東方人狼行軍   作:BATTU

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「さぁ、謎の白狼大天狗犬走楓との勝負だ。まぁ、大尉が負けるはず無いでしょ」



60話

「犬走・・・楓?」

 

 

その白狼天狗の口から犬走と確かに聞いた

その名を聞く限り、椛との関係者であるのは確かだが椛に兄弟姉妹は居ないはず

 

 

「同じ名を聞いた事はあろう?犬走椛、あの白狼天狗は私の実の娘だ」

 

「・・・椛の母親」

 

「そうだ。博麗の狼よ、ここより先はいかなる者の侵入も許されぬ。即刻山を降り、自身の領地に戻れ」

 

「・・・椛と話がしたい」

 

「それは出来ぬ。貴様は娘と多くの同族たちに信頼を得ているが所詮は山の外から来た部外者だ・・・もう一度言う、すぐにこの山を降りよ」

 

「・・・」

 

 

やはり、予感は的中した。椛の親の事はあまり聞いた事は無いがまさか母親が大天狗の1人とは

 

白狼天狗でありながらも大天狗の名を与えられていると言うことはそれだけの実力を持っているという事。だが、こちらも退けない理由がある

 

 

「・・・」スッ、チャキ!

 

 

剣を鞘から引き抜き、戦闘態勢をとる小夜

 

 

「・・・それが答えか。良かろう、実力を持って排除する」スッ

 

 

背に背負った鞘に納められた剣を引き抜こうとする楓

 

 

「お待ちください、大天狗様」

 

「・・・なんだ、夜宵よ?」

 

 

しかし、夜宵がこれを止め楓は跪く夜宵に視線を落とす

 

 

「ここはこの夜宵におまかせ下さい。私とて大天狗様程とはいきませぬがこの二番隊を預かる身、あの者は私めが仕留めて見せます」

 

「・・・良かろう。やって見せよ」

 

「はっ!」

 

 

引き抜こうとした剣を鞘に戻し、楓が2歩後に下がってから夜宵は剣を引き抜いて小夜に向かって見おろしていた崖から飛び降りた

 

 

「さぁ、死ねぇ!」

 

「・・・ッ」

 

 

ガギンッ!!

 

 

2人の剣がぶつかりあい、火花が飛び散る

1歩下がって態勢を立て直してから夜宵は更に剣を振るう

 

小夜はその猛攻を的確に剣と盾で防ぎ、時には回避する

 

 

「ふははっ!どうした!?ビビって攻めにでれねぇか小夜!」

 

「・・・」

 

 

夜宵の挑発紛いの台詞にも特に動じることもなく、小夜は守りに徹した

それは別に夜宵の猛攻が激しく反撃ができないという訳ではない。観察しているのだ、夜宵の動きをそして剣を振るう太刀筋を

 

 

(・・・大雑把だ。力はあっても剣はなんの考えもなく力任せに振るっているだけ・・・これでは妖夢どころか美鈴に剣技を教わっているチルノにも劣る)

 

「ハハハ!あの時、恥をかかせた事を後悔して死にやがれ!!博麗小夜ー!!」

 

 

大振りに上段から振り下ろされる剣

 

 

「・・・」ガッ!

 

「なっ!?」

 

「・・・」ブンッ!

 

「ふぉッ!!」

 

 

バキッ!ドゴッーーーーーーーンッッ!!

 

 

振り下ろされた剣を手に持つ柄の部分を蹴り飛ばし、隙を見せた所を妖気を溜めた反対側の脚で胴体に蹴りを入れ岩壁に叩き込んだ

 

 

「がっ・・・ぁ」ガラガラ、ドサッ

 

「・・・お前が誰だが知らないが、その程度じゃあ俺には勝てない」

 

 

振り返る事もなく、そう呟いた小夜は次に犬走楓の方に目をやる

 

 

「流石は博麗か。夜宵もそれなりに強い白狼天狗だが、これでは1番隊の者も勝てるか怪しいところだな・・・では次は私が相手だ」

 

 

鋭い眼光のまま、鞘から剣を引き抜きついに大天狗は地を蹴った

それと同時に小夜も地を蹴り、犬走楓に向かっていった

 

 

ガギンッ!!

 

 

互いにぶつかり合う剣。楓は自身の一撃を無表情で受け止めた小夜に対し「ほぅ・・・」と呟き関心する

 

小夜は特に思う事も無く、既に次の行動に出ていた

 

左手に持つ盾を殴る様に振るう。その行動も楓は見切っており盾で防ぎ反撃する

 

どちらも1歩も引かぬ激しい攻防。その戦闘の様子は小夜を囲んでいた夜宵の部下たちも目を瞠るばかりだった

 

それは大天狗の称号を与えられた白狼天狗の戦いを間近で見ているからか、それともその大天狗と小夜が互角に戦えているからか

 

 

(強い・・・これが大天狗の力か・・・だが、こんな所で止まっていられない)

 

 

ダッ!

 

 

構えも無く、一気に楓に向かって突っ込む小夜

 

 

「構えも無しに、諦めたか?・・・もしそうなら、少しがっがりだぞ」

 

 

上段に構え、迎え撃つ準備に入った楓。そして妖気を込めた一撃をそのまま小夜に向けて振り下ろす

 

 

「・・・」タッ

 

「!、なに?!」

 

 

上段から振り下ろされた剣の切っ先を当たらないギリギリの所でバックステップで避ける小夜

そしてそのまま左手に持つ盾を相手に向かって投げつける

 

 

「くっ!」

 

 

突然のことに思考が追いつけず、すぐに盾で防ぐ楓。その一瞬の間、彼女の視界は盾によって遮った

 

 

「・・・」スッ

 

「ッ!」

 

 

次に彼女が見たのは右足を高く上げる小夜の姿だった

 

 

(くる!)

 

「・・・」ブンッ!

 

 

真っ直ぐに上がった右足を小夜は容赦なく犬走楓に振り下ろした

楓は盾を捨てその場から離れる

 

 

ガゴンッ!!!

 

 

盾は砕かれ、振り下ろされた右踵がついた地面が陥没し小さなクレーターを作り上げた

 

 

「じ、地面が・・・」

 

「なんて力なんだ」

 

「あの楓様とやりあうなんて」

 

「これが博麗の守護者の力・・・」

 

 

「・・・」スッ

 

 

周りがざわめく中、距離をとった犬走楓に視線を戻す小夜

 

 

「・・・ふふ」

 

「?」

 

「ふはははははは!」

 

 

愉快そうに笑い声をあげる楓

それは相手を侮辱してる訳でも自棄になってでもない

 

 

「ふふふ、なるほど。これ程とは思わなかったぞ、これは評価を改める必要があるな。見事だ博麗小夜、まさに博麗の巫女の守護者にふさわしい力だ・・・なればこそ」チャキ

 

「・・・ッ」

 

 

犬走楓は剣を背にある鞘に戻し、両腰に備わったまさしく日本刀その物を思わせる刀2本を引き抜き、クロスさせる様に合わせる

 

 

「私も見せよう。大天狗の名に恥じぬ為に、全力を!」

 

 

その言葉と共に彼女の両刃に一陣の風が走った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃

 

 

「お邪魔するわよ引きこもり記者さーん」

 

「毎度毎度言うけどさ、勝手に家を休憩所として使わないでくれる?」

 

 

イライラした様子で携帯端末の様な物を片手に記事を書く鴉天狗の少女

 

彼女は姫海棠はたて

射命丸文と同じ鴉天狗で花果子念報という新聞の記者だ

 

 

「いいじゃないの。ていうか少しは出歩いた方がいいわよ、いつまでも念写に頼った記事なんて売れないわよ?」

 

「うっさいわよ。アンタのゴシック記事よりはだいぶマシよ」

 

「あやや。そんな記事に負けてる花果子念報なんて書いてる記者さんはどこの誰でしょうねぇ〜?」

 

「こ、こいつ〜」

 

「オー、コワイコワイ」

 

 

そんな2人の鴉天狗のやり取りを気にすることもなく俯いて考えている犬走椛

 

 

「で、椛は一体どうしたのよ?」

 

「まぁ、ちょっとあってね・・・実はねぇ」

 

「?」

 

 

文は、はたての耳元にひそひそと先程まで自身の祖父から聞いた内容を丸々話した

 

 

「は?ちょっと待ってよ!それマジなの?!」

 

「信じたくはありませんが私のお爺様は冗談は言いますが、くだらない嘘は言わないわ」

 

「・・・ちょっとまって、これを聞かされた私って」

 

「・・・」ニヤリ

 

「アンタ巻き込んだわね!?」

 

「さ、一緒にどうするか考えましょうか」

 

「ふざけんじゃないわよ!」

 

 

理不尽なことに巻き込まれたはたては文の両肩を掴んで前後と揺さぶるが文は涼しい顔でふふふと笑うだけであった

 

そんなやりとりをしてると1人の白狼天狗がはたての家に上がり込んできた

 

 

「突然の訪問すいません!」

 

「今度は何よ?!」

 

「申し訳ありません!こちらに椛隊長がいるとお聞きしまして!」

 

「む、私は此処だ。なにがあった?」

 

「た、隊長!妖怪の山麓にて博麗の者が大天狗、犬走楓様と交戦中との報せが!」

 

「「!!」」

 

 

その報せを聞き、ついに椛の表情は絶望その物となった

 

 

「あー、恐れていた事が・・・くっ!」

 

 

椛は立て掛けた剣と盾を持ち、はたての家を飛び出した




「まぁ、知ってた(夜宵の扱いが)」

さて、そろそろ前半が終わるかな

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