俺はダイミョウザザミを倒したあと、村に報告した。最初は半信半疑だった村の悪魔たちだが、ダイミョウザザミの死体を見せると泣いて感謝された。その事を悪魔のお偉いさんにまで話がいき、お礼として家を貰った。結構大きな家だ。一人で暮らすには少し大きい。まぁ、そろそろ次元の狭間で暮らすのも飽きてきたし丁度いいかな。
家を貰っていたら昼になっていた。俺は残った魚で昼食にしようと湖へ向かった。魚はさっきの戦闘でだいぶなくなったが、それでもまだ十分な量がある。
後からわかったことだが天使の力を使うとき、姿も変わるのだ。具体的に言うと髪の色と、髪型が変わる。
正直、〈神威霊装・十番〉で霊装の姿になるのはわかってはいた。だが、髪の色や髪型まで変わるとは思ってもいなかった。
そう、今の俺は髪の毛は闇色で可愛いリボンで結ばれた、格好だけで言えばデート・ア・ライブの夜刀神十香のそれなのだ。
(まじか……格好だけでなく髪色、髪型まで同じになるのか………まぁ、別にいっか、最初っから女みたいな容姿だったし……)
そう、自分を納得させた。
っと、いい加減めしめし。
ここの魚、結構美味しいんだよなぁ〜。なんて魚なのかな?そう疑問に思いながらも、火を起こして、魚を焼き始めた。
♢
魚がいい感じに焼き上がり、食べようとしたら……………。
次元の狭間から、女の子が現れた。
…………え?女の子?
次元の狭間から現れたのは10歳ぐらいの女の子。髪は黒く、長いストレートでゴスロリの格好をして、胸にはバッテンのシールを貼っていた。
その少女はこちらをジーーーーっと、見つめていた。いや、俺じゃなくて手に持ってる魚を見つめていた。
んー。もしかして欲しいのかな?
「これ、いるか?」
俺が魚を少女の方へ差し出すと、少女はそれを受け取り、食べ始めた。
(やっぱり欲しかったのか…)
食べ終わったら帰るだろうと思っていたのだが、心なしか、次は俺のことをジーーーーっと見つめてくる。
謎の沈黙に気まずくて顔を背けていたら少女の方から口を開いた。
「やっと見つけた。未知なるもの」
っと、訳のわからないことを言い出した。
「……は?み、みちなるもの?」
「そう、未知なるもの。あんなドラゴン見たことない。だから未知なるもの」
「っ!……なぜ俺があのドラゴンだってわかった?」
「今までに感じたことのない気配を感じる。だからわかった」
なるほど。まさか気配でバレるとはな。
「はぁー、そうか。君の言った通り俺はあのドラゴンだよ。名前は風見龍夜。龍夜でいいぞ」
「我はウロボロス。『オーフィス』とも呼ばれている」
ん?ウロボロス?オーフィス?それって………無限の龍神様じゃないかぁ!!!!え?まじでっ!この10歳ぐらいの少女が世界最強っ!?人は見かけによらないとは言うけど、って俺たちはドラゴンか。
ってそうじゃねえぇーーー!なんでいきなり俺の前に世界最強が現れんのっ!もしかして俺を殺しに来たのっ!?嫌ダァ!俺はまだ死にたくない!
俺が頭を抱えて唸っているとーーー
「我、龍夜見たい」
「……は?」
「龍夜、他のドラゴンと違う。我ともグレートレッドとも違う」
ここまで言われて気づく。
つまり、オーフィスはーーー
「我、見てみたい。龍夜がなんなんか、どんな存在なのか」
やっぱりか。自分の知らないものに興味が湧く。それは至極当然だ。
「んー。なら、俺と一緒にいるか?」
俺がそう聞くと、オーフィスはコクリと、頭を縦に振った。
やだ、可愛い。そう思った俺は悪くないと思う。
それからはとりあえず、魚を全部食べ終え、くつろいでいた。
「ふぅー、食った食った。なぁ、オーフィスお前いつもどこで暮らしてるんだ?」
ふと思った疑問を聞いてみた。
「我、どこにも暮らしていない」
「どこにも暮らしてない?どういうことだ?」
「我の帰る場所、次元の狭間。今、グレートレッドがいる」
うわ、ここでまさかグレートレッドの名前が出てくるとはな。
「なら、俺の家に来るか?」
「龍夜の家?我、行っていい?」
「あぁ、一人で暮らすには少し大きいからな。オーフィスが来てくれると俺は嬉しいよ」
ん?なんでさっきまでビビってたのに一緒に暮らすか?とか言ってるのかって。
それは、別にこいつが俺を殺しに来たわけじゃないとわかったからだよ。それに、一人より二人の方が暮らしてて楽しいからな。
「………わかった。我、龍夜と一緒に住む」
オーフィスはそう言ってまだだべ終えていなかった魚を食べたのであった。
♢
オーフィスと暮らし始めて半年近くがたった。この半年は、はぐれ悪魔を狩って暮らしていた。オーフィスと一緒にやっているから逃すなんてことは絶対にない。
そして、そのオーフィスだが、今は俺に懐いている。その証拠に今、俺の膝枕で可愛くお昼寝中。俺はオーフィスを起こさないように優しく頭を撫でる。髪がサラサラのため非常に撫で心地がいい。いつまでも撫でてたくなるくらいだ。
(こいつ、笑えば絶対に可愛いと思うんだけどな)
オーフィスはいつも無表情だ。笑ったとこなんて見たことがない。笑えば可愛いと言ってもオーフィスは可愛く首をかしげるだけ、本当に勿体無い。そう思いながら、俺はオーフィスが起きるまで頭を撫で続けるのだった。
♢
オーフィスは起きたら起きたで、すぐに出かけてしまった。俺はすることがなく久しぶりに次元の狭間をぶらぶらしようと考えた。
その考えが直ぐに後悔するとも知らずに……。
久しぶりにアマツの姿で次元の狭間を飛んでいる。俺は半年近くアマツの姿になっていない。そのため、今日はのびのびとしていた。
どのくらい飛び続けていただろうか、もうそろそろ帰ろうとしたとき、俺は真っ赤で俺よりちょっとでかいぐらいのドラゴンと出会った。いや…………出会ってしまった。
………………次元の狭間で、真っ赤なドラゴン…………も、もしかして…こ、こいつが……赤龍神帝グレートレッド!!!!
どうやら俺はヤバい奴と出会ってしまったらしいです。………まじでどうしよう。
気づいたらグレートレッドは俺の前にきていた。
マジでヤバそうなんだが、と焦っている俺に御構い無しにグレートレッドはゆっくりと口を開く。
「貴様は何者だ?ただのドラゴンではないな」
ただ喋っただけ、ただそれだけのことなのに心臓を握られたような感覚になる。そこにいるだけで押しつぶされそうなほどの威圧感、そして、存在感。
オーフィスと同格の存在。半端ない。
俺は恐怖心を抑え、答えた。
「……何者って、俺はただのドラゴンだよ」
そう答えたがグレートレッドは………。
「貴様がただのドラゴンではないのはわかっている。まぁ、答えなくていい……なんせ」
なんだよっ!なら聞くなよ!っと思っていたがどうやら続きがあるらしい。
「貴様はここで死ぬのだからな」
……………は?死ぬ?なんで?
「一年近く前からワシの知らない者が、次元の狭間を出入りしていた。次元の狭間はワシの縄張り。縄張りに入ってきたものは容赦なく潰す。そして今回次元の狭間を出入りしていたものの気配が近くに感じてこうして潰しにきたのだ」
まじかこいつ。たったそれだけで潰すとか、どんだけ短気なんだよ。
ちょっと待てよ?次元の狭間って最初オーフィスがいたとこじゃないか?
「ちょっと待て、次元の狭間って最初はオーフィスがいたんじゃないのか?それを自分の縄張りって何言ってんだ」
そうだ、おかしい。ここはオーフィスの場所だ。なのに自分の縄張りなんて。
「ふん、貴様が知ったことではないわ」
グレートレッドは静かに言い放つ。そして戦闘態勢に入った。
「知ったことだよ!お前がいるからオーフィスが帰れないんだよ!」
俺もそう言い、戦闘態勢に入った。正直勝てる気がしない。それもそうだ、相手はあの無限の龍神と同格なのだから。けど、もう引けない。俺はオーフィスのために戦う!
そして、二匹のドラゴンが激突した。