宇宙警備隊長・冴子   作:EF12 1

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ただいま訓練中。だがしかし

 

  ――小惑星帯・訓練指定空域――

 

「全機、続けっ!」

「「了解!」」

 

垂直尾翼と尾部が黄色く塗られた山本のコスモタイガーを先頭に、坂本と椎名をそれぞれのリーダーにしたコスモタイガーの編隊が小惑星帯に突入していく。

 

「全艦対空戦闘用意!」

「主砲、パルスレーザー、SAM発射用意!‥‥主砲一番、遅いぞ!」

「目標まで、30宇宙㌔」

 

『テシオ』では嶋津が対空戦闘準備を命じ、新人の砲術員が操作パネルに向かい、観測席の三沢が目標までの数値を読み上げる。

 

――TF13は小惑星帯最大の星「ケレス」の第1基地を拠点に、火星から木星にかけての宙域で新乗組員の訓練を行っていた。

 

訓練は、初日こそ新人たちのポカが続発したが、『ヤマト』で坂本と北野がパンツ一丁で艦内マラソンした事が効いたのか、その後は少しずつ形になってきた。

 

一方、この訓練の目玉である新人パイロットの訓練に際し、隊長の山本が提案したのは、一撃離脱をはじめとする集団戦だった。

 

『残念ながら、個人の高い技量で敵機と渡り合えるパイロットは少数になってしまいました。

これを契機に、個人技主体から集団戦に転換して、ヒヨコ達の生存率を上げ、経験を積ませて全体を底上げすべきです』

 

これには古代や13TF各艦の艦長も異議はなく、1小隊4機による集団戦を教え込むことにしたが、そこは新人とはいえ優秀な連中。皆山本の真意を理解しているようだ。

 

   ――『クズリュウ』――

 

「旗艦より発光信号。『突撃隊形トレ』です!」

「面舵10、艦首上げ5!本艦が先頭に出る」

「対空・対艦戦闘スタンバイ完了」

 

観測員からの報告に、艦長のナーシャ・カルチェンコが進路指示を、副長兼砲雷長の篠田 巌は全火器が使用可能であることを報告した。

これからTF13は『クズリュウ』を先頭に、新人パイロットによる対艦攻撃訓練の標的を務めるのだが、艦側も黙って標的にされるつもりはなく、対空戦闘訓練を兼ねている。

 

 

   ――『アシタカ』――

 

「右舷(みぎげん)、対空戦闘よ~い」

「了解。全砲門、SAM撃ち方用意!」

「進路そのまま。25秒後に面舵30!」

 

艦長のフランベルク・シルヴィア夏美の力の抜けた指示を受け、砲雷長の劉  光拓と副長兼航海長のフランベルク・アリア小百合が実行する。

――実態は、戦闘指揮以外は副長に丸投げなのだが――。

 

『テシオ』『チョウカイ』『クズリュウ』『アシタカ』の4艦は、主砲とパルスレーザー対空砲に仰角をかけ、その砲口はコスモタイガーに向けられていた。

 

 

――コスモタイガー・椎名 晶機――

 

『全機、フォーメーションAS!』

 

山本隊長機から対艦戦闘命令が出た。

 

「了解!皆、フォーメーションAS、行くよっ!!」

『おう!』

『了解!!』

 

第2分隊リーダーである椎名がメンバーに呼びかけるや、すかさず僚機から返事か来た。

 

 

     ――山本機――

 

「向こうの艦長サン達は非常識だからな!気を抜くと逆に追い回されるぞ!」

 

――嶋津冴子とナーシャ・カルチェンコは、つい先日まで『テシオ』にて艦長と副長兼航海長としてコンビを組み、標的艦を務めたとある訓練では急機動でコスモタイガー編隊を追い回すという“暴挙”に出た事があったし、『チョウカイ』『アシタカ』の艦長らも一筋縄ではいかない人物だと山本は聞いていた。

今回は『ヤマト』も混じっているからそんな事をする可能性は小さいが、巡洋艦群は『ヤマト』ほどの打たれ強さがない代わりに足が速く機動力が高い。

あの非常識艦長達が、ただ回避行動だけを取るとは思えなかった。

 

「全機攻撃開始!目標『ヤマト』。坂本隊は直上、椎名隊は俺についてこいっ!」

『了解!!』

『了解しました!』

 

威勢いい返答に、山本は唇の端を持ち上げた。

 

「全機、攻撃開始!」

 

二手に分かれたコスモタイガーは『ヤマト』目掛けて突っ込んでいった。

 

 

 

   ――大マゼラン銀河・サンザー星系――

 

先行した偵察艦からの緊急報告と映像データを目の当たりにしたデスラーは、その身から激怒のオーラを噴き出した。

傍らに控えるタランら近臣達も、久方ぶりに見る指導者の激怒に戦慄したが、彼らの思いもデスラーと全く同じだった。

 

「――断じて赦さぬ。我が母なる星を傷つけるとは‥‥!」

 

“外敵”にガミラス星を蹂躙されたのは『ヤマト』に続いて2度目だが、『ヤマト』はこちらの挑戦に応え、たった1隻で突入し、満身創痍になりながら我々を退けた。

敵ながら見事というしかない。

あれから更にぶつかり合った結果、最早『ヤマト』や地球に対する怨恨はない。

しかし、今我が母星に居座っている連中は我々の不在につけ込んで、恐らくはマグマに含まれるガミラシウムを盗掘しようとする輩だ。地球人達と比べる事すらおこがましい。

 

「第1・第2艦隊は突撃隊形をとれ、最大戦速で突撃する!」

 

デスラーは高速艦で編成された第1・第2艦隊を直率してガミラス星に向かう。

 

「総統に続け!盗掘者どもを1人たりとも逃がすな!」

 

第2艦隊旗艦でグラフ・シュパーが檄を飛ばす。

彼に限らず、ガミラス軍将兵達は、盗掘者への怒りと憎しみで1つになっていた――。

 

 


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