東方人狼行軍   作:BATTU

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20話

博麗神社を後にし紅魔館へと向かう小夜と魔理沙

 

 

飛ぶ手段が無い小夜は当然歩き、そんな魔理沙は小夜に話をするために低空飛行で隣に並んでいた

 

 

「なぁ、小夜の兄ちゃんと文って結局どう言う関係なんだ?誘拐とか聞く限りあまり良い関係じゃないのは分かるぜ」

 

 

魔理沙が切り出した話は小夜と射命丸文という烏天狗の妖怪との関係だ

 

 

「・・・幼少の頃に1度だけ、神社を出て辺りを探索していた事があった。その時に文と会ったのだが俺を妖怪の山から出た白狼天狗の子供だと勘違いしてそのまま持って帰られた」

 

 

「うわぁ、傍から見たら確かに誘拐だな。まぁ、小夜の兄ちゃんの狼の姿から考えてもまさに白狼だから間違えられるのは有り得なくは無いけど・・・けど、あの文が間違えるか?」

 

 

「そして1日だけ妖怪の山で過ごしていた訳だが、文は新聞の編集で忙しいと言って俺を自分の部下である白狼天狗に預けてな。それが妖怪の山にいる知り合いだ」

 

 

「持ち去った上に世話は押し付けたのかよ」

 

 

小夜の話を聞き、魔理沙の射命丸文に対する評価がどんどん下がっていった

魔理沙にとっては捏造した新聞なんて書いてる射命丸文に対しては最初から好印象など持ち合わせて居なかったが

 

 

「霧の湖・・・もうすぐか」

 

 

小話をしていたら、もう湖にたどり着いた2人

 

 

「あ、そうだ。確か霧の湖にも知り合いいるって言ってたし先に誘って来たらどうだ。私が紅魔館に行って伝えておくぜ?もう紅魔館に行かずに別の所に回れるし」

 

 

「それは嬉しい。だが、顔を見せようとも思っていたから寄るつもりではいる」

 

 

「(・・・く、ダメか)分かった。じゃあ先に行ってるぜ」

 

 

「あぁ、頼んだ」

 

 

そう言って魔理沙は飛んで真っ直ぐ紅魔館を目指し、小夜は知り合いを探すために歩きだす

 

 

(ちっ、小夜の兄ちゃんを少しだけ退ける事は出来たが時間は多くない。さっさと終わらせないとな)

 

 

にししっと悪巧みをするような笑いをした後、急ぎ紅魔館へと向かう魔理沙

そんな魔理沙の企みも知らず小夜は湖の周りを歩く

 

 

暫く湖を見渡しながら歩く事数分後

 

 

「・・・居た」

 

 

「あれ?小夜くんじゃない。久しぶり」

 

 

そこには上半身には緑の和服に身を包み、下半身は魚の尾の様な姿をした妖怪

彼女は人魚でありこの霧の湖に住まうわかさぎ姫

 

その隣には長いストレートの黒髪に狼の耳を生やしたこの幻想郷で最も仲間に近い狼女の今泉影狼

 

 

「小夜、最近顔を出さなかったから心配したわ。草の根妖怪ネットワークの集まりにもなかなか来ないし」

 

 

「鍛練や異変解決もあってな・・・悪かった」

 

 

「べ、別に謝らなくてもいいわよ!その、暇があったらでいいんだし」

 

 

「ふふふ、それで今日はどうしたの小夜くん?」

 

 

「今度、異変解決の祝いに宴会をやる。2人も来ないか?」

 

 

「宴会?異変って前の紅い霧の件よね。別に何もしてない私達が参加していいの?」

 

 

「霊香、知り合いなら誰でも呼んで構わないと言った。だから誘った・・・で、どうだ?」

 

 

小夜の誘いに少し悩む影狼たちだがすぐに答えを出した

 

 

「まぁ、偶にはいいかなそういうのも。わかさぎ姫は私が連れて来るし」

 

 

「でも私は人魚だからちょっと大変かもしれないよ」

 

 

「わかさぎ姫が来ても大丈夫。大丈夫な様に準備はした」

 

 

「って言ってるし、小夜を信じて参加してみる?」

 

 

「・・・じゃあ、行ってみようかな」

 

 

「そうか・・・嬉しい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オマケ

 

 

「影狼」

 

 

「ん?なんだい?」

 

 

話を終えてわかさぎ姫が少し湖の中へ潜って行ってから影狼に話を振る小夜

 

 

「“また”いいか?」

 

 

「あ、あぁ、あれね・・・まぁいいわよ」

 

 

「ありがとう」

 

 

感謝をした後、影狼の目の前に立ち顔を近づける小夜

途中で小夜の鼻に人差し指を当てて止めた影狼は頬を赤く染めながら言った

 

 

「あ、あまり長くはしないでよ///」

 

 

「・・・」コクッ

 

 

頷いた後、指をどけて更に近づく小夜

そして、影狼の首元近くでスンスンと鼻を鳴らしながら匂いを嗅ぎはじめた

 

 

小夜はただ匂いを嗅いでいる

それはまるで影狼という存在が居るという事を確認するかのように・・・自分と同じヴェアヴォルフが居ると確かめるように

 

 

彼が元居た世界、まだ名が無かった世界には彼以外にヴェアヴォルフは存在しなかった

 

彼は孤独だった

かつてこそ少佐に拾われミレニアムという共に戦った仲間が居た

 

 

それでも彼には“同じ種族と言う仲間”は居なかった

 

 

この幻想郷にやって来て自分と同じヴェアヴォルフに近い狼女の今泉影狼という存在は小夜にとっては大きな存在の一人だ

 

 

彼はただ嬉しいのだ。例え違ったとしても自分と同じ存在が居る事に・・・しかし

 

 

(あぁ~~、小夜の匂い…逞しいオスの匂いが………ちょ、ちょっとくらい………………だ、駄目よ!我慢よ我慢!!下手に手出したらあの怖い博麗の巫女に何をされるか!……あ〜、でもぉ………)

 

 

嗅がれている方はメスとしての本能を抑えるのに必死であった


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