宇宙警備隊長・冴子   作:EF12 1

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ヤマトとは無関係ですが、仮面ライダー1号が44年ぶりの映画化だそうで、ディーンじゃない藤岡さんが再び本郷 猛を演じられる由。
当代仮面ライダーのゴーストとどのように絡むのかも楽しみです。



漂流と日常

――ガミラス艦隊総旗艦(大型戦闘空母)『アランガル』――

 

「‥‥‥‥」

「‥‥‥‥」

 

デスラーはもちろん、タラン以下の重臣・将兵達は、目の前の光景を現実のものと認識するのに、多少の時間を要した。

 

「‥‥我々の母なる星が‥‥」

 

絞り出すように呻きながら、デスラーはガックリと片膝をついて項垂れる。

 

「たとえ滅びゆく運命とはいえ、今しばらくはこのままの姿でいられたものを‥‥。

‥‥そして、このような残酷な結末をこの目で見る事になろうとは‥‥」

 

デスラーは現実に打ちのめされていた。

ガミラス本星は、星としての寿命こそほぼ尽きていたとはいえ、そっとしておけば万年単位の余命はあったのだ。

 

だが、我々の留守につけ込んだガミラシウム盗掘を阻止しようと、所属不明の作業船団を攻撃したのが、結果としてガミラス本星消滅の引き金になった。

母なる星を守るつもりが、命脈を完全に断ち切ってしまった。一体何をやったのだ、自分達は――?

 

「‥‥‥‥」

「‥‥‥‥」

「うっ、うう‥‥」

 

重臣・将兵達も力なく項垂れ、瞑目する者もいれば嗚咽を漏らす者もいた。

 

――盗掘者どもめ、このままでは済まさぬ!!

 

デスラーの心に激しい憤怒が沸き上がりかけたその時、

 

「イスカンダルが、軌道を外れていきます!」

「!!?」

 

観測担当の兵士が動揺した声を上げ、デスラーも反射的に顔を上げた。

 

メインスクリーンに映るイスカンダル星が急速に小さくなっていく。

 

(!‥‥しまった。私とした事が、何たる失態!!)

 

デスラーは自分を罵る。

――ガミラスとイスカンダルは一緒に恒星サンザーを公転する二連惑星。どちらかが消滅すれば、引力のバランスが失われ、もう片方は簡単に軌道から外れるものだ。

そして、イスカンダルもまた、星としての寿命は尽きたも同然。

地殻等もだいぶボロボロになっているだろう。

そんな状態で漂流を続ければ、星自体が崩壊するか、他の星と衝突してしまう。

そうなったら、スターシャは――!?

 

「追え。全力でイスカンダルを追うのだ!」

 

デスラーは反射的に立ち上がり、追跡命令を下す。

 

――デスラーとガミラス艦隊の、短くも苦難に満ちたイスカンダル追跡行が始まった――

 

 

 

    ――ミッドチルダ首都・クラナガン郊外――

 

「はい‥‥予定通りにお伺いします。ヴィヴィオもとても楽しみにしています‥‥はい、失礼します。メガーヌさん」

 

この家の主、高町なのはは、最近知己を得た人物との通信を終えた。

 

すぐさま、奥から黄色がかった金髪の少女がヒョコと顔を出す。

 

「どうだった?ママ」

「うん、ルーテシアちゃんも楽しみにしてるってさ、ヴィヴィオ」

「アハ、よかった♪」

 

なのはをママと呼ぶ少女――高町ヴィヴィオ――は喜色満面になった。

 

なのはとヴィヴィオは、前年、ある事件を通じて知己を得た少女、ルーテシアとその母親メガーヌが暮らす第23自然世界『カルナージ』で、ヴィヴィオの試験休みに合わせた休暇を過ごす事になっているのだ。

この旅行には、ヴィヴィオのクラスメイトで、親交を深めつつあるコロナ・ティミルも同行する。

 

「でも、フェイトママが来れないのは残念だったね‥‥」

 

ヴィヴィオにとってはもう1人の母親であるフェイト・T・ハラオウンも一緒に休暇を過ごす予定だったが、急ぎの任務で遠方の管理世界へ赴いたため、残念ながら不参加だ。

 

「‥‥そうだね」

 

なのはは笑顔で応じるが、彼女の耳にもフェイト達の任務の内容は断片的に入っていた。

フェイト達が携わった事件は、多数の住民が短時間のうちに死亡あるいは殺害されるという猟奇的なもので、容疑者も未だ不明であるため、管理局に対する批判の声が出始めており、長期化すれば、JS事件の傷が癒えない管理局の更なるイメージダウンは避けられそうにない。

一方、管理局内部の改革の結果、これまで表沙汰にされなかった不正や腐敗が明るみになった事で、非難や失望の声が強いのも事実だった。

 

『そんな不心得者は少数派。大半の局員は良心的』

 

と主張する者もいる。

事実、ある教導生もなのはにそう訴えた。

なのはもそのとおりなのだろうと認めつつ、その教導生に言いきかせた。

 

その気持ちはよくわかる。

しかし、被害者やその関係者から見れば、自分達も同類と思われるのが当然。

同じ組織に属している以上、どんなに辛くても批判を謙虚に受け止め、信頼を取り戻せるよう、地道に積み重ねていかなければならない、と。

 

――それはそれとして、 あの(JS)事件から1年が過ぎた。

ヴィヴィオはジェイル・スカリエッティと最高評議会によってあの事件のキーパーソンにまつり上げられ、心に少なからず傷を負ったが、幸いにしてそれを引き摺る事もなく、一市井人としての人生を歩み始めた。

 

娘を観察していると、かなりの読書家である反面、徒手格闘技にも興味津々のようで、ナカジマ家に行ってはギンガ・スバル姉妹から基礎的な事を習い始めたらしい。

 

また、魔法や武術の練習の一環で、身体強化、即ち大人モードへの変身の練習も重ねているが、なのはまだ娘に専用デバイスを与えるつもりはない。

ヴィヴィオは魔法の勉強を始めたばかりで、専用デバイスは基本が身についてから与える事にしているからだ。

魔法が使えるといっても、それは個人の一面でしかなく、健やかな心を置き忘れた魔導師は歩く危険物でしかない。

客観的に見ても、ヴィヴィオは高ランク魔導師になる可能性が高い。

管理局に入るのか、聖王教会に入るのか、あるいは民間人で過ごすのかはヴィヴィオ次第だが、いずれにしても健全な精神があってこそだ――。


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