では、どうぞ。
全員が着替え終わり、リビングへ集まった。
「さあ、修行を始めるわよ」
「俺はどうしたらいいですか?」
「そうね……。あなたには祐斗と小猫の相手をしてほしいの」
木場くんと小猫ちゃんか……
「よろしくね、風見くん」
「よろしくお願いします。龍夜先輩」
「ああ、びしびし行くから覚悟しろよ」
俺は二人に冗談まじりでそう言うがーーー
「はははは、手加減しよ?」
「お手柔らかにお願いします」
マジで返された。
げせぬ。
♢
今は、イッセーとの特訓が終わった木場くんと木刀で撃ち合っていた。『騎士』なだけあって、スピードはまあまあ速い。
だがそれだけだ。スピードが速いだけで、一撃一撃が軽すぎる。これでは相手がタフなとき相当苦戦するだろう。
俺は木場くんと撃ち合っていてそう思った。
この先、絶対にスピードだけでは勝ち進めなくなる。木場くんより速いやつなんてごまんといるしな。
木場くんが振り下ろした木刀を俺は一振りし叩き折った。
「なッ!」
そのことに木場くんは大層驚いていた。
「ここまでだな」
「流石だね、いつもの事だけど手も足も出なかったよ。流石、「大剣の守護者」だね」
そう言いつつもやっぱり悔しさのある顔をしていた。
「まあまあ、そう落ち込むなって。前より良くなってるよ。ただ、何度か模擬戦したときに言ったけど木場くんの攻撃は軽い。もっと自分の体重を乗せないとな。せっかくスピードがあるんだからその速さを利用して剣を重く、そして鋭くしたらいい。木場くんはそこの点を重点的にね」
そう言い、俺は小猫ちゃんとの特訓に入った。
♢
今日の特訓は終わり、みんなで夕食を食べている。イッセーは今日の特訓の疲労で倒れていたが、今日の夕食を作ったのが姫島先輩と聞いた瞬間起き上がり、料理にガッツいた。
おい、さっきまでお前倒れてたじゃねぇか。
思わずそうツッコンでしまうほど復活が早かった。
「さて、みんな。今日一日修行してみてどうだったかしら?」
部長がみんなを見ながら聞いた。
一番最初に答えたのはイッセーだった。
「俺が一番弱いってことがよくわかりました」
「そうね。それは確実だわ」
うわ、はっきり言った。これは結構心にグサッと来るだろうな………。
「祐斗や小猫は実戦経験があるから大丈夫でしょうけど、イッセーとアーシアは相手から逃げるだけの力は欲しいわ」
「逃げるって。そんなに難しいんですか?」
「ええ、逃げるのも立派な戦術だわ。格上の相手から逃げるのは難しいのよ。もちろん、真正面から戦うかやり方も教えるわ」
「了解です!」
「はい」
イッセーとアーシアが一緒に返事をする。
二人とも気合が入っているな。
「祐斗と子猫はどうだったの?龍夜と修行して」
次に部長は木場くんと小猫ちゃんに聞いた。
「はい。全くもって相手になりませんでした。僕も最初の模擬戦のときよりは力をつけたと思っていたのですが、それでもまだまだですね。だけど、課題は見つかりました。これからの修行は、そこを重点的に鍛えていくつもりです」
木場くんの報告を聞き、部長は嬉しそうに頷いていた。
「私も祐斗先輩と同じです。いくら撃ち込んでも全て防がれてしまいます。今日の修行中、一度も攻撃を当てられませんでした」
小猫ちゃんはやはり悔しかったのか、俯き加減に話した。
それを聞いた部長は、俺を見る。
「流石ね。祐斗や小猫が手も足も出ないなんて」
「いえ、それでも木場くんも小猫ちゃんも両方ともいいもの持ってますよ。磨けば絶対に強くなれますよ」
「そう。なら祐斗と子猫をよろしくね。それとちょうど食事も終えたしお風呂に入りましょうか」
部長の一言で、イッセーが「お、お風呂!」とか言って興奮してるよ。
「僕は覗かないよ、イッセーくん」
「右に同じく」
即座に俺と木場くんが言った。
「バッカ!お、おまえらな!」
おうおう、動揺しとるぞ。覗く気満々だな。
「あら、イッセー。私たちの入浴を覗きたいの?」
部長が平然と言う。
「なら、一緒に入る?私は構わないわよ?」
なんでそんなこと言うかな、イッセーがその気になってるじゃないですか。
俺がそんなことを思ってるなんてつゆ知らず、部長はみんなに聞く。
「朱乃はどう?」
「ええ、別に構いませんわ。うふふ。私、殿方の背中を流してみたいですし」
「アーシアはどう?愛しのイッセーがいるなら大丈夫よね?」
部長の問いかけにアーシアは顔を真っ赤にして小さくだがコクリとうなずいた。
だんだんイッセーが興奮していく。
「最後に小猫。どう?」
「……いやです。ですが、龍夜先輩ならいいです」
小猫ちゃんが最後、爆弾発言をする。
おいおい小猫ちゃん!なんてこと言ってくれてんだよ!
それを聞いた部長と姫島先輩はーー
「あらあら、うふふ。小猫ちゃんがまさかこんなことを言うなんて、相当懐かれていますわね」
「本当。小猫からお風呂に入ってもいいって言うなんて思いもしなかったわ」
小猫ちゃんは自分で言っていて恥ずかしかったようで、顔を赤くして俯いていた。
…………小猫ちゃん。恥ずかしいならそんなこと自分から言っちゃダメだよ。
「イッセーは残念ながら無理ね。でも、小猫は大丈夫って言ってるし、龍夜だけでも一緒に入らない?」
何てことを部長は聞いてくる。それを聞いたイッセーは血の涙を流しながら、俺を物凄く睨んでいた。
「い、いや、遠慮しときます。俺は普通に男子風呂に入りますから!」
俺がそう答えると、小猫ちゃんは肩を落とし「残念です」と呟いて、部長たちとお風呂へ入っていった。