「‥‥トさん、フェイトさん!」
(ティアナ‥‥?)
遠くから近づいてくる声が、後輩の声だと理解した時、フェイト・T・ハラオウンはようやく気を取り戻した。
目を開けたフェイトの視界には、こちらを覗き込んでいるティアナ・ランスターとシャリオ・フィニーノ、そして照明が落ちたブリッジが入る。
フェイトの頭脳もようやく再起動し、ここに至る経過と理由を紡ぎ出す。
(‥‥身体には何ら問題はありません、マスター)
(うん、ありがとう。バルディッシュ)
寡黙な愛機の口調にも安堵感が混じっていた。
フェイトはゆっくりと身を起こし、2人の補佐官に向き直る。
「大丈夫ですか?」
「私は大丈夫····それより、艦はどうなってるの?」
ブリッジはひどい有り様で、照明も落ちているが、自分達がこうしている以上、『タイタンⅣ』はまだ生きているていう事だ。
しかし、シャリオもティアナも力なく顔を横に振った。
「私たちがこちらに向かっている時、恐らくはブリッジとほぼ同時に数ヶ所直撃弾を受けました。居住区にも戻れないので、どうにか瓦礫を越えてここに来たんですが‥‥」
「ひと通り人命検索しましたが、フェイトさん以外の人は、既に‥‥」
「そう‥‥」
補佐官の報告に、フェイトはつかの間項垂れたが、すぐに顔を上げる。
照明も一部はついたまま。ならばブリッジの機能もまだ生きているかも知れない。
「シャーリー(シャリオ)、通信を確認して。生きてるなら救難要請を」
「は、はい!」
シャリオが立ち上がった時、またも外から閃光が飛び込んできた。
フェイト達はまた被弾かと身を固くしたが、突き上げるような強い衝撃は全く起きない。
その代わり、腹に響くような重い衝撃がビリビリと床を震わせた。
(直撃じゃない!)
「シャーリー、急いで!」
「!‥‥はいっ!!」
「ティアナは私と。船が動けるか確認するよ」
「‥‥はい!」
フェイトとティアナは瓦礫を踏み越え、操舵席に向かった。
本来の主たる男性操舵士は席から吹き飛ばされ、首と手足をあり得ない方向に向けたまま息絶えていた。
「‥‥‥‥」
一瞬だけ黙祷してからフェイトは着席し、コンソールを確認して表情を曇らせる。
主動力たる魔力炉はまだ生きているが、伝導系統がズタズタにされていた。
これでは這うようにしか動けない。
(ダメか‥‥)
ほぞを噛んだその時だ。
「フェイトさん、通信が繋がりました!」
シャリオの声に、フェイトとティアナは反射的に彼女を向いた。
「本局ですか!?」
ティアナの問いに対するシャリオの答えは、予想の遥か斜め上をいくものだった。
「それが‥‥『地球防衛軍、宇宙戦艦ヤマト』だって‥‥」