魔法のあくせられーた   作:sfilo

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遅れました。
多分このペースかと、しかも少し短いです。


18

大会6日目、新人戦3日目。暑くもなく穏やかな気候で試合が開始される。オーストラリアでの仕事も終わり九校戦も出場する試合が無い一方通行は比較的ゆっくり出来る身分だった。彼の目覚めは午前8時、他選手と比べるととても遅いが別に問題は無い。朝食を終えた後フレーラに渡されたディスクをポケットにしまい雫が出場するという試合会場行きのバスに乗り込む。

一方通行は会場に到着すると人が多過ぎて少し気分が悪くなった。一般客が多く高校関係者や運営側は対応に追われているようだった。これに嫌気がさし九校戦のトーナメント表を見て雫が決勝戦へ行くことを信じ、九島烈が観戦している試合会場を探す。なるべく早めに終わらせたいと思っていた。

いろいろ検索してみても九島の場所は分からないのである程度予想して機会を待った。

昼前の会場、そこはアイス・ピラーズ・ブレイクの予選が次々に行われ選手らが競技をしているが、観客の数は少ない。昼時なのだからであろうか、これを利用して一方通行は自分の席を手に入れ試合を眺める。特に見入る試合は無かったがいい暇潰しにはなったようだ。

決勝戦が始まる前、人が混み出した。その機会を見計らって一方通行は最も警備の多い特別観戦席を目指して移動する。九島は日本屈指の魔法師であることは確かでありそれに比例して警備も多くなるはず。こんな単純な予測で行動する。

警備員を一方通行の能力で無効化し終わり観戦席の扉を開く。ザル警備とまではいかないが能力を開放した一方通行に対しては何の効果も発しない。部屋の中には椅子に座る九島老師が驚きもせずに試合会場の方を眺めていた。

 

 

「何用かね?」

 

 

ゆっくりとした声で一方通行に聞く。その言葉を聞きながら彼はドアの鍵を締め老師の側に寄ると一つのディスクを言葉を加えながら手渡す。

 

 

「学園都市からの土産だ、中身は俺にも分からねェ」

 

 

背後に立つ一方通行の姿を一切見ることなく手元にやってきたディスクを眺める九島。仕事を終え部屋から出ようとする一方通行を老師は止めた。

 

 

「折角だからここで決勝戦を見ていきなさい」

 

 

その言葉に別の意味が含まれているのかどうかよく分からないが、決勝戦を見る座席を確保出来ていなかった一方通行はその言葉に甘えた。

決勝が始まる、目の前で氷柱が整えられていく。

選手の入場と共に老人と若者の雑談が始まった。

 

 

「時に一方通行君、君は学園都市と言ったが筑波の方じゃない。オーストラリアで現在侵攻している方の学園都市で間違いないのかね」

 

 

老師の隣の余った座席に座り試合場を見ていた一方通行は頬杖をつきながら口を動かす。

 

 

「あァそうだな、それがどうかしたのか」

 

 

目の前では氷炎地獄という魔法が展開され美しい光景を醸し出している。それに対し雫は氷の温度を一定に保つために情報強化の魔法をかける。

 

 

「もしかするとその代表はアレイスター、彼なのかね?」

 

 

互いの魔法が侵食し拮抗状態を生み出している。客観的に見ると平衡状態であろうが当人たちはそう思っていなかった。

 

 

「そォだな、合ってる」

 

 

雫が手元に拳銃型のCADを出現させレーザーのような魔法を発現させる。

 

 

「そうか、今ここで君を殺せばアレイスターの計画は頓挫するだろうが私にそのような力はもう無い。はてさてどうしたものか」

 

 

ニブルヘイム、領域内の物質が個体へと変化していく。温度が下がり続けているのだ。雫の魔法力では対応しきれていない。

 

 

「アイツと何があったのかは知らねェ、だが俺から言わせてもらうと抵抗できる力がねェンならさっさと降参することだな。無駄な労力はかけたくねェ」

 

 

一時の緊張が弾け再び深雪の氷炎地獄が試合場を覆う。今まで冷却されていた物が瞬時に高温に晒された。氷柱は凄まじい音を響かせながら崩れていく。

女子新人戦アイス・ピラーズ・ブレイクの優勝者は一高の司波深雪に決定した。

試合が終わり一方通行は部屋から出ようとする。老師はそれを止めることもせずじっと眼前の空を眺めていた。

オーストラリアで頼まれた最後の仕事を終え本当にゆっくり出来る時間が出来た。地面に転がる九島の部下達を越えて試合が終わった観客席に一息つく。ぞろぞろと入ってきたゲートへと帰っていく人間とは逆に一方通行は黙って見ている。何を見ているのかというとオーストラリアで手に入れた賢者の石。紅蓮のような輝きを放つが今の一方通行はその価値の大小がわからない。

立ち上がりホテルへ戻ろうとすると目前に二人組の男がいた。

 

 

「初めまして、僕は第三高校一年の吉祥寺真紅郎です」

 

 

小柄な方が先に挨拶してくる。

 

 

「俺は同じ第三高校、一条将輝だ。お前は第一高校の一方通行で間違いないな」

 

 

一方通行は何も答えない。相手どうこうというよりいきなりの出来事で面倒に感じる。そのまま睨みつけていると相手から言葉が出てくる。

 

 

「僕達は明日のモノリス・コードに出場します。貴方は出場するのですか?」

 

 

「オマエらは何か勘違いしてるようだが俺は一切出る気はねェ」

 

 

そこへ将輝は割って入ってくる。

 

 

「本選のスピード・シューティング、あの時のCAD使用者と戦えると思ったんだがな。残念だ、行くぞジョージ」

 

 

そう言って一方通行に対し軽く礼をして彼らは遠のいていく。その背中を見て一方通行はうんざりしたような気分に陥る。先日の見知らぬ男からもモノリスに出場するのかと聞かれ今もこれである。

彼は明日真由美達にこの煩わしい事情の説明を求めようと思い今日は帰ることにした。

本大会の7日目、この日も朝から猛暑という訳ではないが夏本番というような暑さを発揮していた。この日の一方通行は夏のムシムシとした暑さに耐えかね部屋のエアコンを利用し涼しい環境で朝食を食べていた。バイキングには行かずに近くのコンビニで買ってきた弁当にコーヒーという生活習慣に悪そうな物が多かった。

ホテルを出て会場近くにある一高本部を目指す。日光が激しく照っているが紫外線を反射している一方通行の体に日焼けの跡は一切残らない。バスに乗ってすぐに目的の場所についた。時刻は11時になろうとしているところだった。本部の中には作戦を立てる生徒や試合が終わった生徒が休んでいたりしていた。

その中へ一方通行は一歩踏み出す。

空気が変わる。和やかに雑談していた生徒も本日の新人戦のモノリスの作戦を再考案していた生徒も、一方通行が放つプレッシャーを直に浴びる。機嫌が悪いという訳ではないが昨日から聞きたいことがあった彼は無意識に威圧感を出していたのだろう。おどおどしている他の生徒を気にかける様子もなく空いている椅子に座る。

そこへ会場に行っていたのだろうかわからないが一高のトップ魔法師らが帰ってきた。それを見るとすぐに一方通行は自分の質問を投げかける。

 

 

「何か俺がモノリスに出るっつゥ噂あンだけどよ、どこが出して回してンだ。まさかとは思うがオマエらが選手登録したとかそンなマヌケな話じゃねェだろォな?」

 

 

不満をぶつける様なぶっきらぼうな態度で近づいていく一方通行。

 

 

「あー!!アッくん!帰ってきたなら連絡してって言ったでしょ、一昨日からいるっては聞いてたけど姿見せないから心配したじゃない!」

 

 

不満そうな一方通行の態度というものは真由美には全く効果はなかった。それどころか逆に彼が捲し上げられ杖が後方へと若干移動する。体のバランスが危うくなったが杖についていたジャイロセンサーが彼のバランスを取り戻す。

 

 

「本当に心配したのよ?取り敢えず座って話しましょう。うちの高校のモノリスまで時間はあるわ」

 

 

真由美がそう言うと元々一方通行が座っていた椅子の近くに真由美と一緒にいた十文字、摩利も同時に座る。

そしてすぐに一方通行は予測される質問の答えを叩きだす。

 

 

「まずはオマエらが考えてる事に返答してやる。俺がオーストラリアにいたのは事実だ。そこでやっていたのは学園都市勢の手伝いみたいなもンだ。学園都市については教えらンねェ、自分で調べろ」

 

 

立て続けに話す一方通行についていけたのは十文字だけだった。いや、彼はついていったのではなく早々に聞くのを諦めていた。

そして再び一方通行が話し出す。

 

 

「でだ、俺が聞きてェのはモノリスに俺が出場予定なのは何でかっつゥ話だ。昨日は三高の二人組に聞かれて一昨日は知らねェ研究員、流布が速すぎる」

 

 

一高側もその問題を注視していた。勝手に広まるデマというものを止める確実な手立ては今の所何も無い。であるから噂を止めるようなことはせずに出場メンバーを運営委員に通知し後は何もしなかった。

 

 

「それは私たちも困っていたの。でももう大会本部には出場する選手の名簿は渡したから安心してちょうだい。それに試合はこれからだからこれで変な噂も止まると思うわ」

 

 

納得したような顔で一方通行は一高本部の液晶をのぞき込む。試合開始まであと2時間ほど、彼は缶コーヒーを買いに行こうと席を立ちポケットからカードを取り出す。

 

 

「アッくん?何か落ちたわよ」

 

 

カランという音と共に一方通行のポケットからカードとは違うものが地面に転げ落ちる。

赤い鉱石の様だが眩く日光を反射している。澄んだ光が内蔵されている光源のように輝かしい。

落ちた石を拾い再び出口へ向かう一方通行だがそれに真由美が着いて来た。どうやら彼女は一方通行がコーヒーを買いに行くのに興味があるらしい。

外へ出た一方通行と真由美、陽射しが照っていて暑苦しい光景が眼前に広がるが、一方通行本人はオーストラリアへ行った時の服装で見ている方が暑くなってくる。

 

 

「ねえねえアッくん、さっきの綺麗な宝石って何なのかな?」

 

 

一方通行の周りでウロチョロする彼女を彼は嫌そうな素振りを見せずに答える。

 

 

「ありゃフレーラから預かってる代物だ」

 

 

フレーラ?と真由美の頭の上にハテナマークが浮かび上がるのが予想できる。そんな小動物のような愛嬌が一方通行に向かってくるが彼は動じずコーヒーを購入する。

昼食時間も彼は一高本部でコーヒーを飲んで時間を潰していた。別に部屋に戻っても良かったのだが、モノリスというものを見てみたいという単純な興味が湧いた。

 

 

「始まるわよ」

 

 

何故か隣に座っている真由美に声をかけられ映った映像に目を向ける。スタートの合図が鳴る。

次の瞬間誰も予想していないことが起こった。森崎らがいたスタート地点の建物が崩壊したのだ。唖然とした表情が部屋中を包む。瞬間空白が生まれるがそれも束の間、全員が慌ただしく動き回る。

不吉な予感が一方通行の脳内を駆け回った。




遅れた理由は














遊戯王です、すみません

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