錆の希望的生存理論   作:時雨オオカミ

97 / 138
〝 死ぬ覚悟が出来ていれば、人は自由に生きられる 〟



渇望searching

 ファイナルデッドルーム。通称FDR。

 その中は脱出ゲームとなっており、なにより厄介なキャラクターである〝 狛枝凪斗 〟を唯一操作できる場所である。

 モノローグによって語られるその心情、行動の仕方など、ファンにとっては喜ばしいイベントだったのではないだろうか。かく言う私もそうだ。いや…… そうだった。

 久しぶりに感じるこの前世との差異は、自身が〝 狛枝凪 〟という存在だと確立されるにつれて薄れていった。

 前世の私は前世の私だし、今ここにいる私という〝狛枝凪斗〟に近い問題児もまた、間違いなく私なのである。

 だが、今ここではその差異がはっきりと感じられる。感じてしまう。

 なぜなら、それは私が〝 怖い 〟と思っていたからだ。この場所を訪れた、その初めての瞬間恐怖を感じた。

 おどろおどろしい雰囲気、退廃的な、無機質なコンクリートの壁。無造作に書かれた大きな数字。奥に見える鉄格子。

 …… その前の床にある丸い切れ込み。

 その先に待っていることを知っている故に浮かぶ恐怖。それと、本当に日向クンたちをこの先に案内していいのかという迷いも。

 彼らをこの先に連れて行けば、恐らく学級裁判の証拠は全て揃うだろう。そうなれば……………… いや、迷っている場合ではないのだ。

 やらなければならない。たとえ怖くとも、それが〝 約束 〟だからだ。

 

「な、なんだ…… あれ…… !」

 

 鉄格子の奥には血に塗れた扉が待ち構えている。

 本来その扉には血なんてついていないはずだった。廃墟の中のようなこちら側とは違い、あの扉は白く塗られている。…… というより、廃墟的な趣向を誰かに言われて仕方なくペンキで修正したような違和感がある。

 退廃的な場所の先に、真っ白でまるで病院のような…… 無機質ととるか、清潔感があるととるかは人それぞれだが―― の扉が待ち構えている。

 その扉には大量の血液をふりかけたように真っ赤な液体が滴っていた。

 その光景には見覚えがある。久しぶりの、〝 夢の光景 〟の、その再現だった。

 

 〝 無 〟のエフェクトというものがある。

 それはエフェクトを全て捨てた上でしか行けないし、手に入れられないエフェクトのようなものだ。

 〝 エフェクトのような 〟と形容するのはそれがエフェクトであるかは本当に分からないからだ。

 本来エフェクト入手時にはエフェクトの名前が表示されるが、この無のエフェクトには名前がない。空白の表示がされるだけだ。故に無のエフェクト。

 3つの内1つは巨大な母さんの腹がパックリと割れて行くというもの。

 2つ目はビン詰めにされたさびつき。

 3つ目は…… 口だけの、巨大な笑顔の壁画。

 昔見たそれらの再現のように、その手前の部屋を再現するかのように血に塗れた扉だった。

 

「さっさと通り抜けちゃおうか……」

「…… 狛枝?」

 

 訝しげに呟く彼を置いて必要な仕掛けを解いていく。

 どうせ後ろの扉は開かなくなってるからね。

 直球でパスワードを打ちにいかないのは一応初めて来た風にしておきたいからだ。あからさまに何度も来てます、とは言えないし。

 そうしたら1番に容疑がかけられるのは私になる。それはつまらないから。

 

「むー」

 

 最後の電気信号のような物を暗記してパソコンにパターンを打ち込む。ゲームではこれが分からなくて1週間ほど悩んだものだが…… 法則を覚えているというのもあるし、今は頭の出来が以前より良くなっているからね。

 日向クンや七海さんも仕掛けに必要な道具とか色々探して来てくれたりしたからスムーズに済んだ。

 これ、毎回モノクマが片付けてるのかな? まあいいや。

 

 カチリ、と音がして丸い切り込みがせり上がって来る。

 それから台座がぐるんと回って、そこには一丁の拳銃が備え付けてあった。鎖付きで持ち出せないようにはなっているが。

 そばにはご丁寧に弾が置かれていて、好きなだけ詰めることができるようだ。

 この時点で後ろの扉は開いているらしい。退路はあるが、進むにはロシアンルーレットをしなければならない。

 

「脱出ゲームクリアおめでとーう!」

 

 そうして現れたモノクマに 「これ、どういうこと?」 と白々しく訊いてみる。

 するとモノクマも合わせて最初のときのように説明し始めた。

 

「なにって、ロシアンルーレットだけど?」

「ロシアンルーレット!?」

「…… て、なに?」

 

 七海さんが首を傾げたことでモノクマも説明より先にそちらの話に入る。

 

「いわゆるギャンブルみたいなものだね! この拳銃には6発の弾丸を込めることができるんだけど…… 1発だけ詰めて、自分の頭に銃口を押し付けて順番に撃っていくスリル満点な遊びなんだよ!

「え、それって……」

「そう! ギャンブルに負けたら死、あるのみなのです!」

 

 日向クンの顔が青ざめる。そりゃ、普通に生きていれば実弾入りのロシアンルーレットなんてやらないからね。怖くて当然だ。

 

「ただーし! ボクはジャパリ…… じゃなくてサファリパーク1優しいクマだから、1人1回ずつルーレットをやったらここを通ってもいいよ! 当然、前の人が回した後は再装填して自分で弾倉を回すんだよ。そうじゃないと自業自得の死を他人のせいにされちゃうからね! あ…… でもこれってコロシアイになるかな…… ハアッハアッ…… 興奮してきたぜ!」

 

 くねくねしながらキモい動きをキモいこと言いながらやっている。

 どうでもいいが、前はサバンナとか言ってなかったっけ?

 …… え、辛辣? 憎っくきモノクマだし………… 心の中で罵倒するくらい許して欲しいかな。どうせ聞こえやしないんだし。

 

「あ、退路はあるから、こんがり焼かれてチキンになる前にニワトリは帰ってもいいよ?」

 

 そこは臆病者って言えばいいのに、無駄に煽って来るのが腹立つよね。

 

「ねえ、モノクマ。物は相談なんだけどさ」

「なになに? 聞くだけ聞いてあげましょうではないですか! ボクったら優しいからね!」

 

 どこがだよまったく。

 

「3人分のロシアンルーレットをするのって…… ありかな?」

「はあっ!?」

「狛枝さん…… ?」

 

 日向クンが私の腕を掴んで首を振る、がそうはいかない。

 

「お前、なんか焦ってないか…… ?」

「別に、焦ってなんかないよ。このほうが合理的で効率が良いって思っただけだからさ」

 

 実際、本気で運試しをすることになる2人よりも、幸運効果を私が使い果たす方がマシだ。こういうときにおいて私の生死がかかっている場合、失敗はありえない。私は私の、そんな幸運を信じているから。

 

「いいよ? ただし同じ方法は通じないからね! 1回1回別のやり方で突破できたら3人共、ちゃんと通してあげるよ!」

 

 まあ、そうなるとは思っていた。

 ならば、まず最初は簡単なことからだな。弾を1発込めて、回す。

 

「これは日向クンの分ね」

 

 撃って、沈黙。

 空虚な音だけが鳴り響き成功したことを確認する。

 ごく普通な日向クンには普通のロシアンルーレットがお似合いだよ。

 

「次は七海さん」

 

 こちらは原作狛枝がやっていた5/6ルーレットだ。

 

「こ、狛枝さんそんなことしなくてもいいよ。私が自分で……」

 

 七海さんの言葉を無視して弾を5発分詰めて目を瞑る。

 引鉄を軽く引いて、空虚な音。成功だ。

 1発分の空白のみを引くのは彼女の原作再現だ。きっと1発しか詰めていなかったら私の頭に弾丸がぶち当たっていたんじゃないかな?

 

「私の分」

 

 1発込めて、頭へ。

 

「同じのは……」

 

 モノクマがなんか言っているが無視だ。

 引鉄を引く。成功。

 続けてもう1発込めて回す。引く。成功。

 3発目を込めて回す。引く。成功。

 4発目を込めて回す。引く。成功。

 最後の5発目を込めて回す。引く…… 成功。

 さすがに6発目は詰めない。リボルバーなのでジャムにかけるのは無理だ。

 

「…… ふう、これでいい?」

「ワックワクのドッキドキだねぇ! オマエも魅せてくれるじゃんか! いいよ! 文句なしに最高だよ! オマエラとっとと奥へ進みやがれってんだー!」

 

 思わぬところでモノクマのテンションをあげてしまった…… これは失敗したな。モノクマを楽しませるのはいい加減癪に触るってのに。

 ちなみに、最初やったときは5/6だったので実際には今のが七海さんの分だったりするんだ。嘘ついてごめんね、2人とも。

 

「あの、狛枝さん…… ごめんなさい」

「すまん」

「そこはありがとうのほうが嬉しいかな?」

 

 …… まったく、2人とも気負いすぎだ。

 私の幸運はこんなことでは揺らがないんだからもっと信じてくれてもいいんじゃないかな?

 

「…… うん、ありがとう。でも、もうあんな無茶はしないでね」

「ああ、助かった。でも見てるこっちが怖いから、ああいうのはやめてくれよな?」

「善処はするよ」

 

 都合のいい言葉に逃げて、ぬるりとした感触の扉を開く。

 そこにあったのは、小さな部屋だった。

 左奥には大きなはめ殺しの窓がついており、その近くに電源盤らしきもの。それから右奥には冷蔵庫と壁の棚にズラリと並んだ凶器の数々。それからゴミで一杯になったゴミ箱に、床には小さな扉。

 そして、白い床に僅かに垂れた血。

 ここでなんらかのことが行われたのは、誰が見たって間違いなかった。

 

「ここでなにかあったのか、やったのかは、分からないけど…… 狛枝さんがここに来ることを提案してくれなかったらまずかった…… かもしれないね」

「ああ、明らかに犯人がここに来たって感じだもんな。それじゃあ調べて行くか」

 

 まずは凶器探しだが…… 床は血に染まっているというのに刃物類にそれらしきものはなく、ただ沈黙している。

 それに30㎝ほどの刺突武器のようなものなんてなかなかないものだ。刺突武器にしたって、精々モリや槍くらいなものだし、それらは30㎝よりも明らかに長い。

 他には斧やら鋸やら、スタンダードな包丁からプラスチック爆弾が作れそうな粘土質の爆発物らしきもの、謎の水晶玉やベッタベタに金箔の付く模擬刀やトイレットペーパーなど、真面目なものからふざけたものまで集めてある。雑多でガラクタを置いているような印象すら受けるくらいだ。

 

「さて、電源盤はっと……」

 

 電源盤は全館の明かりも担っているようだ。その中の1つに、キッチリと冷暖房装置のスイッチを発見できた。

 温度は35℃…… うん、死ねるね。

 我ながらよく死ななかったなと褒めたい気分だ。

 どうやら7時間程稼働していたようだね。もう止まっているみたいだし、タイマーでもセットされていたんだろう。

 

「うっわ…… よく生きてたな、お前」

「……………… そうだね」

 

 俯いて答える。

 

《コトダマ 電源盤》

 

「あれ…… なにか落ちてる?」

「ん、どうした七海」

 

 2人が冷蔵庫近くまで歩いて行き、離れたところで顔をあげる。

 窓に映った私の顔は笑っていた。それはそれはもう、凶悪な。そう、笑顔。無のエフェクトで表された象徴。

 

「……」

 

 死の危険。裁判。緊張。なにもかもで恐怖がどっと押し寄せて来て、もう笑うしかないよねこんなの。

 

「どうしたー? 狛枝ー?」

「あ、うんごめん。窓の外のことでちょっと…… あとで言うよ」

 

 唇を噛んで、血が出る。

 痛くない。痛くなんてない。大丈夫、きっと大丈夫だから。

 

「これ、なんだと思う?」

「うん? …… 甘い香り…… ? でも十神クンの襟とはまた違った感じの……」

 

 くんくん、と匂いを嗅いでみるが、そのゴムや粘土のようなお椀状の物がなにかは分からない。直径10㎝に満たないそれは一見ただのゴミにしか見えないが、どうやら椀の部分に血がついているみたいだ。

 

《コトダマ お椀状に固まった粘土質の塊》

 

「一応メモしておくよ。七海さん、なんか袋持ってない? 保存しておきたくて……」

「…… あると思うよ」

 

 リュックを漁って袋を取り出した彼女から受け取る。証拠品だし、裁判で提出すればこれがなにか分かる人がいるかもしれないからね。

 

「さっき窓がどうの言ってたけど、どうしたんだ? やっぱりここは2つの建物に別れてるんだろ?」

「それなんだけど…… 先にこっちの方を調べよう。後で言うからさ」

 

 今言ったら混乱させて捜査時間が終了する可能性すらある。それは困るから先に証拠の確保だ。

 

「ほら、この冷蔵庫なんていかにもって感じするよね〝 保管庫 〟なんて書いてあるし」

 

 冷蔵庫を開けてみると、上の段に所狭しと薬瓶が置かれ、下の段は空白となっていた。

 …… ただし、そこにはお椀状の塊と僅かな血がこびりついていたが。

 温度を見るとマイナス20℃に設定されている。

 どうりで血痕が凍りついてしまっているわけだ。

 

「またこれか……」

「というかこれ、冷蔵庫というよりもはや冷凍庫だよね」

 

《コトダマ 冷蔵庫の血痕》

《コトダマ お椀状に固まった粘土質の塊を更新》

 

 薬は全て凍りついてしまっていて、使えなくなっている。

 なんとかラベルだけは読めたが、毒薬のようだ。もしかしたらあの錠剤も元々はここに入れていたのだろうか…… ? しかし、冷凍室並みの温度に設定されているので毒薬は全て台無しになっているが。

 

「もう1台冷蔵庫があるみたいだね」

 

 そちらを開けると、そこには2つのビンが入っていた。

 温度は…… 普通の冷蔵庫並みだ。

 

「ええと…… ビンの1つはクロロホルム、だって」

「それってドラマとかでよくあるやつだよな…… ?」

 

 そうだね。サスペンスドラマなんかじゃあ人の気を失わせるのとかに使われてるのをよく見るから、あんまり詳しくない人でも知っていることが多い薬品だ。

 

「減ってるね……」

「ああ……」

 

《コトダマ 減っているクロロホルム》

 

 もう1つのビンはどうやら毒薬のようだ。

 

 

 

 モノクマ特製毒薬

〝 アイスコーヒーのお供に 〟

 

 ・自殺、殺人共に使える毒薬です。

 ・凍結しやすいので冷凍室ではなく、冷蔵庫に保存してください。

 ・沈殿性なのでお間違えの無いようにご利用ください。

 ・使う分だけ凍らせてください。1日凍結していると毒の成分は薄まって翌日には消えてしまいます。1日以内ならば溶けても毒薬として機能します。

 

 さっそく憎いアイツの飲み物に氷としてぶち込んでやろう!

 ご利用は計画的に!

 

 

 

 相変わらずふざけてるのか、という謳い文句だな。死ねって言っているようなものじゃないか。

 

「減ってるな……」

「減ってるね」

「…… うん、ほとんどないね」

 

 使ったことがあからさまだが…… まあいいか。

 

《コトダマ 凍結する毒薬》

 

 あとはそこに置いてある、一杯になったゴミ箱かな…… ?

 そう思って視線を向けると、それに気がついた日向クンが 「なんだこれ…… ?」 と言いながら手を突っ込んだ。

 いや、まあ…… 尊敬するよ、ある意味。

 

「っうわ、これ、血か…… ?」

 

 ゴミ箱から引き上げた彼の手は血塗れだった。

 しかしその尊い犠牲のおかげで溢れ出して来たゴミはその全容を明らかにしていき…… すぐに私たちはそれがなんだかを悟った。

 

「空の輸血パックだね」

 

 そう、そのゴミは使い切られた輸血パックだった。それも大量に。

 調べてみると全ての型があるようで、どうやら入口の扉にかけられていたのもこの輸血パックの血だったようだ。

 

《コトダマ 空の輸血パック》

 

「これは…… 後で罪木に相談だな……」

「あ、ならそこの床扉からマスカットハウス内に出れるんじゃない?」

 

 私がそう言うと日向クンは疑問を浮かべて、 「は? なんでだ?」 と言う。

 そういえば窓の外の説明をしていなかった。

 

「ほら、窓の外を見てよ」

「…… これは」

「うーん、私の推理は間違ってたんだね…… いい線いってると思ったんだけどなぁ」

 

 このストロベリーハウス1階に位置するはずのファイナルデッドルーム。その窓から見えたのは、明らかに高所の景色だ。そして、タワーの向かい側に存在すると予測されていたマスカットハウスはどこにもなかった。

 

《コトダマ ドッキリハウスの秘密》

 

 七海さんの推理もあのときあった材料だけではあれが限界だったのだ。

 タワーを中心にして2つの建物があるわけではなく、この建物は全部で6階建ての建物だった。

 その事実を知ってびっくりしている2人に言う。

 

「ね? だからそこの床扉を降りればそこはマスカットハウスのはずなんだよ」

 

 別々の形からなる二つの建物。その余った部分にこのFDL…… いや、その奥の秘密部屋、オクタゴンは存在する。

 

「さっさと報告しに行こうか。私は念のためもう少しここを調べておくよ」

「ああ、じゃあ先に行ってるぞ」

「私も……」

 

 2人ともがオクタゴンから脱出し、罪木ちゃんの元へ向かった。

 私はそれを見送ってただ笑うだけ。

 

「日向クンが本当に欲しい才能の手がかりは最初のロシアンルーレットでもらったけれど…… まあ、今はいいよね?」

 

 誰に言うでもなく独りごちて毒薬のビンを突く。

 カツーン、とガラス特有の音が爪の先から響いた。

 

《コトダマ 希望ヶ峰学園プロフィール》

 

 それと、モノミにはあとで話を通しておかないといけないし…… これの準備もしておかなければ。

 鉛筆を取り出し、自身の〝 現在持っているクローバーの手帳 〟を塗りつぶして行く。

 すると、とある文字が浮かび上がって来た。

 

《コトダマ クローバーの手帳》

 

「約束は、守るよ…… いや、元からそうするつもりだったんだからあんまり関係ないかな?」

 

 約束は守る。

 だからキミも約束通り、名誉を汚されても怒らないでね?

 …… これは必要なことなんだから。

 

 この世には自分自身にしかできない役割というものがある。

 だからこれは私たちにしかできない、私たちだけの役割…… のはずだった。

 

 

「キミは覚えてるかな、あのときの人狼ゲーム。楽しかったなあ……」

 

 立場は逆になっちゃったけれど、またああやって遊べればいいよね。今度は負けないから……

 キミの仕掛けた最期の大仕事(詐欺)、いや、私たちの仕掛ける大きな大きなギャンブルじみた詐欺を、最後まで貫いてみせるよ。

 

 ありがとう、十神クン。

 

 これは私たちの渇望。

 皆で生き(目覚め)ることのできる、最後の可能性に賭けた…… 渇望なんだ。

 傲慢な自己満足に彩られた、希望よりも俗っぽい…… そんな望み。

 

 まさか、被害者がクロの計画を元に計画を立て直しただなんて誰が思うだろう?

 

 そんな前代未聞の学級裁判が…… 史上最悪の出来レースが始まる。

 それは私の負けで繋がる物語。

 暴かせること前提の、学級裁判。

 死んで始まり、死んでまた続くことを願う、私なりの未来。

 死んでも終わりになんかしてやらない。だって〝この世界は夢の中〟なんだ。

 夢ならば、それを見ている人間がどう動かしたって問題ないだろう?

 それに結果が変わらないのなら、過程がいくら違くても問題なんてないよね。

 だから私は動機を隠す。私の、私たちの動機だけは隠し通して事件を暴かせる。

 この事件は最初から凶器不明、死亡推定時刻不明、動機不明の事件だったんだ。

 だから隠し通す。

 誇張に誇張を重ねて本当のクロと、嘘の過程を創り出す。

 

 …… たとえ、〝 私たち 〟が悪者になったとしても。

 

 震えはとうに止んだ。

 覚悟は既に決まっている。

 ならば、あとは全力で楽しむだけだ。

 

 ……目を閉じる。

 

「精々楽しませてもらうよ、最期くらいはね」

 

 ―― どこかで始まりを告げる(アナウンス)が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

希望のカケラ 残り――

 

 

日向  5/6

小泉  4/6

罪木  6/6

澪田  3/6

ソニア 3/6

辺古山 4/6

七海  3/6

田中  2/6

九頭竜 4/6

左右田 2/6

十神  6/6

西園寺 2/6

花村  4/6

弐大  2/6

終里  2/6

 

 

 

 

 





 エクストリィィィィム! さて、いつからだと思います?
 うぷぷぷぷ!

 ※それぞれのアリバイなど別の人が調べていた情報は裁判中に出て来ます。追加で出て来たときに随時証拠一覧へ記載致しますので参考にどうぞ。
 原作のシステム通り日向クンは狛枝が秘蔵している物を除き、裁判までに全ての証拠を手に入れています。

・推理の邪道
 先にネタバラシしていくスタイル。
 供給なんてないと思ってたんですよ…… まさか公式が供給してくるとは思わないじゃないですか…… 公式と思考が被ったのはめちゃめちゃ嬉しいですけどね! (やけくそ)
 それでモチベーションがうなぎ登りになったのも事実ですし。

 ちなみに今作での最初のコンセプトは成長した誰かさんがクロ、ということと詐欺師してる詐欺師の2つです。まさかそこからこんなに広がるとは……


 タイトルはV3捜査BGM 「絶望searching」 と 「希望searching」 より。それに加えて本小説のテーマである 「渇望」 を添えて。

 ps. 昨日、5月5日はダブル十神クンの誕生日ですね! おめでとう!
 ちなみに5月3日は雪染先生の誕生日でした!
 ただ豚神さんの本当の誕生日は本人にも不明なんだろうなあって。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。