宇宙警備隊長・冴子   作:EF12 1

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本能寺をモチーフにしたつもりだったのですが…。


覇者の辞世

      ――『テシオ』――

 

敵の要塞戦艦と、『テレサ』が中にいるらしい謎の大光球の距離が接近していく。

双方とも退く気は毛頭ないようだ。

 

「全艦対衝撃・閃光防御!現在の艦位を保持しろ!」

「ゴーグルがない者は手で瞼を覆え。衝撃波が来るぞ、皆手近な物に掴まれ!」

 

土方に続いて嶋津がクルーに防御体勢をとるよう指示を出す。

ちなみに2人ともゴーグル装着済みだ。

 

「艦長、双方の予想衝突時間はあと…45秒です!」

「カウントダウンを続けろ!目を潰すなよ!?」

「はい!」

 

正面窓は遮光率を最大にしているのだが、ゴーグルなしでは目を開けられない状態だ。

 

「一体、何が起きようとしているの…?」

「……わかりません。ただ、我々には見届ける義務があるでしょうね……」

「……」

 

カルチェンコと篠田の会話を聞いた嶋津は、無言で首肯した。

 

その間にもカウントダウンは続き、10秒を切った。

嶋津は無意識のうちに立ち上がり、戦闘指揮席の篠田も中腰になっていた。

 

「…ゼロ!衝突します!!」

 

カウントダウンを続けていた三沢の声は悲鳴になっていた。

 

「目をつぶれ!網膜を焼くぞ!!」

 

直後、艦橋にゴーグルを着けていても目をつぶるほどの閃光に包まれた。

 

 

   ――要塞戦艦『ガトランティス』――

 

テレサとの距離が狭まるにつれ、装甲板が大量に剥離したり、砲身が湾曲する等、原因不明かつ致命的な異状が多発し、乗組員は恐慌に陥った。

それは玉座がある大艦橋も例外ではなく、兵士や近侍らがパニックに陥っていた。

その中にあって、大帝ズォーダーは右手に酒杯を手にしたまま、傲然と玉座についていた。

 

(俺の命運はここまでだったか)

 

不可避となった死を目前にしながら、ズォーダーの心中は穏やかだった。

先帝の庶子として生を受け、異母兄弟たちの差し金で最前線に送り込まれながらも、部下たちと共に死地や窮地を幾度も潜り抜けることで地歩を固め、血を血て洗う内部抗争や骨肉の争いを勝ち抜き、ついには兄弟をも謀殺して帝位についた。

そして即位するや、高官の登用をそれまでの世襲一辺倒から実力主義に変え、地位に安穏としていた者や私腹を肥やしてきた者は躊躇なく粛清して人事を活性化。臣下のレベルが向上した。

その結果、史上最速のペースで版図を広げてきた。

 

だが、今となってはどうでも良いことだ。

どのみち死地に赴くのならば、いつもどおり胸を張って最期を迎えるのみ。

 

迫り来るテレサを睨み据えながら、ズォーダーは玉座から立ち上がると高らかに吼えた。

 

『余の生涯に一片たりとも悔恨なし!』

 

と――。

 

直後、地球全域が真昼の明るさになり、光が消えた後、敵超巨大戦艦の姿はなかった。


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