宇宙警備隊長・冴子   作:EF12 1

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第13戦隊結成①

――嶋津冴子率いる第666警備隊(GF666)は解隊された。

 

言うまでもなく、地球防衛軍内部での戦力再編によるものだ。

ガトランティスとの戦闘で全滅した部隊が少なくない中、1隻も欠けなかった部隊は片手で数えるしかなく、その意味でGF666は稀有な存在だったが、そのGF666を母体に新たな部隊が編成されることになった。

 

新部隊は『独立第13戦隊』(TF13)と称され、所属は内惑星防衛艦隊。

戦力編成は以下のとおりだ。

 

旗艦 哨戒巡洋艦『テシオ』

 

編成

哨戒巡洋艦『テシオ』『クズリュウ(九頭竜)』

戦闘巡洋艦『チョウカイ(鳥海)』『アシタカ(愛鷹)』

 

『テシオ』『チョウカイ』は対ガトランティス戦の生き残り、『クズリュウ』『アシタカ』はガトランティス戦勃発直後に竣工したため、乗組員の都合がつかず繋留されていた。

GF666が軽巡洋艦1、護衛艦2なのに対し、重巡洋艦・軽巡洋艦各2は大幅な戦力アップだ。

 

そして、『クズリュウ』『アシタカ』にはGF666の人員が相当数横滑りした。

『クズリュウ』の艦長は『テシオ』副長のナーシャ・カルチェンコ、副長には同じく『テシオ』戦術長の篠田 巌が昇進して就任。

『アシタカ』の艦長には『ナデシコ』艦長のフランベルク・夏美・シルヴィア、副長には同じく『ナデシコ』副長のフランベルク・小百合・アリアが就任した。

 

また、『チョウカイ』は壊滅したヒペリオン艦隊の生き残りで、戦死した前艦長に代わって指揮を引き継いだ塩江 龍一がそのまま昇進・就任していた。

また、『テシオ』副長には航海長兼任で大村耕作が、砲雷長には松島 洋が就任した。

 

ちなみに、護衛艦『ヒルガオ』艦長の若命未散と副長の幸浦駿也は哨戒巡洋艦『アヤセ(綾瀬)』に転じた。

 

――で、TF13の指揮官は、『テシオ』艦長の嶋津が大佐に昇進の上、これも横滑り。司令官代行の肩書付きになった。

次席指揮官は『チョウカイ』艦長の塩江であるが、TF13の幹部人事は、指揮官及び4隻中3隻の艦長が女性という前代未聞の事態になった。

とはいえ、巡洋艦4隻という戦力は今の地球防衛軍にとっては貴重だ。

各艦の艦長、特に新造艦の指揮を執る事になった2人には、乗艦の早期戦力化という課題が突き付けられた。

 

そして、指揮官たる嶋津は“元締”の土方に呼び出され――。

 

    

  ――地球防衛艦隊臨時旗艦『エチゴ』(越後)――

 

ドレッドノート級主力戦艦の5番艦たる『エチゴ』は、アンドロメダ級建造のための試作艦的性格を併せ持ち、艦橋構造物はアンドロメダ級の縮小形というべき形状だ。

これは、旧日本海軍の金剛級高速戦艦『比叡』が、最後の改装で大和級に似た形状の前檣楼(艦橋)に改められたのに近い。

 

「‥‥‥‥」

 

その『エチゴ』の士官サロンで、『テシオ』副長兼航海長の大村耕作は居心地悪そうに座していた。

大村は数時間前、『テシオ』修復工事事務所のコンテナハウスに出頭し、艦長の嶋津に着任挨拶を済ませるや、当の嶋津から『エチゴ』への同行を命じられたのだ。

 

(何だか、えらい艦に赴任しちまったな‥‥)

 

この時点で、大村は嶋津がTF13を預かる事になったのを知らない。

 

嶋津冴子は、良くも悪くも目立つ存在で、

 

『死神のキン○マを握った』

 

と言われるほどに、危険な任務にあたっても生還し、彼女が指揮した隊なり艦の人員の生還率は高かった。

その事は、以前、突撃駆逐艦『カミカゼ』や護衛艦『ユウガオ』で副長として仕えていたからよく知っていた。

美貌とは裏腹に、アクが強くて扱い辛いという定評だが、実際に接すると、言動が親父臭い事を除けば、存外にも穏やかな女性だった。

無茶ぶりを除けば、だが。

 

しかし、大村は再び嶋津の無茶ぶりの犠牲者にさせられるのだった。


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