霊香が部屋を後にしてから数時間が立つ。だが、まだ外は明るい
未だに帰ってくる感じはしない
「・・・」
「ふふふーん♪」
横になっている俺に寄り添うように霊夢がくっついてくる。少し話しただけで懐かれたようだ
話と言っても本当に些細なことしか話していない。好きなものや遊びとか子供が話しそうな事ばかりだ
どうせ、何も出来ない。だからこの子の話相手になってやろうと思った、特に他意は無かった
「ねえねえ」
「どうした?」
「じんろうってなにができるの?」
「そうだな・・・狼になれる、かな」
「ほうとう!ねえねえ、なってみて!」
・・・特に獣化する必要は無いが、今思えばこの幼い体になってから力が扱えるか不安があった。ここが何処か分からない以上なにかあってもおかしくない・・・試すだけ試してみよう
大尉は身にまとっていた知らない服を少し緩め、全身に力を込め獣化を始めた
最初に両手両足から白い獣毛が生え始め、爪も長く鋭くなる。体と顔の骨格も変わり始め数分もしないうちに小さな白狼の姿になった
・・・どうやら力は特に変わった所はないようだ。これなら霧に変わる能力も問題ないかもしれない・・・ただ、この小さい体では体力が劣っているせいか今の状態を保つのが少々辛く感じる
万が一の為に体を鍛えることも考えて置かないといけないかもしれないな・・・まあ今は
「すごい!かわいいー!もふもふしていい?もふもふ」
霊夢が満足するまで相手をしてやる事だ。もふもふとはなんだろうか?よくはわからないが好きにさせてやろう
顔を縦に振ってとりあえず許可した。だが、俺はこの時の安易な許可を後悔することになった
「わーい!もふもふだー!」
ガシッ!
「ッ!!」
いきなり霊夢が抱きついて背に顔をうずめてきたのだ。そのまま顔をこすり付けるように左右に顔を動かす
い、痛い!痛い!!霊夢は喜んでいるが実際やられている俺は背中がすごく痛い!
「おなかぽふぽふ。しっぽふわふわ」
そのまま腹と尻尾を触る霊夢
ぬっ!くっくく!腹と尻尾を触られると逆にくすぐったいのだ。だが一度手を休めまた顔を、い、いだだだだッ!!
この時俺はもふもふをやられる苦しさを身を持って知ることになった
痛いと思ったら次はくすぐられ、また痛い思いを味あわせられる・・・今の体で獣化するのは控える事ともふもふをくらわない策を考えるようにとこの日をさかいに誓った
――――――――――
数分後
「スー・・・スー・・・」
「・・・・」
返事が無い疲れているようだ
もふもふ行為が終わり、やっと解放された。霊夢は満足したのか眠ってしまい、俺は元の姿に戻り疲労困憊で倒れていた
「・・・ふっ」
今思えば、戦い以外で疲れたと思った事はなかった。ここに来てわからない事ばかりだが俺がこの見知らぬ場所に目覚めたのは何か意味がある筈だ
これから色々知るだろう。今はこの状況に身を任せて生きてみるとしよう
俺は眠る霊夢に掛け布団をかけて、頭を撫でた
おまけ
「霊夢、帰ったぞ」
どうやら、霊香が帰ってきたようだ
「霊夢?この部屋に・・い、る・・・」
部屋に霊香が入ってくると何故か顔の表情を固め、数秒動かなくなった。どうした?
「・・・霊香?ッ!!」
名を呼んだ瞬間、霊香から凄まじい殺気を放ち始めた。い、一体どうしたんだ?この殺気からかなりの実力を持っている事を思わせた
「お前・・・娘の霊夢に何をしようとしているんだ?」
拳を握り締め、プルプルと震えている霊香
俺の事を言っているのか?い、いやだが霊夢に何をって・・・やられたのは俺のほうなんだが
この時の大尉は今、自分の格好に気づいていなかった・・・裸体であることに
例え、今の大尉が小さな子の姿でも霊香は冷静さを失い混乱していた
「ま、まて霊香・・・何を怒って・・・」
「歯をくいしばれぇぇぇ!!!」
バキッ!!
「ごふっ!!」
力強い右ストレートが頬に直撃し、俺は床に倒れる
本当に・・・俺が何を、したんだ・・・・・
この後、俺は気を失い次の日まで起きなかった
・・・厄日だ
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