―― 小惑星帯 ――
――芋虫形の大型船が『ヤマト』を含むTF13とともに遊弋していた。
―― 『テシオ』艦橋 ――
『補給艦《オシマ》艦長、真山です。‥‥またお会いしましたね。嶋津艦長(笑)』
「お互い、死神に振られまくりのようで(笑)」
艦長二人は画面を挟んで人の悪い笑みを交わす。
「知り合いなんですか?艦長たちは」
観測士席の三沢が通信席のパクに尋ねた。
「第2次トムとジェリー作戦を知ってるか?」
「はい。プランツ級の初陣で、ガミラス艦3隻を沈めた、と教えられました」
パクは1年余り前に実施された作戦の名称を口にし、三沢も頷いた。
「嶋津艦長はその4番艦《ユウガオ》艦長で、真山艦長は特設輸送艦『キヨカワマル』艦長だったのさ」
「え?」
パクの話に、三沢は目を丸くした。
「嶋津艦長が『ユウガオ』を指揮なさっていたのですか?」
「ああ」
『トムとジェリー作戦』は2200年に数次実施された資源還送作戦の名称で、冥王星基地が陥落したとはいえ、制宙権を再掌握できていない状況の木星圏以遠からの資源、特に波動機関に不可欠なコスモナイト99を持ち帰るために強行された。
当初の名称は『新・ネズミ輸送』だったのだが、若年者からダサ過ぎだとの声と新たな提案が上がった。
『ミッキーマウス作戦』と『トムとジェリー作戦』がそれだったのだが、前者は権利を持つアメリカの会社から拒否され、後者は何故か権利者がすんなり承諾したため採用された。
成功した第1次作戦に続いて実施された第2次作戦でプランツ級1~4番艦が特務第11戦隊を組み、鬼竜こと土方 竜が指揮をとった。
結果は、輸送船隊は損失なく資源還送に成功し、迎撃に来たガミラス艦相手に苦戦したものの、3隻を撃沈し、2隻を撃破敗走させるという戦果を挙げた。
その時、最初にガミラス艦に命中弾を与えて轟沈させたのが4番艦『ユウガオ』だったが、艦長が嶋津だった事はあまり知られていない。
作戦実施から1年余りしか経っておらず、軍内部への公表すら一部に留まっていたからだ。
「俺も《ユウガオ》に乗り組んでいたからな。5射目で命中し、敵艦が火球に変わった時は、皆歓声どころか絶句したものさ」
「絶句?」
「砲撃だけでガミラス艦を沈めたのは、第2次火星沖会戦以来5年ぶりだからな。しかも砲撃一発で轟沈というのは、恐らく国連宇宙軍初だからな」
「そうだったんですか‥‥」
「――で、一連の作戦全てに参加した輸送艦『キヨカワマル』を指揮していたのが真山艦長さ」
「そうだったんですか‥‥」
パクと三沢の視線の先では、嶋津と真山が意見交換をしていたが、それもほどなくして終わる。
『――というわけで、宜しく頼むわね、嶋津艦長♪』
「‥‥りょーかい」
(!?)
空間騎兵隊員並の体格である真山の言い回しに聞き捨てならぬものを感じた三沢は、嶋津とパクと画像が落ちたメインモニターを順に見、パクは三沢の言わんとした事に気づいて苦笑した。
「真山艦長のキャラだ。悩んだら負けだぞ」
「‥‥わかりました」
TF13に臨時加入艦が更に1隻――。