【完】ACE COMBAT SW ‐The locus of Ribbon ‐   作:skyfish

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書くペースが落ちてるな~




第22話「闇に潜む敵」

1944年8月10日 21:00

 

雨天時の空は二つの世界が存在する。一つは皆がよく知る雨が降る光景。今は夜なのでただでさえ暗い夜は闇に一層近くなる。しかし雲を挟んだ上は光景が一変する。雨を降らす雲は雲海となり、雲一つない星々と月が輝く夜空が広がっている。

 

その中を一機の飛行機が飛んでいる。

 

カールスラントが開発した Ju52輸送機 だ。原型機(Ju 52/1m)は1930年に単発で初飛行したが、1932年に BMWのエンジンを3発にすることによって性能が向上した。カールスラント空軍の兵士たちの間では『Tante Ju(タンテ・ユー =「ユーおばさん」の意)』と呼ばれ親しまれている。

 

「むう……」

 

「不機嫌さが顔に出ているわよ、美緒」

 

 正面に座っていたミーナが笑顔で窘める。だが、坂本の表情は変わらない。

 

「わざわざ呼び出されて来てみれば予算の削減なんて言われたんだ。顔にも出るだろう」

 

「彼らも焦っているのよ。いつも私たちが戦果を挙げられてわね」

 

「奴らが見ているのは自分の足元だけだ」

 

「戦争屋なんてあんなものよ。もしネウロイがいなかったら、あの人達、今頃人間同士で戦いあっているのかもね」

 

「さながら世界大戦か……笑えんな」

 

ありえたかもしれない世界。いつもなら鼻で笑う坂本だがしなかった。何故ならそんな地獄のような世界を体験した人物を知っているから。

 

「すまないな、宮藤。せっかくブリタニアの街並みを見せようと連れてきたのに」

 

宮藤が休暇だったのでロンドンの町を見せてあげたいと思い同行させたが、上層部との会議だけで時間を費やしてしまった。航空機の窓から外を見ていた宮藤は「大丈夫です」とだけ返事を返す。

 

「……あれ? これって」

 

インカムから聞こえてくる透き通るような歌声が聞こえてくる。

 

「んっ? ああ、これはサーニャの歌だ。基地に近づいてきたな」

 

「私たちを迎えに来てくれたのよ」

 

機体の窓から外を見る。そこにはJu52と並んで飛行するサーニャを見つける。宮藤は窓越しからサーニャに手を振る。それを見た彼女は顔を染めて雲の中へと隠れてしまった。

 

「……サーニャちゃんってなんか照れ屋さんですよね?」

 

「ふふ、とてもいい子よ。歌も上手でしょ」

 

ミーナが微笑んだ。と、その時

 

「…あら?」

 

先ほどまで聞こえていたサーニャの歌声が止まった。

 

「どうした、サーニャ?」

 

「シリウスの方角に、所属不明の飛行体、接近してきます」

 

謎の飛行体………おそらくネウロイだろう。だがこちらのレーダーや基地のレーダーに反応しないなんて今までなかった。例外は存在したが。

 

「私には見えないな」

 

「雲の中です。視認するのは難しいかと。会敵まであと3分」

 

「そうか……」

 

「ど、どうすればいいんですか!?」

 

「どうにもできないな。なにせ私たちはストライカーを持っていないからな」

 

そんな~、と宮藤はこの緊急時に何もできないことを悔やむ。その間にミーナはサーニャに援護が来るまで時間を稼ぐよう指示を出す。

 

「はい、目標を引き離します」

 

サーニャはJu52から距離を取り、目標の迎撃に向かった。高度を上げて感覚を研ぎ澄ます。彼女の固有魔法:の電波を出し、接近中の飛行体の正確な位置を把握する。

 

「……あ」

 

赤く輝く、ネウロイが高速接近しているのをサーニャは捉えた。機敏な動きでフリーガーハマーを構え、引き金を引く。

 

放たれる二発の時限式ロケット弾。目標の未来予測位置に向かい光球が生まれ、雲海に大穴ができる。

 

「反撃して……こない?」

 

サーニャは疑問に思う。今まで多くのネウロイと戦ってきたがこちらの攻撃を受けて反撃してこないものはいなかった。でも、目標はこちらへと接近を続ける。近づかせないようにまたロケット弾を発射する。先ほどと同じように雲に大穴ができるが命中しない。

 

もう一度狙いを定めようとすると雲の下から轟音が聞こえてくる。基地の方角から目標の飛行体よりも速いスピードで接近する別の反応がある。思い当たるのはつい昨日届いたものだとすぐに思い出した。通信が入る。

 

≪こちらメビウス1。これより支援攻撃を行います≫

 

接近中のネウロイのすぐ目の前の雲に数多の小さい穴ができる。メビウス1が敵の進路を塞ぐように機銃を掃射したのだ。それを回避したときに生まれた一瞬の隙を見逃さない。

 

「……発射」

 

放たれた2発のロケット弾が狙った場所で爆発する。

 

「………命中。ですが損傷は軽微のようです」

 

さきほどのロケット弾が敵の近くで爆発したようだがあまりダメージを与えていないようだ。

 

「………目標。遠ざかります」

 

≪そのようですね。こちらでも確認できます。それではあとは彼女たちに任せますので私は先に基地に戻ります≫

 

「ありがとう。それにサーニャさんも」

 

ミーナはサーニャとメビウスにお礼を言う。その後、エイラたちと合流して周辺を警戒したがなにも起こらなかった。

 

 

 

 

ミーティングルームに集まり今日の報告をしていた。

 

「では、ネウロイはサーニャしか見ていないのか?」

 

「ああ、雲の中にいて発見できなかった」

 

雨天の中出撃したため帰還したとき全員びしょ濡れだったから、着替えて私服姿の人が多い。かくいうメビウス1は昨日届いてしまった機体の試運転も兼て出たからいつもの服装だ。

 

「あれ? メビウスさんは見てないんですか? 攻撃してましたよね」

 

「あれはレーダーに映っているのを捉えただけで直接は見てないわ」

 

「雲に隠れていても大体の位置が分かるって便利だよね~」

 

何故敵の位置が分かったかを簡単に説明しハルトマンが素直な感想を述べる。ま、彼女の言いたいことは分からなくもない。F-22Aやあの機体に積まれているレーダーは今の時代の物よりも性能が高いから。

 

「何かほかに意見はないか?」

 

「ちょうど似た者同士、気でも合ったんじゃないでしょうかね? あいた」

 

「少しは言葉に気を付けなさい」

 

「申し訳ありません…」

 

ペリーヌが横目でサーニャを見ながら、一見丁寧そうに聞こえて、結構辛辣な意見を述べたので、メビウスが彼女の頭を軽く叩いて叱る。

 

「……ネウロイとは何か」

 

 ミーナのつぶやきで、全員の視線が彼女に集まる。

 

「有史以来人類が敵と認識しているネウロイ。でも、その正体は全く分かっていないわ」

 

彼女たちの話を聞く限り、この世界では古くからネウロイとの戦いが繰り広げられてきたのだろう。

 

「そこでしばらく夜間戦闘を想定したシフトを敷きます。サーニャさんと宮藤さん、当面の間、あなた達を夜間専従班に任命します」

 

「はい」

 

「え、私もですか?」

 

なんで私が? と芳佳は戸惑う。

 

「今回の戦闘を見ているからな。それに宮藤だけが夜間飛行の訓練をしていないからちょうどいいだろう」

 

「いやでも………むぎゅ!」

 

芳佳は自信がないことをミーナに告げようとしたその時、エイラがソファーの後ろから芳佳の頭の上にのしかかり、手を挙げた。

 

「はいはいはいはい! 私もやる!」

 

もともと宮藤だけに任せるつもりではなかったミーナは自推してきたエイラを選んだ。

 

「いいわ。ではエイラさんも含んで三人ね」

 

笑いをこらえてミーナは言った。

 

「そういえば、メビウスは夜間飛行できないのか? お前の機体のレーダー性能があればサーニャの索敵能力と相性はいいと思うのだが…」

 

確かに相棒のレーダーの効果範囲は前方で最大250kmだ。側面と後方はそれより距離が縮まるが、それでも十分な範囲をカバーできる。メビウスとサーニャの2人で行動すれば夜間の哨戒任務の効率は大幅に上がるだろう。だが、そこに問題が1つある。

 

「できるけど、ラプターだと最低一日は休ませないといけないし、それとあれを毎日飛ばすと一週間でポンコツになるよ」

 

「やはりそううまくはいかないか…」

 

緊急時に飛べないとなると問題になるから、夜間飛行はあの3人に任せることに決まった。

 

 

 

夜遅い時間。夜間哨戒の続きをしようとサーニャとエイラが準備をしていた。今日はもう遅いので宮藤は明日からの参加になる。誰もいないはずの格納庫に入るとそこには先客がいた。

 

「メビウスさん?」

 

「何やってんだこんなところで?」

 

彼女のストライカー。F-22Aラプターの傍にメビウスが座っていたのだ。その横には寝袋のようなものもある。

 

「しばらくはここで寝ようと思ってね。いつでも出れるようにさ」

 

今日の出来事で自分もどうかしていたとメビウスは反省していた。ジェット機は夜間でも飛行可能にできている。敵も夜に夜襲を仕掛けてくることも考えられる。だからこれからは部屋に戻らずここで寝ることにした。それでもやはり一人でどうにかするには人手が足りない。でもここで誰かをお願いするわけにもいかない(あの女神ならやりかねない)

 

「AWACSさえ居ればなぁ」

 

「? エーワークスってなんダ?」

 

「簡単に言うと、空飛ぶ管制官だよ。戦闘の指揮を任されている」

 

「メビウスさんの世界でいうミーナ隊長みたいな存在ですか?」

 

サーニャがAWACSのことをミーナに見立てて言う。うーん、正確に言うと違う気がする。

 

「戦闘の指揮を後方から指示するのが役割かな。能力でいうなら、ミーナの空間把握とサーニャの全方位広域探査の二つを駆使して、安全な場所から私たちに指示を出すんだ」

 

「……すごい」

 

「イヤイヤ。それなんて奴ダヨ。二つの固有魔法持ちって」

 

「あはは。君たちから見ればすごすぎかもね」

 

ここにいないスカイアイのことを思い出しながら少しだけ苦笑した。

 

「メビウスさん」

 

「ん?」

 

「あの時は、ありがとうございました」

 

あの時……ああ、さっきの戦闘の事か。

 

「あれは敵の足を止めただけだから、そんなに畏まらなくても」

 

「でもそれでダメージを負わせることが出来ました」

 

「皆が無事ならそれで十分さ。ん」

 

サーニャと二人で会話をしていたがふと見ると、エイラがブスッと頬を膨らませて妬ましそうにこちらを見ている。ああ、またか。と思いながら会話を終わらせる。

 

「ささ。早く準備しなさい。それとエイラ。ちょっと耳貸しなさい」

 

「む。なんだヨ」

 

呼ばれたエイラはメビウス1へと近づく。そしてメビウスは彼女に耳打ちをする。

 

「サーニャのエスコートしっかりやれよ」

 

「んな!!?」

 

ボッ! とエイラは顔を赤く染める。ここの皆と3カ月過ごしていろいろと知ってきたのだがエイラはサーニャに何やら恋心みたいなものを抱いているようだ。ミーティングのときの行動も宮藤に先を越されたくない一心だろう。でもそれをいろいろ突っ走らないようにしてほしいと思う。だって最初のころいろいろ面倒くさかったし(第6.5話、7話参照)

 

「ううう、うるさいな。余計なお世話だ! いくぞサーニャ」

 

「う、うん」

 

「いってらっしゃ~い」

 

2人を見送ったメビウスは昨日届いた機体のなかにあった紙に書かれている文章を読む

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

くぁwせdrftgyhじゅいこlp;@:(r゚∀゚)r4zwぇcrvtbyぬみ、お。p・@1あ2s3yヽ(0w0)ノ13ざsxdcfvgbhんjmk、lおいくぁヴぁおいxvぃせう( ゜v゜)10うぇいfんvckvじゃふぉぴblzじゃ(´・h・`)3jvうぃgv;clヵううrhyvjをhv(L。□_□)くぁwせdrftgyhじこlp;@:「」ヽ(0w0)ノ13

 

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メビウス1の目にはこのように意味不明な文章が連なっているが、頭の中ではちゃんとした言葉として入ってくる。要約するとこうだ。

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

今回はあなたが一番最初に乗っていたF-2Aにしました。とある世界で事故で廃棄になりそうになったものを拝借したのでご安心ください。

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

「ダメになったやつを再利用するならいいけど……盗んだと感じるのは少し嫌だな」

 

ノースポイント空軍の主力戦闘機の一つF-2Aを頭に浮かび、ふとそう思うメビウス1だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある世界 2007年10月31日18:00のニュース

 

≪今日の午後二時ごろ、愛知県名古屋市にある名古屋飛行場で最終チェックを行っていた航空自衛隊の戦闘機『F-2A』が離陸失敗により墜落、炎上しました。この事故で負傷者はなく、パイロットも脱出し無事だとのことです≫

 

≪しかし、この事故ですが何とも不思議な出来事が起こりました。こちらの映像をご覧ください。これは監視カメラが捉えた事故の映像です。ご覧のように離陸直後機体が下がり地面に激突しているのが分かります。ですがこのあと火を消し止めましたが、不思議なことに機体の残骸が無くなっていたというのです≫

 

≪一部では証拠隠滅の疑いが出ていますが、多くの周辺住民が事故の一部始終を目撃しており、調査委員会は解明を急いでいます≫

 




本当は複座のF-2Bが事故っていますが、細かいことは気にしないでください

読んでいただきありがとうございました

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