長らくお待たせして申し訳ありません! 誇銅の禁手、ついに公開!
俺たちは突如現れた巨大ロボットに目を奪われていた。無駄に神々しい演出で降りて来やがって。
しかし、そのロボットからは神々しさに見合った聖なる力を感じる! なんて質量のオーラだ! この俺が攻撃されてるわけでもないのに、存在だけで真夏の太陽に直接肌を焼かれるような痛みを感じる!
「くっ、なんだ一体!?」
俺たちの所に舞い降りた巨大ロボットは、サーゼクスの滅びの球体を小バエを払うが如く払いのけてクルゼレイを助けた。
嘘だろ! サーゼクスが殺す気で放った滅びの球体をいとも簡単に払いやがっただと!? いや、それよりもクルゼレイを助けたってことはまさか『
巨大ロボットはクルゼレイを乗せた右手を軽く握れた左手に近づけ、左手の握りを開いた。
「『
「き、貴様は……?」
あいつは! 前にオカルト研究部に来たアメリカ勢力のFBI捜査官じゃねえか! ディオドラの件で来たのなら味方の可能性が大きい。だが、クルゼレイを助けたってことは敵の可能性も考えられなくない。だが、クルゼレイの反応から二人が繋がってる可能性は低そうだ。
捜査官は片膝を着き見下ろす形でクルゼレイに質問した。
「『
「それが……どうした?」
「とぼけても無駄だ、既に我々のエージェントから
捜査官は業務的に淡々と、しかし表情には凄みを利かせてクルゼレイに問う。
兵器? 一体何の事だ。あいつらはディオドラについて捜査していたんじゃなかったのか?
「盗品の兵器? ……ああ、あれの事か。それならディオドラに戦力として与えてやった。あまり使えそうに見えなかったからな」
「そうか、ご苦労」
ジュゥ……。
用済みになったからか、ロボットはクルゼレイを氷が鉄板で溶けるような音と共に握りつぶされた。ロボットが手を開くと、そこには案の定クルゼレイの姿はない。
クルゼレイを消滅させた捜査官は安堵の表情で嘆息する。
「よかった、今回ばかりは悪魔の了見の狭さに助けられたようだ」
クルゼレイを消滅させ独り言をつぶやいた捜査官は俺たちに目もくれずこの場を去ろうとした。
正直に言うなら、膨大な質量の聖なるオーラを放つ巨大ロボットにはさっさと去って欲しい。だけどな、堕天使の長としてこんな奴を黙って見逃すわけにはいかない。それはサーゼクスも同じようで、俺より先に捜査官に呼びかける。
「待ってくれ!」
「ん?」
サーゼクスの声に反応し、ロボットの動きを止めてこちらに顔を向けた。
「何の用だルシファーを名乗りし者よ。私たちは急いでいる、手短に頼む」
「君は一体何者なんだい?」
「FBI監督特別捜査官・行動分析課、マルコ・ホッチナーだ」
以前会った時と同じように自己紹介するアメリカの捜査官。前と違って部下二人を連れてはいないが、その代わり今日は巨大ロボットとアイアンメイデンを連れてる。
こいつらはディオドラの捜査でアーシアに事情聴取に来ていた。と言うことは、今回はその為に来たのか? しかしクルゼレイと話してた時に兵器が盗まれたとかも言っていたな。それに、こいつは俺たちに目もくれなかった。助けに来たとは考えにくい。
「俺たちの援護に来てくれた……ってわけじゃなさそうだな」
「取るに足らない悪魔の為だけにこんな場所に我々が来るわけなかろう」
眼鏡をクイッと動かし、あきれ顔で言う。こいつ……ナチュラルに俺たちのことを見下してやがる!
前のレーティングゲーム後の会合にもアメリカ勢力だけは執事だけ寄越して本人は来なかった。しかもその執事も会合中にはずっとスケジュール帳をいじり、挙句の果てにため息だけ残して途中退席。明らかにアメリカは俺たちのことをなめてる。
「ずいぶん俺たちのことをなめてくれるじゃねえか」
「不毛な争いを続ける
不毛な争いとは言ってくれるぜ。こっちの気も知らないくせによ。
冷たい目線で見下す捜査官に、サーゼクスは言う。
「確かに私たちは無益な争いで一度は自らの種を滅ぼしかけた。その愚かさは認めなくてはならない。だからこそ、私たちは戦争を失くしたい。その為なら、私は今の冥界に敵対する者を排除する。例えそれが同族だとしても」
サーゼクスは落ち着いた物言いだが真摯に、力強く捜査官に言った。
俺たちは不毛な争いを長年にわたって続けてきた。だから今こうして和平の道を開き、二度と不毛な戦争を起こさせないように努めている。
「言いたいことはそれで終わりか?」
「……何」
「すまないがどんな理由であれ君たちの意見に興味はない」
「「「!?」」」
「君たちは自らの種の存続の為、争いのない世界を目指し戦っている。ならば敵対する以上同族でも戦うしかないだろう。もっともそれが❝種の存続❞の為になればの話だがな」
捜査官はサーゼクスの思いを興味ないと軽く一掃した。
戦争を望む旧魔王派ならともかく、同じ平和を願うハズの奴らに否定されるとは思っても見なかったぜ。
「……なんだと貴様……!」
タンニーンが捜査官に殺気を浴びせかける。が、捜査官は変わらず冷たい上から目線。二人の間に険悪なムードが漂う。
その空気を断ち切ったのは綺麗な少女の声だった。
「おやめなさい。悪いのはあなたですよマルコ。悪口は悪の始まりです」
「申し訳ありませんメイデン様」
その少女の声はなんと異様な存在感を発してたアイアンメイデンから。あの中に人が入ってんのかよ! てか、メイデン様だって!?
メイデン・アインは自らに拷問にかける拷問マニアって噂は訊いたことがある。だけどよ、拷問されながらこんな所まで来るのかよ! アイアンメイデンと言えば拷問器具の中でトップクラスの拷問だぞ!
「あの兵器が外部に漏れれば大変なことになります。なんとしても大勢に❝感染❞する前に食い止めなくてはなりません。感染拡大を防ぐためとは言え私も無益な殺生はしたくはありません。急ぎましょう、マルコ」
「はい!」
あのアイアンメイデンから目が離せなかったのは中に居るメイデン・アインが原因だったわけか。しかし、上級悪魔のような強さも感じなければ、オーフィスのように不気味なオーラを感じるわけでもない―――何も感じない。真っ白で何を見ているのかわからない……まさしくそんな感じだ。メイデン・アイン、こりゃ噂以上に得体のしれない奴だな。
それにしても感染っていったいどういうことだ? アメリカは、『
◆◇◆◇◆◇
ディオドラの眷属を全滅させてディオドラのいるであろう最後の神殿へと向かう僕たち。辿りついたその場所は、入り口は今までの神殿と同じだが―――室内が真っ暗。
入口付近はまだ外の明かりが差し込むため足元くらいは見えるが、中は
「……この部屋にはアーシア先輩も、ディオドラ・アスタロトの気配も感じません」
搭城さんの言う通りこの部屋にはディオドラもアーシアさんも居ない。
人工的な室内と違ってここは大きな広間に柱が並んでるだけの神殿。この空間を取り囲むように光を遮断する結界でも張ってないとこんなに暗くするのは不可能。つまり、この暗闇は第三者が創り上げた得意フィールド。
「足を踏み入れた瞬間、暗闇からの奇襲の可能性もあるわね……」
不安げな表情でリアスさんはつぶやく。他のみんなも不安げな表情を表している。そうか、暗闇の奇襲と言えばソーナさんに出鼻を挫かれ、流れを根こそぎ持っていかれた状況と似ている。リアス眷属にとって敗北のトラウマに。
「……だけど、ここを抜けないとアーシアを助けられません」
「ええ、その通りよ。ソーナの時の二の舞にはしないわ」
だけど威勢のいいことを言っても暗闇が危険なのは変わりない。このまま勢いだけで突っ走るようなことはリアスさんもしない。
暗闇の向こうには今までの神殿と同じくらいの距離に出口らしき光が見える。
「せめて懐中電灯くらいあればな……」
「それなら火の魔剣なんてどうだい? 松明の代わりにはなると思うよ」
「おっ! ナイスアイディアだ、木場!」
全員で火の魔剣で周りを照らしながら暗闇を進んでいく。罠や奇襲に気を付けながら慎重に。
前回暗闇で真っ先に退場させられたギャスパーくんは暗闇に人一倍怯えを見せている。冷静に考えるとヴァンパイアが暗闇を怖がるって変に思えてしまうよ。
————ビクッ!
突然、背後から首を絞められるような殺意を感じた。気配は未だに奇妙かつ不明瞭なのに、殺意だけは嫌と言うほど伝わってくる。
「ッ!!」
感じる殺意に振り向けど、見えるのはどこまでも闇ばかり。気配すら見えぬ敵に僕は冷や汗をかいた。
そして前を向きなおそうとした刹那———暗闇から鋭いナイフが僕の喉を掻っ切ろうと伸びてくる。
「———ッ」
ナイフが僕の皮膚に届く前に暗闇から伸びてきた腕を払った。
一番最後尾でみんなより少し離れていたから狙ったのか、その殺意の腕は僕以外に覚られることなく闇へと消えていった。
危なかった。あえて一度殺意を飛ばし振り向かせ、警戒後の一瞬の気の緩みを狙って仕留めに来る。藻女さんに鍛えられた反射神経と妖怪たちとの修行で培った感知能力がなければ。いや、悪魔の修行だけなら間違いなく今ので殺されていたよ。
「ん、どうした誇銅?」
ゼノヴィアさんが僕に尋ねる。さっきの腕を弾いた音に反応したのだろう。だから僕は答えた。
「いいえ、なんでもありません」
襲われたことを伝えない。伝えたところで無意味だろう。
きょろきょろと周りを確認しながら慎重に進むリアス眷属。その中で僕が襲われたことに気づいた人は誰もいない。それ程鮮やかな手口で攻め、そして引いたのだ。
おそらく僕が殺されればギャスパーくん以外は気づかない、もしくは気にも止めないだろう。そして僕以外の誰かが消えた時、リアスさんたちは攻撃を受けていることに気づくだろう。
「そうか、ならいい」
ゼノヴィアさんは再び周りの警戒する。おそらくあいつは光の届かないギリギリの所で僕たちを見ているかもしれない。もしかしたら明かりをつけた瞬間にパッと目線が合うかもしれないね。
出口まであと少しの所で僕は他の皆に聞こえないようにギャスパーくんに耳打ちした。
「ギャスパーくん、先に行って」
「え?」
「必ず戻るから。後、皆には気づくまで黙っておいて」
そう告げて僕は気配を薄くして消えようとしたが、ギャスパーくんに服を掴まれて阻止されてしまう。
怯えた顔で何かを言おうとするのを止めて、僕は一方的にギャスパーくんに告げる。
「大丈夫、僕は強いんだよ」
僕がそう言うとギャスパーくんはしばらくして相変わらず怯えた表情だが、僕の服を離してくれた。ありがとう、何も聞かずに僕のことを信用してくれて。
一誠たちが出口に辿り着くとディオドラの待つ神殿へと走っていくが、僕だけはその場で立ち止まって一誠たちを見送る。
「一誠、ディオドラが笑う展開だけは失くしてよね」
完全に姿が見えなくなると僕は暗闇へ戻る。
コイツは―――間違いなく僕たちを追ってくる。物陰にでも隠れながら気配を消して背後からチャンスを虎視眈々と狙ってくるだろう。そうなれば例え暗闇じゃなくてもリアスさんたちでは対処できない。そうなれば笑うのはディオドラだ。
暗闇からの不意打ちに反応した僕をもう狙いやすい獲物とは見てくれないだろう。しかし、暗闇で一人で孤立していればどうだろう? これほど都合のいい獲物はいない。
それに、僕が出口の方を向いてる限りあいつが外に出れば僕に気づかれる。背後を狙う相手は背後を取られることを嫌う。となれば、あいつはどうしてもここで僕を仕留めにかかるだろう。
「……さて、次は僕の番だね」
松明代わりの魔剣は手の形にした炎で握りつぶす。握りつぶした炎の手を球体に変えて僕は炎目の準備を整える。
「♪~♪~♪~♪」
ひな祭りの歌を歌いながら炎を増やし操作していく。
新たに創り出した火の玉を四方八方に設置し暗闇に光を灯す。すると、僕たちを狙っていた敵の姿が浮き彫りになった。
「こりゃ予想以上だね」
黒一色の服装にマントとシルクハットの男。血のように紅い瞳に口は化け物にように裂けている。肌の色も血の気が一切なくまるで死人のようだ。
昔のイギリス小説の殺人鬼のような姿をした今のゾンビゲームに出て来そうな化け物。それが目の前の敵に対する僕の印象。
人の姿をしている分フリードより人間っぽいが、逆にその分だけ生々しい恐ろしさを感じさせるだろう。
「始める前に一つ訊きたいんだけど、退く気はない?」
僕はできる限りの殺気を出して相手を威嚇してみる。
得意フィールドから引きずりだした今なら勝てる自信はある。だけど、僕は戦闘狂とかじゃないんだ。できるならこんな殺し合いは御免被りたい。
そして僕には殺傷力の高い技は殆どない。相手が戦いたくないと思うまで痛めつけるくらいしかできない。勝手な予想だけど、もしも相手が見た目通りのゾンビで痛覚がなかった場合、僕は一体どれだけ相手を痛めつけなくちゃならないのか。軽く億劫になる。
相手の返事は、手に持つナイフを僕の
「交渉決裂か」
僕は飛んできたナイフを首を横に
敵はナイフを投げると同時にマントの中に大量に備え付けられてる同じナイフを取り出して僕の方へ飛び込んできた。
「グォォォーッ!」
「まったく、やれやれだね。まあどっちにしろ言葉が通じるかどうかも怪しかったけど」
飛び込んでくる相手に対して僕も相手に向かって踏み出し、ギリギリの所で低姿勢に切り替えて相手の足に軽く体当たり。すると相手は僕につまずき少し飛んだ所で顔面を地面に強打した。
全力で走った時につまずいたのと同じだからね。大体はこのアクシデントに対応できずに自分のスピードで壁か地面に激突する。
「ここで追撃できたなら話は早いんだけどね」
「グゴゴ……」
相手は困惑した様子ながらも平然と立ち上がった。どうやら痛みも感じてなければふらついてる様子もない。見た目通りのゾンビってわけだね。となれば……動けなくなるまで肉体を破壊するしかないか。
「苦手を言い訳にできる状況じゃない。———やるっきゃない……!」
九尾流柔術は防御がそのまま攻撃になってる。だけどそればかりに頼っていては恐ろしく時間がかかってしまう。一応思考は持ってるようだからしばらくは大丈夫だと思うが、あまり時間をかけて相手が九尾流柔術に慣れてしまっては元も子もない。ここは危険を承知で僕の方からも仕掛けなくてはならないね。
「ス~」
ゆっくり息を吐きながら構えを取り、翼を出して攻撃に備える。
「グヴォォォッ!」
今度はナイフを投げることはせずにそのまま手に持ったナイフを僕の脳天目掛けて振り下ろしてきた。
それにタイミングを合わせて顎下とナイフを持った右肩を押して極自然に力の向きを斜め上に変える。とっさに放たれた蹴りも翼で持ち上げて下に向かうエネルギーを増やす。
バゴンッ!
「ふんッ!」
バギッ
その後すかさず相手の左腕を力いっぱい踏みつける。
相手は痛みを感じないからすぐに反撃を受けないようにすぐに距離を取る。だけどいくら痛みを感じなくてもダメージはしっかり残る。これで左腕は封じた。
「グガァァ……ガァ?」
再びナイフを構えようとした時に自分の左腕が動かないことに気づいたようだ。後は両足と右腕を破壊しないとね。もしくは一思いに首の骨を折ってしまうか。それで動きが止まる保証はないけどね。
「まあ、四肢を壊せば動けなくはなるだろう」
さっきと同じように構えて相手の出方を伺う。相手は左腕のハンデを構うことなく今度は横に振りかぶって首を狙いに来た。
だから今度は右腕を上から左下に変え、最後は僕がグッと押し込んで相手が自分自身の左足を刺すように誘導。本来は自分の力は殆ど加えないが相手が痛みを感じないから深く刺さるようにね。
何かを刺そうと思って握った手は放そうと思ってもそう簡単に放せない。相手の左足と右手がナイフで一時的に封じられてる間に残りの右足を折りに行く。
「ハァァッ!」
「グォッ」
右足を狙いに行った瞬間、相手は折ったハズの左腕で反撃に出た。
「なっ!?」
とっさに右翼で弾き右足への攻撃を中断して距離を取る。その間に相手は左足に刺さったナイフを抜いて再び逆手持ちで上段に構えた。
確かに左腕の骨を折った感触も音もしていた。つまり、軽度の骨折程度は問題にならないと言うことか。これは厄介だね。
「仕方ない、もっと❝残酷❞な方法を使うしかないか。相手が痛みを感じない体なのがお互いの救いだよ」
お互いの攻撃が失敗し勝負は仕切り直し状態となった。
相手も二度の痛手で学習したようですぐには攻撃してこずに僕の周りを緩急つけながらぐるぐると回る。何周か回った所で僕の背後から強い殺気が突き刺さる。
「真後ろからでも反応できるよ!」
感じた通り相手は僕の真後ろから、両手にナイフを持って
右手のナイフには体が反応しない。かと言って左手のナイフにも反応しない。僕の体が殺意を感じ取ったのは――――。
「左足だ!」
僕が感じた通り相手は僕の目前で両手のナイフを手放した。僕に手首を掴まれることを防ぐためか、はたまた常識外の行動で意表を突くためか。
手放したナイフの一本を左足で僕の頭部目掛けて蹴り上げた。だけど早い段階で偽物に気づき本命に気づいた僕はその攻撃を躱し、逆に左足を
「グヴァッ!?」
「素直に退いとくべきだったね」
これまでと同じように後頭部を思いっきり地面に激突させる。目立ったダメージは通ってなさそうだが、相手からは信じられないと言った感情がうかがえる。
やっぱり。彼は痛覚はないけど自分の思考は持っているようだ。ならば脳を揺らす攻撃の有用性が高くなってきたよ。まあ、どちらにせよ今度の追撃には関係ないけどね。
「今度の追撃はちょっとキツイよ?」
手のひらから人間の男性がすっぽり入る程の大きさの炎を創り出し、その炎で倒れてる相手を包んだ。
「炎目、火葬体験」
「グギャァァァァァァァッ!」
普段は暖かい程度の僕の炎だが全力で力を籠めれば本物の業火と同じ熱さを再現できる。全力で力を籠めた僕の炎に身を包まれる事はさながら生きたまま棺に入れられて火葬されると同じ。
まあ、僕の炎はそれだけ力を籠めても燃やすことはできない。せいぜい灼熱の砂漠をさまようような体験で体力と水分を奪うことくらいかな。どちらにせよゾンビ相手には効果は薄い。
体が火に包まれたことで暴れまわってるのはただ驚いてるだけだろう。しばらくすればその炎が炎の性質を持ってないことには気づくだろうね。
「そこは火葬場じゃなくて―――僕の手のひらさ!」
身を包む炎がその身を焼かないことに気づいた相手は暴れることを止めたが、今度はその場で身を小さくして何かに耐えている。
それもそのはず、今言った通りそこは僕の手のひらの中。焼き殺すことはできないけど、炎を圧縮させて圧死させることはできる。木場さんの魔剣を握りつぶした時と同じようにね。
本来なら身を焼く程の熱さで抵抗する力を奪う残酷な技。この技に捕まれば、僕の炎の性質で妖術が使えない
「グッ……グガァァァァァァァァァァッ!!」
「うぉ!」
しかしゾンビ相手には炎の消耗はなく、逆に力負けして炎の棺を押し返されてしまった。だけどこれでこの手の攻撃は十分通じることが確認できたよ。
この方法なら五体を完全に破壊しきることができる。流石に潰せば再生はしないだろうし、頭部をつぶせば殺せるだろう。
火葬体験から脱出した相手は先ほど以上に距離を取りながらじっとこちらを見ている。
「流石にもう簡単には近づいて来ないか……」
「グルルルルル……」
マントのナイフに手をかけて、僕の方を見たままじりじりと後退していく。その生気の宿ってない赤い目には先ほどまでの殺意は感じられない。
これで終わったかと思っていると、僕に背を向けずじりじりと下がると、ちょうど炎の光が届かない範囲であいつは引っ張られた。
「グガァ? ———グガァァァァァ!?」
後ろを振り返ったあいつは闇の中の相手を確認すると逃れるようにもがきだした。
さらには先ほどまで僕から逃れようとしていたのに、僕に助けを請うように手を伸ばす。もしかしたら―――あいつは元々は僕たちを殺す為に闇を張ったのではなく、後ろの何かから身を隠す為に闇に紛れていたのではないだろうか?
後ろから引っ張る何かに対して必死に抵抗するが、あいつの腰に女性のような細い腕が巻き付くとあいつは抵抗むなしく闇の中へと引きずり込まれた。
ガブッ! ……グチャ グチャ グチャ
獣が肉を引き裂くような生々しい音が闇の向こうから聴こえてくる。あいつがもがく音もわずかにあった生物の気配も消えた。
しかし闇から僅かに見えた腕には不自然にも気配を感じなかった。暗闇に紛れていたなら高度な
「♪~♪」
新たに火の玉を創り出し見える範囲を一部から全体に広げた。僕の炎目で複雑なのは形成と操作のみ。簡単なものを固定させるならば数を揃えるのは苦ではない。
暗闇の中から現れたのは、既に体の殆どを喰いつくされたあいつと、黒髪でざんばら髪の女性の後ろ姿。
その女性は部屋が明るくなったことでビクッと体を震わせ振り向いた。
「ヒィッ!!」
「……罪千さん?」
「み、ないでくださいぃぃっ!!」
罪千さんは両腕で顔を隠すがもう遅い。下半身しか残っていないあいつの残骸も、血濡れた罪千さんの口元もバッチリ見てしまった。それよりもなぜ罪千さんがここに居るのか? それだけが今の僕の疑問である。
「罪千さん」
「ヒィィィ!」
僕が一歩踏み出すと罪千さんは怯えて入口の方へと走り去ってしまった。なぜあいつが短時間でここまで喰いつくされたどうでもいい、だけど罪千さんが此処にいる理由だけはどうしても気になる。場合によっては見過ごせないかもしれないからね。
逃げる罪千さんを追おうとするが、それは叶わなくなった。
「まって、罪千さん……!」
————ザク!
柱の陰から突如伸びて来た斧が罪千さんの首を切断した。さっき喰われた奴と同じ死人の肌色をした別の奴。
罪千さんはその場で倒れ切断面からおびただしい量の血を流す。その凄惨な光景に僕の目は釘づけとなった。
「罪千……さん」
「グヴォヴォヴォヴォ」
首を
戦場に立ってるなら闇討ちなんてよくある話。例え迷い込んだ一般人だろうと気を抜いて死んでしまっても仕方のない場所。だからあいつがやったことは間違いじゃないのかもしれない。だけど、それが僕が黒い感情を持ってはいけない理由にはならない。
その黒い感情が僕に何度も囁く、『あいつを飲み込んでしまえ』と。心の奥底から湧き上がる黒い炎が脳裏に浮かぶあいつを包み込む。
「グヴォヴォ」
罪千さんを殺した後、あいつは僕を見つけて嬉しそうに声を上げた。弱そうで孤立している都合のいい獲物が見つかったと思っているのだろう。
そいつは軽い足取りで罪千さんの遺体を踏みつけて僕の方へ歩いてくる。下衆な笑みをお浮かべて斧を振り回す。まるでこれからお前を殺すから逃げれるだけ逃げて見ろと言っているかのようだ。
「僕は君に対して一切可哀想なんて感情は持たないからね」
「グヴォ?」
逃げない所か自分に対して生意気なことを言ってる僕が不思議でしょうがいないと言った表情だ。自分の方が圧倒的強者と思い込み、遊び殺す相手としか思ってなければそう思うよね。
———よかったよ、ここにリアスさんたちがいなくて。———よかったよ、他の人が簡単には入ってこれないような場所で。———よかったよ、君がこんなにもわかりやすい下衆で。
僕は自分の神器『
「
両手の刺青が薄っすらと怪しく輝き、白と黒の刺青が白と白に変わると肌の中にすぅっと溶けていった。僅かな神器の跡はきれいさっぱりと消えてしまう。だがこれでいい、これで僕の禁手は完了したのだ。
あいつは目の前で起こった些細でも奇妙な輝きに一切警戒することなく手に持った斧を振り上げて襲って来る。
「どうせ君も彼と同じで痛みなんて感じないんだろう? だから思い出させてあげるよ、決して逃れることのできない恐怖を」
あいつと違って愚鈍で単調な攻撃を避けることなんて容易い。こいつはだいぶ格下なようだね。
僕はその攻撃を避けつつ相手の手首を掴んでぐるりと一回転させ背中から地面に落としてやった。しかもあいつと違って激突ではなく衝突程度に収めてある。
別に慈悲とかそういう意味合いは全くない。かと言って格下への手加減でもない。そうした方がより長いから。
「グヴォギャァァァァァァァァァァァッ!!」
倒れるそいつは突如、大音量の悲鳴を上げた。立ち上がることもせずに、まるで子供が駄々を捏ねてるかのように両足をバタつかせながら僕がついさっきまで握っていた左手首を握る。
投げられた衝撃で落としてしまった斧を拾い上げて、自分の左手首目掛けて振り上げた。しかし僕は自分の腕を切り落とそうとする手を優しく止めてあげる。
「ダメだよ、親からもらった体を粗末にしちゃ。ねっ?」
小さな子供に言い聞かせるように、左手で相手の右頬を優しく撫でる。優しい笑顔も忘れずにね。すると、あいつはさらに悲鳴を上げてその場で膝を着く。
あいつの両腕と右頬には真っ黒な痣が出来ておりそれが徐々に遅くないスピードで広がっている。
「この世で最も原始的な恐怖、それは痛み。恐怖という物を根本まで掘り下げれば必ず痛みへと辿り着く。それが身体的なものか精神的なものかってだけ。体の痛みか心の痛みか。それは邪悪な神が万物に与えた呪いであり祝福。生きとし生けるものは耐えがたい苦痛の存在のおかげで成長し自分以外を思いやる優しさを覚える」
痛みに悶え苦しむ相手に小学校の先生にでもなったつもりで説教する。まあ、相手は僕の話なんて聞いちゃいないしそんな余裕はないだろうけどね。
「痛みの概念を与える、それが僕の禁手。『
僕が一歩近づくと相手は痛みと恐怖に顔をゆがませて、慌てふためきながら立ち上がって入口へと逃げようとする。僕から逃げても
たった一撃でも『
「この
あいつから没収した斧の刃部分を指でなぞる。するとなぞった部分が黒く浸食されていく。
それをあいつの足目掛けて投げつけた。すると斧は見事相手の右足に命中し深々と刺さる。さらに、その部分からさらに。『
「グギャ! グヴォギャァァァァァァァァァァァッ!!」
「痛いでしょ? これが『
僕の痛みの呪いにはいくつか種類がある。最初に使った一番目は触れた部位を痛みが侵食するシンプルなもの。これは僕の手が直接触れたものにしか作用しない。
そして今使ったのが二番目。浸食速度は一番目に劣るが、その代わり無機物までも浸食でき、間接的な痛みの感染を可能とする。ただしこれは無機物から生物へ、生物から生物へと感染はするが無機物から無機物への感染はしない。
「悪いけど僕の腹の虫はまだ収まりそうもないんだ」
相手は斧が突き刺さったまま再び立ち上がって逃げようとするが、あまりの痛みでうまく立ち上がれない様子。まだ立ち上がろうと思える元気があるみたいだね、よかったよ。
「『
呪いの種類を変えて再びあいつの両足を軽く触る。すると今度は立ち上がろうとせずに、突き刺さった斧を強く押して足を切断しにかかる。浸食部位を捨て去れば苦痛の概念から逃れられる―――二番目まではね。
僕は自分の足を切断する様子をただじっと眺めた。だってそれは無駄だから。
「『
第四の厄災を受けた部位は例え本人から切り離されてもその部位があるのと同じように痛みを与え続ける。しかもその痛みは最も強力。
この呪いから逃れる為にはいよいよ僕に懇願するしかない。まあ、こんな残酷な禁手を使うほどの相手に慈悲をかけることは殆どないだろうけどね。
僕の目にははっきりと見える、既にありもしない部位から呪いが広がっていく様子が。
「グヴッ……グヴヴ……」
自らの足を切断し虫のように地面を這いずりながらも入口へと逃れようとする。
その無様な様子をじっと眺める。彼の心中は痛みから逃れる為には死すら望んでいることだろう。だけどその願いは例え生者であっても届かない。
「死者の体を嘆くことはないよ。例え生者の体でだってまだ死ねないよ」
永久に慣れることのない痛みの概念を与えられれば、普通なら本能がすぐさま死を望み自ら精神を即座に破壊し生命活動を停止させてしまうだろう。だけど僕の神器はそれを許さない。相手を痛めつけると同時にそれに耐えうるように精神と肉体を繋ぎとめてしまう。
『
「地震・台風・津波・火事、世界にはあらゆる自然の厄災が存在する。その厄災が偉大な先人たちを生み出した」
今のはこころさんの受け売りだけどね。
平安時代で開花した僕の厄災は邪神と出会って核心へと近づいた。曖昧だったこともなぜか昔読んだ本の内容を思い出すかのように鮮明になっていく。それが嬉しくもあり恐ろしくもあった。
「グヴゥ……ヴァァァァァァァァァ!!」
ついに呪いの痣が体の半分ほどに達した。何にも例えられぬ概念の痛みが体の半分を覆う痛さは受けた本人以外では想像もできないだろう。
僕の友人を殺したのは許せない。だけど、やっぱり『
「もういい、悲鳴が耳障りだ。最期に消失の恐怖を味わって消えろ」
第三の厄災、それは痛みを与えて破壊すること。僕の呪いは総じて相手を侵食し破壊するが、第三以外は全身を侵食しきって初めて破壊を始める。つまり、死ににくい肉体で痛みが全身に回るまで痛みに悶え続ける。
僕の禁手を受けて浸食スピードが最も速く即座に破壊する三番目で死ねるのは相手にとって幸運なこと。苦しむ時間は短くて済むし失った部位の痛みからは解放され、何より痛みが最も軽い。破壊と併用してるから弱いだけで概念の耐えがたい苦痛には変わりないけど。
本来は『
「せめてその苦しみに、今まで生きていた実感を持って死んでくれたら幸いだ」
僕の第三の厄災が触れた場所からボロボロと体が崩れ始める。初速は最も遅く指先一本からしか発動できないが、スピードは累乗で速くなるから結果的に今まで苦しんだ時間よりもずっと早く消滅できるだろう。
あいつは痛みでもがき苦しみながらも徐々に細胞の一欠けらも残さず消滅していく。その表情には自身の喪失への恐怖と同時に痛みから解放されていく安堵が見え隠れする。
もう放っておいても反撃する意思も力も無いだろう。だけど……罪千さんはもう……。
「ヴァァァ……」
「!?」
突如背後から聴こえた声に反応して振り向くと、そこには違うゾンビが大きく口を開けて僕に噛みつこうとしていた!しまった! 都合のいい空間と相手への怒りで見逃すなんて!
いかにも愚鈍そうなゾンビで武器を持っていない。だけどそれ故に気配も二人に比べても微弱。足音もあいつの悲鳴で全く気付かなかったよ。
のろまな攻撃もこの距離と油断しきった今では返せない。仕方なく相手の噛みつき攻撃を腕で受け止めようとした時。
「ダメです!」
誰かが僕に噛みつこうとするゾンビを引きはがしてくれた。引きはがしてくれたのはなんと、首を刎ねられたはずの罪千さんだった。
驚くべきはそれだけではない。ゾンビの頭を両手でがっしりと掴んだ罪千さんの顔全体が口に変化した。目も鼻もなくなり、顔全体を支配する巨大な口がゾンビを喰いつくす。
グチャグチャグチャグチャ!
まるで機械に放り込まれたかのようにゾンビはその全体を罪千さんの口の中に消した。
ゾンビを喰いつくし罪千さんの顔が戻ると真っ先に目線が合う。次の捕食対象を見つけた目ではなく、むしろ強い恐怖心を抱いている目だ。
「あ……あの……」
「罪千さん!」
「ひうっ!」
僕は我慢できずに罪千さんに抱き着いた。だって、殺されたと思った罪千さんが生きていたんだよ? うれしくて自分をうまく抑制できない!
こんな恐怖した罪千さんにいきなり抱き着くのは間違ってると思う。だけど、この喜びを止められないよー!
「罪千さん! よかった……生きててよかった……」
「こ、誇銅さん……私が怖くないんですか?」
「へ? なんで?」
抱き着いたまま罪千さんの顔を見上げると、そこには先ほどの恐怖心の代わりに同等の疑問に思う心が見える。
「なんでって……私は誇銅さんの目の前で、ひ……人を食べたんですよ! それもおぞましい化け物の顔になって! なのに……なんで……」
あ~そういう意味か。確かに客観的に考えてみれば罪千さんのあの姿はだいたいは恐怖するだろうね。さらに目の前で人の形をしたものを丸ごと喰った。自分も食べられるかもと思うかもね、普通は。
だけど僕は不思議と罪千さんを怖いと思えなかった。化け物の姿を見ても、人の形をしたゾンビを食べても。元人間が目の前で食べられたことに何の感情も感じなかった。この感覚は絶対に僕の方がおかしいんだろうけどね。
だから僕は罪千さんを怖がらない。恐怖のマイナスが無ければ残るは友人が生きていたプラスだけ。
「一つだけ訊かせて。罪千さんは僕の敵なの?」
「違います!」
一応訊いてみると罪千さんは即答。うん、今の言葉から偽りは感じなかったし信じるよ! そしてこれで僕が罪千さんを怖がる理由が何一つなくなった。
「じゃあ安心だね!」
「でも!」
「罪千さんは僕の敵じゃない、クラスメイトの友達。それだけで十分じゃない?」
「え?」
「僕は今はそれで十分だと思ってるよ」
笑顔でそう答えると罪千さんの瞳から少しだけ不安が消えたように見えた。まだまだ不安の影は見えるけど、そこに一筋の光でも通れば万々歳だね。
おっと、家族以外の女性に長時間の無断ハグは失礼だったね。いい加減罪千さんから手を離す。そのおかげで緊張しっぱなしの罪千さんの表情が少し和らいだ。
「罪千さんは此処から早く逃げた方がいい。例え罪千さんが強くてもここにはめんどくさい人たちがたくさんいるからね」
「あの……私が此処にいる理由は訊かなくていいんですか? それと、私の正体も……」
「僕が訊くのはたった一つ、そう約束したんだから他を無理に訊いたりなんてしないよ。言いたくないことは言わなくていい」
僕がそういうと罪千さんはしょんぼりとした表情になる。今の言い方はちょっと冷たい言い方だったかも……。
「秘密を明かすことは信頼の証。秘密は他人との境界線であると共に身を護る鎧。だから僕は自分が信頼した人にしか秘密を明かさない。それと同時に僕も他人の秘密を詮索するような行為は控えてる」
だから決して罪千さんを精神的に追い詰めてるわけじゃないからね! って言う旨趣は伝わったかな? 罪千さんがしょんぼりとしてしまったのはそういう理由だと推測したんだけど……。
推測が正解したのか定かではないけど罪千さんの表情は少しばかり戻った気がする。そして下を向いたまま僕に言う。
「あ、あの、誇銅さん」
「なあに?」
「私がここに居る理由、私の正体も……誇銅さんにお教えします。ですが、ここではお話しできません。私も、やらなくちゃいけないことがあるので……。だから、帰ってから必ずご説明します!」
震える声でそう言ってくれた罪千さんの手を優しく両手で握る。事情はわからないけど、勇気を振り絞って言ってくれたのは伝わったよ。特に自分の正体を教えることには相当な勇気が必要だったと思う。
臆病な罪千さんが勇気を出して境界線から出てきてくれたんだ、僕もそれに全身全霊を持って答えなくちゃね。絶対に罪千さんの信頼を裏切るようなことはしないよ。
「ありがとう、罪千さん。だけど無理はしなくていいからね? 言っちゃいけない事、親しい人にも秘密にしたいことってのはあるんだから」
「大丈夫です。それに、誇銅さんには知ってほしいんです、本当の私を……」
いつも通り自信なさげに手をもじもじさせ目線を合わせようとしない罪千さん。だけどチラチラと僕の顔色を窺ってる様子。
話すこともなくなったしお互いいつまでもここでボーっとしてるわけにはいかない。罪千さんはやることがあるって言ってたし、僕も立場上リアスさんの所に戻らなくてはならない。
「それじゃ、僕もぼちぼち行かなくちゃいけないから。また学校で会おうね」
「はい」
そう言って僕は出口の方へと歩いていく。別に変な乱れもないから駆けつける必要もないと思ってね。はぐれた言い訳もあの人たちになら場合も場合だし適当でいいか。下手すれば未だに気づいてなくて言い訳する必要もないかもね!
さて、これで面倒ごとはあらかた片付いた。後は一誠辺りが厄介ごとを起こさなければ時期終わるだろう。どうやら今回は比較的楽に事が済みそうだ。
ふと後ろを振り返ると、そこには罪千さんの姿も下半身だけ残っていたあいつの遺体もなくなっていた。指を鳴らして明かりの炎を消すと神殿は再び闇に閉ざされる。