無害な蠱毒のリスタート   作:超高校級の警備員

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無関係な冥界の家族事情

 まだリアスさんから領地を貰っていない新人悪魔組が地図から領地を選んでいく。一誠が山など自然が豊富そうな所を選んだのに対して僕はいらないと答えたがそれは通らなかったよ。だから仕方なく端っこの小さい領地を選んだ。たぶん一生足を踏み入れる事はないと思うよ。

 

『まもなくグレモリー本邸前。まもなくグレモリー本邸前。皆様、ご乗車ありがとうございました』

 

 アナウンスが流れみんな窓を締めて降りる準備をする。

 この数十分、冥界の風と僅かな電車の揺れで気分が悪くなってきたから助かったよ。遠くを見るという誤魔化し方もあまり好きになれそうにない空の色で全く気分がよくならなかった。

 静かに停車した列車からリアスさん先導のもと、僕たちは開いたドアから降車していく。けど、アザゼル総督は降りる素振りを見せない。

 

「あれ、先生は降りないんですか?」

「ああ、俺はこのままグレモリー領を抜けて、魔王領のほうへ行く予定だ。ちと会談があってな。いわゆる『お呼ばれ』だ。終わったらグレモリーの本邸に向かうから、先に行って挨拶を済ませて来い」

 

 アザゼル総督は手を振ってそう説明する。そのまま帰ってこなくていいですよ。そして僕は家に帰してほしいです。

 

「じゃあ、先生は後で」

「お兄様によろしくね、アザゼル」

 

 一誠とリアスさんの言葉に口元に笑みを浮かべながら手を振って応える。なんか僕の方にも笑みを向けたけど見なかったことにして目線を外した。

 僕たちは改めて駅のホームに向かい、列車から降りた。その瞬間―――――。

 

『リアスお嬢様、お帰りなさいませっ!』

 

 怒号のような声が聞こえた! 僕たちがその声に驚く間もなく、次々と花火が上がり、兵隊たちは銃を空に向けて放ち、音楽隊らしき人たちが一斉に音を奏で始めた!そして、空には謎の生物に跨って兵士たちが飛び、旗を振っていた。

 かなりの人数の気配はあらかじめ感じてたけどこうなる事は僕も予想外。一誠とアーシアは驚いて身を寄せて、ゼノヴィアさんは目をパチクリさせている。僕もビクッとしたけどちょっとした理由で動揺はしてない。

 

「ヒィィィィ……。人がいっぱいですぅ……」

 

 ギャスパーくんはあまりの人の多さに驚いて、僕の後ろに隠れていたから。人見知りのギャスパーくんにはこの人数は辛いと思うよ。だからギャスパーくんが安心して僕の後ろに隠れられるように僕は動揺しないようにね。先輩としての見栄さ。

 兵隊にばかり目が向いていたけど、周りをよく見れば執事やメイドも多い。リアスさんがそちらに近付くと一斉に頭を下げた。

 

『リアスお嬢様、お帰りなさいませ』

「ありがとう、皆。ただいま帰ってきたわ」

 

 リアスさんは満面の笑みを浮かべて返していた。それを見て、執事やメイドたちも笑みを浮かべている。そこへ、昔見た記憶がある顔の女性が一歩出てきた。

 え~と確か名前は……ダメだ、二年も前の事だからちょっと会っただけの人は覚えてないや。

 

「お嬢様、お帰りなさいませ。道中ご無事で何よりです。さあ、眷属の皆様も馬車へお乗りください。本邸までこれで移動しますので」

 

 銀髪メイドさんに誘導されて、僕たちは豪華絢爛という言葉が似合いそうな馬車のもとへ。馬も普通の馬ではなく大きくて眼光も鋭い。手入れもしっかりされてるみたいだしいい馬だね。

 

「私は下僕たちと行くわイッセーやアーシアは初めてで不安そうだから」

「かしこまりました。何台かご用意しましたので、ご自由にお乗りください」

 

 銀髪のメイドさんは部長の意見を快諾してくれた。

 一誠、アーシアさん、朱乃さん、リアスさん、ゼノヴィアさん、銀髪のメイドさんは一番前の馬車に乗って、残りの僕たちは次に馬車に乗った。

 僕たちが乗り込むと、馬車はゆっくりと蹄の音を鳴らしながら進みだす。

 でも馬車なんて初めて乗ったからちょっと緊張するよ。こういう乗り物って牛車と朧車しか経験ないから。

 そう思いながら冥界の空気にも少し慣れてきた僕は風景をちょっと楽しんでいた。舗装された道とキレイに剪定された木々。真っ直ぐと道が伸びて、先には大きなお城が見える。

 

「あの、もしかしてあのお城に向かってます?」

 

 僕は道と進行方向が大きなお城に向かってる気がしたから木場さんに聞いてみた。

 

「あれは部長のお家のひとつで本邸。すごいよね、僕も初めて見た時は驚いたよ」

 

 木場さんは苦笑いで答えてくれた。

 あの大きなお城が家、それも家のひとつって事はまだいくつかあるってことだよね。リアスさんがどれだけお嬢様。いや、お姫様なのかが良くわかった。あんなお城小さい頃の絵本でしか見たことないよ。

 

 美しい花々が咲き誇り、見事な造形の噴水から水が噴き上がっている王族の庭らしいところを馬車が進んでいくと、馬車が速度を徐々に落として止まった。

 

「着いたようだね」

 

 馬車を降りると一誠たちが既に馬車から降りて待っていたよ。

 馬車から降りると、両脇に執事とメイドが整列していて道を作っていた。赤いカーペットが巨大な城の方に伸びていて、大きな城門がかなり古びた音を立てて開かれていく。

 

「お嬢様、眷属の皆様。どうぞ、お進みください」

 

 銀髪のメイドさんが会釈をして僕たちを促してくれる。

 

「さあ、行くわよ」

 

 リアスさんがカーペットの上を歩き出そうとした時、メイドの列から小さな人影が飛び出してリアスの方へ駆け込んできた。

 

「リアス姉様!お帰りなさい!」

 

 飛び込んできたのはリアスさんと同じ髪色の小さな少年。少年はリアスさんに抱き着いた。

 

「ミリキャス!ただいま、大きくなったわね」

 

 リアスさんもその少年を愛おしそうに抱きしめる。

 なんだか知らないけどこういうシーン大好きなんだよね。微笑ましくて。

 

「あ、あの、部長。その子は?」

 

 一誠が訊くと、部長はその少年を改めて紹介してくれた。

 

「この子はミリキャス・グレモリー。お兄様―――――サーゼクス・ルシファー様の子供なの。だから、私の甥ということになるわね」

 

 魔王のお子さん。つまり冥界の王子様(プリンス)ってことだね。

 今の情報にさっきの微笑ましいシーンを合わせるとリアスさんが身内を大切にしてるってのがよくわかる。だけどリアスさんの眷属に戻る気はないよ。だって僕は見捨てられて身内扱いじゃないからね。

 

「ほら、ミリキャス。挨拶をして。この子は私の新しい眷属なのよ」

「はい!初めまして、ミリキャス・グレモリーです」

「こ、これはご丁寧な挨拶をいただきまして! お、俺……いや、僕は兵藤一誠です!」

 

 ガチガチに緊張してテンパりながら自己紹介をする一誠。その様子に部長も笑っている。

 

「魔王の名は継承した本人しか名乗れないから、この子はお兄様の子でもグレモリー家の子なの。ちなみに、私の次の当主候補でもあるのよ」

 

 つまりこの子はグレモリー家の子供で、次期魔王候補ではなくリアスさんと同じ次期当主候補というわけなんだね。

 お兄さんが魔王という遠い存在になったからミリキャスくんがリアスさんにとって一番近い身内、弟のような存在なんだろうと思う。

 

「さあ、屋敷へ入りましょう」

 

 リアスさんはミリキャスくんと手を繋いで門の方へ進みだした。僕も置いて行かれない程度に一番最後尾からついていく。ギャスパーくんは僕の背中にぴったりとくっついて離れようとしない。だから安心させる常套手段の手を繋ぐというのも左手同士を繋ぐという奇妙な縦の手のつなぎ方をしている。

 巨大な門を潜り、中を進んでいく。僕たちが進んでいくと次々に門が開門されていく。それを何度も繰り返しているうちに玄関ホールらしきところへ着いた。

 前方には二階に通じる階段、天井には巨大なシャンデリア、さらに広すぎるホール。学校の運動場くらいの広さはあると思う。

 

「お嬢様。眷属の皆様をお部屋へお通ししてもよろしいでしょうか?」

 

 銀髪のメイドさんが手をあげると、メイドが何人か集合した。うわっ、行動が早い!

 

「そうね。私もお父様とお母様に帰国の挨拶をしないといけないし……」

「旦那様は現在外出中です。夕刻までにはお帰りになる予定ですので、夕餉の席で皆様と会食をしながら、顔合わせをしたいとおっしゃられておりました」

「そう、分かったわ。それでは一度、皆はそれぞれの部屋で休んでもらおうかしら。グレイフィア、荷物は既に運んでいるわね?」

「はい。今すぐにでもお部屋を使えます」

 

 あ、ゆっくりと休める方向になりそうかな? 何だか並みの修業や稽古以上に疲れたよ、主に精神が。一誠の隣にいるアーシアさんも今にも倒れそうで、フラフラしてる。

 やっと休める。と、言っても冥界に居る間は本当の意味では休めない。しばらくは周りに気を付けないとね。禁手の事とか日本勢力との繋がりとか。

 

「あら、リアス。帰ってきたのね」

 

 その時、上から女性の声が聞こえてきた。

 前方の階段から下りてきたのは亜麻色の髪を流して、ドレスを身にまとっている美少女。見た目の年齢は僕たちとあまり変わらなそうだけど、人外基準で考えると見た目通りの年齢とは限らない。勘だけどかなり年上だと思う。

 

「お母様。ただいま帰りましたわ」

 

 やっぱり年上だったか。僕の勘もそんなに悪くないね。

 今リアスさんはお母様と言ったけど、言われてみればかなり似てる。髪の色以外はほぼそっくりだ。

 

「………………お、お母様ぁぁぁぁぁあああっ!? え、あのっ……あの部長とそう歳が変わらない女の子じゃないですか!」

 

 一誠はうるさいくらい大声で驚く。

 まあ驚くのはわかるよ。見た目的には姉妹くらいっぽいもんね。でもうるさい。

 

「あら、女の子だなんてうれしい事をおっしゃいますわね」

 

 リアスさんのお母さんは女の子と言われたのがうれしかったのか頬に手をやり微笑む。

 

「あのね、悪魔は歳を経れば魔力で見た目を自由にできるのよ。お母様はいつも今の私ぐらいの年恰好な姿で過ごされているの」

 

 悪魔だけでなく見た目が年齢と比例しないなんて人外ではザラにいる。僕は日本妖怪しか知らないけどね。

 千単位を生きる悪魔が人間みたいに比例した老い方をすれば千年も生きられない。少なくとも途中で見た目が変わらなくなるか、見た目を若くする事は出来るようにならないと。

 僕が知ってるのは前者は天照様や素戔嗚様などの日本神、後者は藻女さんや蘭さんなどの妖怪だね。

 

「……私のお母様に熱い視線を送っても何も出ないわよ?」

「あら、リアス。その方が兵藤一誠くんね?」

「お、俺―――――僕の事をご存じなんですか?」

「ええ、娘の婚約パーティに顔ぐらいのぞかせますわ、母親ですもの」

 

 そういえば一誠はリアスさんの結婚会場に乗り込んで、ライザー・フェニックスを倒して花嫁泥棒をしたんだったよね。僕はその時入院してて聞いただけだけど。しかも入院中眷属の中で誰もお見舞いに来てくれなかった。

 今更ながらあれは酷い。僕も頑張って一誠の盾になったのに、一回くらいお見舞いに来てほしかった。

 一誠はなぜ自分を知ってるかの理由を聞くと少しビビってる様子。だけどリアスさんのお母さんはクスッと小さく笑うだけ。

 

「初めまして、私はリアスの母、ヴェネラナ・グレモリーですわ。よろしくね、兵藤一誠くん」

 

 

   ◆◇◆◇◆◇

 

 

 玄関ホールの一件から早くも数時間が経ち、僕たちはダイニングルームにいた。テーブルには絶対に普通では食べきれないであろう豪華で量のある食事が高価そうなお皿の上に盛り付けられている。どれもすごいおいしそうなんだけど、どこから手を付けたらいいか迷っちゃうよ。

 席には僕たち眷属とリアスさんのご家族も一緒。自分がすごく場違いな気がする。いや、悪魔をやめようと思ってる僕は本当に場違いだろう。

 

 夕食の時間だが元々くらい冥界ではその実感があまりない。昼間も夜みたいにくらい冥界にも太陽も月もないけど夜はあるんだって。

 夜の闇も月も空に浮かんでいる。でもこれは魔力で疑似的に作り出してるらしい。だけどこれは人間の感覚では助かるよ。これなら昼と夜の一日の区別がつきやすい。なんでこんなことするかの理由はしないけど、もしかしたら転生悪魔が多いからその配慮なのかもね。

 

「遠慮なく楽しんでくれたまえ」

 

 こうしてリアスさんのお父さんの一声で会食は始まった。

 大きな長方形のテーブル。天井には豪華なシャンデリア。座っている椅子は高価な装飾が施されている。環境の急な変化で気後れしちゃうよ。

 そういえばこんなシャンデリアが僕の部屋にもあったよ。他にもお風呂、トイレ、冷蔵庫にテレビ、キッチン。寝室とリビングまであってびっくりしたよ。ただ、一人部屋ということと相当な広さを確保できたから一人稽古するには困らなそう。まあ、うっかり見られたりしたらまずいから程ほどにだけど。

 

 話を料理に戻すと、箸がほしい。箸なら藻女さんの面子を潰さないようにあの時代で練習したから結構できる。けどここではナイフとフォーク。ナイフとフォークの使い方はよくわからないけど見よう見まねで使ってみよう。ここで変な印象をもたれないように上品を心掛けて。

 他のみんなの使い方を参考にしてみる。木場さんや朱乃さんはかなり使い方がうまい。ギャスパーくんは使い方はうまいけど縮こまって涙目で食べてる。大人数の所を引っ張りまわされて辛かったんだね。

 あれ? 普段あんなによく食べる小猫ちゃんが全然食べようとしてない。なぜだろう?

 

「うむ。リアスの眷属諸君、ここを我が家だと思ってくれるといい。冥界に来たばかりで勝手が分からないだろう。欲しい物があったら、遠慮なくメイドに行ってくれたまえ。すぐに用意しよう」

 

 じゃあ帰りの切符をくださいと言える強い人間になりたい。そんなこと精神的にも立場的にもとても言えることじゃないけど。

 

「ところで、兵藤一誠君」

「は、はい!」

「ご両親はお変わりないかな?」

 

 そこからリアスさんのお父さんは一誠に興味津々で話しかける。一誠はそれを緊張でテンパりながら答える。お土産の話になってなんと『お城』を用意されそうになった。まあ結局なしになったけど。

 お城なんて日本の領土に建てたら、きっとその日には地震が起こる。その城が確実に潰れるくらいの巨大なのが。だから止めてくれてよかったよ。

 

「兵藤一誠君」

「は、はい!」

「今日から私のことをお義父さんと呼んでくれてもかまわない」

「お、お父さんですか……? そ、そんな、恐れ多いですよ!」

 

 急にお義父さんと呼んでくれてもいいと言われた一誠は遠慮の意志を示す。

 

「あなた、性急すぎますわ。まずは順序というものがあるでしょう?」

 

 リアスさんのお母さんが旦那さんを窘める。

 

「う、うむ……。しかしだな、紅と赤なのだ。めでたいではないか」

「あなた、浮かれるのは早い、ということですわ」

「そうだな。どうも私は急ぎすぎるきらいがあるようだ」

 

 リアスさんのお父様は奥さんに窘められて、深く息を吐く。やっぱり悪魔の貴族でも母親は強いんだね。母親になると女性は強くなるのは万国共通ってことかな?

 

「兵藤一誠さん。一誠さんと呼んでも良いかしら?」

「は、はい! 勿論です!」

 

 何気なくリアスさんをちらりと見てみると若干イライラしてるように見える。

 

「暫くはこちらに滞在するのでしょう?」

「はい。部長……リアス様がこちらにいる間はいます……けど、それが何か?」

「そう。それならちょうどいいわ。あなたには紳士的なふるまいも身に付けてもらわないといけませんから。少しこちらでマナーのお勉強をしてもらいます」

 

 リアスさんのお母さんに急にマナーの勉強を言われてきょとんとなる一誠。

 その時、ついにイライラが達したのかリアスさんがテーブルと叩いてその場で立ち上がった。

 

「お父様! お母様! 先ほどから黙って聞いていれば、私を置いて話を進めるなんて、どういうことなのでしょうか!?」

 

その一言にリアスさんのお母さんは目を細めた。そこには先ほど快く僕たちを迎えてくれていた笑顔はない。子をしつける厳しい母親の目だ。

 

「お黙りなさい、リアス。あなたは一度ライザーとの婚約を解消しているのよ? それを私たちが許しただけでも破格の待遇だとお思いなさい。お父様とサーゼクスが、どれだけ他の上級悪魔の方々へ根回ししたと思っているの? 一部の貴族には『わがまま娘が伝説のドラゴンを使って婚約を解消した』と言われているのですよ? いくら魔王の妹とはいえ、限度があります」

 

 ―――わがまま娘が伝説のドラゴンを使った。

 僕は事の詳しい事情はまったく知らないけど、確かにお互いが了承した勝負の約束を勝負後に破棄されれば我儘と言われても仕方ない。でもその我儘を通せる事がリアスさんの地位の強さも現してるね。そして、我儘を通す力が一誠にあった事も。

 何も言い返す事が出来ないからか一誠は俯いて黙っている。

 

「私はお兄様とは――――」

「サーゼクスが関係ないとでも? 表向きはそういうことになっています。けれど、誰だってあなたを魔王の妹として見るわ。三大勢力が協力体制になった今、あなたの立場は他の勢力の下々まで知られるようになったでしょう。以前のように、勝手な振る舞いはできないのです。そして何よりも、今後のあなたを誰もが注目するでしょう。リアス、あなたはそういう立場に立っているのですよ? 甘えた考えは大概にしなさい。いいですね?」

 

 怒りの形相をしていたリアスさんも、お母さんのお説教に悔しそうにしながらも言い返せない様子。リアスさんは納得しない様子で勢いよく腰を下した。

 リアスさんのお母さんは息を一度吐いた後、笑みを僕たちへ向ける。

 

「リアスの眷属さんたちにお見苦しいところを見せてしまいましたわね。話は戻しますが、ここへ滞在中、一誠さんには特別な訓練をしてもらいます。少しでも上流階級、貴族の世界に触れてもらわないといけませんから」

 

 一誠は僕たちの方へ顔を向ける。たぶん、なんで自分だけが貴族のなんたるかを習わないといけないのかとか考えてるんだと思う。心なしか僕を見ていた時間が若干長かった気がする。

 納得できない様子の一誠は自分を指差して。

 

「あ、あの、どうして俺なのでしょうか?」

「あなたは――――次期当主たる娘の最後のわがままですもの。親としては最後まで責任を持ちますわ」

 

 一誠がリアスさんの方へ視線を向けるとリアスさんは真っ赤になってる顔を背ける。が、一誠はどういうことかまだわかってないみたいだ。

 一誠……もしかして本当に自分の立場が全くわかってない? 


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