ハイスクールD×D ―忍一族の末裔―   作:塩基

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閻魔送り

その日の夜。

 

俺は父さんと母さんと夕飯を食べ、就寝の支度をして部屋のベッドに横になって会話していた。

 

《修行? いきなり連絡をしてきたから、びっくりもするよ》

 

《ワシが誘うときは、どういう意味かを教えているはずだぞ?》

 

《わかってるよ、九喇嘛……あれでしょ?》

 

《そうだ、用意しろ》

 

《はいはい》

 

俺は手を組み、木分身を召喚する。

 

木分身を身代わりとして部屋に残ってもらい、俺は身支度を済ませる。

 

《カズ、待ち合わせは…》

 

《牛鬼、九喇嘛と雅家の門前で待ってて》

 

俺はサンダルを履き、灰緑色のジャケットを羽織る。ジャケットには巻物を装備できるポケットが胸部と腹部の左右に三つずつの十二か所あり、全部に巻物を収容する。

 

額に額あてをし、手には穴あきのグローブ、太ももにはクナイ入れのホルスターを装備し、腰には手裏剣などのポシェットを付けた。

 

「留守番頼んだ。俺」

 

「気をつけて行ってこいよ、俺」

 

分身とあいさつを交わして、窓を開放して――屋根伝いで走る。

 

麗の家は町の外にあるため、瞬身の術で高速移動をして移動時間を短縮していく。

 

雅家の門前に着地した俺。

 

「そこそこ速くなったな、カズ」

 

「おせぇーぞ、カズ」

 

門前に立っていた牛鬼と九喇嘛がそう言う。

 

二人は普段の服装のままだ。

 

「行くぞ。カズ、八尾」

 

九喇嘛が走りだし、俺と牛鬼もそのあとを追う。

 

尾獣それぞれが異なる能力を有している。九喇嘛はその中で『敵の悪意を感知する』能力を有していて、いまのように感知すると『修行』という名目で俺を狩りだしてくる。

 

数分走ると、それがいるという場所――廃屋の前に到着する。

 

「あの悪魔の小娘どもも来ているようだな」

 

到着した九喇嘛が開口一番にそう言う。

 

「あぁ~、確かにいるね。この大きな存在は…今回の獲物? 九喇嘛」

 

「そうだ。あの悪意、遠くからでも安易に感知できるぞ」

 

「まぁ…イッセーたちが先についてたんなら、料理は任せるけど――」

 

俺は瞬時に六道仙人の状態に昇華する。

 

「魂には閻魔のところへ行ってもらわないとな」

 

…そう。数々の異形の者で拭えない業を犯してきたものを、その魂を人のものへと昇華させて閻魔のところへ送り出し、業の裁きを下してもらい償いをさせる……俺は今まで数えきれないほど異形の者たちをそうやって滅してきた。……俺もその者たちの業を背負っている。

 

「血生臭いな…人の血だな、この匂いは」

 

牛鬼がそう言う。

 

「今回は人殺しを重ねた悪魔か。送りがいがあるな…」

 

俺は宙に浮遊して先頭を進んでいく。

 

バヂッ!!

 

「グァァァァァァアアアアアアッッ!」

 

屋内の奥から閃光が見えスパークノイズが聞こえる。直後に大きな断末魔も聞こえてきた。

 

俺たちは気配を消して進んでいくと、ひらけた空間に出た。

 

黒焦げになっている……蜘蛛? いや、上半身は女性のものだが…四足だし、尾が蛇みたいだから…何だろうか。

 

よく分からない形態の悪魔。イッセーたちの攻撃で黒焦げになっていて、その四~五メートルあるだろう巨体を地面に突っ伏して倒れていた。

 

その悪魔の眼前にグレモリー先輩が立つ。

 

「最後に言い残すことはないかしら?」

 

「殺せ」

 

その悪魔から放たれた最後だろう言葉。

 

「そう、なら消し飛びなさい」

 

冷徹な一言と共に、グレモリー先輩の手のひらから巨大でドス黒い魔力の塊が打ち出される。

 

その魔力は悪魔の巨体を余裕で包むほどの規模で、悪魔はその魔力で消滅しようとしていた。

 

俺は咄嗟に手元の杖を天井に向けて高速で放つ。……その杖は自然落下とはほぼ遠い、急なアーチを描いて消えゆく悪魔の胸部へ突き刺さる。

 

魔力が宙に消えたとき、その悪魔は消滅し、俺の放った六道の杖だけが低く宙に浮いていた。

 

                    D×D

 

「カ、カズ!? 何でここに…?」

 

イッセーが俺を見てそう問う。

 

「九喇嘛がさ、修行に模した討伐に行こうなんて言いだしてさ~」

 

俺は白々しくそう言う。当の九喇嘛は…近くにある椅子の上で狸根入りをかましていた。

 

六道仙人の状態を説いて、大きく伸びをする俺。

 

「とこで、さっきの杖やあなたの姿は何なの?」

 

グレモリー先輩が訊いてくる。

 

…先輩は自身の魔力でも六道の杖を消し去ることができなかったところに、疑問を持っているみたいな様子だ。

 

「さっきの姿ですか…わかりました」

 

俺は解いたばかりの六道仙人の状態に再度なる。

 

「この間部室で話した通り、忍の子孫です。忍の祖である『六道仙人』と呼ばれる人物が、忍の世界を築きました。俺はその人とその子孫の力を強く受け継いでいるので、この『六道仙人』の姿と力や、子孫の力を顕現できますし、扱うことだってできます」

 

皆が黙って聞く中、俺は話を続ける。

 

「この世のものの性質――エレメトや五行思想と言ったりもすると思いますが、忍術にはその両方の一部分が交わっているようなもの…五大性質変化で出来ています。エレメントは『水・火・風・土』の四大素、五行思想には『木・火・土・金・水』の五大素…ここは大体わかると思います。この二つの特徴の『五行』と性質が混ざったもの…『火・風・雷・土・水』から成ります」

 

「これは基礎の基礎」と俺は言い、話を続けた。

 

「基礎の『優劣関係』を話したいのですが、長くなるので省略します。…で、その性質変化には二種類を混ぜることで『血継限界(けっけいげんかい)』や三種類で『血継淘汰(けっけいとうた)』という上位性質が生まれます。さらにその上は単純に四種・五種の性質を混ぜ合わせることで発現します。――ここからが本題の『六道の性質変化』に入ります」

 

俺は一呼吸おいて続ける。

 

「六道の主なベースの性質は『陰陽遁』。陰と陽は知ってると思います…白と黒の勾玉がくっ付いている円の模様みたいなもの見たことありますよね? 陰遁は、想像を司る精神エネルギーをもとにする力で、陽遁は、生命を司る身体エネルギーをもとにする力。つまりは陰遁と陽遁から作られている万物創造の術。そして、反する全ての忍術を無効にする力もあります。創造と破壊の両方を持っている性質変化なんです」

 

俺は六道の杖で落ちている物の残骸を突く。すると、それは時間を戻しているかのように形を再生して成していく。

 

「これが六道の性質変化。五大性質変化と陰陽遁を組んだ最大の性質変化にして、唯一の存在です」

 

再度、六道仙人の状態を解除する。

 

「帰ろう。牛鬼、九喇嘛」

 

暴れる相手がいなくなったせいか、九喇嘛は不機嫌な表情で建物から出ていく。

 

「じゃ、先に帰るけんね。イッセー」

 

俺は大きく伸びをして牛鬼と共に建物を出た。

 


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