
柚子を一人にはしておけない。クロウとデュエルする。
これらを同時に満たす方法は一つだけ。遊矢と柚子にとっては無謀極まりない提案だ。クロウ・ホーガンは以前、不動遊星、ジャック・アトラスと同じチームで活躍していた。実力は折り紙つきだ。
それでも、もう一度ジャックとデュエルするためには、避けては通れない壁である。
「クロウさん、シンジさん。俺達とタッグ・デュエルをしましょう」
「えぇ!?」
真っ先に反応したのはクロウでもシンジでもなく、柚子だった。
「ちょっと遊矢。本気なの?」
「ああ。確かに、いきなりこの人達を相手にするのは厳しいと思う。でも、試したいことがあるんだ。そしてそれは、お前とのタッグでしかできない。
……頼む、柚子」
「う……私じゃないと、駄目なの?」
「ああ。他には考えられない」
言動は冗談レベルでぶっ飛んでいたが、遊矢の目は真剣そのものだった。
柚子はその気迫に気圧され、泣く泣く承諾した――してしまった。
クロウは、そんな遊矢を見てほくそ笑む。彼自身、こういう思考をする人間は嫌いではないのだ。
「どうやら冗談で言ってるわけじゃなさそうだな。
遊矢。一応聞いておくが、俺達がどういうチームか知ってて言ってんだよな?」
「知ってるさ。クロウ・ホーガンとシンジ・ウェーバー。世界大会で活躍中のタッグ・チームだ」
「せ、世界大会!?」
再び柚子は驚く。
マーカーだらけのD・ホイーラーは実は大物で、その大物相手に遊矢が喧嘩を売っている……声を荒らげるのも無理はない。
柚子はようやく遊矢の無謀さを理解する。初心者と世界レベルのベテラン。結果は初めから見えているようなものだ。
「そこまで知った上で俺達に挑むと? どう足掻いたところで、大人と子供の遊びにしかならねえと思うが?」
「それはどうかな。デュエルはそんな単純じゃない。少なくとも、俺はそう信じてる」
「――ははっ、違いねえ。そんじゃま、期待させてもらうぜ」
クロウは踵を返し、シンジと共に自分のD・ホイールの場所へ戻っていった。
面白い相手を見つけたと言わんばかりに、笑みを浮かべながら。
――かくして対戦相手は決定した。
バトル・シティと化したこの街では、シティ全域でライディング・デュエルが行われる。これもまた、数十を超える戦いの一つに過ぎない。
大きな意味を持つか、それとも平凡な一試合として終わるか。全ては彼ら次第である。
◆
時計の針はチクタクと音を立て、時を進める。遅く、重く、けれど確かに。決して止まることなく、その瞬間は確実に近づいてくる。
――開始時刻。
エキシビションマッチでも実況を勤めたリーゼントのMCが、マイクを片手に映像として現れた。
『現時刻をもって、この街は変貌する! 剣戟鳴り止まぬ
ジャンクの海に眠る熱きD・ホイーラー達よ! 荒ぶる闘志を胸に秘め、頂きを超え、遥かなる
さあ、開幕だ! アクションフィールドオン! 《スターライト・ジャンクション》!』
ネオ童実野シティの上空にて、無数のカードが弾け飛んだ。
街中の道路は全てデュエル専用のコースとなり、各地にカードが配置される。
アクション・フィールドとスピード・ワールド。似て非なる二つの世界が混ざり合い、デュエルは新たな進化を遂げたのだ。
「アクション・フィールド? って、なんだ?」
「カードが散らばっていたな……何が始まるんだ?」
突然の新システムに、参加者達は騒めき始めた。そんな彼らを他所に、もう一度MCの声が響き渡る。
『たった今上空にて弾けたのは、
ただし、リスクの高いカード、拾ってもすぐに使えないカードもあるから要注意だ!』
「
遊矢の脳裏に一人の人物が浮かぶ。
……赤馬零児。ランサーズの長にしてデュエルアカデミアのプロフェッサー・赤馬零王の息子。
「おい遊矢。今のは何だ? 何か知ってんのか?」
クロウはDホイールに跨ったまま遊矢に尋ねる。遊矢は意味ありげに、どこまでも挑戦的に微笑んだ。
「今にわかるよ。ただ、退屈はさせない。俺達のデュエル、存分に見せてやる」
「……ほう、そいつは楽しみだ」
遊矢・クロウを含む
『デュエルの準備はいいかァー!!
では行くぞぅ! フィールド魔法《スピード・ワールド・ネオ》! セットオン!』
全てのDホイールが機動し、オートパイロットモードに入った。同時にスタジアムのコースが変形し、枝分かれする。
参加者のDホイールには予め走るコースがインプットされている。例えばAブロックの
――カウントが始まる。
「柚子」
「?」
直前、遊矢は柚子に呼びかけた。
「楽しいデュエルにしよう」
遊矢は笑っていた。苦悩と使命、それら全てを抱えた上で。
「ええ」
既に言葉は要らない。彼ら
――零。
幕は上がる。眠らない街は修羅の街へ。Dホイーラー達は、見果てぬ
『ライディング・デュエル、アクセラレーション!』
◆
四台のDホイールがコースを駆ける。先頭は黒と赤の二台。その後ろを黄土色、桃色が追随する。
「っ――くそ、このスピードでまだ抜けないのか!」
「これが経験の差ってやつだ! ついこの前始めたばっかの新米Dホイーラーが、このクロウ様を抜けると思うなよ!」
その瞬間、黒は赤を追い抜き、コーナーを曲がった。
ライディング・デュエルのルールにより、第一コーナーを取ったクロウ・シンジが先行となる。
「俺のターン!」
クロウ・シンジ
LP:4000
SPC:1
遊矢・柚子
LP:4000
SPC:1
「《
《
星4/闇属性/鳥獣族/攻1700/守 800
「そして、自分の場に他の
来い! 《
《
星3/闇属性/鳥獣族/攻1300/守 400
「カードを二枚伏せて、ターンエンドだ!」
「な……、シンクロ召喚しないのか!?」
「まあな! この戦略、読めるもんなら読んでみやがれ! さあ、来い遊矢!」
「っ――俺のターン!」
クロウ・シンジ
LP:4000
SPC:2
遊矢・柚子
LP:4000
SPC:2
「《
遊矢・柚子
LP:4000
SPC:2 → SPC:8
遊矢のDホイールにロケットブースターが装着され、一気に加速した。先頭を走るクロウを追い抜き、独走する。
「このタイミングでそのカードを使うってことは……いいぜ、来いよ!」
「俺は
遊矢・柚子
LP:4000
SPC:8 → SPC:4
「これで俺たちは、レベル5から7のモンスターが同時に召喚可能!」
二色の眼を持つ竜と幻獣が上空へ浮上する。
が、その瞬間を待ち構えていたクロウの罠が炸裂する。
「
疾風のゲイルをリリースして、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》、《
疾風のゲイルは光を纏い、分裂して突進した。浮上した二体のペンデュラムモンスターは破壊され、天空に描かれた軌跡が消滅する。
「くっ……カードを二枚セット! 俺はこれで、ターンエンド!」
遊矢・柚子
LP:4000
SPC:4 → SPC:1
「遊矢……!」
柚子が不安そうに声をかける。慣れないライディング・デュエルに、得意のペンデュラム召喚も不発。彼女が不安になるのも仕方がないだろう。
「やっぱりな」
そう呟いたのはシンジ。その得意げな声音に、柚子はむっとする。
「さっきセットされたスケールは4と8。ということは、お前の手札にはレベル5から7のモンスターが一体のみ。つまり、今のお前はモンスターを一体も召喚できないってことだ」
「おい、あんま油断するなよシンジ」
「分かってるさ。行くぜ、俺のターン!」
クロウ・シンジ
LP:4000
SPC:3
遊矢・柚子
LP:4000
SPC:2
「俺は《
《
星2/風属性/昆虫族/攻 400/守 800
「うっ……蜂のモンスター!?」
巨大な蜂型モンスターの出現に、柚子は思わず口を抑えた。ただでさえグロテスクな外見をしているのに、それが人間と同じ大きさをしているのだから、無理もないだろう。
「まだまだ行くぜ! 自分の場に《
《
星3/風属性/昆虫族/攻1000/守 500
「さらに、もう一体のツインボウを特殊召喚!」
《
星3/風属性/昆虫族/攻1000/守 500
「一ターンに三体も……!」
その高速展開に柚子は驚く。シンクロ召喚はその性質上、最低でもモンスターを二体必要とする。盤上を整えるのはスタンダード次元の
「まだ終わりじゃないぜ。レベル3の連撃のツインボウに、レベル2の毒針のニードルをチューニング!
蜂出する憤激の針よ! 閃光と共に天をも射抜く弓となれ!
シンクロ召喚! 現れろ、《
《
星5/風属性/昆虫族/攻 2200/守 1600
スカート型のアーマーと昆虫の面。その手にあるのは木製の弓。
――その名は
これでシンジ・クロウの場にはブラスト、ツインボウ、そしてアズサ。攻撃力の合計は4000を超えている。そして遊矢・柚子のフィールドには壁となるモンスターがいない。
だからこそ遊矢は、シンジのプレイングに違和感を覚えた。
「どうしてシンクロ召喚を……?」
霊弓のアズサは、《
わざわざシンクロ召喚を行う意味がないのだ。だというのに何故行ったのか。ただの格好付けか、それとも――
「これで決めさせてもらう! バトルだ! ツインボウで遊矢にダイレクトアタック!」
「遊矢!」
「くっ……!」
ツインボウが持つ二つの針が遊矢を襲う。
が、その直前。遊矢はセットしていた
「
今こそ目覚めよ! 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!」
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》
星7/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
二色の眼が目を覚まし、遊矢のフィールドに召喚される。シンジは攻撃を中止し、ツインボウは自軍へと戻っていった。
「へっ、やるじゃねえか遊矢。ペンデュラムゾーンが破壊されるのは想定内だったってわけか。だがな、それでも一手甘ぇ! 行けシンジ!」
「おう!
俺はレベル3の連撃のツインボウに、レベル5の霊弓のアズサをチューニング!」
「何!? 霊弓のアズサはチューナーモンスターだったのか!?」
シンクロモンスターでありチューナー。その類のモンスターを見るのは、遊矢はこれが初めてだった。アズサは五つの円環となり、ツインボウがその中心を飛行する。
「呼応する力! 怨毒の炎を携え、反抗の矢を放て!
シンクロ召喚! レベル8、《
《
星8/風属性/昆虫族/攻2800/守2000
昆虫の鎧と弓。光る矢を番えた新緑の弓兵。
強力なモンスターの出現に柚子は息を呑む。攻撃力は2800。遊矢のオッドアイズを上回っている。
「降魔弓のハマで、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を攻撃!」
「させない!」
蠱毒の一射が放たれるより速く、遊矢はカードを手にする。
手札ではなくコース上のカード。すなわち、
「
遊矢・柚子
LP:4000
SPC:2 → SPC:0
遊矢が
破壊はされない。しかし、ライフポイントは減少する。
「ぐっ……!」
遊矢・柚子
LP:4000 → LP:3850
SPC:0
「……なるほどな」
クロウは呟いた後、コースを見渡す。
――確かに、カードが落ちている。いや、浮いていると表現すべきか。
いずれにせよ、あれはアトラクションの一種。デュエル中に拾い、そのまま使用できるカードなのだ。
だが、ただ拾えばいいものでもないらしい。次にクロウが確認したのは遊矢と柚子の
「ちっ……だがここで、降魔弓のハマの効果発動! 戦闘ダメージを与えた場合、与えた数値分だけ相手モンスター一体の攻撃力を下げる! よって《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の攻撃力は150下がる!」
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》
攻2500 → 攻2350
「さらに降魔弓のハマは、一ターンに二回攻撃できる! 二度目の攻撃、行け!」
「《奇跡》の効果により、受けるダメージは半分になる!」
遊矢・柚子
LP:3850 → LP:3625
SPC:0
「くっ……!」
「バトルフェイズ終了時、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の攻撃力は元に戻る」
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》
攻2350 → 攻2500
「カードを三枚伏せる。黒槍のブラストを守備表示に変更してターンエンド。さあ、お前らのコンビネーションを見せてみろ!」
「……私のターン!」
クロウ・シンジ
LP:4000
SPC:4
遊矢・柚子
LP:3625
SPC:1
「……! これって」
シンジのターンが終了し、柚子のターンとなる。
柚子がドローフェイズにて引いたのは
「柚子!」
「え――?」
遊矢と柚子は一度だけ視線を交わす。
……それで意図は伝わった。柚子は遊矢が残した
「どうやら望みのカードは引けなかったようだな。言っとくが、これはライディング・デュエル。通常のデュエルと同じ感覚でいると、思わぬところで躓くぜ!」
「……いいえ。それはどうかしら」
「なに?」
「私は《幻奏の音女アリア》を召喚!」
《幻奏の音女アリア》
星4/光属性/天使族/攻1600/守1200
「さらに、自分の場に《幻奏》モンスターが存在するとき、このモンスターは特殊召喚できる! 来て、《幻奏の音女ソナタ》!」
《幻奏の音女ソナタ》
星3/光属性/天使族/攻1200/守1000
「ソナタの効果発動! アリアとソナタの攻撃力は、それぞれ500ずつアップする!」
《幻奏の音女アリア》
攻1600 → 攻2100
《幻奏の音女ソナタ》
攻1200 → 攻1700
「バトルよ! まずは、《幻奏の音女ソナタ》で《
ソナタの歌声により、守備表示のブラストが破壊される。
「ブラストが破壊されたところで、どうってことないぜ。《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の攻撃力は2500。所詮はハマの敵じゃない」
「これを見ても同じことが言えるかしら?
「なんだと!? まさか、そのカードは――」
「そう、これは遊矢が残したカード! ライディング・デュエルは初めてでも、コンビネーションなら貴方達にも負けてないわ!
《アナザー・フュージョン》の効果で私が融合するのは、《幻奏の音女アリア》と、《幻奏の音女ソナタ》!
響き渡る歌声よ。流れる旋律よ。タクトの導きにより、力重ねよ!
融合召喚! 今こそ舞台へ! 《幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト》!」
《幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト》
星6/光属性/天使族/攻2400/守2000
「よし!」
「バトルフェイズ中に融合召喚だと!?
――……だが、攻撃力は2400! ハマにはまだ届かない!」
「マイスタリン・シューベルトの効果発動! 一度だけ、自分か相手の墓地からカードを三枚まで除外できる! 私は、貴方の《
「墓地のモンスターを使わせない戦術か……!」
「この効果で除外したカード一枚につき、マイスタリン・シューベルトの攻撃力は200アップする!」
《幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト》
攻2400 → 攻3000
「行け、マイスタリン・シューベルト! 降魔弓のハマを攻撃! “ウェーブ・オブ・ザ・グレイト”!」
クロウ・シンジ
LP:4000 → LP:3800
SPC:4
「くっ、ハマ……!」
「まだ攻撃は残ってるわ! さあ行きなさい、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》! “螺旋のストライク・バースト”!」
クロウ・シンジ
LP:3800 → LP:1300
SPC:4
「ぐ――おおぉぉぉ!」
赤熱のブレスを受け、シンジが呻く。
――しかし、その痛みを疾さに変える。ブレスの勢いを利用して、シンジのDホイールはさらに加速する……!
「
「300につき一つ!? ということは――」
「受けたダメージは2500! つまり、こういうことだ!」
クロウ・シンジ
LP:1300
SPC:4 → SPC:12 MAX
カウントストップ。シンジのDホイールはライディング・デュエル最速の速さを叩き出した。
暴風の如き抵抗、それを我が身で切り裂く快感は、ベテランのDホイーラーでさえ尻込みする。
だがシンジは口元に笑みを浮かべ、その感覚に酔いしれる。危険な爆走マシンと化した自らのDホイールを、まるで手足のように操る。
そしてそれは、パートナーのクロウとて同じ。二人は並走し、遊矢と柚子との距離を更に広げる。
「……《アナザー・フュージョン》の効果で融合召喚したモンスターは、ターン終了時に破壊されるわ。カードを三枚セットして、ターンエンドよ」
「さあて、次は俺のターンだ!」
クロウ・シンジ
LP:1300
SPC:12 MAX
遊矢・柚子
LP:3625
SPC:2
「俺は《
そして、《
《
星2/闇属性/鳥獣族/攻1300/守 0
「このモンスターの召喚に成功した時、墓地から《
さあ来やがれ! 《
《
星3/闇属性/鳥獣族/攻1300/守 400
「まだまだ行くぜ! 手札から《
《
星2/闇属性/鳥獣族/攻 800/守 800
「こいつは自分の場にハルマッタン以外の《
俺は極北のブリザードのレベルを加え、ハルマッタンのレベルを4にする!」
《
星2 → 星4
「レベルの調整……ということは――!」
「レベル4の砂塵のハルマッタンに、レベル3の疾風のゲイルをチューニング!
漆黒の翼翻し、雷鳴と共に走れ! 電光の斬撃!
シンクロ召喚! 降り注げ、《
《
星7/闇属性/鳥獣族/攻2600/守2000
小さな鴉達を素材に、上級の
その名は雷切。雷・雷神を切ったとされる伝説の日本刀である。
「ライキリの効果発動! 一ターンに一度、他の《
「そんな――うっ!」
雷光じみた一閃。
二色の眼の竜は、鴉の剣士に両断・破壊される。
「柚子……! 待ってろ! 今、俺が
「駄目よ! ここで
「だけど!」
「大丈夫。今度は私の番。絶対、貴方に繋いでみせる」
「……分かった」
遊矢は柚子の決意を目の当たりにして、
「相談は終わったか? なら行くぜ、ライキリで柚子にダイレクトアタック!」
「永続
《幻奏の音女アリア》
星4/光属性/天使族/攻1600/守1200
「アリアは特殊召喚された場合、戦闘では破壊されない!」
「だったら、ライキリの切れ味を受けてもらうぜ!
《
攻2600 → 攻2900
「そして、対象モンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、攻撃力が守備力を超えていれば、貫通ダメージを与える!」
遊矢・柚子
LP:3625 → LP:1925
SPC:2
「う――くぅっ!」
ライキリの刀はアリアを貫通し、柚子を切り裂く。
「だけど、これで――」
「凌いだ、とでも思ってんのか?」
「え……?」
安堵の息を漏らした瞬間、クロウがそれを否定する。
そう。クロウにはまだ、攻撃の手段が残っている。
「どういうこと? 貴方のモンスターの攻撃は終わったはずよ」
「確かにな。だが、忘れてもらっちゃ困るぜ。《スピード・ワールド・ネオ》はただの雰囲気作りじゃねえ。こいつにだって、ちゃんとした能力があるんだぜ」
「《スピード・ワールド・ネオ》の効果……?」
「《スピード・ワールド・ネオ》は自分の
俺達のスピードは最高の12。そしてお前らは、今の一撃でセーフティラインの2400を切った。つまり……こいつで、チェックメイトだぜ」
「まさか――!」
クロウは残り一枚の手札を見せる。
それは、やはり《
「行くぜ! 《スピード・ワールド・ネオ》、効果発動!」
クロウ・シンジ
LP:1300
SPC:12 → SPC:8
クロウのDホイールから漆黒の雷が放たれ、柚子を襲う。雷は柚子のDホイールに直撃し、絶叫の悲鳴を上げる。
遊矢・柚子
LP:1925 → LP:1125
SPC:2
「まだだ! もう一度《スピード・ワールド・ネオ》を発動! 第二撃を喰らえ!」
クロウ・シンジ
LP:1300
SPC:8 → SPC:4
遊矢・柚子
LP:1125 → LP:325
SPC:2
「柚子!」
「――っ。まだ、まだよ!」
「強情だな。嫌いじゃねえが容赦はしねえ。こいつでトドメだ! 《スピード・ワールド・ネオ》、発動!」
クロウ・シンジ
LP:1300
SPC:4 → SPC:0
だが、それはもう関係ない。この効果ダメージが通れば決着なのだから。
「……これで、全部ね」
「なに?」
――柚子は笑う。この時を待っていた、と。
「カウンター
敢えて攻撃を受け続けたのはこの瞬間……つまり、
クロウは歯噛みする。基本的に《
「……やってくれるじゃねえか。俺はカードを一枚伏せて、ターンエンド」
これにてクロウの手札はゼロ。つまり今伏せたのは間違いなく、《スピード・ワールド・ネオ》で公開し続けた《
「これで、繋げたよ」
「……ああ」
二人は再びアイコンタクトする。
――言葉は無粋。それで意思は伝わるのだ。
「俺のターン!」
遊矢・柚子
LP:325
SPC:3
クロウ・シンジ
LP:1300
SPC:1
「俺は《
《
星4/地属性/獣戦士族/攻1700/守 500
「何かと思えばチューナーでもない下級モンスターか。遊矢、お前の手札は残り一枚。それもレベル5以上のモンスターってバレてる。今のお前にこの状況を覆すことはできねえ!」
「確かにその通りだ。このデュエル、俺一人だったら勝てなかった。だけど、俺は一人じゃない。柚子!」
「ええ! 思う存分やっちゃって!」
「ああ、行くぞ!
俺は、レベル4の《幻奏の音女アリア》と、《
「なに!?」
遊矢のフィールドに黒い宇宙が開き、アリアとヘイタイガーはその中心に集う。
「まさか、コイツは――!」
クロウは思い出す。ジャックと遊矢のデュエルを。
同レベルモンスター二体による新たな召喚。シンクロとも融合とも違う異次元の力――。
「エクシーズ召喚! 現れろ、ランク4! 《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!」
《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》
ランク4/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
巨大な逆鱗を持つ漆黒の竜。ジャックとのデュエルで姿を見せ、力を発揮することなく破壊されたモンスターだ。
その効果を、クロウは覚えていた。単純にして明快、しかして強力。それがこのドラゴンの能力である。
「ダーク・リベリオンの効果発動! オーバーレイ・ユニットを二つ使うことで、相手モンスター一体の攻撃力を半分にし、その数値をダーク・リベリオンの攻撃力に加える! “トリーズン・ディスチャージ”!」
《
攻2900 → 攻1450
《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》
攻2500 → 攻3950
「バトル! 行け、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》! 驟雨のライキリを攻撃!」
ダーク・リベリオンは紫電を纏い、攻撃体勢に入った。
しかし攻撃に移る直前、シンジが叫ぶ。
「クロウ、使え!」
「当然!
クロウが発動したのは、シンジが残した最後の一枚。その効果により攻守が逆転する。全てのモンスターは守備表示となり、バトルは中止された。
「これでそのドラゴンは攻撃できねえ。そして次のターン、ライキリの効果でダーク・リベリオンを破壊できる!」
「それはどうかな」
クロウは得意げにライキリの能力を語るが、遊矢はそれを否定する。
――柚子は走る。カードを求めて。
「クロウ、シンジ。貴方達に次のターンはない。このターンで決めてやる!」
「ハッ。いい気構えだが、一体どうするつもりだ? そのドラゴンは今守備表示。攻撃は封じられてるぜ」
「だったら、新しくモンスターを召喚すればいい。俺には、柚子が残してくれたこのカードがある!」
遊矢はセットされた一枚を指し示す。
前のターン、柚子がセットしたのは三枚。その、残り一枚である。
「どういう意味だ。融合、シンクロ、ペンデュラム、そして今見せたエクシーズ。バトルフェイズ中はそのどれもができないはずだぜ」
「その通り。だけど、それを可能にするのが――」
「私達のデュエルよ」
「なにっ……!」
遊矢の言葉を柚子が紡ぐ。
その手に握るのは
遊矢・柚子
LP:325
SPC:3 → SPC:1
「私は
「これにより俺は、セットされた
「《融合》だと!? ……そうか。あの時、柚子がドローしたカードか!」
「そうよ! これでカードは繋がったわ! 行けー、遊矢!」
「任せろ!
――俺が融合するのは、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》! そして貴方達の読み通り、手札に残ったレベル5のモンスター、《
胸を打ち鳴らす森の賢人よ。逆鱗の竜と一つとなりて、新たな力を生み出さん!
融合召喚! 出でよ! 野獣の眼光りし、獰猛なる竜! 《ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!」
《ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》
星8/地属性/ドラゴン族/攻3000/守2000
獣の魂を宿す、獰猛なる肉食竜。その瞳は、捉えた獲物を全て焼き尽くすだろう。
竜は咆吼し、群がる鴉達を怯ませる。攻撃力は3000、ライキリでも届かない……!
「だが、ライキリは今守備表示だ!」
「ビーストアイズは戦闘でモンスターを破壊した時、素材となった獣族モンスターの攻撃力分のダメージを与える!」
「なんだと!?」
「素材となったドラミング・コングの攻撃力は1600。よって、クロウとシンジに1600のダメージを与える!」
「っ、このまま終わってたまるかよ!」
シンジはDホイールを走らせ、Aの文字が入ったカードを取る。
「よし!
拾ったカードをディスクにセットするが、発動しない。
理由は一つ。ライディング・デュエルに慣れているシンジはすぐに気づく。
「くそ、
「行け、《ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》! 《
クロウはライキリと共にブレスを浴び、灼熱の炎に焼かれた。
ダメージは1600。二人はライフは尽き、デュエルは決着する。
「ぐあぁぁぁ――!!!」
クロウ・シンジ
LP:1300 → LP:0
SPC:1
勝者は遊矢・柚子。今ここに、優勝候補二人を蹴落としたダークホースが誕生した。