東方人狼行軍   作:BATTU

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15話

泊まり込み作業 三日目 夕方

 

 

「・・・ふぅ」

 

 

それなりのホールも元に戻っていき、明日か明後日には修理は完了するだろう

霊香には霊夢を通して伝えてあるが速く帰ってやらないといけない

 

今日の霊夢の弁当、旨かったな

 

 

「小夜さん、お疲れさまです」

 

 

「咲夜か・・・この調子なら明日か明後日には終わる」

 

 

「そうですか。小夜さん、一つよろしいでしょうか」

 

 

「なんだ?」

 

 

タオルで汗を拭き取り、置いてあった水の入ったコップを口にする

 

 

「これが終わったら、博麗神社に帰ってしまうのですよね?」

 

 

「・・・ふぅ。あぁ」

 

 

「・・・どうか、紅魔館に残っていただく事は出来ないのでしょうか?」

 

 

「・・・」

 

 

咲夜の言葉に沈黙する小夜

そんな小夜に構わず咲夜は続ける

 

 

「貴方のおかげで妹様は外に出られ、他者に触れあう事で孤独という悲しみから救い、能力の制御にも力を貸して頂いて今の紅魔館は昔よりも明るくなりました・・・ですが、それは逆に妹様が貴方という存在も必要になっている。どうか、留まる事は出来ないのでしょうか?妹様の為にも」

 

 

「・・・無理だ」

 

 

「ッ」

 

 

「博麗の姓を貰い、名もくれた博麗の巫女たちは俺にとって恩人。そしてなにより、博麗の巫女の為に生きると俺は“奴に”誓った・・・何もない俺に色んなものをくれたこの幻想卿で生きるために」

 

 

(奴?)

 

 

「・・・だが、心配はするな。関わった以上、フランを見捨てるつもりは一切ない」

 

 

「そう、それが聞けて安心です。では私はこれで」

 

 

「・・・質問をしていいか?」

 

 

「なんですか?」

 

 

ホールを後にしようとした咲夜を呼び止める小夜

 

 

「お前が持っている銀のナイフ・・・そしてナイフから僅かに感じる祝福儀礼の術式に近い力・・・お前は吸血鬼ハンターなのか?」

 

 

「だとしたらどうします?」

 

 

「・・・いや。だが、吸血鬼を狩る者がなぜ吸血鬼に従うのか少し気になった」

 

 

「そうですか・・・申し訳ありませんが私の事は詳しくは話せません。ですが、これだけは覚えてください」

 

 

咲夜は振り返り自身の胸に手を当てて口を開いた

 

 

「私は十六夜咲夜。我が主、レミリア・スカーレットに牙を向くものにはこのナイフで全て斬り捨てる、それがどの様な存在であってもです」

 

 

「・・・そうか」

 

 

咲夜から感じる威圧はその言葉に嘘偽りの無いことを語らせる

主であるレミリアの為なら命を捨てる事も出来ると強く伝わってきた

 

 

「・・・そんな大切な主をあんな風にしてしまって悪かった」ペコッ

 

 

「えーと、その事でしたら大丈夫ですから」

 

 

とりあえず、これだけは言っておかないといけないと思ったので謝った

 

 

「おーい!おおかみ兄ちゃん!」

 

 

「・・・チルノたちか?」

 

 

外の方から聞こえてきたチルノの声

俺と咲夜は外に出て門の方に向かう

 

 

「ただいま咲夜!お兄様!」

 

 

「お帰りなさいませ妹様。おやおや、今日は随分とお汚れになって」

 

 

「えへへ、ちょっとはしゃぎすぎちゃった」

 

 

咲夜に顔を拭いて貰っているフランを後にし、俺はフランと一緒にいたチルノたちの元に向かう

 

 

「二人とも・・・いつもすまない」

 

 

「おぅ、フランは強くいい奴だからな!あたいは気に入ってるぞ!」

 

 

「それにお兄さんのお知り合いなら私たちにとっても友だちです」

 

 

「ミスティア、リグル、久しぶり」

 

 

「はい、お久しぶりですお兄さん。屋台とかこの前の霧とかで大変だったからなかなか会えませんでしたね」

 

 

「僕も虫たちの事で色々あったけど、久しぶりに兄さんに会えてよかったよ」

 

 

チルノと大妖精以外の二人の妖怪

 

一人はミスティア・ローレライで夜雀という妖怪

もう一人はリグル・ナイトバグで蛍の妖怪、決してGではない

 

この二人もチルノの親友

チルノ、大妖精、ルーミア、ミスティア、リグル、そして最近友達になったフランとこの六人でよく遊んでいる

 

 

「・・・ルーミアは帰ったのか?」

 

 

「うん。ルーミア姉と一緒に帰ったよ」

 

 

「そうか」

 

 

「それよりおおかみ兄ちゃん、修行はいつになったらさいかいできる?」

 

 

「弟子にした覚えはない・・・もうすぐ仕事も終わる、しばらくしてから神社に来い」

 

 

「分かった!しばらくしてから行くぞ!」

 

 

「じゃあ、フランちゃんも送ったし私たちも今日は解散しようか」

 

 

「大ちゃんの言う通りだね。じゃあお兄さん、いつでも屋台に来てくださいね」

 

 

「またね兄さん」

 

 

「また明日、行こうチルノちゃん」

 

 

「おう!じゃあねフラン」

 

 

「うん!また明日!」

 

 

帰っていくチルノたちに手を振るフラン

 

 

「さぁ、妹様。すぐお風呂に入りましょう」

 

 

「はーい」

 

 

「小夜さんも後で入ってくださいね」

 

 

「あぁ」

 

 

「・・・あっ!そうだ!ねぇねぇお兄様、一緒にお風呂入ろう」

 

 

「妹様、小夜さんを困らせては「いいぞ」いけま・・・え?」

 

 

小夜の答えに少し沈黙してしまった咲夜

 

 

「・・・頭ぐらい洗ってやる」

 

 

「わーい!やったー!」

 

 

(こ、断るかと思った・・・い、一応の為に同行した方がいいかしら?)

 

 

話も終わり三人は紅魔館の中に入る

 

 

ちなみに門にいた美鈴は頭にナイフが刺さった状態で横たわっている姿を発見していた小夜だがあえて無視した

 




次回は風呂回

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