東方人狼行軍   作:BATTU

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21話

数分後

 

 

「・・・///」

 

 

「・・・大丈夫か?」

 

 

「え、えぇ。大丈夫と言えば大丈夫・・・かな」

 

 

未だに頬を赤く染めながらも妙に疲れきった様な表情でいる影狼

ただ匂いを嗅いだだけで何故影狼が疲れているかは小夜には全く分かっていないが、とりあえず自分の責任だと解釈し頭を下げて謝った

 

謝られ大丈夫だからと小夜にいい聞かせる影狼

少し甘いようにも思えるが彼女自身もこの広い幻想郷で自身と同じ様な妖怪に近い小夜と出会えて言葉では言わないが内心嬉しいのだ

 

 

「ごめんなさい。遅くなっちゃって・・・どうしたの影狼?顔が赤いわ」

 

 

「だ、大丈夫!何でもないから!」

 

 

「そ、そう?ならいいけど。じゃあ小夜くん、私たちも参加するって事になったけど宴会を開く日は何日?」

 

 

「明後日だ。早く来ても構わないが本格的になるのは多分夜だ」

 

 

2人に宴会が開く日を教えて次の目的地である紅魔館へと向かおうとした時だ

 

 

バーンッ!

 

 

「ッ・・・」

 

 

いきなりの轟音が鳴り響き、音のする方角に向く

 

 

「な、なに?」

 

 

「あの方角は確か異変を起こした紅魔館のはずだけど、誰かが弾幕勝負でもしてるのかしら?」

 

 

「・・・じゃあ、俺は行く」

 

 

「えぇ、気をつけてね」

 

 

影狼とわかさぎ姫の下を後にし、とりあえず紅魔館へ走って行った

 

 

「・・・一体誰が、まさかフランが・・・急がないと」

 

 

頭の中に浮かぶ悪い予想はフランが暴走したのでは無いかという事

 

確かに出会ってからまだ幾日も経っていない為、心がまだ不安定かも知れない

それはともかくとして今紅魔館には魔理沙が向かっている、何かあっては大変だと小夜は速く走る

 

 

門前にたどり着くがいつも此処に居る筈の美鈴はここから玄関まで伸びる道の真ん中に大の字で倒れていた

 

 

「・・・美鈴、大丈夫か?」

 

 

「さ、小夜さん・・・ぞ、賊が地下図書、に・・・か、変わりに排除をお願いしま・・・ガクッ」

 

 

それだけをいい残して意識を失った美鈴

 

 

「・・・仇は取る」

 

 

とりあえず美鈴を玄関にまで連れてって横にさせてから小夜は紅魔館の中に入り地下図書館へ向かった

 

 

「・・・あ、別に死んでは無いですからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地下図書館

 

 

「ヘっへ~、てなわけで弾幕勝負で勝ったからここの本を借りてくぜ。死ぬまでな!」

 

 

「ふざけないで、それは借りるんじゃなくて、ゴホッゴホッ!盗んでんのよ、ゴホッ!」

 

 

「人聞きの悪い事言うなぁ。盗んでんじゃなくて死ぬまで借りてくだけだぜ」

 

 

「それを盗むって言ってるのよ泥棒、ゴホッ!(もう、こんな時に発症さえしなければ負けなかったのに)」

 

 

「まぁ、勝ちは勝ちだからな!じゃあな(ガシッ)・・・へ?」

 

 

箒に跨り今まさに飛ぼうとした魔理沙だったがその瞬間、背後から帽子ごと頭を掴まれる感触が伝わった

 

 

「・・・ま、まさか」

 

 

ゆっくりと首を動かして後に振り向く

 

 

「・・・」

 

 

「・・・さ、小夜の兄ちゃん」

 

 

「・・・」ジー

 

 

「えっと、あの・・・」

 

 

「・・・・・・」ジーーー

 

 

「な、何か言ってくれると嬉しいんだぜ」

 

 

「・・・・・・・・・」ジーーーーーー

 

 

(あ、これ駄目かも)

 

 

何も喋っていないが、小夜の冷たく自分を見下ろすその威圧感は半端無いものだった

 

 

「・・・魔理沙」

 

 

「はい!」

 

 

「歯を食いしばれ」

 

 

 

ドガッ!!

 

 

 

「みゃあ!!」

 

 

強烈なゲンコツを受けて頭を両手で押さえながら涙目で悶える魔理沙

さすがの魔理沙も小夜の本気に近い拳には耐えきれないようだ

 

 

「・・・大丈夫か?」

 

 

「えぇ、ありがとうゴホッゴホッ!今、喘息の性で上手く喋れゲホゲホ、無いけど。」

 

 

「・・・何があったかは入口辺りで聞こえていた。後でよく言っておく」

 

 

「んっ・・・何とか治まった。えぇ、そうしてくれると助かるわ、何せいきなりやって来て本を持ち出そうとしたのだからね」

 

 

「コイツは連れていく・・・手助けはいるか?」

 

 

「大丈夫。気絶してるこぁとここぁを起こして片付けさせるから」

 

 

「・・・」コクッ

 

 

分かったと頷いて魔理沙と箒を持って図書館を後にした小夜

魔理沙は引きずられながらまだ頭を押さえていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レミリアの部屋

 

 

「ようこそお兄さま。顔を出してくれて嬉しいわ・・・で、大体は能力で知ってるけど敢えて聞くわ。そこの白黒魔法使いはどうしたの?」

 

 

「悪さした・・・お仕置きのゲンコツ」

 

 

「う~・・・まだ痛むぜ」

 

 

「自業自得でしょ。それに泥棒紛いな行為を働いた罰としては安いものじゃない?」

 

 

「お前は小夜の兄ちゃんのゲンコツを受けたことが無いからそう言えるんだ。こうりん何かとは比べ物にならないくらいだぞ」

 

 

「・・・霊香は俺より痛いぞ」

 

 

「いや、霊香さんはもう規格外だぜ。女性が出すような拳じゃあねぇよ」

 

 

そんな雑談を終えた後、小夜は本来の目的に移る

 

 

「ふーん宴会ね。異変を起こした張本人である私達が参加するのもおかしな話だけど、フランも喜ぶだろうし是非参加させてもらうわ。ところで霊夢への伝言を伝えてくれたかしら?」

 

 

「・・・ッ、すまない。まだ言ってない」

 

 

帰って来てから霊夢に構われたりしてその対応や毎日行う鍛練などで小夜の頭の中からほとんどその話が抜けていた

 

 

「あらあら、お兄さまもぬけている部分があるのね。まぁいいわ、宴会時に伝えればいい事だし」

 

 

「なぁ、伝言ってなんだレミリア?」

 

 

「あぁ、ただの挨拶みたいなものよ“これからよろしく”ってね」

 

 

「お、おぅ。そうか(なんか随分強調してるようないい方だったな)」

 

 

「・・・そろそろ行かないと。フランによろしくと言っておいてくれ」

 

 

「えぇ、分かったわ」

 

 

「じゃ、じゃあ、私もお暇(ガシッ!)ぬぐっ!」

 

 

「誘いを伝え終えたら・・・説教だ」

 

 

「だよなぁ~・・・」

 

 

逃げ出そうとした魔理沙の頭を鷲掴みして逃がさないようにしながら紅魔館を後にし、次は妖怪の山へと向かっていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃

 

 

「お願いします~勘弁してくださいよ~霊夢さーん(泣)」

 

 

両手両足を縛り逆さまで木に吊るされた状態で泣きながら許しをこう射命丸

 

 

「ふーん、山から出た白狼天狗だと間違えて攫ったと」

 

 

「ですから攫ったんじゃないんですってば~」

 

 

「・・・まぁいいわ。あんたが兄さんに気がある訳ではないのも分かったし、下ろしてあげるわよ」

 

 

「・・・霊夢さん。一ついいですか」

 

 

「何よ、改まって?」

 

 

「霊夢さんのお兄さん、小夜さんは外来の妖怪、しかも人狼なんですよね」

 

 

「えぇそうよ。それがどうしたのよ?」

 

 

「人狼という種族は確かに強い部類の妖怪に入ります。中には吸血鬼を殺せるなんて輩も居たという程です・・・小夜さんは本当に何者なんでしょう」

 

 

「はぁ?言っている意味が分からないわよ、簡潔にいいなさいよ」

 

 

先ほどまで泣きわめいていたハズの射命丸の表情は真剣そのものだった

 

 

「小夜さんはその時に1度だけ成人の白狼天狗の男性と模擬戦をした事があるんですが、彼は勝ったんです。しかもその時に見せた動きは通常子供が出来ような動きじゃなかったんですよ・・・まるで幼少の頃から戦い方を熟知していたかのような」

 

 

「ふーん、あっそう」

 

 

「あっそうってこちらは真面目に聞いてるのに!?」

 

 

「異常に見えるからなに?兄さんは今も昔も変わらない私の大切な家族よ。これはこの先も一生変わらない事実よ」

 

 

「・・・ふぅ、兄さん思いな人ですね。分かりました、これ以上は何も聞きませんよ、という訳で早く下ろしてくれませんか?」

 

 

「はいはい・・・ところでその模擬戦後は何かあった?」

 

 

「まぁ、白狼天狗の子供達からかなり人気はありましたね。好意を持った女の子たちもそれはそれはたくさん・・・ハッ!」

 

 

今更になってから気づく射命丸だが時は既に遅く目の前には怒気を放つ霊夢の姿があった

 

 

「へぇー、それは知らない話ね。ちょっとその辺の話も聞かせてもらおうかしら?」

 

 

「あやーーー!!(やぶへびでした!!)」

 

 

 

 

 

 

「ズズズ・・・お茶が旨い」

 

 

泣きわめく烏と自分の娘の姿を見ながらのんびり茶を啜る霊香だった

 

 

 


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