ドォォォォン!!
襲いくる触手のような尾を瞬時に避け、薙ぎ払われる腕をかいくぐりながら印を結ぶ。
「火遁、豪火球弐式!!」
二発の特大の火球を放つが、二体は尾を払うだけで消し去る。
《その程度じゃあ、ワシは倒せんぞ!》
九喇嘛が獣化した右腕を振り下ろす!
ドォオオン!!
地が抉れるほどの勢い!
俺は瞬時に影分身を作りだして、駆ける勢いを残したままブン投げられる。
ダッ! と大岩を蹴りつけ、影分身を二体作りだす。
ギュォォォォォオオンッ!!
突き出した両手に特大の螺旋丸を作りだし、影分身がそれぞれに性質変化を加えていく!
「風遁、螺旋手裏剣!!」
左手の螺旋丸を九喇嘛目がけてブン投げる!
甲高い音と共に九喇嘛目がけて接近する螺旋手裏剣。
「もういっちょ!!」
スパークノイズが響き、被雷した地面が砕けて飛び散る!
螺旋手裏剣の真上に飛びあがり、そこに雷遁・螺旋丸を叩きつける!
「
嵐の如く四方八方に飛び散る雷の槍と共に、九喇嘛へ急接近する!!
《甘いぞ!!》
九喇嘛は尾獣化し、一瞬で作り上げた威力の小さい尾獣玉をぶつけ――、
ドオォォォォォォォッッ!!
遥か上空で爆発した二つ…爆風がここまで届く!!
爆風の余波で上空の雲が消え、眩しい太陽が顔を出す。
ジリリリリリリ――。
修行時間を終えるベルが鳴り響き、俺と九喇嘛は構えを解く。
九喇嘛は人の姿になると、大きく欠伸をした。
「まだまだ威力が足りんな。ワシの最低威力の尾獣玉で相殺とは…」
「仕方がないでしょ。仙術でも尾獣降ろしでもないんだから」
「まあ、やるようにはなったって感じだな」
狐耳を出して、ピコピコと動かしている…見る人から見れば、怪しいのか可愛いのかわからないが。
「獲ってきたぞー」
海辺から人型の牛鬼が姿を現す……手には大量の魚介が入った網が握られている。
「おっ、今日は魚の日か?」
「あぁ。クロマグロも獲ってきてるぞ」
牛鬼は一本のタコ足を持ち上げる……その先には獲れたてのクロマグロがぁぁぁ!?
「獲ってきた場所は訊くなよ?」
「先読みされた!?」
俺は訊きたかったことに釘を刺され、しょんぼりする。
「まあ、何でもいい。とっとと帰るぞ!」
九喇嘛が懐から携帯電話を取り出し、誰かに電話をかける。
しばらくして九喇嘛が電話を切った直後に、目の前に魔方陣らしきものが出現した。
帝具の一つ――『
さっきの電話は、雅家の使用人のアルティナさんの番号だったと思う。シャンバラは今、アルティナさんが保有していて、魔力を使わない代わりに帝具の一つを護身用として身につけている。
「帰るぞ、カズ。ワシは腹が減った」
九喇嘛がそう言って、魔方陣の中に入っていく。
「今日の昼は寿司と刺身にするか」
牛鬼がそう言いながら魔方陣に入っていった。
……寿司と刺身ね。
俺は『家に帰ったら食事の戦争が始まる』ことを予感していた。