俺はまた、堕天使がイッセーを襲ってくるだろうと思い学校が終わると町中を歩いていた。普通なら気配でわかるが、今はうまいこと隠れているようだ。イッセーに付いていれば一番安全だろうが、あの時脅したから一緒にいれば出てこないだろう。それでは意味がない。早いとこ堕天使を始末しておかないとイッセーが危険だし、なによりサーゼクスの依頼だからな。
空が暗くなり始めたとき、イッセーの近くに堕天使の気配をひとつ見つけた。俺は風を使って空を猛スピードで飛んだ。
俺がたどり着いたときには、イッセーの横腹が抉られ、倒れているところを堕天使がトドメを刺そうとしていた。
堕天使がイッセーに向かって光の槍を投げるが、それはイッセーに届くことはなかった。何故なら俺がそれを掴んでいたからだ。
後ろから俺の名前を呼ぶイッセーの声がしたが無視した。
「ッ!私の槍を素手で掴みますか。やりますね」
「へっ!この程度、俺にとっちゃ爪楊枝みたいなもんだぞ。あ、あとこれ返しとくな」
俺は手に持った槍を、空を飛んでいる堕天使に投げる。
「クッ…!」
男は何とかギリギリ躱した。
そこで、グレモリーの魔法陣が現れ、リアス•グレモリーが出てきた。
「……紅い髪……グレモリーの者か…」
男は憎々しげに女性を睨んでいる。
「リアス•グレモリーよ。ごきげんよう、堕ちた天使さん。この子にちょっかいを出すなら容赦しないわよ?」
「なるほど、あなたの眷属ですか。ですが、下僕は放し飼いにしないことだ。私みたいな堕天使が、狩ってしまうかもしれんからな」
「ご忠告痛み入るわ。」
「……グレモリーの次期当主よ。我が名はドーナシーク。再び見えないことを願う」
男は最後に俺を睨みつけてから翼を使って、夜の空へ消えていった。
次にグレモリーがこちらへ振り向き、
「私の下僕を助けてくれてありがとう。それで貴方は何者なの?その制服着てるってことはうちの生徒ね?」
はぁ〜。やっぱりそこ聞くよなぁ〜。んー。どうしよ。
まぁ、とりあえずはーーー
「俺の正体より先に彼をどうにかした方がいいですよ」
俺がそう言った。グレモリーは不満そうな顔をしていたが、俺の言った通り、まずこちらを何とかしないといけない。
「わかったわ。明日、放課後使いを出すわ。この子と一緒に来てちょうだい」
無視すると後々面倒くさいだろう。
ならーーーー
「わかった」
とだけ答え、家へ帰った。
♢
朝。眼が覚めると俺の寝ている布団の中に誰かが入っているのがわかった。家の中に無断で入り、俺の布団に入ってくるやつなんて一人しか知らない。
「龍夜。おはようにゃ」
布団から顔を出したのは着物を着ていて、頭にネコミミ、そして尻尾が付いている胸のデカイ美少女だった。
「おはよう黒歌。っていうか勝手に入って来るなって言ってあるだろ?」
彼女の名前は黒歌。昔、ある理由から主人を殺し、はぐれ悪魔になったそうだ。その時追っ手の悪魔とモンスターに殺されそうなところを俺が助けた。あとからはぐれ悪魔だとわかったが、はぐれになった理由を聞いた俺は黒歌を捕らえることはせず、傷の手当てをして少しの間だが一緒に暮らした。すぐに出て行ったが、ちょくちょく帰ってきては俺の寝ている間に布団に潜り込んでくる。ま、黒歌との出会いの話はまた時間のある時にでも……。
「別にいいじゃない。ここには貴方しかいないんだから」
「そういう問題じゃないんだよ……全く」
「龍夜怒ってるにゃ?」
「いや、怒ってないよ」
あーだこーだ言っても黒歌が来てくれるのは嬉しい。俺は照れ隠しに黒歌の頭を優しく撫でた。
「にゃん♪ん〜もっと撫でて欲しいにゃ〜」
黒歌は気持ち良さそうに目を細め抱きついてきた。俺も黒歌を抱きしめ返し、さらに撫でてあげた。
黒歌は「にゃ〜♪」なんて言いながら俺に体重を預けてくる。甘えん坊だな、なんて思いながら登校時間まで抱きしめ撫で続けた。
♢
俺はいつものように学校へ向かった。俺が通り過ぎる度に女子、男子関係なしに誰もが俺を見る。そして、毎度顔を赤くし走り去っていく。今日も同じようなことが何度もおきた。
(なんでみんな、俺を見て逃げていくんだ?地味に傷つくんだが……)
俺は若干俯きながら歩いていると、周りの登校している生徒たちが、悲鳴を上げた。
なんだ?と思い原因を見てみると…………イッセーがいた。それだけなら何ともないが、その隣にいる人が問題だ。なんせあいつの隣にいるのは、駒王学園の二大お姉様の一人でリアス•グレモリーなのだ。
みんなの憧れの先輩が、変態三人組の一人と歩いていたらそれは悲鳴も上げたくなるだろう。
教室へ行くと、やはりと言うか松田、元浜がイッセーを尋問していた。その光景を見て平和だなぁ〜、なんて思う。
♢
授業が終わり、放課後。
「や、どうも」
一人の男子生徒が入ってくる。彼は確か、木場祐斗。この学園一のイケメン君だったような。そのイケメンが俺とイッセーの所へ来た。
その木場くんが来た途端、女子達から黄色い歓声が湧いてくる。
イッセーは、イケメンの登場に不機嫌になり、ちょっと当たるような言い方で質問した。
「何の用だよ」
「リアス•グレモリーの使いで来たんだ」
その一言で十分だった。
それはイッセーも同じだったようだ。
「わかった。で、俺たちはどうしたらいい?」
「僕についてきてほしい」
イヤー!
女子の歓声が悲鳴に変わった。
「う、嘘!木場くんと兵藤が一緒に歩くなんて!」
「汚れてしまう、木場くん!」
「木場くん×兵藤なんて絶対に許せない!」
「違うわ。もしかしたら兵藤×木場くんかも!」
「違うわよ!絶対!木場くん×風見くんよ!」
「きゃああー!そのカップリング最高!!」
「本当風見くん×木場くんもありかも!」
などと、わけのわからないことを女子が話していた。中には鼻血を出してな気絶している子もいる。
んー、よくわからん!
♢
グレモリーの……いや、ここでは先輩の方がいいか、先輩の使いである木場くんに連れてこられたのはーーー!
『オカルト研究部』
…………。
「部長連れてきました」
俺はなんとも言えないような顔をしていると、木場くんが部屋へ入っていった。
部屋の中を見て、イッセーは驚いていた。
俺?俺は、オカルト研究部なんて名前だったからある程度予想できていた。
そこで俺はソファーに座っている小柄な女のコを見つけた。
確かあの子は………搭城小猫ちゃん。一年生でマスコット的な存在の子。
そして黒歌の妹………。
「こちら、兵藤一誠くん。それでこちらが、風見龍夜くん」
木場くんが紹介してくれた。
ペコリと頭を下げる、塔城小猫ちゃん。
「あ、どうも」
俺たちも頭を下げた。
んー、呼び出した先輩がいないな、と思っていたが、奥からシャワーの音が聞こえてきた。それを見たイッセーの顔が半端なくにやけていた。
すごい。部室にシャワールームがある。
キュッと水を止める音。
「部長、これを」
どうやら、カーテンの奥にも人がいるようだ。
「ありがとう、朱乃」
「………いやらしい顔」
小さく吐き出された言葉。その通りだ。
イッセーは若干ショックを受けていた。
「ごめんなさい。昨日、イッセーのお家にお泊まりして、お風呂に入れなかったの。だから今、汗を流していたの」
あー、なるほど。
先輩はシャワールームから出てきた。その後ろに、黒髪のポニーテールをした、女性が目に入った。
あれは確か……姫島朱乃先輩だったような…。グレモリー先輩と並んで二大お姉様の一人。男子女子問わず憧れの的。
「あらあら、初めまして、姫島朱乃と申しますわ。これからどうぞ、よろしくお願いしますわ」
「これは丁寧にどうも、風見龍夜です。こちらこそよろしくお願いします」
俺がそう挨拶すると、イッセーも俺に習って挨拶した。
「これで、全員揃ったわね」
先輩が周りを見渡し、そしてーーーーーー
「あなた達を歓迎するわ………悪魔としてね」
次の話は、今日の23時頃に投稿します。