東方人狼行軍   作:BATTU

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28話

カンッ!キンッ!

 

 

ガンッ!!キリキリキリッ

 

 

「やりますね。素人と言っていましたがそんな事は無い、充分本物とやれる実力はあるようです」

 

「・・・」

 

 

雪が降りしきる白銀世界の中、刀と剣がぶつかり合い赤い火花が飛び散る

刀を振るう彼女は魂魄妖夢、出会ったのはつい最近でそこまで親しい関係でもない

 

だが、何故か妖夢は後で様子を見る1人の妖精を追っていた。庇い始めたと同時に妖夢は刀を抜刀し斬り掛かってきたのだ

 

 

「なぜ・・・あんな妖精を狙う?彼女は無害だ」

 

「確かにただの妖精でしたら狙う必要はないでしょう。ですが、春告精であるならば放って置くわけにはいかないのです」

 

「・・・なに?」

 

 

春告精。だとすれば、あの子がリリーホワイトなのか

それでもまだ分からない事がある

 

 

「なぜ、お前が春告精を狙う?」

 

「正確には春告精が持っているものが本来の目的ですが、邪魔されても面倒なので捕まえるだけです。ふんッ!」

 

 

ギンッ!!

 

 

小夜の剣を弾き、即座に後へ後退し構えを解く

腕力では負けないだろうが技術面では相手の方が勝っているようだ

 

 

「小夜さん。貴方は私にとって恩人の方です、今すぐ春告精をこちらに渡して下さるなら手は出しませんし春告精にも手荒なマネは致しません。ですが、もし断るならば・・・貴方を斬ります」

 

 

刀の切っ先を向けて交換条件を提案する妖夢

渡せば見逃す、断れば倒して連れていく。なんとも分かりやすい提案だ

 

 

「・・・お、お願い。助けて」クイッ

 

 

涙目で見上げながら左腕の裾を掴み助けを願うリリーホワイト

答えは既に決まっている

 

リリーホワイトの頭を軽く撫でた後、前に出て剣を持ち直し構える

 

 

「それが答えですか。では・・・」バッ!

 

 

その刹那、小夜の眼前にまで一気に詰めてきた妖夢

 

速い。並大抵の者でこれだけ速く接近出来るものはなかなかいない

ゼーレヴェ作戦で乱入してきたヴァチカン特務局第13課イスカリオテに所属していた刀を使う女の信者と良い勝負が出来るかもしれない

 

だが・・・

 

 

「ッ!なに!?」

 

 

この場にいる誰よりも、終わったと思っていた妖夢が突如驚愕の声を上げる

確かに捉えたと思っていた筈の刃は小夜には届いておらず、握っていた刀は後方に突き刺さっていた。変わりに自身の首元には小夜の剣が向けられている

 

何が起きたのか、単純明快な事

 

小夜は妖夢が接近してきた瞬間、刀を振るうよりも更に速く脚で妖夢の刀を上空へ蹴り飛ばした。ただ、それだけだ

 

 

「・・・」

 

 

妖夢を見下ろす小夜の目はお前では勝てないと伝える様にとても冷たい視線だった

妖夢は冷汗を流しながら数秒固った後、突如霊魂から弾幕が撃ち出された

 

 

「ッ・・・」

 

 

弾幕は周りの地面の雪に放たれ、降り積もっていた雪が跳ね上がり後退する小夜

弾幕で雪を跳ね上がらせ雪幕にして視界を妨げたようだ

 

雪幕がおさまった頃には既に妖夢の姿は無く、蹴り飛ばした刀も消えていた

 

 

「退いたか・・・捕える事は出来なかったが、まあいい」

 

 

剣を鞘に納め、リリーホワイトの元に向かう小夜

彼女と目線を合わせるように身を低くする

 

 

「・・・大丈夫か?」

 

「うん・・・あ、ありがとう。私はリリーホワイトです、貴方は?」

 

「博麗小夜」

 

「博麗?もしかして博麗の巫女の関係者ですか?」

 

「まぁ・・・そうだな。外は危険だ、博麗神社に行くぞ」

 

「い、いいんですか?」

 

「春告精のお前に聞きたいこともある。それにどれくらい外に居たかは知らないが寒かっただろう・・・神社なら安全だし、暖もとれる」

 

「・・・分かりました。お願いしま、す・・・うーん」フラッ

 

「・・・」スッ

 

 

長い間追われていたのか、それとも別の事かどうかは知らないが随分疲れていたようだ

安心して気が緩み今までの疲労が一気に現れたみたいだ。体に負担が掛かり過ぎて気を失った

 

とりあえず彼女を抱えて神社に戻る事にした

雪の寒さは未だに衰えは知らないがリリーホワイトが持っている光が唯一暖かさを放っていた

 

妖夢が本来の目的で狙っているこの光は一体なんなのだろうか?

 


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