Muv-Luv Obituary Notice Angel   作:ファインシュメッカー

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マブラヴ世界でリーオーやエアリーズを活躍させたいなあと思って書いた作品。
ちなみに別案ではヒイロでは無くトレーズ閣下の成り代わりも考えていました。
(もっとも俯瞰知識のあるトレーズ閣下にしたいのもあるが、あのエレガントさを完全に再現できないだろうからの成り代わり設定だが)
まあ、この作品はヒイロ成り代わりなので、ウイングガンダムが活躍します。(原作以上には活躍させ・・・れるかなあ?)


プロローグ『最後の勝利者になれなかった翼』

宇宙世紀0080

 

本来なら地球連邦とジオンとの間に停戦協定が結ばれた年だ。だが、この世界で連邦が停戦したのは、ジオンとザフトだ。

 

 

 

そう、この世界は本来の宇宙世紀ではない。かつて(●●●)の彼の知識では、この世界はこう呼ばれる類の世界だ。Gジェネレーションと。

 

 

 

今、彼・・・ヒイロ・ユイと呼ばれる筈だった少年は戦っている。彼の乗るウイングガンダムはモビルドール“ビルゴⅡ”をその手に持つビームサーベルで切り裂いていく。

 

「・・・・・・」

 

 

 

かつてアークエンジェルによるレビル救出作戦の最中にデルマイユが戦死した事により、OZの所有していたMDは反地球組織ホワイトファングに強奪された。

 

ホワイトファングは、かつてアークエンジェル隊に所属したゼクス=マーキス、本名『ミリアルド=ピースクラフト』を指導者に向かい入れ地球に対し戦線を布告したのだ。

 

それに対し連邦が打った手とはアークエンジェルを派遣する事だった。それは、彼の参戦を意味していた。

 

 

 

(リリーナ=ピースクラフトもトレーズ=クシュリナーダも居ない・・・。あるのは、お前との因縁だけか、ゼクス)

 

宙に浮かぶエピオンの左腕を漂いながら、彼は心の中で呟く。

 

「リーブラの破片が!?」

 

νガンダムのパイロット『アムロ=レイ』の言葉に彼は地球の方向に振り向く。そこには、リーブラに四つ付いている菱形のエンジンブロックの一つが地球に向かって漂流している所だった。

 

(なるほど・・・やはりこうなるか)

 

彼は、ウイングガンダムをバードモードに変形させ、リーブラに向かって、飛ばす。

 

(ゼロ無しでやれるか?いや、やるしかない)

 

彼の所属する部隊には、戦略級の兵装を持つMSが存在する。だが、ホワイトファングとの戦いにより、既にそれらの兵装は使い切っていた。残るは、ウイングガンダムのバスターライフルのみだ。

 

 

 

ウイングガンダムは、リーブラの破片の前に陣取り、バスターライフルを構える。大気圏の摩擦熱でウイングガンダムは赤熱し、更にはバスターライフルの照準も合わせることが出来なかった。

 

それも必然だろう。彼の乗っている機体はウイングゼロでは無いのだ。

 

ウイングガンダムはウイングゼロを参考にした機体だが、ゼロに比べるとデチューンされている。

 

そんな機体で彼はZEROシステムを搭載したガンダムエピオンと相対したのだ。如何にガンダニュウム合金製とは言え、機体の損傷も無視できないレベルだ。もし、この状態でバスターライフルを発射すれば機体が持たないだろう。

 

ウイングゼロの最期の時の様に・・・。

 

 

 

友軍のMS達はウイングガンダムに乗る彼に逃げるように伝える。中にはリーブラの破片を砕こうと攻撃を仕掛ける物も居る。

 

だが、リーブラその物を破壊するため、またエピオンとの戦闘でサテライトキャノンは、月光蝶は、石破天驚拳は消耗されていた。

 

ビームライフルやメガランチャー程度ではリーブラを破壊する事は出来ない。

 

 

 

彼は刻々と己に迫る死を感じていた。

 

「死ぬのは二度目だ。それに俺には帰るところなど無い。俺はヒイロ=ユイでは無く、アディン=ロウなのだからな」

 

彼はヒイロ=ユイでは無く、実の父の名を名乗る。ヒイロと違い、()っていた事により彼が持つことができた物、しかし、ヒイロと同じく失ってしまった物だから。

 

ウイングガンダムの装甲はひび割れ、ガンダムの特徴的な相貌から機械的なカメラアイが覗く。

 

アディンはモニターに映るロックオンマーカーが大気圏との摩擦により当てにならないと判断し、マニュアルで狙いを定める。右手の操縦桿から微細な振動が伝わる。

 

アディンは、右手に力を込め、無理やり照準を固定する。目標はリーブラの炉心だ。

 

「俺は、生き抜いてみせる!アムロよりもキラよりもだ!!」

 

ウイングガンダムの右手に掲げられた巨銃から太い光束が放たれる。

 

ビームはリーブラに命中し、その船体を蝕み、動力炉を食い破った。瞬間、動力炉は爆発し、リーブラの破片は更に細切れとなる。この様子ならリーブラの破片は大気圏の摩擦熱で燃え尽きるだろう。

 

「・・・左腕部喪失、脚部破損・・・どうやら、ここまでのようだな」

 

バスターライフル発射の衝撃でウイングガンダムは崩壊を始めていた。根元から取れた左腕、装甲が剥がれフレームしか存在しない脚部。その有様は大破と言うのに相応しかった。

 

その損傷によりウイングガンダムは地球の重力から逃れることは出来ず、その身を崩しながら墜ちていった。

 

 

 

「コクピットブロックが無事なら何とか地球に降りれるが・・・五分五分だな」

 

アディンは機体の様子から判断した。ガンダニュウム合金で構築されたウイングガンダムなら大気圏突入も可能だろう。だが、損傷の激しいウイングガンダムがそれまで持つかどうかだ。

 

コクピットの中にまで亀裂が発生したら中に居るアディンは摩擦熱で只ではすまないだろう。それに落下地点が海上ならともかく地上ならば如何にガンダムのパイロットと言えど無事では済まない。

 

モニターが死んだコクピットの中でアディンは目を瞑り、これから起きる事態を受け入れようとしていた。だからこそ、アディンは気付かなかった。コクピットの中を緑の目立つ虹色に照らされていた事に・・・。

 

 

 

宇宙世紀0080 12月24日

 

アディン=ロウを救出しようと接近したキラ=ヤマト達の目の前でウイングガンダムは謎の光に包まれて、消滅した。爆発とは全く異なる現象だった故に捜索隊を結成されるが、アディンとウイングガンダムの足取りは掴めず、MIAと判断された。

 

 

 

*****

 

 

アディンは、コクピットの振動が止まった事に気付く。

 

「・・・?ッ!?なんだ、これは!!」

 

だが、目を開けた彼は周囲を見て驚く。彼が居たのは白い空間だ。部屋の色が白いのではない。壁と言うモノが存在せず、影すらも白く染まった空間だ。

 

「これは、・・・足が付く!ガラスか?いや、違う。そもそも上下の感覚すら出来ない、この空間は・・・」

「やっと、見つけたよ」

「!?」

 

突然聞こえてきた声の方向に、隠し持っていた拳銃を向ける。

 

そこには灰色の男が居た。灰色のズボン、灰色のシャツ、灰色の上着、とどめは灰色の髪だ。そして、その男の顔にも違和感を覚えた。その男の顔は平凡だ。いや、平凡すぎるのだ。街中でその男の顔を見ても覚えることが出来ない、そんな印象を与える顔だ。

 

「やれやれ、本来私が掬い上げ新たな命を与える筈がまさかヒイロ=ユイとなるとわねぇ」

「・・・俺はアディン=ロウだ。ヒイロ=ユイではない」

 

アディンの言葉に灰色の男は苦笑を漏らす。

 

「ふふ、なるほど。では、アディンと呼ぼう。始めまして、私の名はグレイ。よろしく頼むよ、かつて■■■■とよばれたアディン=ロウ君」

「その名前は!?」

 

アディンは驚愕する。目の前の男、グレイが呼んだ名前はもはや自分しか知る事が無い名前だったのだから。

 

「そう、君の前世の名前だ」

「・・・お前は一体何者なんだ。神だとでも言うのか?」

「私は神ではない。だが、君も知る二次創作における神に近しい存在ではある」

「・・・・・・」

 

アディンは妖しく微笑むグレイを警戒する。二次創作における神は大抵が腰が低いが、神話を紐解けば神の大半が天災と言っても過言で無い存在である事が明白だからだ。

 

「私はある世界を救う為、君をその世界に送るつもりだった。ちなみに君の死には関わっていないよ。そもそも、そんなことをしなくても人なんて毎日至る所で死んでいるからね」

 

グレイは当然のように嘯く。彼にとって人一人ひとりの死では心を動かされない。そう言っているかのようだ。

 

「なら、俺がGジェネレーションを思い浮かばせる世界に転生したのはお前が関わっているのか?」

「いいや」

 

アディンの投げかけた問いにグレイは頭を横に振りながら答える。

 

「本来、死んだ君をこの世界に招待し、いくつかのプレゼントを渡してから目的の世界に送るつもりだったのだが、君の魂が零れ落ちてしまってね。君の世界でGジェネレーションアドバンスと呼ばれる世界に落としてしまったのさ」

「アドバンス・・・GBAのGジェネレーションか。どうりで俺の知らない世界だと思った」

 

アディンの前世では3DS、PSP、Vita等が主流であり、GBAは過去の物だった。だからアディンにとって自分の生まれた世界は未知のモノだったのだ。

 

「まあ雑談はここまでにして本題に入ろう」

「・・・お前が言ったある世界を救えとでも言うのか?」

「ご名答。君にはマブラヴの世界に言って貰いたい」

「マブラヴ・・・あのゲームか」

 

アディンは『あいとゆうきのものがたり』と称される作品を思い浮かべる。

 

「そう、君も知っているだろうけど・・・って知ってるからこそ君を選んだんだけどね。後、魂の素質とかもろもろ」

「あの世界を救えとお前は言ったが、実際にはどうするつもりだ?第4計画の完遂か?全ハイヴの排除か?全てのG弾の破壊か?それとも・・・全てのBETAを滅ぼすまでとでも言うつもりか」

 

アディンはマブラヴ作品の全てを把握している訳では無い。だが、あの世界の人類がガンダム世界並みに結束出来ず争い合っているのは知っていた。

 

「ははは、そんなことが求めないよ。あくまで、あの時代の人間が未来を創る事が出来れば君への依頼は完了だ。全てのBETAを滅ぼすには君の寿命が足りないし、何よりも滅ぼせれるほどの兵器は持ち込めないからね」

「兵器を持ち込む?貴様が言ったプレゼントとやらか。・・・特典か」

 

アディンは自分が読んでいた二次創作の所謂お約束と言うモノを思い浮かべた。MSや能力など様々な力を持って作品に介入する。多くの二次創作に見られる手法の一つだ。

 

「そうそう、それそれ。まあ、制限は付けさせてもらうけどね。たとえば君にも分かりやすく言うならば∀ガンダム等は無理だ。あれは恒星間文明の技術が使われているからな」

「つまり・・・あくまで惑星内での兵器と言う事か」

 

マブラヴはあくまで地球での物語だからあくまで地球レベルもしくは地球圏レベルにしろとグレイは言うのだ。もっともMSに近かったアディンにとってその条件は別段と問題ではなかった。

 

「その通り。まあ兵器だけで無く才能でも良いけどね」

「良くあるSSS級の魔力とかか・・・。もう一つ質問がある。回数制限はあるのか?」

「無論だとも。こういうのは三つと相場が決まっているからな」

「三つか・・・」

「さて、色々喋ったが本題に入ろう。君は私の頼みを受けてくれるのかい?」

「・・・良いだろう。どのみち俺には帰るところも居ない」

 

アディンはグレイの依頼を受ける。リリーナ=ピースクラフトが居ない世界で彼の近くに居たのはドクターJ、そしてアークエンジェル隊の人々だけだ。だが、彼らも友には成れても彼の帰るところでは無かった。アディンは迷子のままだった。

 

「ふむ・・・まあ、ここに来ている時点で待っている人にも会うことは出来ず、帰ることも出来ないんだけどね」

「・・・その答えは薄々予想が付いていたが、傲慢だな」

 

アディンはグレイの言葉にその能面のようだった顔にある眉を顰める。グレイの言葉はアディンでなくても気分を害する類の物だが。感情を余り表に出さないアディンが顔に出すくらい癪に触ったらしい。

 

「ははは、神様なんてそんな物さ。さて、依頼を受けてくれてありがとう。では、特典を選びたまえ」

「・・・知識と言うのは可能か?」

「無論だとも」

「なら、最初はアフターコロニーでMSに使われている技術だ」

「ふむ・・・良いだろう」

「次は生産や整備そして生活の為の拠点を用意して欲しい」

「なるほどなるほど、それも良いな。君の場合は既にガンダムのパイロットになっているから才能も付け足しも必要ないから色々と選べる幅が広そうだな。さて、最後のは何かね?」

 

一つ目と二つ目の特典でアディンにとって必要なモノは揃っていた。ガンダムをマブラヴ世界でも使う為の設備、それだけあればアディンにとって十分だった。

残りの一つ、特に必要なモノは、考え付かなかったアディン。

だが、彼はふと思いついたのだ。

 

「・・・船だな。ペガサス級やアークエンジェル級のような船があれば便利だ」

 

大気圏でも活動可能な宇宙戦艦。確かにそれがあれば便利だろう。だが、果たしてそれだけなのか?アディンは、その答えを持ち合わせていなかった。

 

「ふむ・・・なら、拠点に造船施設も作ろう。では、早速だがマブラヴ世界に行って貰おう」

「いきなりだな」

「別にここで時間を浪費しても意味はあるまい」

 

特典が決まるとグレイは切り出した。そして、グレイはアディンを見つめる。

 

「さて、アディン=ロウ君、願わくば向こうで君の大事な物が出来ることを私は祈っているよ」

「・・・任務、了解」

 

アディンが呟いたと同時にその体が緑色の虹に包まれた。

 

この虹の正体、見当が付かないが近い物をアディンは知っていた。サイコフィールドだ。

 

アディン=ロウは白い空間から消えた。残ったのはグレイと名乗った男のみだ。

 

「ふむ・・・さて、どういう結果になるかな?」

 

そして、アディン=ロウを見送ったグレイもまた、その白い空間を後にした。そして、だれもいなくなった。

 


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