宇宙警備隊長・冴子   作:EF12 1

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足掻いてみたら

「‥‥トさん、フェイトさん!」

(ティアナ‥‥?)

 

遠くから近づいてくる声が、後輩の声だと理解した時、フェイト・T・ハラオウンはようやく気を取り戻した。

 

目を開けたフェイトの視界には、こちらを覗き込んでいるティアナ・ランスターとシャリオ・フィニーノ、そして照明が落ちたブリッジが入る。

 

フェイトの頭脳もようやく再起動し、ここに至る経過と理由を紡ぎ出す。

 

(‥‥身体には何ら問題はありません、マスター)

(うん、ありがとう。バルディッシュ)

 

寡黙な愛機の口調にも安堵感が混じっていた。

フェイトはゆっくりと身を起こし、2人の補佐官に向き直る。

 

「大丈夫ですか?」

「私は大丈夫····それより、艦はどうなってるの?」

 

ブリッジはひどい有り様で、照明も落ちているが、自分達がこうしている以上、『タイタンⅣ』はまだ生きているていう事だ。

しかし、シャリオもティアナも力なく顔を横に振った。

 

「私たちがこちらに向かっている時、恐らくはブリッジとほぼ同時に数ヶ所直撃弾を受けました。居住区にも戻れないので、どうにか瓦礫を越えてここに来たんですが‥‥」

「ひと通り人命検索しましたが、フェイトさん以外の人は、既に‥‥」

「そう‥‥」

 

補佐官の報告に、フェイトはつかの間項垂れたが、すぐに顔を上げる。

照明も一部はついたまま。ならばブリッジの機能もまだ生きているかも知れない。

 

「シャーリー(シャリオ)、通信を確認して。生きてるなら救難要請を」

「は、はい!」

 

シャリオが立ち上がった時、またも外から閃光が飛び込んできた。

フェイト達はまた被弾かと身を固くしたが、突き上げるような強い衝撃は全く起きない。

その代わり、腹に響くような重い衝撃がビリビリと床を震わせた。

 

(直撃じゃない!)

「シャーリー、急いで!」

「!‥‥はいっ!!」

「ティアナは私と。船が動けるか確認するよ」

「‥‥はい!」

 

フェイトとティアナは瓦礫を踏み越え、操舵席に向かった。

本来の主たる男性操舵士は席から吹き飛ばされ、首と手足をあり得ない方向に向けたまま息絶えていた。

 

「‥‥‥‥」

 

一瞬だけ黙祷してからフェイトは着席し、コンソールを確認して表情を曇らせる。

主動力たる魔力炉はまだ生きているが、伝導系統がズタズタにされていた。

これでは這うようにしか動けない。

 

(ダメか‥‥)

 

ほぞを噛んだその時だ。

 

「フェイトさん、通信が繋がりました!」

 

シャリオの声に、フェイトとティアナは反射的に彼女を向いた。

 

「本局ですか!?」

 

ティアナの問いに対するシャリオの答えは、予想の遥か斜め上をいくものだった。

 

「それが‥‥『地球防衛軍、宇宙戦艦ヤマト』だって‥‥」


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