留美の奉仕部   作:ふたなり2

7 / 9


八幡宅でお昼を頂く事になった留美、
でも緊張するし落ち着かない。
小町に振り回され気味だが小町の提案で
オムライスに魔法をかける事に。




留美の奉仕部 ( 思い出のアルバム )

 

 

「ただいま~お兄ちゃん!」

 

小町先輩が玄関先で元気よく声を響かせた。

 

「お~早かったな小町、いいの見つかったのか?」

 

のんびりした八幡の声が奥から聞こえてくる、どうやらリビングからみたいだ。

 

「それよりお客さんだよ、お兄ちゃん!」

 

「えっ?誰か来たの?」

 

もぞもぞと寝癖頭の八幡がリビングのドアからやっと顔を出して

玄関を気にしている。

 

「ふふ〜ん、誰だと思う?」

 

「まさか、一色じゃないだろうな?お兄ちゃん、ちょっと用事を

思い出しちゃった。」

 

八幡は、いろは先輩に苦手意識があるのかな?最近露骨で可愛そうですよ。

 

「あのね〜、違うから、あと本人聞いたら絶対怒るよホントに。」

 

小町先輩、ため息をつきながらヤレヤレという顔をしてる、困ったお兄ちゃんだ。

 

「じゃ〜誰よ?」

 

「じじゃ〜ん!留美ちゃん登場で〜す!」

 

「こっ、こんにちは…。お邪魔します…。」

 

「えっ、留美か?」

 

何でそんなに驚くのよ…私も恥ずかしいんだから。

 

「小町、お前何で留美がウチに来るの?」

 

「何でって、ララポで偶然会ったのよ、ね〜留美ちゃん?」

 

「えぇ、まあ…」

 

「そんでお昼にウチでご飯食べようって事になったの。」

 

「ご飯食べるって、ララポで食べてきたらいいのに、何でウチに?」

 

「イイじゃん別に、留美ちゃんあたしの後輩で友達でもあるんだから文句あるの?」

 

「いや…ないです、はい。」

 

「それに可愛い生徒が訪ねて来たんだからもっと歓迎してよ!スウェットだらしなく

着てるんじゃなくてチャンとして!」

 

「分かったよ、着替えて来る。」

 

「ごめんなさい、私が来たからかえって迷惑かけてしまって…」

 

「いいの、いいの。この位言わなきゃあ夜までダラダラなんだから。ささっ、

上がってあがって。」

 

小町先輩がスリッパを用意してくれて上がれと催促する。

 

「はい、有難うございます。」

 

緊張しちゃう、靴はちゃんと揃えてと。

 

通されたのはリビングで大きなソファーとテーブルがありその上に

読み掛けの文庫本が置いてあった。さっきまで八幡が読んでいた本のようだ。

小町先輩はテーブルの上を簡単に片付けて長ソファーに座るよう勧めた後、

そそくさとキッチンの方でお茶を入れてくれてるみたい。

 

やっぱ落ち着かないな…よその家は。

 

「今日はどうしたんだ、留美?一色とかと一緒じゃないのか?」

 

ジーンズと洗い立てのカジュアルシャツに着替え直した八幡が自室から

降りて来たのかやっと顔を出した。

 

「うん、たまには一人で買い物もいいかなとララポでウロついてたら

小町先輩にナンパされてお茶して少しお話してたら『ウチに遊びに来ない?』って。」

 

「そ〜だよ〜お兄ちゃん〜小町凄いでしょ?初ナンパでこんな可愛い彼女ゲットしてくるんだから〜!

どうよ〜?」

 

満足気に小町先輩がお盆にのせたお茶をテーブルに置いてくれた。

 

「そりゃ、タチの悪いのに捕まったな留美、後で後悔しても知らないぞ。」

 

「酷いよ八幡…小町先輩はそんなんじゃないわ。」

 

「そういゃあ、お前大人しいな?緊張してるのか?」

 

「だって、誰でも緊張するでしょ?始めて来たんだし知らない家だし

それに…男の人の家だし…」

 

「何言ってんのよ?こっちまで緊張するから変な言い回しは止めろよ。」

 

「そんな意味で言ったんじゃないもん!変に取らないでよ。」

 

他所の家だからいい子にしてるだけだし、何でも無いんだから・・

 

「何、二人でお見合いしてんのよ?留美ちゃんお昼は何か食べたい物ある?」

 

「あっ・・・いえ、ホントにお構いなく・・・」

 

「またまた~恥ずかしがっちゃって~、じゃ・・オムライスでいいかな?お兄ちゃんも。」

 

「あぁ、頼む。」

 

「偉そうなんだから、この人。」

 

八幡って亭主関白なのかな?家ではちょっと威張ってたりして。

 

「あっ、有難うございます!私もお手伝いしますね小町先輩!」

 

「大丈夫だよ、ゆっくりしててよ。」

 

「でも悪いし・・やっぱりお手伝いします。」

 

「ありがとね留美ちゃん!じゃあ、食器棚からお皿を出して貰えるかしら。」

 

「はい、このお皿ですね?」「うん、サンキュー。」

少し大きめのお皿とスプーンを食器棚から出し布巾で拭きテーブルに並べて準備する、

二人で台所に立ちお喋りしながら台所するのって何だか楽しい!

八幡がリビングのソファーで寛ぎながら文庫本を読んでるし、何かいい感じだ・・

こんな生活毎日してる小町先輩が羨ましいな。

 

もし、もしもだよ?私が八幡のお嫁さんになったら毎日がこんな感じなのかな?

・・・やだ・・照れちゃう顔が赤くなるよ。

 

「留美ちゃん?顔が赤いよ?どうしたのかな~?にゅふふ」

 

「別に何でもない・・です、少し暑いだけですから。」

 

「あら、そう~?」

 

小町先輩ったらニヤニヤして、もう~別に変な事考えてたんじゃ~ないんですから。

 

絵柄の可愛いお皿にオムライスが盛られ小町先輩がケチャップで落書きをする。

 

「どう、これ?留美ちゃん?」「・・・ははっ、素敵ですね。」

 

オムライスの上にはケチヤップで可愛くハートマークが書かれてる。

徐に小町先輩は小声で私に内緒話をする。

 

「いい?留美ちゃん?食べる時に呪文を二人で唱えるからね。例のあれを。」

 

「えっ、小町先輩まさかアレをやるんじゃ・・・」

 

「フフフ、そのまさかよ留美ちゃん。今日はあたしに付き合って貰うわよ。」

 

「う~恥ずかしいけど、乗ってあげようじゃありませんか小町先輩~ぃ。」

 

「フフっ、留美ちゃんお主もお調子者よのぉ~♪」

 

オムライスを挟んで二人で大笑いをしながら内緒話をまとめて八幡を

呼んだ。

 

「お兄ちゃん!お昼が出来たよ~」

 

小町先輩が元気よく八幡に声を掛けた。

 

「お~美味そうだな、オムライスかどれ。」

 

「あ~その前にお兄ちゃん、ここでオムライスを美味しく食べる為に

ある事をして頂きます。」

 

「えっ、何それどうすんの?」

 

「ここであたし達がお兄ちゃんにオムライスを美味しく食べて貰う為にある魔法を

唱えま~す。お兄ちゃんも一緒に魔法を唱えて下さいね~!」

 

「えっ?何それ?まさか?お前達さっきからエプロン付けて

何やらゴソゴソしてると思ったらあれやるの?俺もやらされるの?

頼むから止めて、小町ちゃん!」

 

「駄目、やるの!」

 

「じゃ~行くよ~!」「一緒に唱えてね、八幡!」

 

「「「オムライスさん、オムライスさん、美味しくな~れ!萌え、萌え、キュン!! 」」」

 

私と小町先輩はゆっくり両腕を大きく回し頭の上でハートマークを作り「萌え萌え」で

胸元左右にマークを振り振りして最後「キュン!」で片足の膝を軽く上げなから

ラブマークよろしくオムライスに決めた。もち、ウインク付きで!

 

 

「「「・・・・・・・」」」

 

 

「「あはははははっ!」」おかし~!

 

「ばっか、お前達・・ぷぷっ、あははっ。」

 

「不気味だよ、お兄ちゃん、ちゃんと笑ってよ~!」「八幡が笑ってる、可笑しい~」

 

「あ~お前達、ありがとな…うん、これで美味しさ百倍だ。」

 

「うん、ありがとねお兄ちゃん!」「うん・・ありがとう八幡・・」

 

この後の三人での食事はとっても美味しくて楽しい時間になった。

 

・・・・・・・・・

 

後片付けもすぐ終わってゆっくりリビングで寛ぐ事が出来た。

 

リビングでお茶を頂きながら三人で寛いでいる時に小町先輩が

徐に席を外した。

 

「んっ、留美ちゃん、ちょっと待ってね。」

 

「はい、どうしたんですか?」

 

「すぐ戻るよ。」

 

パタンとリビングのドアが閉まり小町先輩が出ていってしまった。

八幡と二人きりになっちゃった……、何か話さなきゃあ、でも何を話せばいいのかな?

相変わらず八幡は文庫本に目を落としているし、さっき迄は小町先輩と話してたから

手持ちぶさたになっちゃう、八幡…。

 

「あのね、八幡…。」「ん?どした留美?」

 

「突然私が来たから八幡怒ってない?」「何で怒るの?怒るような事したか?」

 

「してないと思う。」「俺もされた覚えはないよ、むしろさっきは面白かった。」

 

「うん、小町先輩のおかげだよ。」「留美も来てくれたから小町も乗ったみたいだな。」

 

「そうなの?」「あぁ、普段はもっと静かだよ。たまにはいいかな。」

 

「うん、たまにはいいかも。」

 

トントンと階段を降りて来る足音がしてリビングのドアが開いたと同時に

小町先輩が大きな本の様な物を高々と掲げていた。

 

「ババ〜ン!出ました〜!」

 

「小町〜また何を!お前…それは…マズイ!ここへ持って来たらダメだ!」

 

「イイじゃん、別に小町のもあるんだから!」

 

小町先輩はジト目で八幡を睨みながらテーブルに分厚い本をドサっと置いた。

 

「留美ちゃん、留美ちゃん?これ何だか分かる?」

 

どうやらアルバム?写真を収めたアルバムのようだ。

 

「これ、ひょっとしてアルバムですか?」

 

「ピンポン〜!当たりだよ〜正解者の留美ちゃんにはお兄ちゃんと

あたしのアルバムを見る権利が与えられました〜!」

 

「え〜!いいんですか?見ちゃって?」

 

「うん、うん!いいの、いいの!見ちゃていいよ!」

 

八幡は引き吊り笑いをしながらこちらを伺ってる。

 

「あ〜別に面白くないから見なくてもいいだろう、見なくていいから。」

 

「何言ってるのよ、見られてマズイ様なもんないでしょ?」

 

「まあ、俺の黒歴史が……留美に見られる。」

 

「大丈夫だから留美ちゃん、見ていいよ!」

 

「じゃあ…少しだけ。」「少しと言わず全部見ちゃってよ!」

 

「あはは。」

 

遠慮着味にアルバムを膝の上におき一枚一枚見ていった。

 

赤ちゃんだった八幡…可愛い〜!目が、目が、生き生きしてるし

あどけないし!これは…小町先輩が生まれた時に八幡と撮った

写真だ…うわぁ〜小町先輩って赤ちゃんの頃から可愛い〜!!

あと、八幡も2〜3歳かな?まだ、ポチャってしてて可愛いよ!

 

うん、小学校に入学した頃の写真だ、可愛いし何であんなに

なったんだろう?

 

うん?小学5年生の時?この頃からヤブ睨みの様な感じになってるよ…

うっ、中学生2年生で今とあんまし変わらないような……そうなんだ、

この頃八幡に何かあったんだろうな。

 

高校に入ってから…一年の頃の写真はあんまし無いみたい、二年からは

あっ!千葉村の時の写真だ!

 

「この頃、留美ちゃんと初めて会ったんだよね。」「はい…」

 

私も八幡の事言えないや、だってこの頃は私の黒歴史だもん!

 

「水遊びしてる時の写真あるんですね…あっ!小町先輩、水着可愛い〜!

雪ノ下先輩も綺麗…由比ヶ浜先輩は…ダイナマイト!でも可愛いいし。」

 

「あはは、あたしも若かったからね〜」

 

「今も全然可愛いいじゃありませんか!」

 

「そう?そうだよね?留美ちゃんだけだよ!あたしを分かってくれるのは!」

 

「八幡も凄く若い……目はあんまし変わってないけど。」

 

「って、悪かったですね。それ、高校生の時だからな。」

 

「あっ、これ私だ…。」

 

「あっ、これ、雪ノ下先輩とあたしのツーショットだけど

隅にいるの留美ちゃんだね。」

 

「この時、八幡に友達の話をしたんだっけ?」「あぁ、そうだったな。」

 

うん、覚えてる…雪ノ下先輩とか由比ヶ浜先輩とも話した覚えがあるかな。

 

懐かしいな、あっ!クリパの写真…私も写真貰ったけどここにもあるんだ。

 

舞台の最後、皆んなで挨拶してる所の写真…何かコメントが書いてある…

 

「留美の笑顔が一番の日、笑顔で頑張れ!」って………

 

「あっ、いや…その何だ…あ〜だから見せるのイヤだったんだ!」

 

「ありがとう…八幡…」あれ?おかしいな?涙が溢れちゃう。

八幡、私の事、気にしてくれてたんだ。

 

「だから、お礼を言われる…」

 

「お兄ちゃん、留美ちゃんの気持ち…分かってあげてよ。小町も留美ちゃんの

立場ならお兄ちゃんにお礼言いたいもん!」

 

「その…まあ、何だ…、分かったから。」「うん…」

 

 

横で小町先輩がニコニコと微笑んでいた。

 

 

 






アルバムを見て八幡の過去や優しさに
触れる事が出来た留美、この後どうなるの?


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。