その頃
「ふぅ、人里の方も随分と慌ただしかったわね」
人里を訪れ、異変に関する情報を集めようとしていた霊夢
しかし、人里では赤い霧が出現してから体調を崩す者が続出しており人里の守護者である慧音は現在の状況の対応と対策の思案で忙しいようだ
しかも、この赤い霧が体調を崩す原因と知ってから外を出歩く者は誰もいない為に特に異変に関わる情報は得られなかった
「あとは、兄さんの後を追ってみようかしら」
慧音の下を去り、次の場所に行こうとしたとき慧音が霊夢にある情報を話した
『実は霧が現れる前まで小夜くんが居たんだが、霧が現れた瞬間、人里から出て霧の湖のある方角へ走って行ったんだ・・・きっと、何かあると思うんだ。君の兄さんの後を追いかけてみるといいかもしれない』
「・・・霧の湖ならあのおバカ妖精と大ちゃんが居るわよね。他に行く当てはないし行ってみようかしら」
次の行き先を決め、霊夢は霧によって真っ赤に染まった空を飛んでいく
(兄さんは一体なんで霧を見た瞬間、霧の湖に向かったのかしら?・・・なんだか嫌な予感がするわ)
自分の勘はよく当たる、先代博麗の巫女であった霊香さえも驚くほどの勘の良さを霊夢は持っている
それは良い事、悪い事どちらの意味でもよく当たってしまう
それをよく理解している霊夢は速度を上げて、霧の湖に向かう
しかし、物事は簡単には進まないのが世の常、幻想郷でも変わらない
ヒュヒュヒュン!!
「弾幕!?」
突如、前方から放たれる無数の光
しかし光の飛んでくる速さはそこまででもなく軽々と避ける霊夢
光が飛んできた方向に視線を向けると多数の妖精たちが霊夢の方に飛んできた
普段の妖精たちは人間に対して悪戯などしかしない。しかし、今回の彼らは普段より攻撃的になっている
「邪魔するなら容赦しないわよ」
霊夢も弾幕を撃って応戦する
妖精一人一人の力はさほど強くはない、一番面倒なのは数の圧倒である
「もう、こっちは急いでんのに「霊夢!」ん?この声は魔理沙、に後ろの二人は」
箒に跨り、飛んでやってきたのは魔理沙
その後ろからは二人の見慣れた妖精の姿もあった
「なんでチルノと大ちゃんが一緒にいるのよ魔理沙?」
「それは後だ。今は目の前のこいつらを片付けるぞ!」
「・・・分かったわ」
「おう!さいきょうのあたいがぜんぶたおす!」
「あんたはどいてなさい、流れ弾に当たってもしらないわよ?」
「なにを!さいきょうのあたいをなめるな!!」
加勢に加わった魔理沙とチルノ。大ちゃんは終わるまで後で待機していた
数分後
「うぅ~」
「大丈夫チルノちゃん?」
「わりぃチルノ。まさか霊夢じゃなくて私の流れ弾幕に当たるとは思わなかったぜ」
何とか妖精の大群を退いた一向
チルノは霊夢の言ったとうり、仲間の流れ弾にあたり墜落。頭から地面に強く打ち付け両手でたんこぶを押さえていた
「で?なんで魔理沙はこの二人と一緒にいるのよ?」
「あぁ、そうだ!霊夢、実は小夜の兄ちゃんが」
少女説明中
「ちょ、ちょっと、それホントなの?」
霊夢はありえないという表情でいた
聞かされたのは霧の湖でチルノたちが見た小夜の戦い、そして戦いに敗れて洋館の中へ連れていかれたという話だ
無論、霊夢もその話を簡単には信じられなかった
義理とはいえ、妹として自分の兄である小夜の実力はこの中では一番自分がよく知っているのだから
「ほんとだよ!おおかみの兄ちゃんがなんかチビでなまいきなやつにやられちゃって、でー、なんかつれさられたんだよ!」
「本当なんです霊夢さん!信じてください!」
「チルノはともかく大ちゃんもこう言って、霊夢とルーミア姉を探してたんだ。私もあの小夜の兄ちゃんがやられたなんて考えたくもなかったけどここまで必死に言われちまうとなぁ・・・」
チルノ、大ちゃん、魔理沙の話を聞き少しだけ沈黙する霊夢
しばらくしてから口を開いた
「まだ完全に信じたわけじゃないけど、その洋館のところに案内しなさいチルノ」
「おぉ!まかせろ!」
チルノと大ちゃんの案内のもと、霧の湖にある洋館に向かう霊夢と魔理沙
紅魔館
門前
「・・・」
門の前に立ち、見張りをしている私、紅美鈴
しかし、今の私の脳裏には主であるレミリアお嬢様と戦った人狼の事を考えていました
(あの人の戦い方は妙に変でしたね。人狼は道具を使った戦いよりも体術での接近戦が得意の筈・・・しかも彼は獣化もせずにお嬢様と戦った、一方的にこちらが有利にしかならない。まるで手を抜いていたみたい・・・でも、どうして?)
少なからず、あの人狼は吸血鬼を熟知していた
ならば、生半可な戦いで勝てる確率など無いにも等しいと分かっていてもおかしくないのに彼は本気で挑まなかった
油断していたっと考えれば簡単に説明はつくし皆納得する。しかし、私の中では何かが違うと考えてしまう
なら、彼はなんの目的があってここに・・・
「ん?目的?」
私はもう一度あの戦いで彼の話した言葉を思い出す
そして一つの言葉が蘇った。それはお嬢様の攻撃を避け反撃した後に私と咲夜さんに言った言葉
『・・・さぁ、お前たちの主は消した。霧を止めろ』
「・・・ま、まさか」
私は一つの仮説を立てた
彼の目的はお嬢様を殺すのではなく、霧を止める事
そしてあの時お嬢様は自分がこの霧を生み出すように仕向けたと言っている、だからあの時、お嬢様を倒しても私と咲夜さんに霧を止めるように要求した
そしてそうしなかった私たちをみて私たちでは止めることはできないと判断、なら止められる者は外ではなく紅魔館の中にいると判断できる
そしてわざとお嬢様に負けて中に・・・
「ま、まずい!」
私は門を離れ、紅魔館の方へ走っていく
考えすぎかもしれない。だがもしあの仮説が成立していれば彼は無駄な戦闘を避けて中に侵入できる
万が一と言うこともある、せめて咲夜さんにだけでも!
「咲夜さん!咲夜さん!」
玄関から入り広いホールで咲夜さんを呼ぶ
「うるさいわよ美鈴。何事かしら?」
ホールの階段から降りてきたレミリアと咲夜
「お嬢様!私たちは騙されたんですあの人狼に!」
「落ち着きなさい美鈴、どうしたの?」
「あの人狼の狙いは霧を止めることです!彼はわざとお嬢様に「邪魔するぜぇ!!!」ッ!」
ドガンッ!!
玄関の扉が勢いよくぶっ飛び、砂煙が舞う
「今度は何よ?」
「邪魔するわよ」
入口から入ってきたのは赤と白の服に身を包む巫女
そして箒を片手に黒と白の服と大きな帽子を被る魔法使い
霊夢と魔理沙であった
「美鈴、あなたが門を離れるから侵入者が入って来たじゃない」
「・・・申し訳ありません」
「まぁ、いいわ。さっきの弱い人狼よりは面白そうな人間がやって来たし、暇にはならなそうね。咲夜、美鈴」
レミリアが二人の名を呼ぶと二人はレミリアの前に出て臨戦態勢に入った
「そこのアンタ、今人狼とか言ったわよね?」
「あなたは?」
「博麗霊夢、質問に答えなさいその人狼をどうしたの?」
「博麗の巫女ね、私はレミリア・スカーレット、よろしく。貴方が言ってる人狼ってもしかして図体がでかいだけの犬のこと?」
「まぁ確かにでかいから多分それだ。その兄ちゃんはどうしたんだって聞いてんだぜ?」
レミリアをにらむ霊夢の代わりに魔理沙がもう一度聞く、そしてレミリアは微笑みながら答えた
「あの犬だったら私が倒してやったわ、それと生かしてはあげたわ。最も、今頃は死んでるかもしれないけど」
「・・・そう、ならやることは決まったわ。あんたたちを早急に潰して兄さんを助けるわ。行くわよ魔理沙」
「おう!」
「倒す?なめられたものね犬だけでなく人間ごときにも」
それぞれの獲物を持ち、一触即発の中、一つの声がホールに響いた
「レミィ!」
「「?」」
霊夢と魔理沙は聞き覚えのない声のする方に視線を向けるとそこにはぐったりと疲れ切っている厚着の女性とそれを支えるように立つ悪魔のような羽をはやした赤髪の少女二人が居た
「パチェ!こぁにここぁも何があったの!」
「ごめんなさい、妹様が逃げたわ」
「あの子が!」
ドガンッ!!
突如、ホールの床が壊れそこから一つの影が下から飛び出し、霊夢たちの前に立つ
「に、兄さん!」
「ん?・・・・霊夢、魔理沙」
現れたのはやられていたと思われていた小夜本人だった
「おぉ!小夜の兄ちゃんやっぱり無事だったんだな!・・・で、肩に乗せてるの誰だ?」
魔理沙の指摘した小夜の肩には魔理沙と同じ金髪で背中に宝石のような羽を持つ少女が乗っていた
「どういうこと・・・なんであなたそいつといるのよ」
小夜の肩にいる少女を見て声を荒げるレミリア
「フラン!!」
少女の名を呼ぶレミリア
少女も自分の名を呼ぶレミリアに対して口を開く
「・・・お姉さま」