嶋津冴子らTF13首脳部の思案は、『テシオ』パク通信長の声で中断した。
「連合艦隊司令部から嶋津艦長に通信が入っています!」
「繋げ」
嶋津が接続指示を出すのと同時に『ヤマト』を含むTF13各艦のメインモニターに、土方が映し出され、ブリッジクルーは敬礼した。
答礼もそこそこに土方は切り出す。
『件(デスラー発)の通信はこちらでも確認した。‥‥TF13と《ヤマト》は準備の上、イスカンダル救援に赴け』
(――え?)
土方の言に、各艦首脳は一瞬呼吸を忘れた。
イスカンダル救援に赴く事自体は構わない。むしろ望むところだ。
しかし、地球防衛軍の実情と巡洋艦の補給能力の低さ等から、赴けるのは『ヤマト』1隻ではなかったか?
「――司令、イスカンダル救援は我々としても望むところですし、人の道に叶う事でもありますが、《ヤマト》以外の艦については補給艦の随伴が不可欠です」
嶋津が疑問を口にするが、土方は想定内とばかりに口元を歪めて応える。
『無論だ。《オシマ(渡島)》を随伴させる事にし、準備に入らせた』
「《オシマ》を、ですか?」
『オシマ』はガトランティス来襲の半月前に竣工した『ラファイエット』級高速補給艦の2番艦だが、水・食糧や弾薬の他、自動工作機械や修繕資材も搭載した工作艦の能力も併せ持ち、ガトランティス戦中戦後には早速、巡洋艦以下の中小型艦艇の修復に能力を発揮してみせたが、設計は紡錘形の艦首尾部と長方形の主艦体を組み合わせたような形状で、『オシマ』が公試運転で舞鶴沖から上昇していく様は、ジャンプするモ○ラの幼虫そのものだったという。
‥‥形状はともかく、『ラファイエット』級の能力に問題はない。
土方は続ける。
『但し、新人にいきなり往復数十万光年の旅は心身の負担も軽くなかろう。下艦を希望する者がいれば、彼らの身柄はこちらで預かる』
「わかりました。直ちに新人たちの意思を確認します」
嶋津たちにとって最大の懸念事項はまさにそれだったが――。
「艦長!」
『艦長代理!!』
『テシオ』では三沢亜里沙が、『ヤマト』では北野 哲が異口同音に声を上げた。
「私たちは新人ではありますが、地球を、ひいては宇宙の平和の守り手を志して宇宙戦士になりました。半人前ですらない事は承知していますが、足手まといにはなりません。是非とも同行させて下さい!!」
「‥‥‥」
『テシオ』艦橋では、嶋津と三沢がしばし睨み合う格好になった。
嶋津とて、三沢たちの思いは十分理解しているが、イスカンダル救援ともなれば、ガトランティスの残党や未知の敵との戦闘になる事もあり得る。
最悪、戦死の可能性だってゼロではないのだ。
だが、TF13も人手不足であるのもまた事実だ。
(兵は戦場で一人前になる、とは誰の
言葉だったか――?)
嶋津は深呼吸すると、口を開いた。
「わかった。しかし、これは長期間の銀河間航行になり得る任務になる。各自の意思を確認してからだ、いいな?」
「わかりました!」
――新人たちを含む乗組員たちの意思は確認できた。
次は具体的な準備を大至急行わなければならない。
こんな日本に誰がした!?
‥‥誰でもない我々でしたね。