IS 西の男性操縦者   作:チャリ丸

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久しぶりにちょっとサブタイ自信ある。


原作4巻 夏休み編+α
期末テストと(世)紀末テスト


 

 

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

「そこまで!ペンを置け!すぐにデータを送信するように!」

 

 

IS学園の中でも珍しい憂鬱なイベント、期末テストが終わりを迎えた。

IS学園のテストは数年前の紙に問題を印刷して解答用紙に解く…といったものではなく、自身の机に取り付けられたタッチパネルに表示された電子化された解答用紙にペンで書いていく、といったものになっている。

ノートも電子化され、とある操作をすればテスト中にもノートを開けるのだが、生徒全員の画面は教員机にも縮小して表示されているのでノートのカンニングは不可。

各々の机の画面にも特殊加工が施され、横からは全く見えないという仕様になっているのでテスト中の他人へのカンニングも不可。

つまりは自分自身の力がはっきりと出るテストとなっていた。

さらに、テストの採点を全て機械に任せることで、採点ミスを無くし、一瞬でその全てが終わるのでテスト返却日というものを作る必要が無い。

だが何故か、何故か(一説によれば『テスト後のあのワイワイしたのが良い』という謎の理論により)テストは紙に印刷して返すのだ。解答用紙に生徒自身が書いた形をそのまま超高速プリンター(ISの瞬時加速の技術を応用)で印刷。一学年全員分の解答を印刷しても、5分とかからないので、受けたその日に答案を返却できるのだ。

科目は

一般教科

日本語

数学Ⅰ・A

日本史

理科(物理基礎・化学基礎・生物基礎がそれぞれ20分)

英語

IS(IS関連全授業を纏めて100分)

だ。

やや日本に偏りがあるのは『は?ISの説明書の言語、並びに説明を英語でしろ?じゃあ日本語万国共通語にしろよ。他の国とかどうでもいいし』というIS開発者、篠ノ之束の一言が原因だ。

それまで英語と中国語がメインだった地球だが、あっという間に日本語(標準語)が浸透。世界各国の小学校から既にカリキュラムに組み込まれる程になっていた。

まあつまり、だ。このテストにおける日本人のアドバンテージというのはほぼ無いに等しかった。

さらには、IS学園はその倍率が軽く一万を超える、ということもあり生徒のレベルも皆高く、平均点を60点ぐらいにするためにかなり難し目の問題となっている。

 

 

 

 

 

端的に言えば『鬼畜』である。

 

 

 

 

 

 

 

「終わった〜」

「終わった…」

「同じ言葉なのにここまで意味が変わるとは…やはり日本語、というものは面白いな」

 

 

テスト後、すぐに1年1組はうるさくなった。

いつも通りの仲のいい友達と集まり、『今回のテストどうだったー?(98点)』『全然勉強してないから無理だったよー(92点)』『あー、私もー。結構遊んじゃってさー(91点)』『うちめっちゃしたし。勝った。うちの時代や(35点)』という醜い争いを始める……者はいない。

開放感。

達成感。

絶望感。

騒がしくしている原因は主にこの3つだ。

まだテストは返ってきていないが、手応えやら自信やらで、会話はどんどんと膨らんでいく。

専用機持ち達も、例外では無かった。

 

 

「い、一夏さん?そこまで……でしたの?」

 

セシリア・オルコット…得意科目英語、苦手科目無し

 

「忘れていたお前が悪い」

 

篠ノ之箒…得意科目日本語・日本史、苦手科目英語

 

「流石に、対策がアレだけじゃキツイよね」

 

シャルロット・デュノア…得意科目数学、苦手科目日本史

 

「一学期はかなり忙しかったからな。ペースを掴めないと、死ぬぞ?」

 

ラウラ・ボーデヴィッヒ…得意科目IS、苦手科目日本語(本人自覚無し)

 

「いっちかー!!勝負、忘れてないわよね!」

 

凰鈴音…得意科目IS、苦手科目数学

 

「やめてくれよ、鈴…これ以上傷口に塩を塗りたくらないでくれ…」

 

織斑一夏…得意科目日本語・日本史、苦手科目IS

 

「傷口に塩て…そんなむずかったか?」

 

時守剣…得意科目一般教科、苦手科目無し

 

「…お姉ちゃんに聞いたら、去年と同じぐらい…らしいよ?」

 

更識簪…得意科目数学・理科、苦手科目無し

 

 

IS学園一年生専用機持ち、ここに集結。

 

 

 

 

「にしてもISの問題ふざけすぎやろあれ」

「『モンドグロッソ第一回大会の優勝者の名前を答えよ』とかね…試験官が答えな問題って…。答えられなきゃ…どうなるか」

「『ISの開発者を答えよ』…まさか自分の姉がテストの問題になるとはな」

「それを言えば『女性優先法を無くすきっかけとなった男性操縦者の片割れを答えよ』なんて本人だぞ?ですよね?師匠」

「ほんまそれな。答えに『俺』って書いたろか思たわ」

 

 

計6科目を2日に詰め込み、午後が完全にフリーとなった8人は食堂でだらけていた。

 

 

「けーんくん!」

 

 

1人、追加である。背中に抱きついてきた刀奈を体勢を全く崩すことなく受け止めた。

 

 

「お、カナ。どうやった?」

「ん?学年トップだけど?」

「なんや、やっぱ一緒か」

「うぅ…あそこで計算ミスをしていなければ…!」

「皆レベル高ぇよなぁ…」

 

 

一夏の言う通り、代表候補生並びに国家代表の学力レベルはかなり高い。

現状、学力で言えば時守、セシリア、シャルロット、簪、ラウラ、鈴が上位に固まっており、箒、一夏はその少し下にいる。

結果は先程返ってきたテストが参考だ。

 

 

「それにしてもあの岸原さんは凄かったよね」

「返ってきた瞬間にガッツポーズする者などいるのだな…日本の学生というのは皆ああなのか?嫁よ」

「い、いやぁ…皆が皆って訳じゃないけど…」

 

 

この時、一夏の脳裏には2人の男の姿が浮かび上がった。

1人は自分。中学時代に平均点を下回らず、千冬に怒られないと安心する姿。

1人は友人の五反田弾。平均点ギリギリをとり、『よっしゃあ゛!』とクラスで叫んでいた姿。

IS学園に入った自分を羨ましがっていた彼は元気だろうか、と考えていた一夏はすぐに自らの身を案じることになる―

 

 

「そういえば…皆織斑先生からの罰って今日よね?」

『う゛っ!』

 

 

いつの間にか時守の膝の上に座っていた楯無の言葉により。

 

 

「確か放送で呼び出されるって聞いてるけど…あぁ、だから皆ここにいるのね?」

「そゆこと。あー楽しみ」

「…なに、されるのかな」

 

 

簪の口からポロッと出たその言葉は、残った6人の不安を煽る。

 

 

「…だっ、大丈夫よ!いくら千冬さんでもそんなえげつない事しないわよ!」

「そ、そうですわ!精神的にゴリゴリと言われているので…、精神的に…」

 

 

鈴に乗っかったセシリア、自爆。

 

 

「うむ。教官の教えを直々に受けられる…のだ。………懲罰用の」

「ら、ラウラ…懲罰用とか言わないでよ…」

「ほ、本当に千冬さんは何をするんだろうか…」

「1つだけ言うなら俺のやってる訓練の1つやな」

『え?』

 

 

罰を受けない予定である時守の一言に皆、反応する。

訓練の1つ。

ということは非人道的なことは無いのだ。

 

 

「やから、普段俺がやってるやつ」

「ど、どんなやつだ!?核爆発が起きたり隕石が落ちてきたり天変地異が起きたりしねぇよな!?」

「ん?簡単やし、まあ人によると楽しいけど…まあ俺は萎えたな」

 

 

 

 

 

 

〜数時間後〜

 

 

 

 

 

「一夏ぁ!早く決めなさいよぉ…!」

「帰りたい…」

「は、早く終わらせてくれ…嫁よ…」

「わ、分かってる!!今度こそ…!」

 

 

第二アリーナ。そこに、専用機持ち達は集合していた。

地上でそれぞれISを纏いながら、鈴、シャルロット、ラウラが声を上げる。

一夏は1人、空に向かって飛び出した。罰を終えるために。

 

 

 

 

「あっまーい」

 

 

 

 

時守剣に一撃入れるために。

 

雪片弐型をオールラウンドで上に弾かれた一夏は、自らの腹を相手に思い切り見せる形となった。

 

 

「『グングニル』!」

「ぐあっ!」

「……27回目、だね」

「一夏さん1人だけが残るようになってから5回目ですわ」

「…剣…捉えにくい」

「まあ流石は国連代表、なのか?…では、28回目!!」

 

 

今回の罰『時守剣に一撃当てるまで帰れま10』はまだ続く。箒、セシリア、鈴、シャルロット、ラウラ、簪、一夏と順に時守と対戦していき、全員が初撃を当てたらクリア。逆に初撃を誰かが当てられたらもう一回遊べるドン。

見事に『グングニル』を喰らった一夏がアリーナのグラウンドに激突したのを合図に、再び箒が向かっていく。

作戦を立てるために、オープンチャネルすら切り、近くに集まって話す。

 

 

「わ、悪い皆…」

「次よ次!…まあ…た、確かにアタシも刀と荷電粒子砲だけで一撃って言われたらキツイけど…」

「よくよく考えたら剣さんはこれを織斑先生相手に…?」

「…『完全同調』使われてたら僕たち明日の朝までやってそうだよね」

「言わないでくれシャルロット。3回目に師匠がふざけて発動した時のアレを思い出してしまったではないか」

「それって…ラウラが4秒で一撃受けた時の…?」

「アレはやばかったな。お、箒がクリアだ」

「では、行ってきますわ!!」

 

 

赤が空から降り、蒼が空へと駆けていく。

 

 

「ふぅ…剣がまだ『紅椿』の武装をよく知らないおかげでなんとか、といったところだな」

「?武装を知らない?」

「あぁ。…シャルロット、お前達じゃなかったのか?テスト前、剣にIS関連のことを触れさせないようにしていたのは」

「い、いいじゃん!だって…また怪我しそうなんだし……あ」

「あ?」

「剣って…一夏の雪羅…知ってるのかな?」

「…あ。…ぷ、プライベートチャネルで連絡してくる」

「う、うん」

 

 

 

 

〜30分後〜

 

 

 

 

「なんやねん…荷電粒子砲て…」

「本当に知らなかったんだな…」

 

 

見事『時守剣に一撃当てるまで帰れま10』をクリアした7人と、その相手であった張本人、時守剣は時守の部屋でだべっていた。

 

 

「だって…ISに関することほとんど禁止されててんもん」

「どうせ剣くんのことだもん。また完全同調して身体ボロボロにして帰って来ちゃうんでしょ?」

「…そんなに信用無い?」

「……怪我の面だと…無い」

「うっ、…善処…します」

 

 

何かしらの事件がある度に怪我が酷くなっている…一体誰が信用するのか。

 

 

「こほんっ…と、ところで剣さん?…その、夏休みの予定は…」

 

 

落ち込む剣に助け舟を出しつつ、自らの自宅に呼ぼうとするセシリア。…だが、2人の関係をそこにいる誰もが知っているので咎めたりはしない。

 

 

「夏休み…?…日本にはほとんどいーひんで。ニューヨーク行ってイギリス行ってフランス行ってエジプト行ってインド行ってロシア行って中国行ってニューヨーク行って学園戻ってきて家帰ってニューヨーク行って……」

「世界一周旅行かよ!!」

「…全部模擬戦とデータ取り…後はお偉いさんとの会談にテレビ番組の出演に雑誌の取材、写真撮影に接待…」

「うわぁ…ま、まさかそこまでとは…」

 

 

ツッコミを入れた一夏、気持ちを素直に述べた楯無以外のメンバーもあまりのハードスケジュールに同情するしか無かった。

 

 

「4人の家への挨拶も済ませる予定やねん。…俺が死んでなかったら」

「福音の件があるせいで説得力が馬鹿にならないな」

「…テレビ電話で『軍人さん、いっぱい呼んでるからねー』とか笑顔で言われてみ。引くで」

 

 

各々想像する。…軍服を着た大人達がぞろぞろ自分の前に現れ、片っ端から模擬戦をしていく……(精神的に)無理である。(肉体的にも)無理である。

 

 

「やから4人に会える時が唯一の癒しやねーん。簪ー」

「…うん」

 

 

息を吐くかの如く惚気、近くにいた簪を自分の膝の上に乗せ、抱きしめる。

 

 

「あー、…このサイズ感…たまらん」

「なんかピッタリ収まってるって感じだよな」

「そこは簪ちゃんの特等席よね?」

「あぅ…」

 

 

真っ赤になった簪をさらに強く抱きしめる時守。

そしてその様子を見守る7人。

 

 

 

 

 

 

 

IS学園に、久しぶりに平和な時が流れようとしていた。


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