「おはようございます。カズくん」
いつもと同じく学校の正門で待ち合わせていた俺と麗。
先日、俺は取り返した
解放されたて帰宅したのは夜中の三時過ぎ。爆睡してしまい、母さんからたたき起こされる羽目となった今朝。
イッセーは珍しく、早起きして学校へ登校しているらしく…朝食は寝坊しかけた俺一人だけの寂しいものだった。
慌てて家を出たから……何か忘れているような気がするんだけど…。
いつものように正門から入って下足へ向かう俺と麗。……いつもは気にしてなかったが、周囲の生徒の視線が気になる。
チラチラと見られているんだが、俺の服装に何か問題でもあるのかな…?
…麗を見ても、何も変わっていない。やっぱり俺なの?
下足から教室に入るまで、廊下や階段ですれ違う生徒たちの視線が一段と増しているような…。
教室に入って時計を確認すると、八時を過ぎていた。
席に座って教科書を出していると、クラスの女子が周囲に集まりだした。
いつも以上の集まりに俺は困惑する。…誰も話しかけてくることはないし、余計に困惑してしまう。
その中から一人、俺に手鏡を手渡してくる女生徒がいた……片瀬だ。
「その…髪の色が違ったから」
その一言を聞いた直後、俺は素早くその手鏡で……自分の髪を見た。
髪は…し、白? 白!? 白ぉぉぉぉぉっ!!
麗の方を見ると、本人はとっくに気がついていたらしく…俺に向けて笑顔で手を合わせていた。
女子たちは「白もいいよね!」とか「カズナリくんも髪染めたりするんだね」と元気づけようとしているのか、そう言ってくる。
「あ、その……この髪の色、地毛なんです」
その瞬間、教室の空気が固まり――、
「ウソぉ!?」
「それ、地毛なの!?」
「いつも黒だったし、そっちが地毛だと思ってたよ!」
十人十色……女子たちの黄色い声が四方八方から聞こえる。それに続いて男子どもの嫉妬と皮肉を込めた声も聞こえてきた。
「ホントに地毛だよ! 眉の色も白だし!」
「ホントだ! カズナリくん、明日からその髪で来てよ!」
……なんか、怖がられるより…むしろ、気に入ってる様子に見えるんだけど…ここの女子。
キャーキャーと黄色い声もホームルームが始まると静かになり、担任教師が入ってくる。
「はい、静かに。ホームルームを始めるぞ」
いつもの口調でそう言う担任教師……だったが、次にいつもと違う発言が出てきた。
「今から転校生を紹介する。二人とも入ってきなさい」
すると、静まり返った教室のドアが開き、廊下から二人の女子生徒が入ってきた。
教壇に立った二人に担任教師が言う。
「そうだね。キミから自己紹介をしてくれるかね」
「はい」
金髪ロングの少女は、微笑みを浮かべて言う。
「アーシア・アルジェントと申します。慣れないことも多いですが、よろしくお願いします」
その女生徒の自己紹介が終わった直後、男子どもの歓喜の声が上がる。
「静かにしろ。まだ終わってないぞ」
担任教師の一喝に、静まる男子ども。
「自己紹介を続けてください」
「はい」
続くように返事をして、白髪で白い瞳の澄んだ視線で言う女生徒。
「日向奈津美と申します。先に言っておきますが、私は先天性の白子症――アルビノ体質です。髪と瞳は体質で白色ですが、視力はあります。怖がらずに声をかけてください」
その自己紹介に静まったかと思ったが――、
「おぉぉぉぉおおっ!!」
「金髪美少女と白髪美少女」
男子どもから歓喜の声が上がる。
……いやぁ、気になったが…これなら解けこめそうだ。…アルビノ体質ねぇ。考えはいいけど、若干病状が違うからね……バレないと思うけど。
「二人の強い希望でここのクラスに編入している。仲良くするように」
担任教師が釘を刺したが、男子どもはテンションが上がりきっている状態で耳に入らないようだ。
そんな中、笑顔のアーシアさんが……トンでも発言をする。
「私はいま、兵藤一誠さんのお宅にホームステイしています」
爆弾発言だ…イッセーにとっての。
「何!?」
クラスの男子どもが鋭い視線を放ちながら、イッセーのところに集まりだす。
「どういうことだ! なぜ金髪美少女とおまえが一つ屋根の下に!」
「なぜ貴様の鼻先ばかりに、フラグが立つ状況が!」
「俺が決めたんじゃねぇって!」
松田と元浜に責められているイッセー…おつかれさまです。
「昨日ぶり! 開いている席は…あった」
俺の右斜め後ろに一つ、空いている席がある。
奈津美が俺に向けて笑顔で言う。
「これからよろしくね――」
その言葉は、麗にとって十分すぎる爆弾だった。
「
昨日もそうだったが、核弾頭のさらに上を行く原爆というものを投下してきたぞ!
「へぇ――」
学校ではお嬢様な雰囲気の麗も、この時ばかりは冷酷な態度になっていた。
「昨日から思ってたけど、幼馴染ってだけでどういうつもり?」
奈津美も気圧されることなく、堂々と向かっていく。
「言っていませんでしたでしょうか? それでしたら、改めて宣言させていただきます」
その言葉は、クラスの全員を驚かすような程の威力を見せた。
「私とカズちゃんは、幼い頃からの許婚です。……お父さまから最近聞いたばかりですが」
『い、許婚!?』
クラスの全員(アーシアさんと担任教師以外)が声を合わせて驚いた。…俺もだ。
「そういうことですから、いまの関係がどうであろうと、手を引いてもらいます」
「……そんなこと、関係ないわ」
二人の交差する視線の間に、火花が激しく散っている……俺の目にそう映っているような気がした…間違いなく。
……これから、俺はどうなるんだろうな~。と、まだ見えぬ先をぼんやりと予想する俺であった。