IS 西の男性操縦者   作:チャリ丸

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祝(?)100話!記念すべき100話が10巻ラストのお話!

皆様、こんなぐだぐだのたまにエタる二次小説を応援、閲覧して下さりありがとうございます。
これからも、自分の満足のいく作品に仕上げられるよう頑張っていきますので、お付き合いのほどよろしくお願いします。


明かされること

 

「あ、モッピー。鈴とラウラも。どないしたよ。ワンサマは?」

「む、剣か。私たちは3人で回っているのだ。その…言ってはあれだが下見の時に一夏はかなり独占させてもらったからな。今日は、一般生徒のカメラ係になっている…はずなんだが」

「はず?」

 

 本音が行きたがっていた清水寺に着くと、やはりというか大勢の観光客、その中でも一際目立つIS学園の制服を着た女子生徒が多かった。

 その中の3人、箒、鈴、ラウラに話しかけると、3人ともがやや苦笑いで返してきた。

 

「一夏ったら、ついてくる女子が多かったからISでどっか飛んでっちゃったのよ」

「えっ。…やばない?」

「教官と山田教諭からは特にお叱りは受けていなかったぞ。…何か、考えがあっての事なんだろうが…」

「1人にさせたれってことちゃう?」

 

 時守にそう言われ、思わず唸ってしまう3人。

 時守同様、最近疲れが見え始めていた一夏。だが、あいも変わらず普段のように奪い合いをしてしまい、彼に負担を掛けてしまっていることも理解しているのだ。

 

「分かってはいるのだが…」

「嫁が誰か他の女子と仲良く歩いているのは我慢ならん!」

「そうでっか。俺には分からんわ」

「……ほんと、一夏があんたみたいに重婚できて好意に敏感ならややこしくならないのに」

「余計ややこしくなる未来が見える〜」

 

 本音の言う通りだろう。

 そもそも、好意に敏感な一夏は本当に織斑一夏なのか、と疑われる程に鈍感だから、一夏なのだ。

 哲学めいたことになっているが、あの朴念仁だからこその織斑一夏ということだ。

 

「まあ、あいつもゆっくり考える時間があった方がええやろ」

「そういうもの、なのか…?」

「誰かと付き合うってこと以外もな。ISにしろ、勉強にしろ。考えなあかんことはいっぱいあるし」

「うへぇ…。修学旅行の時ぐらい忘れさせなさいよ…」

「なんでや。IS動かすの楽しいやんけ」

「まあそれはそうだけど…」

「……待ってくれ師匠。なぜ、ISが楽しいと思うのだ?」

 

 何気ない鈴と時守の会話。

 そこにふと、真面目なトーンでラウラが割り込んできた。

 

「ん、どした急に」

「頼む、答えてほしい」

「んー…。確かにシゴキがきついって思う時はあるけどやな、普通に空飛んだりとか、単一仕様能力発動させたりとか、後は戦ったりとか楽しない?特に勝てたら」

「なるほど。最近、あまり成長していなかったからヒントが欲しかったんだが、そういうことか」

「どういうことや」

 

 急に1人納得しだしたラウラを見て、話を聞いているだけだった本音すらも首を傾げた。

 

「いやなに、私は軍事兵器としてしかISに触れてこなかったからな。もう少し視点を変えてみるのも一手だと思ったんだ」

「なるへそなー。俺とは真逆やな」

「ねぇ、あんたってISが嫌になったことはないの?」

「え、無いけど…」

 

 基本的に、ISというものはISバトルをするためのものである。

 故にまだ年頃の少女達は時々、ISそのものすら嫌になる時がある。

 だが、時守は違った。

 

「だって、楽しいやん」

「それだけ?」

「おう。普通に空飛んで、ハデな技撃って、相手に勝って。そんなん最高やろ。しかもそれで金もらえるし」

「呆れた。そのためならどんな努力も惜しまないっていうの?」

「んー。努力ってかやることやってるだけやねんけどな」

「何それ」

 

 ただただ楽しいから。

 ISを纏い、空を飛び、武装を放ち、相手に勝つ。

 それだけでもかっこいいが、技を極めれば極めるほどに、それはさらに華麗さを増していく。

 目立ちたがりの節がある時守にとって、これ以上に楽しいことは無いのだ。

 

「それにISがあったからこそ、カナや簪、シャルにセシリア、お前らとも知り合えたしな」

「……よく平然と、そんなことが言えるな」

「おっ、なんやモッピー。恥ずかしがってんの?」

「まあそれもそうね。ISが無かったら、こんな世界中の知り合いが出来なかったわけだし」

「だな。私も、ISが無ければ祖国でずっと軍人としてしか過ごしていなかっただろう…」

 

 それぞれが過酷な生活を送っている。

 ISにより家庭を壊され、ISにより思想が変わり、そしてISにより命を落とした。

 だが、ISのお陰で友人ができ、ISのお陰で初恋を知り、そしてISのお陰で強くなれた。

 

「やからまあ、過去に起こったことはどうにも出来ひんしな。なるようになる人生を楽しむだけや」

「老後を考えてるおじいさんみたい〜」

「お前もう菓子やらんからな、のほほん」

「嘘だよ〜。うそうそ、冗談〜」

「ったく。ぶっちゃけ女尊男卑ももうちょいで終わってくるやろし、正味そんなんどうでもいいし、まずは強いやつと戦いたい」

「サイヤ人かアンタは」

「言うな。中途半端なやつと戦うのが一番飽きんねん。雑魚いし動けへんし」

 

 変に弱い校外にいる専用機を持っていない代表候補生達を軽くディスりながら、時守と本音は3人と共に清水寺を観ることにした。

 

 さすがの専用機持ち達も、ここでは大人しかった。

 

 

 ◇

 

 

「うぃ。すまん遅れた」

「…ん。遅かったね」

「お待ちしておりましたわ、剣さん」

「外、寒かったでしょ?」

「どこに行っていたのだ、一夏!」

「そうよ!ちゃんと説明しなさい!」

「嫁よ、遅れるということはそれなりの理由があるのだろうな?」

「この差は何なんだ…」

 

 彼女かそうでないかの差である。

 両手にお土産を持ち、簪、セシリア、シャルロットの3人に旅館に迎え入れられる時守と、同じくお土産を持ちつつも、箒、鈴、ラウラの3人に問い詰められる一夏。

 

「…お前、そろそろ身持ち固めたら?」

「へ?身持ちって…何のことだ?」

「辞書引けアホ」

 

 そう言わずにはいられない時守だった。

 8人が溜まっている玄関先。

 未だ会話が続くそこに、真耶が割って入ってきた。

 

「まあまあ皆さん。今日は、日頃から頑張っている織斑くんと時守くんに、特別なおもてなしを用意してるんですから」

「特、別…?」

「新しい専用機とかっすか!?」

「あ、あんまりハードルを上げないでください…」

「痛っ、おい金ちゃん。嘘や嘘。じょーだん」

 

 真耶が苦笑いをすると同時、時守の右手中指に痛みが走った。

 理由は誰に言われずとも分かっている。「新しい専用機」という単語に、待機状態の『金色』が対抗心を示したのだ。

 

「今日は専用機持ちの皆さんに、舞妓はんになってもらいます!」

「それって俺達もですか?」

「と、時守くんと織斑くん以外の、ですっ!」

「舞妓はんかぁ…」

 

 どちらかと言えば花魁派の時守。

 どちらかと言わなくても舞妓でもいい派、というかあんまり分からない派の一夏。

 ストライクゾーンから微妙に外れているため喜びは少ないが、それでも彼女達からのおもてなしというのは、時守にとっては嬉しいことだ。

 

「では、お2人はここの和室で待っていてくださいね」

 

 真耶に通され2人が入ったのは割と大きめの和室。

 ちょっとした宴会なら軽く開けそうなほどの広さを持つそこに、2人は寝転がった。

 

「あー、疲れた」

「チンポジおかしいわ」

 

 まるで畳に沈んでいくかのようにただ寝転ぶ一夏と、寝転がりながら股を開き、ズボンの上から内ももにへばりついた袋を外す時守。

 

「お前…」

「なんや」

「隣にみんないるんだぞ…?」

「男がちんこ掻いてる音集中して聞いてる女子なんておらんやろ」

「いやでもほら、シャルロットとか…」

「…お前、それ以上深く聞く?」

「……やめとく」

「そうしとけ」

 

 ついでに痒くなったので出来るだけ音は小さくなるようにして掻く。

 冬場は厚い布地のズボンを履くので蒸れるのである。

 もちろん、箒達には聞こえないようにはしている。

 聞こえていてもいなくても、どの道シャルロット達は時守の元に来るのだ。

 

「う、おおおおおっ!?」

「…おぉっ。舞妓もええな」

 

 チンポジを直した時守が一旦手を洗いに行ったり、一夏が割と本気で寝かけてしまったり、暇な時守が『完全同調・超過』を使ってISの調整などをすること、30分。

 艶やかな舞妓衣装に身を包んだ彼女達が、襖の奥から現れた。

 

「では、まずはお夕飯からですね!」

 

 真耶がぱんぱんと手を鳴らすと、別の襖から料理が運ばれてくる。

 それも、採れたての旬の食材をふんだんに使った一流の京料理。それらが時守と一夏の目の前に置かれる。

 

「それでは皆さん、くれぐれも変なことはしないように…」

 

 すぅ…と静かに襖の奥に消えていく真耶と女中達。

 残された1年生専用機持ちに静寂が訪れることは無かった。

 

「では一夏。まずは、一献」

「剣さんも、杯を」

「俺達まだ未成年だぞ!?」

「安心しろ、ラムネだ」

「そうですわ。ラムネ……ですわ」

 

 セシリアのその間は何なのか、と一夏がツッコミを入れる隙もなく、2人の杯にとくとくとラムネが注がれていく。

 それに、まずは一口付ける一夏と一気に煽る時守。

 このような動作にも人間性の違いが見て取れる。

 

「……あぁ、なんかドッと疲れてきたな」

「っ、かぁ〜〜っ!美味いっ!配分絶妙やわ!」

「配分?」

「け、剣さんっ!お、おほほほ…。なんでもありません。なんでもありませんわ、一夏さん」

 

 本当にラムネなのか、とは追及しなかった。

 上機嫌でセシリアに酌をしてもらっている彼が幸せそうなのだから構わない。

 

「枝豆欲しなってきたな…」

「お前それホントにラムネだろうな」

「ラムネやラムネ。ラムネ風味の飲み物や」

 

 ラムネ風味なら実質ラムネか、と納得した。

 そうこうしているうちに、一夏の元に鈴が、時守の元にシャルロットが座った。

 

「おっ。食べさせてもくれるんか」

「うん。はい、あーんっ」

「あーん」

「…こ、こいつらの後でするのもアレだけど…。い、一夏っ!あ、あーん…」

「…あーん」

 

 流れるように2人とも笑顔を浮かべながら、時守に食べさせるシャルロットと、ぎこちない動きで2人とも照れながら、一夏に食べさせる鈴。

 

「…ホントはアンタと遊ぶ予定だったんだけどね」

「…ちなみに、何を?」

「花札よ」

「鈴できねぇだろ?」

「…だったら、ジェンガ」

「こんなとこでジェンガなんてしたらうるさいだろ」

「……そう、ね」

 

 なぜにジェンガと思う一夏だったが少し考えたところで分かった。

 あの鈴のことだ。剣達がいなかったら、みんながいる中であーんなんて出来ない。きっと、2人で遊んだ方が楽しいだろうと。

 ある意味時守に感謝である。

 

「では私は嫁にプレゼントを渡そう」

「お、サンキューな。すげえ、よく出来てるな!」

「ふっふっふ…。当然だ。この私が作ったのだからな!」

「本当によく出来てるぜ、このイノシシ!」

「…ウサギだ。…ぐすっ…」

「えっ…」

「はいシャルも。あーんっ」

「あーん」

「わたくしも、わたくしも欲しいですわ!」

「ならはい、あーんっ」

「あーん」

「…なら、私も」

「ん、簪もはい、あーんっ」

「…あむっ」

 

 うさぎなのに…と涙目になるラウラとオロオロとし出す一夏。

 それを見て苦笑いで頭を抱える鈴と、そのストラップはネコじゃないのかと戦慄する箒。

 その隣ではいつの間にか食べさせ合いが始まっており、舞の準備をしていたはずの簪も気がつけば時守の隣にちょこんと座っていた。

 

「…あ。舞、しなきゃ」

「おー!ちゃんと見とくからな、簪ー!」

「…うん」

 

 セシリアとシャルロットに酌をしてもらいながら簪の舞を見る。

 一夏達は一夏達でやはりぎゃーぎゃーと騒がしかったが、簪の舞が始まると静かにその様子を見ていた。

 

「やかましいぞ貴様…ら…。…おいラウラ。男子生徒へのもてなしのはずだろう?それが、なぜ宴会のようになっているんだ…?」

「ひ、ひぃっ!えと、その…」

 

 簪の舞も終わり、そのあとに生徒だけで騒いでいるとふと、襖が開かれた。

 どうやら騒ぎすぎていたようで、その対応に千冬が来たらしい。

 その表情は普段のような凛々しいものではなく、慣れない環境に少し疲れている様子だった。

 しかし、まるで宴会のように騒いでいる専用機持ち達を見て、スイッチが入った。

 餌食になったのは、ラウラだ。

 

「それと、だ。なぜ時守の杯にラムネチューハイが入ってるんだ?」

 

 舞を終えた舞妓姿の簪といちゃいちゃしている時守が先ほどまで座っていた卓の、杯に残っている飲み物を一気に煽る千冬。

 今さら間接キスなど気にしている年ではない、と自覚していた。

 

「……師匠に聞いてください」

「時守ぃぃいっ!!」

「ぐぇっ」

 

 襟を掴み、強引に引き寄せる。

 更識やデュノア、オルコットなどが驚いた顔をしているが千冬には関係ない。

 

「貴様ァ!」

「ごふっ」

 

 千冬から放たれる有無を言わさぬ老若男女平等パンチ。本気のそれを後頭部に食らった時守は、見事沈んだ。

 勤務中ということもあり、酒が飲めず。

 生まれてこの方、彼氏などできた試しもない。

 そんな千冬にとって最大の煽りと言ってもいい行為を時守はしていたのだ。

 

「正義は、勝つ…」

「生徒を殴ることは正義ではありませんわ!」

「剣っ、剣っ!?」

「だ、大丈夫…?」

 

 ぷんすか、と聞こえるほどに頬を膨らましながらオルコットが怒っているが、千冬には関係ない。

 彼女2人に身体を揺すられながら心配される時守。

 ぶっ倒してもこの男は私を苛立たせるのか、と千冬の中でさらに炎が燃えた。

 

「オルコット…。勝てば、良いのだ。勝ったこそ正義なのだ」

「いったい何時代の話ですの!?」

「あっ、剣起きた」

「つまり家事全般でちっふー先生に余裕で勝ってる俺は正義」

「ぐふぅっ!?」

 

 掃除、洗濯、料理、整理整頓、etc…。

 女子力というか、主婦力ですら時守に負けている千冬は、現代日本ではただのダメ女だった。

 

「いてて」

「アンタ千冬さんのアレ食らって痛いですむの?」

「金ちゃんがシールド張ってくれた」

「…えっ。じゃ、じゃあ千冬さんはISのシールド貫通したってこと…?」

「…何を言っている、凰。シールドなど貫通できるだろう」

「素手でなんて無理です」

 

 そうか、普通の女子はISにダメージを与えられないのか…。と今さらになって当たり前のことを改めて知らされた千冬。

 

「まあ、その…アレだ。お前達も早く風呂に入って寝ろ」

「逃げた」

「逃げましたわね」

「ちっふー先生逃げたー」

 

 自室に帰る時に、再び時守をしばいておいた千冬である。

 

 

 ◇ ◇

 

 

「むぅー。これ簪的にはどうなん?」

「剣…、重い…。…まだおもしろい方、かな?」

「ねぇ剣、ホントに大丈夫?」

「だいじょぶだいじょぶ」

「このアニメ、IS学園での剣さんと一夏さんをイメージに作られてますのね」

「うん。…だから、知ってる側からしたら現実とのギャップがあって、おもしろい…」

 

 夕食、そして入浴共に終えた4人は、生徒達が泊まっている一室のテレビで簪の日課である深夜アニメの視聴をしていた。

 

「…あ、そう言えば剣、知ってる?各国から新しい代表候補生が転校してくるの」

「おぉ、知ってんで。鈴の従姉妹とかやろ?絶対亡国対策やん…」

「でもそれ…、転校してくるのは来年度の開始と同時って聞いたけど…」

「ということは、もし今年度中にまた襲撃があれば間に合いませんわね」

「んなもん弱いやつ寄越されても困るわ」

 

 胡座をかく時守の脚の上に簪がちょこんと座り、先ほどから抱きしめている腕の力を強める。

 

「…戦ったことあるの?」

「夏休みぐらいに、鈴の知り合いなんでしょ!って言われたから、おぉ、そうや。って言ったら戦えって言ってきて、いざボッコボコにしたら半泣きになられた」

「は、半泣き…」

「そ、その時はどうやって戦いましたの…?」

「完全同調とオールラウンドでフルコンボしただけ」

「あはは…。もし剣と面識無かったら、本当に泣いちゃうかも…」

 

 あすなろ抱きのような状態から、簪の首元に鼻先を埋めて匂いを嗅ぐ。

 んぅ、という小さく可愛らしい悲鳴をあげ、簪が身を細かく捩る。

 

「名前なんつったっけな…。凰…淫乱?」

「乱音だよ、剣…」

「…それ、絶対本人に言っちゃダメだからね」

「……おう」

 

 イジりに使おうと心に決めた時守である。

 

「えへへっ。けーんっ、ぎゅー」

 

 簪をあすなろ抱きする時守を、さらにあすなろ抱きするシャルロットの美しい手が、千冬に殴られた時守の頭から離れる。

 

「んー?どした、シャル」

「別に、ただこうしたかっただけっ」

「なら、わたくしもですわ」

 

 胡座をかく時守の右肩に頭をちょこんと乗せるセシリア。

 しかし、ちょこんと乗せているのは頭だけであり、シャルロットと簪と時守との僅かな隙間に腕を入れ、彼の上半身にその柔らかい肢体を押し付けている。

 

「…け、剣…」

「ん。簪もな」

 

 アニメを見ている時間だが、彼が目の前で他の彼女2人に占領されるのを黙って見ていられる程、簪の恋心は冷めていない。

 しかし、アニメから目を離したくもない。

 そんな彼女が彼にお願いしたのが、同じように抱きしめてもらうということだ。

 

「……ねぇ剣。その…」

「ん?」

「…お、お尻に、当たってる…」

「…だって、こんだけシャルとセシリアが胸押し付けてきて、簪を抱きしめてんのに、反応せえへんわけないやん」

 

 そんないちゃいちゃタイムをしばらく楽しんでいた4人だが、簪の一言でそのムードが少しだけ変わった。

 

「それに、簪達だって誘ってるくせに」

「うっ…」

「部屋入ってきた時、布団が1枚しか敷かれてない時点で分かったからな?」

「…剣は、したくないの?」

「そうですわ!」

 

 女子のあとに風呂に入った時守と一夏。

 他の生徒達の泊まっている部屋よりも何故か少し離れた場所にある彼の泊まっている部屋に入ったところ、浴衣姿の3人が団欒していたのだ。

 おかしな点は、その部屋の中央に敷かれた一枚の布団。それとティッシュボックスと、どこで仕入れたのか分からないゴム。

 見て見ぬ振りをしたが、あからさまだった。

 

「同じ部屋になったから分かるの…。剣、最近発散できてないでしょ…?」

「うぐっ…」

「女の子が周りにいっぱいいる状態で、ISの特訓とか勉強もしないとダメだもんね」

「ですから、今日ぐらいはしたいことを言ってくださいまし」

 

 もはや簪はアニメを見ていない。

 彼が溜まっているのも事実だが、最近ご無沙汰だったのもまた事実。

 

 最近と言っても、修学旅行の下見の時にはしたのだが。

 三方向からの柔らかい刺激に、次第に昂っていく。

 

「…知ってるんだよ。同じ部屋になる前は、内緒でお姉ちゃんとエッチしてたこと」

「えっ、嘘。マジ?」

「……ホントにしてたんだ」

「でも、良いよ。それは当時の刀奈さんの特権みたいなものだもん」

 

 悪魔の囁きのように、彼女達がつぶやく。

 互いに身につけているのは薄い浴衣のみ。その体温や感触などは、ほぼそのままお互いに伝わっていた。

 

「だから、この修学旅行は私達の特権」

「幸い、綺麗な温泉…それも混浴のものもありますし」

「偶然にも、ここに最新型高性能カメラもなぜかあるし、ね?」

 

 時守は知らないことだが、彼女達3人が多方面に交渉を持ちかけて、この離れた一室をゲットしたのだ。

 ここで拒否されては何のために取ったのか分からなくなる。

 

「…簪、今何時?」

「さっきのアニメが終わったから、丁度0時半だよ」

「明日って何時起きやっけ?」

「7時30分だよ」

「…じゃあ3人とも、明日は眠い目擦りながら歩くことになるけどええか?」

「うんっ」

「今はそれよりも…」

「今日この場でしかできない体験がしたいですわ…」

 

 彼女達の熱の篭った吐息が耳にかかる。

 ここまでお膳立てをされて、応えないほどヘタレではない。

 

「じゃ、机退けよか。当たったら危ないしな」

「はーいっ」

「わたくしも手伝いますわ、シャルロットさん」

「じゃあ私は、諸々の準備を…」

 

 布団のそばにあった硬いものをとにかく遠くに離すセシリアとシャルロット。

 持ってきたキャリーケースの中から黒いビニール袋を取り出し、枕元のすぐ近くに置いた簪。

 

「何これ」

「…い、色々」

「まあ、楽しみにしとくわ」

 

 布団に腰を降ろす時守と簪。

 そこに、移動をし終えたシャルロットとセシリアも加わる。

 

「じゃあ、はい剣!目隠し!」

「えっ、なんで…?」

「次に目隠しを取る時に、すごい光景が待ってますわよ?」

「おっけ。するわ」

 

 手渡された目隠しを全く疑うことなく装着する時守。

 

 その日、明け方まで何をしていたかは時守と彼女達だけしか知らない…。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 某高級ホテルの最上階レストラン。

 そこの一角に、スコールとオータム、そしてつい先日彼女達の仲間になった人物が集まっていた。

 

「歓迎するわ、元イタリア代表、アリーシャ・ジョセスターフ」

 

 柔らかく微笑むスコールと警戒の目を向けてくるオータム。

 その2人を前にして、アリーシャはキセルから口を離して答えた。

 

「ま、私は織斑千冬との対決にしか興味は無いのサ。形はどうであれ、きっと織斑千冬も決着は付けたがっているはずサ」

「てめぇ…。…だがまあ、構わねぇよ。やる気のねぇ奴に邪魔されんのも面倒だ。てめぇはあのブリュンヒルデだけを相手にしとけ」

「言われなくてもそのつもりサ」

 

 オータムとアリーシャ。その間に友好関係などはない。

 互いの目的達成のために手を取り合っているだけ。

 オータムは時守達IS学園専用機持ちを処分するため。

 アリーシャは織斑千冬と戦うために、協力し合う。

 

「それで構わないわ。彼女が私たちに敵意を向けてくるのは、少々こちらとしても都合が悪いから」

「任せとくのサ。こちとら、織斑千冬よりも現役としては長いのサ」

「なら期待させてもらうわ。…でも、作戦にはある程度参加してもらうわよ」

「それぐらいならいくらでも」

 

 今日の本題は、顔合わせという軽いものではない。

 もっと重要な話し合いをするために集まったのだ。

 

「エムやレイン、フォルテにはまだ言ってないけど、近々大きな作戦があるの」

「…ちなみに、作戦は?」

 

「オペレーション・エクスカリバー」

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「りんごーん、りんごーん」

 

 何も無い空間、いつとも分からぬ時間。

 そんな世界で少女は歌う。

 

「はろぉ、ぶぇいぶぃー。あい、りんぐ、ざ、べーる」

 

 歌う、謳う、詠う。

 どこかアホみたいな歌声で、彼女は歌う。

 

「……えっ、ここどこ?」

 

 彼女の名は、エクスカリバーと言った。




何とか11月中に投稿完了!

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