1度目の学級裁判は、私と日向クンの一騎打ちで終わった。
この学級裁判が始まるまで私は自由行動をある程度共にしながら皆の観察に努めていた。仲良くするべきか、否か。それはメリットを取るのならば仲良くするほうがいいに決まっている。だから、感情がどうとかは関係なく最低限触れ合うことにした。
それに、今回のイレギュラーなパーティーの開催が決まって〝原作通り〟に進めるためにもある程度の信用が必要だった。
結局、希望のカケラはあまり集まらなかったけれど。この経験を通して分かったことといえば、カケラの取得条件に双方が楽しむ必要があるということか。
私が無理矢理皆に合わせていたからカケラを取得するのが難しかったのだろう。
手紙を作り忘れて寝てしまったのは失態だった。けれど結局は上手くことが運んだので問題ない。
モノミがバージョンアップし、モノクマに多少抵抗できるようになったところでこの監獄のような島からは逃げられないし、脅迫状の犯人が私だと勘違いされるのも別にいい。
念のため、自分が死なないようにナイフはおもちゃを使い、絨毯の裏に塗料を使用して万全で挑んだ。狂言で終わればそれが最高の結果。
けれど、十神クンが死んだ。
…… 原作通りだ。
ナイフを確認する際床の絨毯をズラしたのが原因か、はたまたこれも原作通りにテーブルの下に潜り込もうとしたのか? 真相は不明だけれど死んだことには変わらない。
喉元を勢いよく鉄串に貫かれ、声を封じられ、そして何度も何度も体を貫かれて…… 酷い、死に様だった。
私の日常でも怨恨による複数箇所の刺し傷なんて見る機会はあまりないから、思わず口元を押さえるくらいに。
それからも全くもって〝 原作通り 〟に進み、無事私は孤立した。
酷い吐き気と罪悪感がのたうちまわる内心をひた隠し、哄笑し、煽り、トンカツがトラウマになるほどの光景を見せつけられ、引きつり笑いをしながら 「自分はこうなりたくなんてないね!」 と宣言し、そして…… 学級裁判場から逃げ去った。
誰1人として私に声をかける存在などおらず、コテージに戻ってからは泣きながら吐いた。
胃の中身を空っぽにして、それでもなお十神クンの姿を思い浮かべてえづく。
生前は頼もしかった彼を、私と腹の探り合いをしながら唯一対等に話せた彼を。
そしてなに1つ真相を知らされずにおしおきされた花村クンを。彼のバックストーリーを知っているのは今私しかいない。誰かにそれを話す前に殺された。
…… 他ならぬ、私の手によって。
2人とも私が殺したようなものだ。分かっている。分かっている。そんなの、分かっている!
「私に、嘆く資格なんてない」
それを選んだのは私だ。
引き返すタイミングはいくらでもあった。
それでも〝 原作通り 〟に動くことを選択したのは、私。
花村クンという爆弾を抱えてしまうのを恐れた、臆病な私なのだ。
なぜだ? なにがいけなかった。
誰かが死ぬリスクは最低限にまでしていたはずだ。なのに、死んだ。もう少しなにか方法はなかったのか? そんなことがぐるぐる頭の中を巡り、あーだこーだと思考を繰り返す。
そうか、下の花村クンを騙す返り血のかわりを用意していなかったとか、そもそもパーティなんて開催させなければ良かったとか、後悔先に立たずとはまさにこのことだ。
でも大丈夫。
前から似たようなことをやってきたじゃないか。今度はそれを意図的に起こしただけ。結果はいつもと…… 幸運と変わりやしない。
割り切れ、私。ここで躓いてなんかいたらこれから先進めるわけがない。そうなれば意思の力を失った私は確実に誰かに殺される。
いいか、言い聞かせるんだ。
私はただ〝 死にたくない 〟だけ。
私の命を脅かす存在なら、どうなったって私は〝 悪くない 〟はずだ。
だって…… 障害物が〝 勝手に死んで行く 〟だけなんだから。
最強のセコムじゃないか。誇れよ私。
泣いたって彼らが戻ってくるわけがないんだから。
「狛枝さんがこんなことをしてしまったのは、不安だったからでちゅよね…… でも、怖がらなくてもいいんでちゅよ。まだミナサンは会ったばかりでちゅけど、きっとらーぶらーぶできるはずでちゅ。なんならあちしも……」
「うるさいっ!」
どこからかわいて出たウサギは無神経なことばかり。
「怖くなんてない!」
まるで本当に先生みたいだ。今の私には彼女の優しさが身を切り刻むに等しいものにしか思えない。
「ご、ごめんなちゃい…… けど、覚えていてほしいんでちゅ。先生はいつでもあなたの味方だから…… ひえっ!」
思わず投げつけたヘッドホンはモノミの真横を掠め、壁にぶち当たって落ちた。
そしてモノミは逃げるようにどこかへと消えて、私は再び1人になる。
拾ったヘッドホンは壊れてしまった。あーあ、私はなにをやっているんだ。
「…… このまま、進まなければいいのに」
とても眠ることなんてできず、壁に寄りかかって膝を抱える。
久しく感じていなかったひとりぼっちの感傷は、急に周りが賑やかになったせいか。
まったく、私が感傷を抱く資格なんてないのに。早くこの気持ちを忘れてしまいたい。
いつの間にか早朝となり、訪ねて来た左右田クンと弐大クンには深夜ハイと鬱々とした感情を上乗せして嫌味を言い、やっと日が昇りきった頃に私は眠りに落ちていった。
「あっはは、寝坊した……」
自分に手を出すのならどうなるか分からないぞ? と
いずれにせよ、他の皆はとっくに新しく解放された島を見回っているだろう。
皆から置いてけぼりになるのは予定調和にしてもちょっと傷つくが仕方あるまい。それだけのことをしたのは私だ。
「ブランチにでもするしかないね」
冷蔵庫に手をかけ、停止。
これを運んでくれたのは十神クンだったな。だからといって、なぜ冷蔵庫を開けることに躊躇ってしまったのかは分からない。
ただなんとなく、ふと思い出しただけだ。
冷蔵庫の中にある食パンをトースターで焼き、手作りの梨ジャムを塗り付けて食べる。
このジャムは昨日、掃除を適当に終わらせて余った時間で作ったものだ。会場の掃除なんて埃さえ落ちてこなければいいし、その他の場所の景観に気を遣うほど皆とは仲が良くなかったからね。表面上の優しい猫かぶりモードで仲良しごっこしていただけ私にとっては上々だ。
日向クンとも、自己紹介以上に傍にいたら自分を見失いそうで怖かったから早々に離れたし、真に私と向き合ってくれていたのは十神クンだけ…… ってまた私は死んだ人のことをグチグチと。未練がましいぞ。
そうだ、こういうときは楽しいことでも考えよう。
梨のジャム作りは幸せだった。
梨とグラニュー糖とレモン汁少々でほんのりと甘いジャムを作ることができる。瓶にいくつか取り置いて私専用のものと化しているので他の皆には欲しがってもあげないもんね。やっぱり欲しくてもないものは自分で作らないと。
花村クンもいなくなったし、存分にキッチンを使うことができるようになった。やったね凪ちゃん! …… はあ。
なんでこんなに虚しいんだろう。
「皆には会いたくないや……」
昼間はゴロゴロしながら過ごして、夜中に活動しよう。そうしよう。
あ、だめだそんなことしてたらレストランが使えない。参ったな。マーケットの家具にキッチンとか…… はなかったよね。そうだよね。私が全部リストにしたんだから間違いない。気晴らしにデザート作るのも皆から隠れながらやらなくちゃいけないだなんて辛いなあ。
別に見つかっても特になにかあるわけじゃないけれど、なんか気まずいからね。
2人を死に追いやったゴミクズなんかと出会っちゃう他の皆が可哀想だよ…… って、まるでこれじゃあ狛枝だ。
私が狛枝なのは確かなんだけど。まさにこれが同族嫌悪ってやつ?
「暑い……」
私がうだうだぐーたらしていたら唐突に部屋の扉がノックされた。
また左右田クンたちが性懲りもなく拘束しにでもきたのかな?あれだけ真剣な〝 説得 〟をしたっていうのにどうやらボケキャラに転職したらしい。
鉄パイプの激しいツッコミでもしてやらないと治らないのかな。ああ、なんでこんなにイラついているんだ。
「……」
「なんだ…… いるじゃないか……」
「なんの用?」
そこにいたのは予想に反して日向クンだった。
昨日あれだけ激しい舌戦をした後だというのにのこのこと私に会いに来るその気概は褒めてあげるけど、特に私の方は用がない。今更なにしに来たのかって感じだよね。キミの用なんて知らないから早く帰ってくれない?
そんな風に明け透けに言ってみるのだけれど、彼はムッとしながらも譲らなかった。
「キミ、お昼は食べた?」
「い、いやこれからだけど……」
なんでこの人、自由行動でもないのにここに来てるの?
「残念ながら私は今しがたブランチを堪能したところだよ。ほら、用がないならさっさと行きなよ」
「い、いや、本当に食べたのか?お前、レストランには来てないだろ? それと、新しい島に行けるようになったからそのことを俺は話しにだな……」
扉の隙間から見えた日向クンの表情は本気だ。
彼は結構分かりやすいほうだから嘘なんて吐いてないだろう。仕方ない。ちゃんと証拠くらいは見せてあげよう。
「…… パンくらいしかないけど、ここで食べてく? 見せなきゃ納得してくれないんでしょ?」
「え? あ、良いのか?」
「レストランで食べるのならどうぞご勝手に」
「いや、ここで食べていく。それでいいだろ?」
「はあ…… じゃ、入りなよ」
なんで私が我儘言っているみたいな対応になるの?解せない。
「結構物があるんだな……」
「片付いてないみたいに言わないでよ。これくらいマーケットに行けばいくらでもあるからキミも少しは家具を調達してくれば?」
トースターや冷蔵庫、それに花瓶と雑誌。カーテンやラグもメダルで揃えているので、借りているコテージというよりもこの一室だけでニートしながら暮らせる程度には物が置いてある。
日向クン用にトーストを2枚焼いて私お手製のジャムと作ってあった麦茶を出す。ああ、私だけのジャムなのに……
男の子ってこれだけじゃお昼ご飯にならないよね?とりあえず用意したまな板と包丁でキャベツを切り続け、山盛りの千切りを一緒に出す。
マヨネーズ? ドレッシング? そんなサービスなどない。天然ではなく、嫌がらせも少し兼ねているからね。
うーん、あまり気にしていなかったけれど、物を焼けないのは困るな。旧館からカセットコンロでも持ち出そうかな。そうすれば夜中にマーケット行くだけで済むし。
「こんな風にしてるんだな」
「まあね。いつ誰が襲い掛かってくるかと怖くて怖くて、その点ここなら鍵もかけられるし…… 窓ガラスも飛散防止フィルム張ってるから簡単に侵入ができないようになってるよ」
「そう、か……」
そのわりに彼を招き入れているのは矛盾するって?
その通り。別に信用しているからとかではない。身を守る術があるから気にしていないだけでもない。本当に皆がそこまで危険だと思っているわけではない。
これはただのポーズだ。
病的なまでに〝 襲撃 〟を恐れ、臆病な奴なんだから刺激をしてはいけない。そう思ってほしいだけだ。そうして、これ以上関わる前に見捨ててほしいだけ。
「私ね、人が死ぬところを見るの初めてじゃないんだよ」
「…… そうなのか?」
疑いの眼差しで射貫く彼に微笑みかけて身の上話をしてあげるのだ。
「裁判中にも言ったけれど、私は幸運なんだよ。でもその幸運は私の身の安全は保障してくれるんだけど、周りはそうも行かなくてさ。大切な人は皆死んでいった。それを見ているうちに、死ぬっていうのがすごく怖くなった。誰もが死ぬのは怖いはずなんだけど、私の場合それが身近すぎて、普段の生活ですら安心できなくてさ…… いつの間にかこんなになっちゃって…… 自分のためなら他はどうでもよくなっちゃったんだよ」
「自分さえ生きてればいいってことか?それって、寂しくないのか?」
その言葉に唇を噛みしめる。
「寂しくないよ…… ?」
周りに誰もいないなら寂しさなんて感じるはずがないんだから。
「…… 、そうだ狛枝。このジャムってどうしたんだ? マーケットにはこんなのなかったと思うんだけど」
日向クンは優しいね。
わざわざ話題を変えてくれるだなんて。
「自家製だよ? 私、梨が好きだからさ。昨日、パーティの前に作ったんだ。酷いよね、世のマーケットにあるのはアップルジャムやブルーベリージャムばかり…… 好きなものを食べるには自分でどうにかしなくちゃいけないんだ」
「そうか。美味いな、これ。また今度、食べに来てもいいか?」
「餌付けしてキミを殺そうとしているかもしれないよ? それでも?」
「お前が少しでも〝 死 〟に近づく選択をするとは思えない。あんな光景を見せられた後だし、余計な。こっちこそ、お前と仲良くして殺そうと企んでるかもしれないぞ? そこはどうなんだ?」
「もしそうなら、突発的に適用できる完璧なトリックを作りあげなくちゃね」
「はは、そうか」
ちょっとだけ殺伐とした雰囲気だったが、これも悪くはない。
いつの間にかイライラは治まっていて、ひっそりと彼に感謝した。
―― そんな、優しい夢を見た。
この島に来て数日のそんな記憶。
2回目の学級裁判では、最期に分かり合うことのできた主従に最低な嫉妬を抱き、絶望病に侵されながらもギリギリまで耐えていた。
看病の口実で病院に留まり、夜時間まで過ごすことに決めていたが、いつの間にか仮眠室で寝てしまっていて……
「狛枝さぁん……」
気が付いたら命の危機に遭った。
お腹の上でまたがる彼女を振り払うほどの体力はなく、熱っぽく絡みつくように首を絞める彼女に抵抗する意思すら湧いてこない。
「…… ぁ、く…………」
まるで私の命を弄ぶように、首を絞めてはギリギリで開放し、こちらが苦しむ姿を恍惚とした表情で見下ろす。そのなんと趣味の悪いことか。
ときおり首筋をひと撫でするメスに身体を硬直させ、傷ができれば痛みに、できなければひと時の安堵に呼吸を早める。
思考には矢印が足されたように何度考えても逃げるという選択肢が除外されていく。
いっそこのまま死んだらとても楽だと薄い意識が誘導されていき、生存願望が消されていく。昏い悦びに支配され、しまいには自らメスの刃先を求めるように身体が動く。
ほとんど言うことを聞かない身体ではどうあっても死が回避できそうもない。
そもそも、このまま私が先に進めたとして…… 本当に生き残ることなんてできるのか?
4章では餓死の危機に瀕することになる。そこで田中クンが動いてくれれば万々歳だが、そうでない場合は? 皆仲良く餓死? 4章を乗り越えても、裏切り者が死ななければ最後の裁判にはならないんじゃないか? ほら、未来なんて見えないじゃないか。
ここで西園寺さんや澪田さんが死ぬのは分かっているが、私が死ぬとなるとどちらかは生き残るわけだ。
皆から嫌われて、死を望まれているだろう私が死ねば、小泉さんの遺志を継いだ西園寺さんが生き残るかもしれない。九頭竜クンのように。
それはそれで、素敵かもね。
「痛いですかぁ? 苦しいですかぁ? 素敵なお顔ですよぉ…… あなたの絶望した顔なんて、なかなか見られませんからぁ」
なんで彼女はさっさとやろうとしないんだ。早くしてよ。
死ぬのなら、あんまり痛い思いをしたくない。早く、早く、早く!
ああ、でも…… そうか、こんなことを思っているからトドメを刺してくれないのか。
「あなたが死んで悲しんでくれる人は、もういませんねぇ? ああ、もっとその顔を見せてくださいよぉ」
絶望病に抗っていた思考を投げ捨てる。
そうして、諦観を浮かべてそっと目を閉じれば…… なぜか日向クンと話したときのことが頭を過った。
彼は、私の死を悲しんでくれるのかな。
もう少し皆と仲良くしておけばよかったなあ。
ああ、だから…… ね。
その…… 私に歩み寄ってくれたキミには謝らないといけないよね?
言う相手が目の前にいないのはとても残念だけれど。
「どうしましたぁ?」
「別に……」
「これから死ぬのに、怖くはないんですかぁ?」
絶望病でそれを悦んでる私になんてことを言うんだ。
「……」
「無視しないでくださいよぉ」
「……」
「わ、私のことを見てくださいよぉ!」
「……」
これはちょっとした嫌がらせだ。
だって、キミのことを気にしてあげるほど、私とは仲良くないでしょ?
友達ですらないんだから。
「狛枝さぁん……」
「……」
ねえ、日向クン。
私は気にしてもらえて嬉しかったよ。たとえ危険因子を見張りに来ただけだとしても、キミとの希望のカケラが唯一私にとっての支えだった。
だから、心の中でキミに謝らせてほしいな。
…… 諦めて、ごめんなさい。
《 ERRORが発生しました。危険度A。強制シャットダウンを開始します 》
―― 建物内に警報が鳴り響いています。まるでお嬢様と病院から逃げ出した、あのときのように。
けれどもうなりふり構ってはいられませんでした。モニタールームで試行錯誤していた方々には申し訳ありませんが、他の方がどうなろうと私には知ったことではないとは未来機関へ入る際に伝えていましたから、うろつきさんやうそつきさんは理解を示してくださるでしょう。
苗木さん方にはご迷惑をおかけしますが、それを承知で同行を許可したのはあちらです。
私はお嬢様さえいればいい。
死亡処理が下されるその直前に無理矢理機械を引き抜き、眠ったままの彼女を抱いてクルーザーに飛び乗りました。
この時点でうろつきさんたちは彼らの妨害をしてくださっているでしょう。
ありがとうございます。そう携帯電話に留守電を残し、島を離れました。
凪はまだ目を覚ましませんが、死亡処理が下される前に連れ出したのでまだ僅かに意識が回復する望みはあるでしょう。
彼女の不本意な死など起こさせるわけにはいかないのです。
そうして辿り着いたマンションに入り、隠れ家として用意していた保存食や薬を確認します。
病院で働いていた経験は生きているもので、手早く栄養を取らせるための点滴や処置を施し、リクライニングベッドへ彼女を横たえました。
これからは私が妹を守り続けなければなりません。
傍の椅子に腰かけ、介護の勉強と趣味による編み物などに勤しみながら私は凪が目を覚ます日を待つことにします。
いつかはこの場所を知っているうろつきさんやうそつきさんも合流することでしょう。もしも、彼女たちと私の思想が合わないのなら、そのときはそのときです。こちらの意志をしっかりと貫きましょう。たとえ彼女たちをこの手にかけることとなってもです。
そうでもしないと、また凪が奪われてしまう。
また凪が傷ついてしまう。
彼女にはお母様のような末路を辿らせたくありません。
幸いなことに、この手は幼少期の折から彼女の為に汚しています。あのときのように、邪魔者はこっそりと始末してしまえば良いのです。
ああ神様、どうか私たちに平穏な余生を与えてください。
私は彼女が目覚めるその日まで、ずっと、ずっと待ち続けるつもりですわ。
それこそ、この一生を全て費やしても。
永遠に、永遠に。
それが、彼女を壊してしまった私なりの償いなのですから。
「凪様…… あなたが間違ったら私が正す。でも、私が間違ったら…… 誰が正してくれるのでしょうね?」
私の言葉に返す言葉は、終ぞありませんでした。
・ぼっちルート
条件
赤錆ではないこと。
パーティまでに希望のカケラ3つ以上の人物が1人もいない。また、罪木のカケラ未達成、及び図書館で「意味が分かると怖い話」未発見により4章突破方法を思いついておらず〝今殺されるわけにはいかない〟という決意が薄弱。
・モノミ
実は本編で言った言葉とまったく同じ。相手は同じ人間なのに状況によって救いになるか、追い詰めるかがこうも違うのか。
・エラー
「あーあ、まったくバカだね。でも、死なせはしないよ。だってボクは、キミを守る幸運なんだから。精々細やかな幸せをプレゼントしてあげるよ。ゴミクズのボクが用意する幸運なんてたかが知れてるけど、感謝してよね…… って、もう聞こえないか」
・メイ子
本編でこのような手段にでなかったのは、凪自身が望んで起こした死だったからです。彼女の覚悟は信じますが、生きたがりの彼女が不本意な死を下されそうなとき、メイ子さんは我慢できません。
・その後のプログラム。
凪を抜いたアイランドモード突入。
悲しいね。