東方人狼行軍   作:BATTU

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6話

「・・・」ツーン

 

「・・・」

 

人里から離れ適当な道を歩く霊夢に付いていく

何故か鈴奈庵の後から不機嫌になってしまった。本当にどうしてしまったのだろうか

 

霊夢が不機嫌になりやすくなったのは博麗の巫女の修行を本格的に始めてからだ

主に俺が霊夢以外の人里の人、小さな妖怪や妖精(性別全て女)と話すときが多い

 

「・・・霊夢」

 

「なに、お兄さん」

 

「今度は、どうして怒ってる?」

 

「怒ってないもん」

 

「・・・はぁ」

 

ここまで女という生き物が難しいと思った事はない。ミレニアムのリップヴァーンやゾーリンはさほど難しい奴等ではなか・・・いや、二人も色んな意味では面倒なやつらだった

 

「・・・」ギュ

 

「ひゃ!に、兄さん?///」

 

「少し疲れた。あの木陰で休みたい、いいか?」

 

「う、うん」

 

霊夢の背後から腕を回し、抱きしめるような形で歩くのを止め休憩したいと要求する

霊夢も顔が赤くなっているし無理をさせるのはよくないと判断した。ちなみに今の抱きしめは霊香に霊夢の機嫌を直す方法を聞いた時に「優しく抱きしめてあげれば大丈夫だよ」と言われた為にやっている

効果は期待通りだ

 

木陰に腰を下ろし、その上に霊夢を座らせもう一度抱きしめる

 

「少し眠れ・・・修行の後は休まなければ、体が持たない」

 

「で、でも、まだ明るいと言っても妖怪が出ない訳じゃ」

 

「俺がいる。だから、ゆっくり休め」

 

「・・・うん。分かった」

 

霊夢は身を任せ、小夜の腕の中でゆっくりと瞼をとじ小さな寝息を立てて眠った

 

「・・・」スッ

 

小夜も目をとじ、霊夢を抱きしめたまま眠りにつく

 

風と木々を揺らす音だけが響くなか、木陰の下で眠る二人の姿は誰もが見ても微笑ましく思えるような景色だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、此処は幻想卿

 

 

人里と博麗神社を出た先は妖怪たちの領域

何が起きてもおかしくはない

 

ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・

 

「旨そうな臭いがしたから来てみれば獲物が寝てるとはな」

 

獣道から出てきたのは人の形をなさない、歪な姿をした異形の化け物

 

妖怪だ

 

「しかし、こんな場所で昼寝とは命知らずなものだ。しかもよくみればこの女、スペルカードルールなんて余計なものを立案した博麗の巫女じゃねぇか・・・ちょうどいい、“一人だけ”のんきに寝てるのが悪いんだ」

 

妖怪は前足の爪を高く振り上げ、霊夢に狙いを定める

 

「殺されても文句はねぇよな!!」

 

振り上げた前足を一気に降り下ろし、霊夢に無慈悲な爪が近づいていった

 

 

 

 

 

ザシュ!

 

 

 

 

 

「・・・え?」

 

真っ赤な鮮血が地面を紅に染め上げる

だが、その血は霊夢からのものではない

 

「・・・」スッ

 

妖怪の目の前に立つ深い緑の分厚いオーバーコートを身に纏う白髪の男性

その右手にはあらぬ方向へ曲がった妖怪の前足が握られており、血はその妖怪からのものだった

 

「な、なんだテメー!?」

 

「・・・」グイッ!

 

ガッ!

 

「ぐえっ!!」

 

右手にもった前足を勢いよく引っ張り妖怪を自分の下へ来させ、顔面に蹴りを食らわせる

そしてそのまま曲がった脚を一気に伸ばし、折れた前足をもったまま蹴り飛ばした

 

ブチッ!!

 

勢いよくぶっ飛んだ妖怪。ふっ飛び引っ張られた圧に負けて折れた部分から前足が千切れた

 

「ぐおぉぉぉ!!な、なんだ貴様!俺の邪魔をしやがって!!」

 

「邪魔?・・・お前は何をしたのか分かっているのか?霊夢を殺そうとしただろう」

 

「ぐっ!この妖気、貴様も妖怪だな!ならなんで博麗の巫女に味方する!!そいつは俺たち妖怪の敵だぞ!」

 

「・・・霊夢はこの幻想卿の要、博麗大結界を生み出す博麗の巫女を受け継ぐ後継者。それを殺すとなればお前は幻想卿を敵にまわすぞ」

 

「知るか!人間の血肉と人間からの恐怖を糧とするのが妖怪だ!なのに人里の人間を喰らうなだと!?俺たち妖怪の生きる糧を堂々と奪った博麗の巫女を許せると思ってんのか!」

 

「ましてやスペルカードルールなんてお遊びみたいな決闘法まで生み出して、まだ俺たちを追い込む気だ!いずれ反発する妖怪はわんさか現れる!そんな博麗の巫女に味方をする貴様なぞ妖怪の恥だ!この“博麗の犬”め!!!」

 

「・・・」

 

ぜぇぜぇと妖怪は言いたい事を全て吐き出し、荒れる息を整えていた

 

「・・・言いたい事はそれだけか?」

 

「!!」

 

「下らん戯れ言も聞きあきた。どのみちお前は博麗の巫女を敵に回した・・・殺す事に変わりは無い」

 

博麗の犬

 

そう、今の俺はそう言われてもおかしくない。だからと言って今の俺に化け物の意地も見栄などありはしない

 

あるのは博麗に敵対するものをただ殺す

 

ヘルシングの女、インテグラルの言葉を借りるなら

 

 

『見敵必殺(サーチ・アンド・デストロイ)』

 

 

「そう、見敵必殺(サーチ・アンド・デストロイ)だ」

 

両拳を握りしめ、妖怪を冷めた眼差しで見つめる

その静かで、なお恐ろしい殺気を放つ彼の姿はかつてのミレニアムに所属していたヴェアヴォルフ

 

“大尉”だった頃そのものだった

 

「戯れ言だと!貴様ァァァ!!」

 

もう片方の前足で“大尉”に襲いかかる妖怪

 

しかし、振るった爪は彼を切り裂く事もなく空を切る

確かにとられたはずの目の前の“大尉”は霧状になって姿を隠す

 

「な、なんだ!消えた!?まさか能力持ち・・・!」

 

シュ!ドシュ!!!

 

「ガッ!」

 

気づいた時には既に遅く、鋭い手刀が妖怪の脳を貫いた

 

「・・・終わりか」

 

ズルッと手を引き抜くと妖怪の頭から多量の血が流れ、妖怪の下は赤黒い絨毯が出来上がった

 

「・・・」

 

死んだ事を確認し、霊夢の下へ戻って行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木陰

 

「霊夢・・・起きろ」

 

「ん・・・んー、兄さんおはよう」

 

「あぁ、もう夕方だ。帰るぞ」

 

「んー・・・兄さん、おんぶ」

 

「・・・」

 

まだ完全に起きていないせいか、幼い頃のような口調で両手を上げる霊夢

 

「・・・」スッ

 

「ん♪ありがとう・・・」

 

俺は背を低くし、霊夢を背負って歩きだす

 

「・・・・霊夢」

 

「なに?」

 

「・・・俺の名は、なんだ」

 

「?・・・小夜兄さんでしょ?」

 

「・・・そうだったな」

 

「変な、兄さん・・・スー」

 

「・・・」

 

 

そうだ

 

 

俺はもう“大尉”ではない

 

俺の名は小夜

博麗小夜(はくれい さよ)

 

 

ミレニアムの“戦争犬”なのではない

霊夢と霊香を守るために戦う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“博麗の犬”なのだ




・・・大尉に抱きしめられて昼寝したい

と、言うわけで少しだけ苦手な戦闘と改めて大尉の歩む道を決めました。博麗の巫女、霊夢と霊香に牙を向ける者をただ殺す。今のところ、吸血鬼の旦那と違う形だが同じ道を歩んでるかな

さて、次回から原作の方に入りたいと思います
今からさらに四年たち霊夢が14

幼少期以降まだ出ていない魔理沙やEXルーミアはどうなっているかも次回からわかってきます(というか普通に出てきます)

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