東方人狼行軍   作:BATTU

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24話

青年、少女下山後

 

 

「・・・」

 

「どうした小夜の兄ちゃん?」

 

「・・・烏の鳴き声が聞こえた気がした」

 

「そうか?私は何も聞こえなかったぜ」

 

「・・・気のせいか」

 

「まぁ、もうすぐ夕方になるし烏の鳴き声の一つや二つ聞こえてもおかしくはないんだぜ・・・そういえばその服装見て思ったけどいつもの服は?」

 

「いつも・・・ッ」

 

「あちゃー」

 

「後で取りに行く」

 

 

いつものオーバーコートと規格帽を持ってき忘れたしまった小夜

とりあえず、明日はいつもの甚平で過ごす事になるだろうと思いながら魔法の森の入口にある霖之助が経営する香霖堂にたどり着く

 

 

「あー、ついに来ちまった」

 

「・・・」ガラガラ

 

「いやぁ、いらっしゃ・・・もしかして小夜くんかい?」

 

 

眼鏡をかけ直し、小夜かどうかを聞く

いつものオーバーコートか甚平の姿しか見た事の無い彼にとって一瞬白狼天狗がやって来たのではないかと勘違いしつつあった

 

 

「・・・」コクッ

 

「驚いたよ。しかし、どうしたんだいその姿・・・もしかして博麗神社を出て妖怪の山に移り住むのかな?」

 

「・・・」フルフル

 

「こうりん、仮にそんな事になったら霊夢が泣き出すかもだぜ」

 

「そうだね、ありえなくは(ガラッ!)いらっしゃ・・・おや」

 

「・・・?」

 

 

後から聞こえた勢いよく扉が開く音に気が付き振り向くと見なれた脇出しの赤白巫女服を来た少女がやって来た

3人は彼女が霊夢であると一瞬で分かった

 

 

「・・・霊夢?」

 

 

入って来たがその後、無言で小夜に下を向いたまま近づく霊夢

様子がおかしく思った小夜は屈んで霊夢に視線を合わせた

 

 

「・・・お兄ちゃん」グスッ

 

「ッ、れ、霊夢?」

 

「出てっちゃうの?私とお母さんを置いて行っちゃうの?」

 

「・・・」フルフル!フルフル!

 

 

完全に勘違いしてしまっているのを認識し、全力で否定する小夜

 

 

「小夜の兄ちゃんが黙ってあんな首を左右に振って否定する姿は初めて見た」

 

「まさか、来てるとは思わなかったな。霊夢、先程のは冗談だよ、小夜くんはちゃんとし否定してたから」

 

「本当に?」

 

「・・・」コクッ!コクッ!コクッ!

 

「そう、なら良かった!」ケロッ

 

「切り替えはえよ」

 

 

先程まで涙目だった筈の霊夢はケロッといつもの笑顔を見せる

小夜は分かってもらえ、笑顔に戻ってもらった事に少し安堵する

 

 

「で、文とのOHANASIは終わったのか霊夢?」

 

「ええ、まぁ違うって事は分かったし離してやったわ。その後は兄さんの妖気を追って来たけど、そっちはもう終わっちゃったのかしら?」

 

「あぁ、とりあえずな」

 

「大変だね、お兄ちゃんっ子の妹を持つのは」

 

「・・・」

 

 

確かにシュレディンガー以上にあそこまで懐かれた事は初めてだ

だが、今の霊夢と霊香の傍に居るからこそ今の俺がいる。かつてまで闘争に身を置いてきた俺がこうして居られるのも一番の理由が霊夢が傍に居たからこそだろう

 

・・・しかし、未だに自身の中で疼く闘争心は消える事はない。こればかりはどれだけ時が経とうと忘れる事は無いだろう

本音を言えば、今の環境に居続けるのは良い事なのだろうか?幻想郷に来てしまった理由はともかくとして俺が今もこの幻想郷に留まっているのは霊香から帰る場所も無い俺に居場所と名をくれた大きな恩があるからこそだ

 

俺は・・・2人が居なくなった後の幻想郷に留まる理由があるのだろうか?

 

 

「・・・霊夢、帰ろう」

 

「うん」

 

「・・・宴会、来るか?」

 

「当日は店内の整理が終えてから行くから少し遅くなるかもね」

 

「分かった・・・魔理沙、次はないからな」

 

「ッ、ありがとう兄ちゃん!」

 

 

香霖堂を出て霊夢と二人で帰る事にした

霊夢はいつもどおりに腕に抱きつく形で並んで歩く

 

 

「へぇ、つまりその椛って白狼天狗から服を貰う約束があったんだ」

 

「実の所・・・言われるまでわすれていた」

 

「クスッ、兄さんって以外と抜けてるね」

 

「・・・そうだな、気をつけよう」

 

 

こうしてただ霊夢や他の皆と話すだけであの頃を一瞬忘れてしまう

 

ミレニアムの兵、ただ少佐の命令に従い戦い続け、敗れて死に、たどり着いた先はヴァルハラでは無く幻想郷

ただ、過去を忘れ生きたい様に生きれば良いのならなぜ過去の記憶は無くならずそのままなのか

 

今更ながらこの世界は俺になにを望むのだろうか?

 


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