やはり俺の社会人生活も間違っている。 作:若輩者のTakko
今日は一色との最後の約束の日だ。
なんだかんだで自分も予想だにしなかった発展と経験があったと自覚している。
一色のまっすぐな好意に真っ向から挑んだ俺は一色の言うところのちょろい先輩感がある。
まあ今さらなので気にもかけないが。
今日は卓球か。我ながらそんなデートコースでいいのかと思うことがあるが一色が受け入れてくれているならいいだろう。
今日は雰囲気を演出するために現地で集合しませんか?という一色の案に乗り、一人で道を歩いている。
蝉の声は相変わらず煩く死骸なのか死にかけなのかわからない蝉を避けながら通っている次第である。
待ち合わせ場所に着いて5分ほどすると一色がぱたぱたと駆け足でやってきた。
いろは「待ちました?」
八幡「まあ少しな」
いろは「そういうときは全然待ってないよ!とか言うところですー!」
いつかやったようなやり取りをして一色を正面に見据えると何か既視感があった。
八幡「…なんかデジャヴ…?」
いろは「いや…あの時と同じコーディネートで来たんですよ。」
ほおん…。なるほど。懐かしさ演出のコーディネートは、こうでねぇと!てか(困惑)
よく覚えてんな、そんな前の日の服・・・・。
だがよくよく見ると一色の履いている靴はまったく見たことがない靴で少し疑問に思った。
八幡「…靴は違うんだな」
いろは「いやー、さすがにまったく同じとはいかないですよ…サイズとかありますし。」
八幡「服は同じなのか?」
いろは「いえ、似たような服着ただけです。」
同じじゃねぇじゃねぇか。
八幡「それもサイズの影響か?」
いろは「…セクハラで訴えますよ」
んな馬鹿な!俺は自然の流れで会話したというのに!
違げえよと抗議の目を向けると腕で胸を隠すしぐさをする「あざといろは」がいた。
八幡「…行くぞ」
俺の反応が見れてご満悦した一色はふふーと満足げな溜息を吐いた。
いろは「えいっ」
突然手を握られた俺はとっさに手を振り払おうとしたが思ったより強力な力で手を握られている。
八幡「痛てえ!わかったから力緩めろって」
いろは「既に卓球の勝負は始まっているのです!フハハハ」
ワザとらしい笑いを聞かされ、俺の手をいじめることが作戦の一種だということにげんなりする。
このこ随分セコイですねー…。手をいたぶって卓球に支障を出させようとは…なんという思考。
まあこの程度の事は可愛らしいものだと笑っていられるな。
八幡「甘いな一色。俺に勝ちたいならその程度では足りないぞ」
少しでも勝ち誇ることで優位性を再確認する。
と一色は笑っていられるのも今のうちです!と宣言。
どうやら奴は本気だ。負けるわけにはいかないな!
手をつなぎながらも目に火花を散らしている俺たちを周りは微笑ましく見ていたのだった。
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あの日と違う映画のラインナップを見て時の流れを実感した後一色と卓球場に向かう。
借りたラバーで玉をコンコンしながら一色は「ではやりますか。」と仕切りなおす
いろは「私が買ったらご飯奢ってくださいね」
八幡「んじゃ、お前が負けたら?」
随分前にやったやり取りの反省点を思い出し、負けた時の条件を聞く。
いろは「そうですねー・・・。なんでも一ついう事を聞きます」
なん・・・でも・・・。
八幡「それじゃあ賭けの代償釣り合ってなくないか?」
いろは「まあ、先輩ですし変なお願いしないでしょう?」
いやに信用されてるな…。
八幡「お前がいいならいいんだけどよ…」
いろは「まあ細かいことは私に勝ってからで!行きますよー!ほい!」
最初のサーブでいきなり際どいところを突かれ無理な体勢で打ち返す。
その後ラリーは4回ほど続いたが、一色のスマッシュである「しねえええ」が俺の陣地に入り先取されてしまった。
八幡「次は俺のサーブだな…ほらよっ」
カンコンカンコン打ち返すが一色はなかなかミスらない。
ちらちらとスカートがふわふわしていてどきどきである。
ハチマン、ナニモミテナイ、ホントダヨ。
気付いてみれば得点は5-1。ふふふふ。これが俺の力!
いろは「先輩どうですか!私それなりにうまいでしょ!」
んっん~。5-1という点差。俺が5点取っている予定だったがどうやらそれは幻想だったらしい。
八幡「最近動いてなかったから全然ダメだ…」
褒められると思っていたらしい一色はダメだなー。と呟ぎラバーを振る。
気付けば完敗。
二戦三戦したがどれも敗北だった。
八幡「…まいった。ギブアップ」
もう無理だ。と、降参の意思を伝えると勝ち誇った顔で一色は告げる
いろは「お昼ゲットですね!」
八幡「昼飯なににすんだ?」
いろは「どこがいいですか?」
八幡「ラーメン」
いろは「相変わらずですね…まあいいですよ。あの時も確かラーメンでしたし。」
こうして比企谷と一色はかのラーメン屋「なりたけ」に向かうのであった。
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いろは「ごちそうさまでした」
一色のラーメンの代金を払う。
あの時と違うのは会社人というところだ。
財布に諭吉が二人もいる俺はこれくらいどうってこともなかった。
八幡「二時か…この後はカフェいくのか?あの日みたいに」
いろは「そうですねー。写真も撮ってもらいましょう」
八幡「いや、それは…」
いろは「3敗もしたんですから一つくらいお願い聞いてくださいよ~」
八幡「えー…。まあいいけどさあ。えー」
いろは「とりあえず向かいましょう!パフェも奢ってくださいね!」
ああ。もういいけどね。
こうして店に着くとさっそくと言うべきか携帯で写真を撮ろうとしてくる。
反抗虚しく写真は撮られ、その写真は俺の携帯にも送られた。
いろは「これ待ち受けにしましょうか。」
八幡「恥ずかしいだろ…」
いろは「恋人だしそういうもんですよ!ほら先輩、待ち受けにしてください」
八幡「俺もかよ」
恥ずかしいと思いながらもどこか心で楽しんでいる自分がいた。
その後はショッピングなどにも連れまわされたが終始楽しそうにしている一色を見るとあまり疲れも感じなかった。
帰り際一色は少し微笑んで今日は楽しかったですと言った。
なんだが気が狂うが礼の言葉くらいは素直に受け取っておこう。
八幡「俺も楽しかった、また今度な」
こうして比企谷と一色は約束最終日を終え、新たな日々を過ごしていくのであった。
ご愛読ありがとうございました。これで完結とさせていただきます