…裸エプロンたっちゃんはまだですか?
「お前らどんな感じ?こっちはかなり楽しいで、…と。」
鈴とセシリーと別れてから自室に戻り、トークアプリのグループで皆の近況を知る。
>剣ちゃんがいーひんくて死にそう。
>健くん死んでたで。
>…剣ちゃんどんな感じなん?
「こないだ喧嘩売られたから戦った。…と、」
>そいつぶっ殺したろか。
>俺らの天使にして神、剣ちゃんになんてことしとんねん。
>いや、まずは爪を剥がして…
>全身の皮をはいで…
>歯も全部抜いて
>全身をボコボコに殴ってから…
>思いっきり…
>つねる。
>つねる。
>つねる。
「…まあ勝って仲良くなってんけどな。」
>流石歩くジャンプやな。
>友情、努力、勝利の三文字は剣ちゃんのためにあるといっても過言ではないよな。
「あんまり努力はしてなかった。」
>才能やな。
>せやな。剣ちゃん変態やしな。
>健くんに言われたら終わりや。人類滅んでも健くんの方が頭おかしい。
>禿同
>禿同
>禿同
>禿同
>禿同
「相変わらずやなあいつら。」
トークアプリを閉じる。
「…こっちでも…楽しめるかな…」
ベッドの上に居る俺の頬を、冷たい風が撫でた。
◆
「うわあぁぁぁぁん!!一夏のバカァ!!唐変木!!」
「デジャビュやけど今度はどないしたんやセシリー。」
「好きな殿方…いえ、女性が男性から言われて欲しくない言葉を言われたらしいですわ。」
簪と楯無が仲良くなってから数日後、また鈴がセシリーに抱かれながら泣いてた。しかもまた同じベンチ。もうセシリーが菩薩かなんかに見えてきたわ。
「死ねばいいのよ!」
「いや待ておかしい。飛びすぎやぞ。」
「言っていいことと悪いことぐらいあるでしょ!!」
「まあ…せやな。」
何となくやけど鈴が何を気にしてるのかは分かってる。やから今まで一回も弄らんかった。…ほんまに相手が嫌なことは弄らん主義やからな。
「あったま来た。今度のクラス対抗戦で絶対フルボッコにしてやるんだから。」
「が、頑張ってくださいまし。」
「えらい気合いの入りようやな。」
「…当たり前よ…、あたしと同じ世界中の女子の恨み、全部アイツにぶつけてやるんだから。」
…これはワンサマが悪いんか?…悪いな。アイツが全部悪い。
「クラス対抗戦…明後日、でしたわね。鈴さん、クラスが違う者が言うのもなんですが、頑張ってください。」
「お、頑張れや。…学食デザートの半年フリーパス、か…」
「それもあるし、負けられないわね。」
なんとこのクラス対抗戦、学食のデザート半年フリーパスが優勝特典なのだ。…勝てよワンサマ。負けたらお前の居場所は無いと思っとけ。
「んじゃ、俺ちょいまた行ってくるわ。」
「日本の代表候補生の方…ですか?」
「おぅ。最近ようやく普通に喋れるようになってな、専用機の開発手伝ってんねん。…じゃ、早い方がええし、行ってくる!」
怒りに燃える鈴と、不機嫌そうなセシリーに別れを言って簪の元へと向かう。…セシリーも笑ってたら可愛いのになー。
「おっす簪、のほほん、虚さん、楯無。」
「…また、来てくれたんだ。」
「当たり前やろ。ISが完成するとこ見てみたいし、代表候補生の実力も知りたいからな。何よりもまずお前が飛んでるとこを見てみたい。」
専用機が完成せーへんから飛べへんなんて可哀想やしな。
「…そう、じゃあ今日、見せられる…かも。あ、最終チェック…行ってくる…」
トテテ…と簪は専用機の方に走っていった。…何あの小動物。
「かんちゃんね〜、今から試運転するところなんだよ〜。」
「…長かったですね。」
「短い方よ?この人数でこのスピードは。…ねぇ剣くん。」
「ん?」
簪の専用機について話してたのに楯無がやたらと真剣な表情で俺の方を向いてきた。
「…専用機持ち、代表候補生や国家代表と戦いたいの?」
「おう。そりゃ戦わな強ならんし、何より戦ってみたいしな。」
「ふーん、…じゃ、クラス対抗戦が終わったら、おねーさんと戦いましょ?」
「…は?」
え、…なんで楯無と?あぁ、そういや。
「学園最強、やったっけ?」
「そ、…まあそれだけじゃなくて、ロシア代表でもあるんだけどね。」
「……え?……めっちゃ強いやんお前!」
「今更ですか…」
あのですね虚さん。そんなんいつ気づけ言うんですか。
「…よし、これで大丈夫な筈。…お待たせ皆。」
プログラムの最終チェックを済ませた簪が、『打鉄弐式』を纏ってこちらへやって来た。
「じゃ、クラス対抗戦が終わったら、ね?…簪ちゃん…ようやく…ね。」
「…うん。…これで完成した、とはまだ分からないけど…皆、その……ありがとう…」
…なにこれ…ヤダこれ…何この感じ…涙出ちゃうよおじさん。…まあ流石に泣いては無いねんけどな…この――
「…うぅ…簪ちゃん…ほんとに頑張ったわね…」
「うわぁーん…かんちゃーん…」
2人以外は。ほら、簪もちょっとは引いてるし、虚さんも頭痛そうにしてはるで。まだこれからやん。
「…じゃあ行ってくる…。」
「うん、行ってらっしゃい。…しっかり見てるわね。」
簪は楯無に言われ照れながらもピットへ向かい、飛び立った。
―なんや、ちゃんと仲良くやれてるやん。
◇
「…大丈夫。…お姉ちゃんや本音、虚さんや剣…皆が手伝ってくれた…この、打鉄弐式。…絶対に…うまくいく…!」
前回。というより、手伝ってもらう前は飛ばすことすら叶わなかった。…だが今は。…皆に手伝ってもらった今は―
「山嵐…大丈夫、他の武装も。…スラスターも…大丈夫。……えっ!」
全てが上手くいっていた。…しかし、不具合が起きてしまった。
「だ、だめ……静止が…効かない…!」
脚部についたスラスターが暴発してしまい、制御不能となってしまった。…本来…いや、完成している機体ならば脚部スラスターが潰れても翼部スラスターを使い、立て直す事も出来るのだが、システムの不具合がここにもあったのだろうか、上手く動かせずに下に落ちてしまう。
「(…なんで…お姉ちゃんや皆の力を借りても…私には出来ないの…?)」
…やっぱり…私は無能…なの?
「簪ぃぃぃ!!」
涙を流しながら落ちていると…声がした。
ふと声のする方を見ると、金の装甲を纏い、こちらに向かってくる人物が1人――
「…っぐ!!」
その人物はISの後ろから伸びる尻尾を私の身体に巻き付け、なおかつ抱きしめて…アリーナの壁に激突した。
「だ、大丈夫…!?」
「…おぅ。そ、それより…簪は?」
「…わ、私は大丈夫。」
それもその筈。完全に固定された状態で彼がクッション代わりになってくれたのだ。
「…うぐっ…絶対防御がある言うてもやっぱ衝撃は響くな…」
「…ご、ごめんなさい!」
「謝らんでええ。…ほら、脚部をどうにかしたら後はもう少しやろ?」
「う、うん…」
そんな会話をしていると、アリーナに一機のISが降り立った。
「大丈夫!?簪ちゃん!剣くん!!」
「…私は、平気。」
「…俺も…まあ大丈夫。」
お姉ちゃんは胸をなで下ろし、ほっ、とため息をついた。
「…無事で良かったわ。2人とも、念のため医務室に行きなさい?特に簪ちゃん。明後日にはクラス対抗戦もあるんだし。」
「…うん。…でも…」
「打鉄弐式やったら大丈夫やろ。…後は微調整で何とかなる。」
「剣くんの言う通りよ。虚ちゃんや本音ちゃん、それに私の力を信じてないの?」
「…おいこら楯無…なんで俺が入ってへんねん。」
「うふふ、何ででしょうか。」
…相変わらず…猫っぽい。
「む、簪ちゃん…何か失礼なこと考えたわね?」
無言でブンブンと首を横に振る。…お姉ちゃんはこうしたら…
「……ま、いいわ。簪ちゃんだもん。」
という謎理論を持ち出す。…これは昔から。…私が知ってる唯一のお姉ちゃんの攻略法。
「…じゃ、簪。医務室行くか。」
「…う、うん。…ほんとに大丈夫?」
「あぁ、大丈夫や。これからも付き合うで?…失敗しても、その度に俺が助けたるわ。やから、お前はお前が出来ることをしろ。」
な?…と、私に言い聞かせる彼。…私が出来る…こと?
「あっ、剣くん…簪ちゃんを口説いてるの?」
「そんなんちゃうわ。…まあ姉妹揃って魅力があるのは認めるけど。」
「…むぅ…」
お姉ちゃんが赤くなった。…あ、あれ?
「?どないした?簪。」
「な、何でもない…!」
なんで…?
「…そうか。…じゃあちょい行ってくるわ。」
なんで顔が熱いの…?
DIO様無双させようと思ったけど
『このDIOが…どうしてそのようなところに行かねばならんのだ?』
と脳内で言われたのでボツ。
あ、リメイク版の方はアンチ・ヘイト無しで設定を変えたり、話の進め方を変えたり等順調に進んでいます。…今まで設定やら下書きやら一切書かずにしてきた自分に聞きたい。『なぜ何も考えずにそこまでできたのか』と。
簪…ちょろい。…ってかちょろく無かったらISのヒロインじゃないと思うのは作者だけでしょうか?