ぶっちゃけ今回の話も変えられた部分は最初と最後辺りぐらいです。後は地の文にちょこちょこ辛辣な一言を添える程度です。―――それぐらいしか手を入れられる隙間がなかった。
次の話ももう少しで完成するので出来上がり次第投稿したいと思います。
旧魔王派、ジークフリートを退けたリアス達だったが、ラインハルトと名乗る少女の一撃によって現ベルゼブブの隠れ家である廃ビルは崩壊。勝利の余韻に浸る暇さえなく外へ避難することに。
アジュカ・ベルゼブブがビル全体を補強していた魔力を操り時間を稼いだおかげで、内部の人間も含め全員が無事脱出できた。
脱出したメンバーの中にフリードとジークフリードの姿はない。結界内での出来事を訊くために辺を捜索するも、痕跡すら見つけることは出来なかった。それは伝えはしないが圧倒的な感知能力の高さを持つ誇銅ですら。
フリードとジークフリートを見つけるのは諦めたリアス達は改めて一誠の駒をアジュカ・ベルゼブブに見てもらう事にした。先程アスカロンに変化した駒は役目を終えた後に再び駒へと戻っている。
一誠が駒に残した何かと、アスカロンの残留オーラが木場達の想いに呼応してあの様な変化を起こしたのではないか? と、アジュカ・ベルゼブブは語る。
テーブルの上にチェス盤が置かれ、アジュカ・ベルゼブブは『
小型の魔法陣を展開させて調査を始め、少ししてアジュカ・ベルゼブブは興味深そうに息を漏らす
「ほう、これは……」
「何か分かりましたか?」
リアスが訊ねるとアジュカ・ベルゼブブは一誠の駒を指で擦さする
「8つ中、4つの駒が『
一誠の駒が8つの内、4つが『
一誠を転生する際、彼に使用した駒は全て通常の駒だった。リアスが所持していた『
この現象もアジュカ・ベルゼブブが『
「それで、その駒から他に何か分かった事は……?」
リアスが再度聞き、木場を含めた他の面々もアジュカ・ベルゼブブの言葉に真剣に耳を傾ける。
アジュカ・ベルゼブブはハッキリと語られた。
「この駒から俺が言える答えはこうだ。―――どんな状態になっているかは分からないが、彼らが次元の狭間で生きている可能性は高いだろうね。この駒の最後の記録情報が『死』ではないからだ。それと
言葉にならない感情が全身を駆け巡り、全員が言葉を失った中、アジュカ・ベルゼブブは説明を続ける。
「この駒を受け入れた器―――つまり、魂と肉体が不安定な状態になっている事だけは確かだろう。サマエルの毒を受けたのなら、肉体は助からないだろうね。それはこの駒からの情報でも確認できる。しかし、次にサマエルの呪いを受けそうな魂が、これを調べる限り消滅してはいないのだよ。肉体が滅びれば直ぐに魂にまで毒牙は迫るのだが……。肉体がダメになってから魂が消えるであろう時間が経過しても魂が無事だったとこの駒が教えてくれている。魂だけではどういう状態か把握しづらいが、アザゼル総督サイドからあのオーフィスが彼に同伴しているかもしれないと聞いている、何が起こっていても不思議ではない。たとえ、どんな形であれ魂だけで生きていてもね」
「魂が無事だったとして、滅んだ肉体は……どうすれば良いのでしょうか?」
木場がアジュカ・ベルゼブブにそう問う。
「ふむ。彼のご両親は健在かな? もしくは彼の部屋にあるDNA情報―――抜けた体毛の類などでも良い」
「ご両親は健在です。……体毛も探せば彼の自室にあるとは思いますが」
「ならば、まず魂が帰還した後に彼のご両親か、その体毛からDNAを検出して出来るだけ近しい体を新たに構築する必要がある。グリゴリが運営する研究施設でそれが出来るのではないだろうか。再現自体は可能だろう。クローン技術の応用でね」
「……問題は他にあると?」
リアスの問いにアジュカ・ベルゼブブは頷きながら話を続ける。
「新しい体に魂が定着するのかと言う点と、その体が
それはつまるところ、移植は可能で一誠が仮に新しい肉体を得て魂と
「
「うえぇぇぇぇぇぇぇんっ! イッセーさぁぁぁぁんっ!」
アーシアは大声で泣いていた。それは悲しみではなく、歓喜の涙。
朱乃も小猫も大粒の涙を流していた。
絶望の中、一筋の光明、大きな希望が得られたグレモリー眷属。生きている可能性があるなら、彼らは絶対に生きている。それをこの場にいる皆が誰よりも強く盲信していた。
リアスは顔を両手で覆い、喜びの涙を流す。
「……イッセー、生きているのね……。そうよね、彼が死ぬ筈ないもの!」
アジュカ・ベルゼブブは調べ終えた駒をリアスに手渡す
「ともかく、これらはキミが持っているべきだ、リアス・グレモリー。もしかしたら、オーフィスと
「……はい、ありがとうございます、アジュカさま」
「さて、俺はここから眷属に命令して例の巨大怪獣討伐を指揮するつもりだ。対抗策ぐらいはどうにかしよう。だが、最後に決めるのはキミ達現悪魔とサーゼクス眷属であるべきだ。それでこそ、冥界は保たれる」
アジュカ・ベルゼブブが手を前に出すとリアス達の前方に転移型魔法陣が展開された。
「キミ達も行くと良い。冥界は今、力のある若手悪魔の協力が必要な時だろう。なに、彼らなら来るだろうね。それはキミ達が1番よく知っていると思う。そういう悪魔なのだろう、彼らは」
アジュカ・ベルゼブブの言う通り、“生きているのなら、彼らは必ず帰ってくる。どんな事になろうとも生きてさえいれば彼は絶対に帰ってくるだろう”。ここにいる誰もがそれを信じて疑わなかった。―――それは何の根拠もなく信頼ではない、ただの盲信だと一切の疑いを持たず。
彼らだけではない。兵藤一誠という存在を深く認知している者達は皆が皆兵藤一誠という存在を盲信―――狂信しているのだ。
『イッセーくん、僕達は待つよ。だから、必ず帰ってきて欲しい。冥界は―――冥界の子供達はキミ達の帰還を待ち望んでいるんだ!』
◆◇◆◇◆◇
『……んあ、寝てた……?』
一誠が目覚めたのは赤い地面の上だった。
周りを見渡せば赤い地面、空は様々な色が混ざりあったような景色が広がっていた。
『目が覚めたか。一時はどうなるかと思ったぞ』
記憶が曖昧なところにドライグの声が聞こえてくる。
『ドライグ? ああ、俺、気を失ってた―――って、あれ?おかしいな。なんだか、体の感覚が変だ』
一誠は自身の変化に気付いた。何かに触れている感覚が無い。
いつものようにマスクを解除しようとするが……解除できない。
試しに手の部分だけ鎧を解除してみると―――中身の腕が無かった。
自分の身に何が起こったか全く理解できない一誠にドライグが言う。
『お前の肉体は激しい損傷で死にかけている。魂だけを抜き出して鎧に定着させている状況だ。現在、魂だけの状態と言える。しかし、成功するかどうかのかなり危ない橋だったぞ』
“体が死んだ”―――“魂だけの状態”―――。
ふとその事を考えた一誠は直ぐに―――頭を抱えて絶叫した。
『……なんてこった! 体が無ければアーシアとエッチ出来んじゃないかぁぁぁっ! なんてこったよ! 体が無いとおっぱいに触る事も出来ないんだぞ⁉ 成長途上のアーシアのおっぱい! それに触る事が出来ないなんて、そんなのってないだろォォォォォォッ!』
この期に及んで一誠の脳内にはエロに関する危機感しかなかった。
『……え? そ、それが感想なのか……?』
間の抜けた声を出すドライグに一誠は再度荒ぶる。
『「え?」じゃねぇよ! これは死活問題だ! せっかくアーシアと良い関係になれてきたのに体が無いんじゃエロエロな事が出来ねぇじゃねぇかッ! アーシアのおっぱいを手で! 生で揉めないなんて死んだ方がマシだぁぁぁぁっ! 鎧だけの状態でどうエッチしろって言うんだよ! アーシアのおっぱいはこれからが本番なんだぞ⁉ ただ見守っているだけの状態なんて最悪極まりないじゃないか! 鎧の中に入ってもらうプレイなんてデュラハンだけにしてくれよ。ゼノヴィアとの子作りも無理だってのか! クソ! イリナとも子作りしたかったのにぃぃぃっ! もう、最悪鎧プレイでも良いよ、くそったれぇぇぇっ! 鎧でおっぱいを感じ取れば良いんだろう⁉』
『あー、えーと……あのだな、相棒』
『んだよ、ドライグ! 俺は今最高に悲しみに暮れてんだ! 話は後にしてくれ! くっそぉぉぉっ! せっかく、あの偽者魔王のシャルバをぶっ倒して帰還しようと思ってたのに……。あ、そう言えばオーフィスは? あいつを助ける為に俺はあのフィールドに残ったんだろう』
今更ながら記憶が戻ってきて、少しは頭が正常に機能した一誠がオーフィスを探すべくキョロキョロと辺りを見回してみると―――オーフィスが「えいえいえい」と赤い地面をペチペチ叩いている姿が見えた。
『お、お前、何をしてんだ?』
一誠が近づいて訊いてみるとオーフィスはこう答えた。
「グレートレッド、倒す」
オーフィスの一言で一誠は“今、自分が何処にいるのか”初めて気付いた。
赤い地を駆け、程無くして果てが見えてきた。そこに見えたのは赤い突起物―――角だった。
更に歩みを進めると巨大な何かの頭部が見えた。
何処かで見覚えのある生物。赤い地の正体は―――グレートレッドの背中だった。
『……な、なんで俺、グレートレッドの上にいるんだよ……?』
ドライグが嘆息して言う。
『お前シャルバ・ベルゼブブを倒した後謎の敵に奇襲され、崩れゆく疑似空間フィールドで力尽きた。その後すぐにフィールドも完全に崩れきったのだ。そこに偶然グレートレッドが通り掛かった。そこでオーフィスはお前を連れて、グレートレッドの背に乗ったのだ。ここは次元の狭間だ。ちなみにだが、既にあれから幾日か過ぎている。お前の巡り合わせを考慮すると、グレートレッドを自然に引き寄せたように思えてならんがな……。ただでさえ各伝説級の存在との遭遇率が異常なのだからな。他者を引き寄せる己の力だけで危機を脱するなんて相変わらずお前は読めんよ』
それはもはや深刻を通り過ぎて危険レベルにまで達している。だが、本人も周りその危険を遥かに甘く認識していた。その全てを己の力だけで脱してきたと誤認してしまった。
オーフィスはグレートレッドをペチペチ叩くのを止めて空を眺める。
『何だよ、お前、元の世界に戻らなかったのか?』
「我にとって、元の世界はここ」
『……言い間違えた。冥界、もしくは人間界に戻らなかったのか?どうしてだ?』
「ドライグが共に帰ろうと言った。だから、ここにいる。一緒に帰る」
『……お前、本当に変な奴だな。でも、やっぱり悪い奴じゃねぇよな……。はぁ……。つーかさ、俺、帰れるのかな。先生達からの召喚は無かったのか?』
『あった。しかし、お前の内にあった駒だけがあちらに帰還してな。特異な現象だった。
『召喚あったんかい! しかも駒だけ帰った⁉ マジか!あ、本当だ。駒の反応が感じられない!』
『
完全に消滅していないだけでも奇跡的な幸運。
『あの駒があってこその相棒の強さがあるからな』
『その通りだよ……。とりあえず、皆に無事を……無事ってわけじゃないんだけどな……。ま、まあ、生きている事だけは伝えたいところだな。って、俺ってずーっとこのままでも大丈夫なの?』
一誠の問いに対してドライグが答える
『現在はグレートレッドからパワーを借りている。今は問題ない』
『じゃあ、グレートレッドと一緒じゃなきゃダメって事じゃんか!どちらにしても普通には帰れないのかよ!あー、こいつはまいったな……』
『そろそろ先程の会話の続きに戻しても良いだろうか、相棒』
『ん?何かあったっけ?』
『ああ、現在の状況の再確認だ』
『現在の状況って……。この状態じゃ、俺はグレートレッドと一生次元の狭間で旅に出なきゃならないんだろう? 女の乳も尻も太股ふとももも無い世界で永遠に過ごせと……。地獄だぜ。俺のハーレム王の道は遠いな』
『ハハハハ!まだこの状態でもハーレム王を諦めないとは! さすが俺の相棒だ!』
『笑い事じゃねぇ! 俺にとっては真剣な事だ!』
『それで良い。それでこそ、歴代所有者の残留思念がお前に全てを託したと言える』
ドライグの言葉に一誠は一瞬言葉を失い、
白い空間が見え、椅子とテーブルも見えてくるが……誰1人としてその場にいない。
ドライグが静かに語る。
『……相棒、お前の魂は危機に瀕していた。サマエルの毒でな。毒矢自体はフリードが防いでくれたが、微量ながら相棒も受けてしまっていたんだ。微量と言えど瀕死の肉体では耐えられない。肉体は既に手遅れで手放すしかなかった。肉体の次に呪いに犯されるのは魂だ。あのままでは、お前の魂はサマエルの毒によって消滅するところだった。俺もさすがにダメだと思ったぞ。次の所有者のもとに意識が移ると覚悟した程だ』
『……待てよ、じゃあ俺の魂はどうやって助かったんだ?』
『彼らの残留思念がサマエルの呪いからお前の魂を守ったんだよ。彼らが身代わりになって呪いを受けている間に、お前の魂を肉体から抜いて鎧に定着させたのだ。絶妙なタイミングだった。一瞬でも判断が遅ければ、今ここに俺もお前もいない』
『…………んだよ、それ……。じゃあ、俺は……先輩達が助けてくれたお陰で、ここにいられるって事なのかよ……ッ! まだ先輩達とろくに話してもいないんだぞ⁉ せっかく、あのヒト達は赤龍帝の呪いから解き放たれて、良い顔するようになったんだ! あの疑似空間でも俺にアドバイスくれたし! これからも上手くやっていけそうだって思えたんだ! こんな……こんなお別れなんて無いだろうがよッ!』
『……気持ちは分かる。だから、彼らの最後の言葉を聞いてもらえるか? 一応、声だけ残した。―――彼らの最後のメッセージだ』
以前にもあったシチュエーションに嫌な予感を過よぎらせる一誠。
籠手の宝玉から映像が映し出され、歴代所有者は晴れやか過ぎる程の満面の笑顔で―――。
『『『『『ポチっとポチっとずむずむいやーん!』』』』』
もはや返す言葉も無かった。
『どんだけあの歌が好きなんだよ⁉』
『ホントそうだよね……』
映像の隅で歴代白龍皇の1―――魔性な雰囲気な美青年が一誠の言葉に同意した。
『…………え?』
嘆息する一誠だったが、映像であるはずの歴代白龍皇の1人が今の一誠の言葉に同意するという不可思議な現象に気づき疑問の声を漏らす。
そして映像が消えるも、歴代白龍皇だけは消えなかった。
『やあ、現赤龍帝クン』
『残ってくれたことは嬉しいんですけど、なんで歴代白龍皇だけが残っちゃってんだよ!?』
赤龍帝の意識の中に歴代白龍皇の残留思念だけが残るという矛盾した現状にツッコミを入れる。
『ボクだけじゃないよ。この場にいないけどアランも残ってる。キミが死にかけた時にはもっと深いところにいたからね』
歴代最強の赤龍帝であるアランも残っていると聞かされ回りを見回すが、どこにもアランの姿はない。
『まだ深部から戻ってないみたいだよ。ボクも起きてる彼とまたお話がしたいからね』
歴代白龍皇はアランがこの場にいない理由を告げる。
話し込む一誠にドライグは言う。
『右手側の奥を見ろ』
ドライグに言われて視線を移すと―――そこにはせり上がった肉の塊があった。
『あれは?』
『あれは繭だ。いや、培養カプセルと言っても良い』
『繭? 培養? 何が入っているんだ?』
『ああ、お前の肉体だ。1度滅んだ肉体があそこで新たな受肉を果たそうとしている。グレートレッドの体の一部とオーフィスの龍神の力を拝借して、お前の体を新生させているところだ』
驚きで言葉を失う一誠にドライグは愉快そうに笑った。
『お前の体は真龍と龍神によって再生される。―――相棒、反撃の準備に入ろうか』
一誠の意識が離れた後、歴代白龍皇は上を眺めながめる。
『頑張ってね。しっかり育ってくれよ、今代の赤龍帝クン』
外の一誠に軽く激励を送り独り言を続ける。
『それにしてもずいぶん長いこと外はつまらなかったけど、今はとっても楽しそうだ。―――そう思わないかい?』
天井を見上げたまま後ろに立つ人物に語りかける。振り返るとそこに立っていたのは深部から戻ってきたアラン。
歴代白龍皇は怪しい笑みを浮かべる。
『やあ、アラン。また会えて嬉しいよ』
『
射抜くような視線で相手を押し潰さんばかりの威圧に、歴代白龍皇は全く怯まない。それどころか狂気的な笑みで身悶えした。
『あぁ、凄い。昔を思い出して軽くイッちゃったよ。やっぱりキミは最高だよアラン』
アランは黙って嫌悪感を顔に出す。
『だけど残念。この中じゃボクの存在が少なすぎるせいもあってぜんぜん本気出せない。せっかくキミから誘ってくれてるのに申し訳ないよ』
『何が目的だ』
『ん?』
『あの小僧に手を貸すなんてテメェらしくねぇ。この数十年で心を入れ替えたってわけねぇだろうし、あの小僧程度に期待なんてするわけもねぇだろう』
『数百年は軽く経ってるよ。寝過ぎて時間間隔が狂い過ぎじゃないかい? まあ彼はちょっとばかり変わってるとは思うけど、間違いなく“不合格”だよ』
歴代最強の赤龍帝と白龍皇の双方は兵藤一誠の成長に期待していないと意見を一致させた。
そうした評価を下しながらも歴代白龍皇は「だけどね」と話を話を続けながらアランに近づき、至近距離から小さな声で言う。
『―――――――』
『―――!?』
『ふふふ、向こうのボクも頑張ってると思うから』
そう言い残しアランの真横を通り過ぎた時、歴代白龍皇の上半身が吹き飛んだ。残ったのは裏拳を放った姿勢のアランただ1人。
『チッ、クソ野郎が』
誰も居なくなった