IS 西の男性操縦者   作:チャリ丸

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口内炎できてその痛みで一気に片付けた。後悔はしてない。
そして書き終えて思った。…どうしてこうなった!!

今回は伏線回となっております。…分かりやすいかな?


生徒最強の力

 

「あら、今朝ぶりね。こんにちは、織斑一夏くん」

「よっ」

「楯無さん…剣を連れて俺に何か用ですか?」

 

1年1組の学園祭での出し物が『ご奉仕喫茶』になったことを千冬に伝えた一夏が職員室から出ると、生徒会長と生徒会副会長の楯無と時守が扉の前で待っていた。

その口ぶりから、とりあえずは自分に用があるのだろうとは思いつつも、今朝のこともあり、やはり少し邪険に扱ってしまう。

 

「いやんっ、そんな嫌そうな顔しないでよ」

「誰のせいで強制的に部活に入れさせられそうになってると思ってるんですか!」

「…校則じゃない?」

「そうですね。ありがとうございます楯無さん」

 

邪険に扱った結果楯無に一瞬で論破された一夏は恨みの対象をIS学園の校則を作った人物達に切り替えた。

 

「で、改めて。何のようですか?剣も一緒ってことは楯無さんの私的な理由じゃないと思いますけど」

 

2人に…というより主に楯無に問いながら、一夏はアリーナへと歩を進める。その一夏に並ぶように、楯無と時守も歩き出す。

 

「流石に分かるわよね。…ただ単に一夏君にとある提案を持ちかけに来ただけよ?」

「提案って…何ですか?学園祭の景品以上に嫌そうなことなら本気で断りますよ?」

「流石におねーさんもそんなこと、一夏君には頼まないわ。…これから私がキミのISコーチをしてあげるっていう話なんだけど、どう?」

「けっこうです。コーチはいっぱいいるんで」

 

時守の服の裾を左手できゅっと摘みながら歩く楯無の提案を、一夏は即決で切り捨てた。一夏に付いているコーチの数なら生徒の中ではかなり多い。箒、鈴、ラウラ、そして同じクラスの、それも同じ専用機持ちだという理由だけで手伝ってくれているセシリアとシャルロット。計5人もの専用機持ちが、一夏のコーチに付いている。

 

「そう言わずに。私はIS学園の生徒会長なのよ?」

「…はい?」

「お前知らんの?IS学園の生徒会長って…っ、楯無」

「ん、ありがと剣くん。大丈夫、3人ぐらい1人で余裕よ。待っててね」

 

何気なく話し、廊下を歩いていた3人だったが、いち早く何かを察知したのか、時守が楯無に注意を呼びかける。

時守が一夏の歩みを右手で遮り、2人の足が止まった瞬間、廊下の奥から砂塵を巻き上げる程の勢いで、竹刀を持った女生徒が襲いかかってきた。

 

「なっ!?おい剣!助けないでいいのかよ!?」

「助けられへんねん。IS学園生徒会長、つまるところのIS学園の生徒達の長は学園最強やないとあかん。…まあ生徒の中だけやけどな?」

 

その数秒のやり取りの間に、楯無は先ほど襲ってきた竹刀を持った女子と、窓の外の木の上から矢を放った女子を一瞬で撃破していた。

 

「学園…最強」

「せや。まあやから楯無倒して最強を示せばそいつが生徒会長になれんねん。今襲ってきたんもワンチャン自分が生徒会長になれたらお前を自分の部に引き込めるとか思ててんやろ。ISやったら勝てへんことなんて分かりきってることやし」

「ん?ってことは…俺のせいで襲われてるのか!?」

「せやな。一学期こんなこと無かったし」

「剣くーん、終わったわよー」

「ん、お疲れ」

 

一夏にIS学園生徒会長についての説明をしているうちに、楯無は新たにロッカーから飛び出したボクシング部員を含めた3人をあっという間に倒し、こちらに笑顔を向ける。

 

「さてと、一夏くん。これでも私が君のコーチになることに不満がある?」

「え…、いやその…」

「ふーん、なるほどなるほど。じゃ、とりあえず生徒会室までご同行願うわね?」

「え!?な、なんで!?」

「いや、ここまで話しに付き合っといて今更抜けるとか無しやろ。てかもうちょいで生徒会室やし」

 

 

 

 

「…いつまでぼんやりしているの」

「眠……夜…遅…。かゆ…うま…。まん、ぞく…」

「しゃんとしなさい」

「……うん。…だが、断る…!私は眠…い、のだ〜」

「こっの…っ!」

「ふぎゅっ!…うえぇ…痛い〜」

 

ドアの向こうから、ごちんっ!と鈍い音が聞こえてきた。

 

「また夜更かししたんかあいつ」

「え、剣。今のって…」

「おそらく一夏くんが考えている娘で合ってるわ。同じクラスだし、声ぐらい聞いたことあるんじゃない?」

 

そんな話をしながら、楯無は気軽に重々しい生徒会室のドアを開けた。時守もその後に続くのを見て、一夏も離れまいと2人の後に付いて中に入った。

 

「ただいま」

「ただいまんぼ〜」

「し、失礼します」

「おかえりなさい、会長。副会長」

「おかえりんご〜。…ふわあぁぁ…」

 

生徒会室の中に入ると、生徒会役員の布仏本音と布仏虚が3人を出迎えた。虚は3人が来ることを事前に知っていたのか、3人分の紅茶を用意しているところだったが、本音は昨晩夜更かしをしていたのか、目を擦りながら机から起き上がり、大欠伸をする。

 

「おうのほほん。また夜更かしか」

「うん…。深夜…壁紙…収集…連日……」

「眠いんやったら鼻の穴両方に練りわさび突っ込んだろか?今奇跡的にポケットにチューブわさび入ってるし…」

「起きたあぁぁぁぁ!!!起きたよ!けんけん!!本音はできる子頑張る子!」

 

時守の提案をかき消すかのような大きな声を上げながら身体を勢いよく起こす本音。その顔には、過去同じようなことをされたのだろうか、確かな焦りと怯えがあった。

 

「えっ…の、のほほんさんって…その…生徒会室役員、だった…のか?」

「むうぅ〜、おりむー、それはどういう意味ー?」

「あらあら、あだ名で呼び合うなんて。結構仲が良いのね」

 

生徒会長、と書かれたプレートの置いている席に楯無が腰掛け、その隣の副会長のプレートがある席に時守が座る。あまりにも慣れたその仕草に、一夏は戸惑いながらも適当な席に座った。

 

「あ、いや…。本名知らないんで」

「ええぇぇぇー!!ひどい、おりむー。…私のこと好きだからあだ名で呼んでくれてるのかと思ってたのに…」

「えっ!?あ、えと…その…」

「そういやワンサマてあんまりあだ名とか付けへんよな」

 

一夏と本音、2人の間で妙な空気が流れそうになった時に、時守が会話に割り込む。

 

「…そうだな。あんまり付けたことも付けられたことも無いな」

「ホモ斑とか言われてへんの?」

「言われてねぇよ!いい加減そのネタから離れろ!」

「……じゃあモッピーとかラウラとかの気づいたれよ…」

「え?」

「…刺されて死ね。もしくは俺がぶっころりするぞ」

「ひっでぇ!…ってか今の俺弾に中学の時に30回ぐらい言われたんだけどなんでだ?」

「知るかボケ」

「ねぇおりむー、私は遊びだったのか〜?」

 

酷くはない、寧ろそれが普通だ。弾含め、学生時代に一夏の被害にあった男子は数知れず。そこそこのスペックを持っているにも関わらず、彼女が出来なかった者は皆口を揃えてそう言う。

 

「これは…仲が良いんですかね?会長」

「そうだと思うわよ?」

「そうですか。…本音、その辺にしておきなさい」

「てひひ、バレた。ごめんねおねーちゃん」

「お、お姉ちゃん?」

「そうよ。私が姉の布仏虚で、こっちが妹の本音」

「更識家直属のお手伝いさんなのだ〜」

 

あっさりと、いとも簡単に実家のことを口にする本音。だが、そんな彼女を虚も、楯無も止めはしない。…一夏が、最低限知っておかなければならないことだから…。

 

「…なるほど。仲のいい人を入れた、という訳ですか?」

「そういうことよ。あ、虚ちゃん紅茶ありがとね」

「あざーっす」

「じゃあ私はちょおちょおちょお〜…おいしいあのケーキを持ってくるねー」

 

カップを持ってくる虚と入れ替わるように、本音が冷蔵庫へとてくてく歩いていく。ふらふらと、時に倒れそうになりながらも無事にケーキを持ってきた。

 

「んじゃあ、いただきまーす」

「やめなさい本音。布仏家の常識が疑われるわ」

「だいじょぶだいじょぶっ。うまぁ〜い〜」

「時守君、練わさびお借りできますか?中にちゅーっと注入したいので」

「はいはーい。外にさっとちゃうんすね」

「ごめんなさーい!」

 

涙目になりながら謝るのほほんを見て、一夏は悟る。―あぁ、1度本当にやられた事があるのだろう、と。

 

「はいはい、姉妹仲がいいのは分かったから。お客さんの前よ?」

「失礼しました」

「し、失礼しましたぁ…」

「失礼も何もせぇへんから何も言わんとくわ」

 

改めて(1人改まる気すら無い者もいるが)、生徒会役員が一夏の方を向く。

 

「一応、最初から説明するわ。一夏くんが部活動に入らないことで色んな方面から苦情が寄せられちゃってね。生徒会としてはキミをどこかに入部させないとまずいことになっちゃったの」

「それで学園祭のアレですか…」

 

平静を保つ一夏。だが、その心情は穏やかではなかった。いい迷惑だと、声を大にして伝えたかった。

そんなことをしていて大丈夫か?大丈夫じゃない。大問題だ。

という自問自答すら、自らの心の中でしてしまう程には、そう思っていた。

 

「でね、交換条件として学園祭終了までの間、私がキミのコーチをしてあげる。もちろん、生身もISも、ね?」

「結構です。…剣からもなんか言ってくれよ…」

「この件に関しては会長しか関われへんからむーりー」

「…マジか、はぁ…。それにしてもどうして楯無さんが鍛えてくれるんですか?」

「キミが弱いからだよ?」

「…な…っ!」

 

一夏に、あまりにも自然に『弱い』と告げた楯無に、虚も、本音も、時守も何も言わない。

 

「俺は…そこまで弱くはないつもりですが」

「つもりでしょ?ものっすごく弱いわ。多分、私の5割、剣君の6割に完敗するぐらいにはね」

「け、剣の6割に…?」

「うん。だってキミ、夏休み中、あんまりIS動かしてなかったでしょ?」

「…動かして、ました」

「ダウト。その答え方は自覚ありね。確かに専用機を持ってない子と比べたら動かしてるわ。それでも、専用機持ちの中で、という条件が付くと下から数えた方が早いレベルよ」

「うっ…。そ、それでも!剣の6割に完敗するっていうのには納得いきません!」

 

一夏は至って真剣に楯無にそう訴えかける。確かに、『国連代表』という肩書きと『ただの専用機持ち』、字だけで見れば強さは圧倒的に違うのだろうが、自分達はそうではない。同じ男性操縦者で、スタートも、専用機を持ったタイミングも、環境も、ほぼ似ている。

―というのが一夏の見解だったが、楯無はそれを一蹴する。

 

「…一夏くん、それ本気で言ってる?」

「…え?」

 

自信満々に、だがまるで子供が親に質問するかのような純粋に『聞きたい』という表情を浮かべながら、首を傾げる。

 

「確かに一夏くんと剣くんは『似てる』わ。専用機を貰ったタイミング、二次移行したタイミング、IS学園という環境で、コーチが付いている。それだけだとほとんど一緒よ」

「だったら…」

「でもね、中身が全く違うの。一夏くんと剣くんには圧倒的な違いがある。心の面でもね。私との試合の後、織斑先生にも聞いてみなさい。きっと私と同じことを言うから」

「…そこまで言うのなら、乗りますよ。その勝負!」

「…ふふっ」

 

まるでイタズラが成功したかのような笑みを浮かべ、楯無は一夏と生徒会室の外へと出ていった。

 

 

 

 

「着いていかなくても良いんですか?」

「え?…あー、まぁ大丈夫っしょ。…もし刀奈にラッキースケベとかしたらアイツ磔の刑に処しますし」

「相変わらずらぶらぶだねぇ…」

 

一夏と楯無が出ていった生徒会室で、時守と虚、本音の3人はお茶会の続きをしていた。時守は楯無の残りを、本音が一夏の残りを食べながら、会話を進めていく。

 

「…剣くん、お嬢様が言っていたことの意味、分かりますか?」

「…ま、分かるっちゃ分かりますね。虚さんは?」

「正直、あまりよく分かっていません」

 

主の発言を理解出来ていないということが、従者である虚を責め立てる。

 

「しゃあないっす。これ多分専用機持ちちゃうと分かりませんし」

「…というと?」

 

時守の言葉を良く聞くために、虚は椅子に座ったまま、姿勢を整える。本音も気になる様で、顔をうつ伏せにしながらも、しっかりと時守の方を見る。

 

「まず環境から。同じIS学園所属の男性操縦者言うても違いがある。一夏にはただの国家代表候補生がたったの4人+IS操縦に関しては一般生徒と大して変わらない第4世代IS持ち1人」

「それは…多いのでは?」

「普通に見たらそっすけど、俺と比べるとやっぱり違う。元、現含めた多数の国家代表+IS学園に負けない程の環境が1つ」

「国連のアリーナですか…」

「その他諸々含めて色々ありますしね。あっこには」

 

決して、一夏を馬鹿にするような態度を取ることなく、時守は言葉を進めていく。

 

「次に身体能力。今はどうか知りませんけど入学当初は多分一夏の方が上やったんすよ」

「…というと?」

「中学3年間はやってなかったとは言え、剣道でそれなりの強さを誇ってる。…ま、それをISバトルにも生かしてる…んかは知らんけど、やから多分ISでも変なプライド持ってるんちゃいます?」

「剣道は剣くんもしてたのでは?」

「やってましたよ?半年ぐらいで辞めましたけど。野球、サッカー、空手、ピアノ、テニス…その他諸々も」

「長続きしなさすぎだよぉ…」

 

自らの考察と経験も織り交ぜて、話を広げる。

 

「最後にメンタル面。これがほとんどに関わってると思いますよ?…虚さん、俺が入学してすぐ、刀奈とちっふー先生に何したか知ってます?」

「えっと…トレーニングのお願い、ですか?」

「正解っす。くだらんプライドなんて捨てて本気で目標目指すために、俺は自分で最良の道を選んだつもりっす。…でも一夏は?」

「確か…なし崩しに篠ノ之さんと…」

「そっす。最初は幼馴染みの女子、そこにイギリス代表候補生のセシリーが入って、中国代表候補生の幼馴染みの鈴が転校してきた。トドメはフランス代表候補生のシャルとドイツ代表候補生のラウラの転校っす。…分かります?」

「正直、まだ…」

「んじゃ、俺が言いますわ」

 

そこで時守は一旦言葉を切り、虚に向かい直す。

 

「虚さん。貴女がもし、何かで強くなりたい時、普通に強い人とめちゃくちゃ強い人、2人がいたらどないします?」

「…めちゃくちゃ強い人に教えを請います」

「OKっす。それが正解。…でも仮に、周りには普通に強い人しか居ないと思ってたら実はそれを遥かに凌ぐ物凄い強い人がいた、となれば?」

「…最初に頼むのなら、普通に強い人にしか…っ!」

「気づきました?今の一夏はその状態っす。最初に『自分よりも強い人達がいるから、この人達に教えを請おう』ってなって、その次に『この人達よりも強い人』を探すのをやめてるんすよ」

「分かりましたが…、一体なぜ?」

「身近に強すぎる姉が居て、『この人達よりも強い人』ってなったら真っ先にあの人しか出てこーへんようになってるんすよ、アイツの中で。しかもそこに姉の力を借りずに強くなりたい、とか、幼馴染み2人がいるし、とか、友達にも申しわけない、とかの気持ちが入ったら現状以上の指導者を探さへんようになるんすよ」

「なるほど…では一夏君は…」

「あいつらの事悪く言うつもりちゃいますけど、恐らくモッピー達以上のコーチを探す、ということをしていないってことになります。…まあ他にも原因あるんすけどね」

「…聞いても?」

 

恐る恐る、虚は聞く。

 

「…簡単っす。あいつには、具体性が一切ない」

 

虚の問いに、時守は恐ろしい程冷静にそう答えた。

 

「どれだけ強くなるか、誰を守るか、誰を倒せるようになるか、最終目標はどこか…だけちゃうくて、自分の苦手はどこか、その克服をどうするか、相手の戦闘スタイルの弱点はどこか…そう言う事を探すのに、具体性が全く無い」

「…でも、織斑先生が…」

「確かに、一つの事を極める方が向いてる、とは言いましたよ?…でもそれは馬鹿みたいに特攻して雪片を振ることちゃいます。自らの得意な近接戦闘に持っていけるようにして、かつそこで無類の強さを発揮しろ…ってことやと思うんすけど」

「あぁ…、そういうことですか」

「合ってるかは知りませんけどね。…まあ本人がどう考えてるか、とか俺には分かりませんし、今言ったのも全部俺の考えに過ぎませんけど…」

 

息を吸い、目を細め、はっきりと告げる。

 

 

「俺はアイツに絶対負けへん自信はある。ってかあいつほんまに強なる気あるんかな?」

 

 

自分の方が、一夏より強いと。

 

「ん?…携帯…刀奈から?」

 

話が丁度終わり、ピンと張り詰めた空気が徐々に解けていく中、時守の携帯がなった。

 

『もしもし、剣くん?』

「ん、終わった?」

『うん。私が勝って、その時に一夏くん気絶しちゃった』

「…運ぼか?」

『大丈夫。彼、結構見た目に反して軽いから。先生でも呼んで運んでもらうわ』

「了解」

『あ、後…その…。い、一応。一応報告だけ、しておくわ』

「…どないした?」

(これは…嫌な予感がします…)

 

先程までの張り詰めた空気と、楯無の声色、そして時守と一夏のとある体質から、虚は何かを察知した。

 

 

『一夏君…にね、服、脱がされかけちゃったの』

「……あ゛?」

『み、未遂よ?彼が躓きかけて、偶然手が私の胸元に…』

「分かった。今からそっち行くわ」

『…う、うん』

 

 

通話が終わると同時に、本音と虚は姿勢で会話をする。携帯を耳から離す彼の目からは、俗に言うハイライトが消えていた。

 

(本音、どうにかしてちょうだい)

(さすがの私でも無理だよぉ〜、今のけんけん、ブチギレって言葉がこれ以上ない程に似合ってるもん)

(そうよね…はぁ…一夏くん、どうかご無事で…)

 

携帯を握りしめ、しばらく固まったままの時守だったが、急に何かを思い立ったかのように、目に光を灯して立ち上がった。

 

「…せやな。刀奈の言うことがほんまやったら、アイツも強ならなあかんし。…何より俺の彼女に何してくれとんねんマジで」

 

その顔に怒りを浮かべつつ、ゆっくりと扉の方へと歩く。

 

「ええ機会や。…渋々やっても意味無いしな」

 

ドアノブに手を掛け、扉を開く。

 

 

「…一回一夏と、ガチの模擬戦してみるかぁ」

 

 

一夏の苦難は、まだまだ続く。




と、言うわけで、伏線回でした。

付け加えておくと、別に剣ちゃんと刀奈さんは一夏が嫌いな訳ではありません。ただフルパワーのビンタをして目を覚まさせようとしているだけです。…発破をかける、みたいな?

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